映画レビュー0301 『マンデラの名もなき看守』

どうも関東は水不足の様相を呈してきていますが、しかしほんと最近雨降らないですねー。いわゆる「ゲリラ豪雨」は何度も見るんですけどね。なんかやっぱり一昔前の記憶とは違ってきてる気はしますね。9月も半ばでこれだけ暑い、っていうのも記憶にないし…。

夏も終わって疲れが出やすいこの時期にまだ暑いとなると、疲れが出るのはまだ先ってことなんでしょうか。疑問です。皆さんも体調管理、気をつけて…。

マンデラの名もなき看守

Goodbye Bafana
監督
ビレ・アウグスト
脚本
グレッグ・ラター
ビレ・アウグスト
音楽
公開
2007年4月11日 フランス・ベルギー・ギリシャ
上映時間
118分
製作国
ドイツ・フランス・ベルギー・南アフリカ共和国・イタリア・イギリス・ルクセンブルク
視聴環境
BSプレミアム録画(TV)

マンデラの名もなき看守

「コサ語が理解できる」という理由から、終身刑でロベン島監獄に服役しているネルソン・マンデラの監視任務を命じられたグレゴリー。最初はマンデラを「死刑にすべき」と考えていたグレゴリーだが、少しずつ交流を持つことで、次第に考えを変えていく。

監視する側からのマンデラ物語。

7.0

主人公であるジェームズ・グレゴリーは実在する人物で、彼の書いた手記を元にした映画だそうです。

身分も低い、一刑務官であるグレゴリーは、幼少期に黒人の少年を友達に育ってきた経験から、「コサ語」という黒人たちの間で主に使われると思しき言語を理解できるために、当時すでに重要な政治犯であったネルソン・マンデラの監視を命じられます。彼と直接接する機会を持ったことから、次第に彼を理解していくグレゴリーですが、当時の南アフリカはアパルトヘイトまっただ中、黒人差別が色濃い社会だったため、マンデラを認め始めたグレゴリーは周りから蔑まされるようになり、そんな生活に嫌気が差した彼は、彼の監視任務から離れようとするものの…というお話。

なにせネルソン・マンデラがメインテーマなので、そもそも彼がどんな人か、また当時の南アフリカがどんな国なのかというような説明は無く、当たり前ですが「その後の彼」も含めて、大まかにでも周辺状況を理解している人向けの映画になっています。

その分、グレゴリーの考え方や彼の家族、その周りとのやりとりを中心に据えていて、「外から見たマンデラと、彼の歴史と国の変化」を淡々と描いたドキュメンタリータッチのドラマといった感じ。

淡々としてはいますが、うまくその「知ってることは説明しないよ」という余計な部分を省いた作り方をしているおかげで、直接的にマンデラを描くよりも、周りの環境を見せることで段々と国が変わっていった様がわかるような映画になっていて、一風変わったマンデラ伝記のような味わい。当然ながら友情につながるエピソードも散りばめられ、ほんのり感動できるいい映画です。

ただ、きちんと2時間に収めようとした点はいいんですが、20年以上もの囚人生活を途中途中カットして進める話になっていて、割と「気付けば結構進んでた」みたいな展開に感じられて、ちょっと密度が薄いかな~と気になる部分はありました。それでも特段「マンデラ賛美」でも「グレゴリー善人過ぎ」でも無いので、話としてのバランスはしっかりよくできているんじゃないかと思います。

あくまでも黒人差別社会の中、普通に「人間同士のやりとりから歴史が変わっていく姿を描く」ような感じで、特筆した強烈な人物が歴史を変えたんだぞ、みたいな英雄譚になっていないところがいいな、と。

比較的地味ではありますが、派手さが無い分、誠実さが感じられて、社会派好きの人には素直におすすめできる映画でしょう。

グレゴリーの奥さんはダイアン・クルーガーが演じていて、それがちょっと話にそぐわないような気もする“妙に華やか”な人選な気がしたんですが、逆にそのおかげで地味になり過ぎないようにしたのも良かったのかな、と。

このシーンがイイ!

ほんとベタですが、マンデラとグレゴリーの最後のやり取りはいいなぁ、と。泣いちゃいましたねー。やっぱり。

ココが○

こういう“歴史上の人物”をテーマにすると、「子供たちに見せましょう」みたいな教育じみた映画になりがちだったりしますが、そういう教育臭さみたいなものはなくて、普通に一つの映画として楽しめる内容になっています。

なんとなく、「監視側とされる側の話」という部分から、「善き人のためのソナタ」を思い出しましたが、あれほど重すぎず、良くも悪くも観やすくなっている間口の広さはプラスだと思います。

ココが×

そもそも元となる伝記自体が創作も含まれるもののようで、この映画の話すべてが真実では無さそうな点が少し残念かな、と。ただまあこの手の実話系映画にはつきものの問題ではあります。

MVA

マンデラ役のデニス・ヘイスバートは、「24」ファンにはお馴染みのあのパーマー大統領を演じた人ですが、さすがこの手の高潔な黒人役をやらせるとウマイですね。知性と優しさが感じられて良かったですが、ただマンデラをやるには少しガタイが良すぎるような気も。

ダイアン・クルーガーは上に書いた通り、地味になりがちな絵に華を添えていて良かったし、主演のジョセフ・ファインズも悩ましい看守役を実直に演じていて良かったです。総じて役者陣は安定していて良かったように思いますが、一人選ぶなら

パトリック・リスター(ピーター・ジョーダン少佐役)

にしようかな、と。

主人公・グレゴリーの上司役です。

あまり信念を持って行動している人物では無さそうでしたが、妙にダンディで理解のある人物っぽさが良かったな、と。こういう脇役は本当に映画が締まるので好きです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です