映画レビュー0856 『タイム・トゥ・ラン』

今回も例のシリーズでございます。

短めでサクッといい感じっぽいので安易にチョイスしました。

タイム・トゥ・ラン

Heist
監督
スコット・マン
脚本
スティーヴン・サイラス・セファー
マックス・アダムス
音楽
ジェームス・エドワード・バーカー
ティム・デスピック
公開
2015年11月13日 各国
上映時間
92分
製作国
アメリカ
視聴環境
Netflix(PS3・TV)

タイム・トゥ・ラン

難病の娘の治療費を融通するため、雇い主であるカジノのオーナー・ポープに借金を願うも無下に断られた挙げ句解雇されてしまったヴォーン。やむなく以前同僚のコックスから誘われていたカジノの現金強奪計画に参加し、首尾よく金も盗むことができたのだが…。

作りは良いのに物語がザル。

5.5
かつての勤務先から現金を強奪した男の周到な計画
  • “恐怖のカジノオーナー”からアングラな金を盗み出した元従業員の話
  • 主人公とオーナーは長い付き合いでちょっと曰く付きらしく、人間関係も物語の幅を広げる
  • クライムサスペンスとしてなかなか巧妙に惹きつけるも、終盤のパワープレイが目立つ

デ・ニーロは出ているものの主演も比較的地味(好きだけど)なせいか、世間的にはあまり知られてない映画っぽいんですが、しかし「隠れた名作!」的なレビューを見てもしやと期待してみましたが…結果的には結構残念な映画でしたね。ぶっちゃけ。

主人公のヴォーン(ジェフリー・ディーン・モーガン)はベテランカジノディーラー。最愛の娘がどうやら大病を患っているらしく、手術費用が莫大な金額ですよと。タイムリミットが近付く中、頼れる人はこの人しかいない…ということで自らの雇い主であるカジノオーナー・ポープ(ロバート・デ・ニーロ)に借金の申し出を願うも無下に断られます。

ポープも疎遠ながら娘を大事にしているような描写もあり、気持ち的には理解しているっぽいんですが…どうやらヴォーンを買っていたものの期待外れに終わったような過去があるようで、「今さらお前がそんなことを言えた立場か」的に門前払いを食らわせます。

結局口論となった二人は決裂、「貴様はクビだ〜!」と職まで失ってしまったヴォーン。

その数日前、カジノの用心棒的存在で雇われていたコックス(デイヴ・バウティスタ)から、表に出せない金(中国客のマネーロンダリング資金)を盗まないかと誘われていたヴォーンは、この決裂を持って計画に加わることを決意。コックスの友人2人と4人で強盗計画を立て、割とあっさり強奪に成功するも逃走のために待っていた仲間が銃の音にビビって一人で逃げ出してしまい、止む無く通りかかったバスをジャック、警察に発見されつつも乗客を人質にメキシコまで逃げようと画策する…というお話です。

この映画のポイントとしては、「現金強奪計画自体はオードブルでっせ」というところでしょうか。

間違いなく主人公のヴォーン以外は頭が悪いであろう3人を従え、計画の詳細も特に触れられずに開始早々割とあっさりお金はゲットしちゃうんですよね。

ただ、犯罪モノはなんでもそうですが、やっぱり一番のキモは「無事逃げおおせるのか」なわけで、予定していた逃走手段を早々に失った彼らが、行き当たりばったりにバスジャックし、果たして逃げ切れるのか=ヴォーンの娘の命は助かるのか、がメインのお話になってきます。

そもそもバスジャックなんて、僕の記憶の限りでは例の「ネオむぎ茶」で有名な西鉄バスジャック事件辺りからぱったり聞かなくなった気がするんですが、それだけ成功の望みが極端に薄いジャックだと思うんですよね。遠藤章造の映画もコケたりしてるわけだし。

国をまたぎやすい飛行機ならまだしも、バスとなると距離も速度も限られてくるし、劇中にもあるようにある程度物理的にも止めやすいから普通に考えれば逃げられるわけがない…という状況は、逆に言えば映画としては「成功しそうにない」と思える環境をうまく活かして意外な方向に物語を持っていこうとする、そのテーマの設定の仕方や舞台装置のうまさはあったと思います。

敵役となるカジノ王・ポープもさすがロバート・デ・ニーロが配されているだけあり、怖さも迫力も申し分なく、また「ただの悪役」に留まらないはず…という観客側の期待も織り込んで巧妙に良い人そうな部分も描きながら、なかなか意欲的なお話に仕上がっているとは思うんですよ。

