映画レビュー0221 『グッドモーニング, ベトナム』
実は昨日、ウッカリ3本観てまして。今週は毎日更新を目指すぞ! っということで小出しにしてます。ひとまず今回はまたBS録画シリーズに戻ります。
この映画もタイトルはもちろん知っていましたが、もっと軽めの、皮肉っぽいコメディっぽい映画なのかと勝手に思ってました。
グッドモーニング, ベトナム
娯楽的なうまさがありつつも考えさせてくれる良作。
ベトナム戦争を題材にした映画というのは何本か観てきましたが、(爆破シーンはあれど)あまり残酷なシーンもなく、表立って批判したり賛美したりということもなく、ある意味では変化球なんですが、一人の人間を通して裏側から戦争を描き、「どっちが正しいかは言わないけどあなたはどう思いますか」という価値観を提示してくるような映画でした。
ロビン・ウィリアムズ扮する、新たに赴任したDJ・クロンナウア上等兵。まさに文字通りの「マシンガントーク」っぷりがスゴイ。
はっきり言って時代も古いし、ノリなんて完全にアメリカンなので、日本人が観て「ギャハハハ」と笑えるようなものではないんですが、それでも「やっぱロビン・ウィリアムズって芸達者だな…」と呆気にとられるようなハイテンションっぷりが序盤の見所。
やがて、型破りでルール無視である以上、どうしても軋轢を生んでしまい、上官に目をつけられ、停職を喰らうわ紛争地へ送り込まれるわ…といろいろあるんですが、この映画の肝は、実はDJどうこうよりも、現地のベトナム人との交流の部分でしょう。
元々人を惹きつける魅力を持った彼が、ベトナム女性に恋をして、彼女に近づくために策を弄するわけですが、その途中で「リアルなベトナム」を知っていくことを通して、観る側にも「ベトナム戦争の意味」を考えさせる流れになっています。
劇的な何かがあるわけでもなく、したがって背後から撃たれるような裏切り的ビックリ展開もないので、実は意外と淡々とした流れの映画ではあるんですが、ラスト近くのソフトボールのシーンなんて、明るいBGMに笑顔しか無いシーンなのに、やたら切なくてしょうがない。感情の積み上げ方、クロンナウアに対する観客の感情移入の誘導がすごくうまいですね。
上に書いたように、「どっちがいいか」というのは語っておらず、事実を提示していった先で観る側がどう思うかという作り方なので、説教臭いことも無いし、戦争がテーマの割にすごくさわやかな映画になっていて、誰にでも観られる良作だと思います。さわやかだけど、切ない。なかなかの味わいがありました。
なーんか自分は…こういう役で、こういう去り方をするロビン・ウィリアムズに弱い。やっぱりこの人も、「この人にしかできないポジション」を持ってますよねぇ…。
このシーンがイイ!
トラックの米軍兵士相手に即興放送をやっちゃうシーンも良かったですが、一番印象的だったのは、ベタですがやっぱり…ルイ・アームストロングの「この素晴らしき世界」をバックに流れる戦地の映像でしょう。
曲のタイトルからして皮肉っぽい。戦争映画らしいワンシーン。
ココが○
戦争映画なのに重くない、でも鑑賞後はいろいろ考えさせられる…というのは、あまり他にない感じだと思います。
娯楽として成立している上に考えさせてくれるというのはいいもんです。
ココが×
実はよくよく観てみると、「いまを生きる」なんかと似てる部分もすごくあって、戦争に対する考え方とか思いを抜きにすれば、ちょっと既視感のある内容だったりはします。
ただ、「戦争」そのものが大事な要素なので、意地悪な見方をすれば…という話ではあるんですが。
MVA
マシンガントークのロビン・ウィリアムズ、気弱そうだけどイイヤツをしっかり演じたフォレスト・ウィテカー、アジア人らしいかわいさのあるチンタラー・スカパット、理解と味のある局長ノーブル・ウイリンハムとなかなか候補揃いでしたが、さて一人誰にする、となると…。
ロビン・ウィリアムズ(エイドリアン・クロンナウア役)
この人の何が良かった、って、マシンガントークのDJっぷりと、現地人と仲良くなる現地人っぽいアメリカ人、両面をきっちり演じられているところでしょう。
この役はやっぱりこの人にしかできないだろうな、と思います。あの優しそうな顔がまたねぇ…。あってるんですよねぇ。
ちなみにこれは後で知ったことですが、DJシーンのセリフ、全部アドリブだとか…! 恐ろしいぜ、ロビン・ウィリアムズ。