映画レビュー0500 『her/世界でひとつの彼女』

ついに来ました500本。

大量に観ている人からすればまだまだ全然なのは承知の上ですが、このブログを始めた時に「500本もあればそれなりに体裁が保てるかな」と思っていたので、ようやくここまで来たか、と感無量。

観るだけならまだしも、拙いとは言えレビューも書き、ドヘタとは言え絵も描いたわけで、今回ばかりは自分を褒めてやりたいところです。

そんな記念すべき500本目は「ずっと観たかったこれ!」ってやりたかったんですが、さすがにこれだけ観ているとそういう残してきた名作的なものも少ないし、じゃあってことで去年10年ぶりぐらいに再会して映画話が盛り上がった元上司がオススメしてくれたこちらの映画をチョイスしました。

her/世界でひとつの彼女

Her
監督
スパイク・ジョーンズ
脚本
スパイク・ジョーンズ
音楽
アーケイド・ファイア
公開
2013年12月18日 アメリカ
上映時間
120分
製作国
アメリカ

her/世界でひとつの彼女

想いの残る妻と別居し、鬱屈した日々を送るセオドア。ある日、進化した人工知能を持つOSが発売になったことを知り、自分のPCにインストールする。人間と遜色のない返答をする“彼女”との日々で明るさを取り戻したセオドアは、次第にOSである“彼女”に惹かれていく。

悲しすぎて見てられない。

8.0

最近結構人工知能界隈のニュースも賑やかな気がしますが、今とは比べ物にならないほど人工知能が進化した近未来が舞台。ただ、今でも「なんとなくできそうだな」と思わせる時代になってきていることを考えると、絶妙なタイミングで作られた映画のような気がします。

OSが人格を持つ時代。寂しさを紛らわせるために“彼女”と話していた主人公が、徐々に彼女に惹かれていき、彼女もまた彼に惹かれていき、愛を語り合いながら、はてさて二人の恋はどうなるのか…というお話です。

まず最初に、“近未来”の描写が抜群。コッテコテの未来像ではなく、今から少しだけ進んでいる(けどすごい)、その世界の作り方がすごくうまくて、こういう「リアルSF」とでも言うような世界ってすごくなったなぁと妙に感心しました。

ゲームの表現とか、「ありそう」ながら新しさがあるし、そういう世界観を形作るものの作りがいちいち良くて、一応ジャンルとしては純粋な恋愛映画と言っていいと思いますが、SF好きな人でも観て損はないレベルの「世界のうまさ」が良かったです。

加えて控えめながら、でもしっかりと主人公が「孤独」であるという表現がすごく効いているのも響きました。すごく綺麗だけど無機質な世界を前に、一人でOSと会話する主人公。

これがねー、切ない。どこか「月に囚われた男」と近い感覚を覚えるような、話し相手はいるんだけど孤独、という寂しさがすごく印象的でした。

当然ながら最終的にどうなるのかは書きませんが、終始やっぱり「所詮相手はOS」っていうのがどうしても引っかかるわけで、同じ独り身としてはもう観てて辛くて辛くて悲しくて悲しくて。主人公がのめり込めばのめり込むほど、悲しい。

最初は僕も「おっ、こんなOSできたら楽しそうだね」なんて思っていたんですが、おそらくここまでデキがいいと僕も同じように人間的な感情を抱きかねない気がして、となると主人公の精神の満たされ具合と反比例してどんどん悲しく見えていく様がもうやるせなくてですね…。

時代に即した、新しい恋愛映画であることは間違いないんですが、それ以上に観ていてもういろんな意味で悲しくて、なんて言うんですかね…ちょっと他人事に見えない、自分に近い感じが痛くて痛くて辛かったです。もちろん、それだけよく出来ている、ということでしょう。

そんな感じで観ていたので、泣くぞ泣くぞと待ち構えていた自分にとっては、エンディングのさっぱりとした感じは少し残念でした。もっとグワッと、あくどいぐらい感情に訴えて欲しかったというか。

でも、納得の終わり方ではありました。なるほど、と。まあ、詳しくは書きません。

設定は奇抜ながら、決して変人の話ではないし、むしろ真面目な悩んでいる人が主人公なだけに、やっぱり悲しくて。見終わってなんとも言えない切なさに支配されました。誰かと話したい! って。

でもこういう未来、本当に来そうな気もするんですよね。それが良いのか悪いのかはわかりませんが、いろいろ考えさせられたのも事実です。

ただ、これを薦めてくれた元上司がそうであるように、安定した家庭を持っている人なら気軽に「面白いね」と言える気がしますが、一人が深刻な人間であればあるほど、創作として「面白い」で片付けられない妙なリアリティがあって、「なんか嫌なもん見ちまったな」的な感覚を覚えたのも事実です。

エロビデオを選ぶ腰の曲がった爺さんを見て未来の自分を想像したのと似ています。そんな複雑な思いを抱いた、500本目の映画でした。

このシーンがイイ!

「初めて結ばれた日」ですかね~。真っ暗なんですが。すごく印象的なシーンでした。

ココが○

設定の面白さ、未来像のリアリティに加えて、劇伴がすごく素晴らしかった。やっぱりどっか哀しさを含んだ劇伴なんですよね。この映画は劇伴がかなり大きな役割を担っていた気がします。

あとはキャスティング。これも完璧。最近「TIME/タイム」同様、“贅沢ちょい役”的なポジションのオリヴィア・ワイルドの使い方が気になります。

ココが×

個人的には上に描いた通り、ラストをもう少し盛り上げて欲しかったとは思いますが、映画として「こりゃイカン!」っていうのは無かったと思います。

ただ、ちょっと自分にとってはやっぱり「嫌なもん見ちまったな」感を引きずってしまい、手放しで「素晴らしい!」と言えなかったのが残念。

MVA

声だけであそこまでしっかり演じるスカーレット・ヨハンソン、さすが今ノリにノッているだけありますね。すごい。その他女優陣はみなさん素晴らしく。友人エイミー役のエイミー・アダムスは今回もまたちょっと違った印象で、ただすごく自然体で素敵な親友っぽさがお見事でした。この人どんどん良くなってる気がするな~。

で、これはなんとしても書いておかなければいけないのが、主人公・セオドアの元奥さん、キャサリン役のルーニー・マーラ。もうちょーーーーーーーーーーーかわいい。言わずもがな「ドラゴン・タトゥーの女」は全然違うので除くとして、あとは「ソーシャル・ネットワーク」でチラッと出てきたぐらいしか記憶になかっただけに、「えっ!? ここまでかわいかったっけ!?」ともうびっくりびっくり。たまりまへん。それだけに、セオドアの落ち込みっぷりがよくわかってこれがまた辛かったわけですが。いやー、こんな奥さんと別れるなんて、ねぇ…。

ということでじゃあ誰にすんのかい、と言われれば、結局はこの人だな、と。

ホアキン・フェニックス(セオドア・トゥオンブリー役)

ほとんど独り言で演技をしなければいけないわけですが、まったく違和感のないすごさ。普通に見えるだけ、すごいんですよね。ようやるわ、と。お見事でした。

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