ただねぇ…。

中盤のとあるシーンで、あまりにも警察がザルすぎる=物語を都合よく進めるためのボンクラっぷりに震えるほど冷めましたね。いやー冷えた冷えた。ここまであからさまに「主人公のために警察がおバカさんになりますよ」ってやられるのはなかなか観ないレベル。

これがコメディ仕立ての映画であればまあまだ許せるんですよ。「ジーサンズ」とかああいうノリの映画であれば。

この映画は割とガチなクライムサスペンスを気取ってますからね。どう観ても。それであのボンクラっぷりはやっちゃイカンだろ…。

最後の展開にしても、これまたちょーっと取ってつけたような強引さでイイ話に着地させようとする感がアリアリと伺え、最終的には「丁寧さの足りない娯楽映画」レベルで終わっちゃったな、と。

作り手が狙った観客の裏切り方はなかなか悪くなかっただけに、どうしてそこもうちょっと丁寧にやらないんだよ!! と非常に惜しい気持ち。

思うに物語を仕舞う良いアイデアは浮かんだものの、それを問題なく進めるだけの力量に欠けていたような気がします。見た目綺麗だけど味はサッパリなケーキって感じ。

短くてさっくり観られるので悪くはないんですが、普通に考えてまず納得が行かない中盤以降の雑さをどう捉えるか、それで評価が変わる映画かもしれません。

ネタバレ・トゥ・ラン

言うまでも無いですが、僕が一番納得行かなかったのは、途中ヴォーンが「人質に混ざって外に出て逃げる」シーン。あれはないだろあれは!!!

まだ主犯が誰で犯人が何人いるかわからない、みたいな状況なら強引に「わからなかったのね」って優しく受け取ってやっても良いんですが、ヴォーンはきっちり初回の人質開放(妹だったアレ)の時に警察と話し込んでますからね。その後警察も顔の照合までやっておいて「いやー逃げられちゃったね」ってあり得ないだろいくらなんでも!!

ちょっとこの警察の抜けっぷりは許せませんでした。犯人(ヴォーン)の計画で驚かせたい大どんでん返し系の映画にしたいんだったら、この辺はきっちり納得がいくように作ってくれないと…。

一応別の解釈としては、現場指揮官のマルコーニはポープの息がかかっていたために「あえて逃した」説も唱えられなくはないですが…それも強引過ぎるしそれならもっと前振りが無いとダメでしょう。

「驚かせるために警察ゆるゆるにしましたー!」ってもう観客バカにしてんのか、ってちょっと頭に来るレベルでひどかったですね。

ラストのデ・ニーロが部下を抹殺しちゃうのもなんだかなぁ、って感じ。マルコーニも殺しちゃってこの後どうするの?

いくら先が短いからって“カジノ王”がそんな適当に人殺しちゃって良いのかね…。残された娘のことを思うなら、それこそこんな刹那的な殺しなんてやっちゃダメでしょ。

とまあ不満の多いお話でしたよ。まったく。

このシーンがイイ!

ベタですが「こういう話だったんだぜ」って観客にお伝えしてくれるシーンはやっぱり良いですね。「なるほどー!」って。

まあその前が雑すぎて興味も失せてたんだけど。

ココが○

大筋は悪くないと思うんですよ。雰囲気もクライムサスペンスのそれとして楽しませてくれるし。なのでボケっと観る分には良いのかもしれない。

ココが×

詳しくはネタバレ項に書きましたが、かなり大きな部分の筋がゆるすぎて一気に物語を壊してくれたと思います。

大事なところでパワープレイを見せちゃう話は大体ダメですからね。やるにしてももうちょっとうまく騙して欲しい。

MVA

デ・ニーロは相変わらず渋くて良いんですが、なんとなくここ最近の安定した感じから逸脱していないので面白みも薄い気が。

ということで久々に観ましたこちらの方に。

ジェフリー・ディーン・モーガン(ヴォーン役)

この人が主役、って時点で渋すぎますが、演技も見た目もまたそれ以上に渋くてかっこよかったですねぇ。

一応世間的には「凶悪犯」なんですが、落ち着いた雰囲気に悪い人じゃない感、とても美味しい役どころだったと思います。

一方、相棒となるデイヴ・バウティスタがもういかにも「頭の悪いストロングスタイル野郎です」って感じでこれも結構不満。この人がもうちょっと深い役柄であれば、もっとググッと良い映画に近付けたと思うんですけどね…。単なる主人公の引き立て役だったのがなー。不満。

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