映画レビュー0882 『ハイ・ライズ』

かつてエキサイトismで連載していた「今週末見るべき映画」で紹介されていて観ようと思っていた映画。めでたくネトフリ終了がやってきましたよと。

まったく関係ない話なんですが、このレビューを書いている日は某ランドが地上波初放送だ、ってんで映画好きが朝からキャッキャしててひどく疎外感を感じております。

周りが盛り上がれば盛り上がるほど拒否感が出てくるのでとても悲しい。やっぱり世の中と自分の感受性には大きなズレがあるんでしょうかね…。

ハイ・ライズ

High-Rise
監督

ベン・ウィートリー

脚本

エイミー・ジャンプ

原作

『ハイ・ライズ』
J・G・バラード

出演
音楽
公開

2016年3月18日 イギリス

上映時間

119分

製作国

イギリス

視聴環境

Netflix(PS3・TV)

ハイ・ライズ

大半の人にはトムヒ観賞用でしかないような…。

5.5
セレブの住まう“タワー”における格差と破滅
  • 「成功者の象徴」かのようなタワーに引っ越してきた医師が直面する“タワーのルール”
  • 資本主義社会の風刺的な奥深い世界…だけど丁寧さゼロでサッパリわからん
  • セックスと暴力が支配する狭いコミュニティをスタイリッシュに描きました的な映画
  • 正直見どころはトムヒの尻ぐらいでは

あらすじ

なんとなーく嫌な予感もしつつ観始めたんですが、その予感が見事に当たる難解な映画でしたねーこれ。ただその手の映画の割には集中力も切れずに観られたような気もする。映像が良かったからかな。

主人公は先日コミコンでも来日してました、ロキ役でお馴染みトム・ヒドルストン演じるロバート・ラング。お医者さんです。

彼は物語冒頭で“タワー”と呼ばれる高層マンションに引っ越してきまして、悠々自適の独身生活を謳歌しようかってところで各階で催されるパーティに招かれ、そこで住人たちと知り合って彼らが抱える格差から来る不満や鼻持ちならない高慢な態度やここでの(暗黙の了解的な)ルールを知り、また“タワーの象徴”と呼ばれる設計者・ロイヤル(ジェレミー・アイアンズ)と知り合って懇意になったりと交友関係を広げていきます。

そんなある日タワーで停電が発生、それをきっかけに低層階に住む住人たちの不満が表出、また上層階は上層階でカオスな状況になったり…と徐々に秩序が乱れていく中、果たしてタワーはどのような世界になっていくのか…的なお話です。

料理過程を省きました的展開

あらすじを適当に書きましたが、タワー住民のご紹介的な序盤はまだしも、中盤以降は本当に「え? なんかいきなり話進んでない?」みたいな感じでほぼ説明もなくカオスな状況を見せられる、というなかなか観客に優しくない映画です。

もうね、「きょうの料理」を観てるのかと思いましたよ。「こちらが数日間温めた後のタワーですー」みたいな。電子レンジの時間省きました的な感じでごっそり途中の描写を省き、気付けばタワーが荒れ果てている、っていう…。なんだかなー。

一応オープニングはタワー荒廃後のラングの姿から始まるので、「いろいろあってタワーが荒れ果て、ラングは生き残っているんだな」というのは最初にわかるんですが、その「なぜ荒廃したのか」のプロセスがほぼ丸ごと削られているだけに納得感も薄く、またその辺すっ飛ばしていきなり意味深な(いかにもメタファーですよ的な)セリフをボンボン放り込んでくるので、「わかる人だけわかればいいよ」って作りだとしてもちょーっと丁寧さが欠けすぎてやおまへんか、と。

一言で言うなら「一言で語れないややこしい映画」

ジャンルの見定めが非常に難しい映画で、カテゴリーは一応SFにしたんですが、ただスリラーでもあるしドラマでもあるし、寓話感も群像劇っぽい要素も強いしで…その辺からも、「こういう映画です!」と一言で語りにくいややこしい映画だと思います。

前半のちょっとしたキーマンと思われる、ラングの生徒だけど“タワーではラングよりも上”のマンローの扱いもなんだか中途半端で活かしきれてない感があり、様々なタワーの住人たちを雑多にご紹介しつつ収束に向かう…んだけどなんでそこまで秩序が乱れていくのかようわからんぞ、と。

これ思うに、わざとなんでしょうが「外の世界を一切描かない」からなおさら観ている方は混乱するんじゃないでしょうか。

まだ「タワー外で暮らすのは考えられない」ような描写があればなんとなく「タワーに固執する」人たちの価値観も伝わるんでしょうが、その辺のお話もまったくないので、「いやこんな状況ならさっさと出ていけよ」としか言えない。

もちろん出ていったら話にならないよって映画だとは思うんですが、一例としてそういう「欠けてる要素のおかげでまったく理解できない(=意味がわからない)」お話になっていってるのがすごくもったいないと思うんですよ。

もうちょっとうまく周辺事情も描きつつ、人物も絞って「タワーの価値と身分の意味合い」みたいなものをより濃厚に出してくれれば…少しは違ったような気がするんだよなぁ。

トムヒ観賞用

結局のところ、序盤で全裸で登場したりファックしたり、抑圧された男前演技かと思いきや狂気が感じられたり…といろいろ魅せてくれるトムヒを観るため“だけ”の映画なんじゃないかなと思います。

すっごい賢い人は物語の意味についていろいろ考察しつつ感心するんでしょうが、はっきり言って一般ピーポーが観て「おお、これはすげぇ面白い」と思うにはかなりキツい映画じゃないでしょうか。

トムヒが好きなら観る、特に興味がないなら観ない、で十分な気がします。

ちょっとだけ「嗤う分身」っぽい匂いも感じられたし、タワーに固執する概念としては「シャイニング」っぽさもあったんですが、しかしその辺の描き方も中途半端な気がしたし、「観ている人に解釈は委ねますよ」系にしようとしてボンヤリ作りすぎちゃったような。

言うほどつまらないわけではないんですが、人にオススメできる映画ではないですね。

このシーンがイイ!

車に飛び込むシーンかなぁ。あれどうやって撮ったんだろう。柔らかカーなのかな。

ココが○

映像はとても綺麗で雰囲気作りはかなり上手い映画だと思います。この辺イギリス映画感ある。

ココが×

本当にわかりにくい話なので、かなり高レベルな人…要はこの映画のタワーに住めるような選ばれし人たちじゃないと面白いと感じられないんじゃないかと思います。

あとちょっとグロいシーンもあります。リアルな割に不思議と作り物感が感じられたのでそこまで気にならなかったんですが、でも嫌は嫌だったな…。

MVA

シエナ・ミラーが自分の記憶にあるシエナ・ミラーと全然違っていてびっくり。ビッチ感のあるシエナ・ミラーもいいよねと言いつつ結局この人。

トム・ヒドルストン(ロバート・ラング役)

主人公の医師。お尻も惜しみなくお披露目してくれます。

ロキで世界的に売れた人ですが、あれだけ印象が強い役をやりつつ他の映画でもまったく違うタイプを綺麗に演じてとても良い役者さんだと思いますね。

兄貴(クリス・ヘムズワース)とは違ったタイプのイケメンですが、イギリス人らしくスマートでスーツもビシッと似合うし、ジェームス・ボンド役に(確か)名前が上がったのも頷けます。

今後も期待大。

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