映画レビュー0848 『聖者たちの食卓』

何かで知って観たいと思っていたドキュメンタリー、この度もめでたくネトフリ配信終了がやって来たということで観ることにしました。

ちなみに映画自体は2012年に完成していたようですが、一般劇場公開は日本が初めてのようなので日本で公開が始まったその日を公開日としています。

聖者たちの食卓

Himself He Cooks
監督
バレリー・ベルトー
フィリップ・ウィチュス
音楽
ファブリス・コレ
公開
2014年9月27日 日本
上映時間
65分
製作国
ベルギー・ニュージーランド・インド
視聴環境
Netflix(PS3・TV)

聖者たちの食卓

インドの「黄金寺院」で500年以上続いている無料食堂の舞台裏。

ただただ圧倒される圧巻の光景。

8.0
ただ「作って食べて片付ける」のを観るだけのドキュメンタリー
  • 大量の調理人 vs 大量の腹ペコ人
  • 経済合理性を無視した完全分業制の無料食堂の一日
  • インタビューもナレーションも無しでただ観るだけ
  • とにかく映像のパワーがすごい

僕は知らなかったんですが、インドの黄金寺院というところでは500年以上前から「無料食堂」が運営されていて、現在は身分や信仰に関わらず誰でも受け入れ、食事を提供しているそうです。そんな食堂の一日を追ったドキュメンタリー。

字幕が入るのも最初と最後にちょっとだけで、あとはもう本当にただ食堂に関わる人たちの映像を垂れ流しているだけというなかなか思い切ったドキュメンタリーだと思います。インタビューも説明のナレーションも一切なし。本当にただ「そこにいる」だけの映像。

なんですが…それがすごいんですよ。もう。何なんですかね。強烈な映画…というか強烈な「事実」を知った感じ。こんなところがあるとは…。インドのただ一か所の寺院の映像でしか無いんですが、そこだけで「世界は広い」ということを思い知らされる、なかなか貴重な経験をさせてもらった気がします。

本当にただ「作って」「食べて」「片付ける」のを順を追って観ているだけの映画なんですよ。本当にそうとしか説明しようがないんです。

ただ、そこは「毎日10万食、無料で提供している食堂」というおそらく他に世界中のどこにもない唯一無二の食堂である、という点が映像だけで理解できる、その圧倒的な規模感やら世界観やらにやられちゃうんだろうと思います。本当にある意味で衝撃的な映像でした。

まず「作る」。

畑の収穫シーンから始まるんですが、そこから各材料担当がひたすら素材の加工をしていきます。ひたすらにんにくを剥き続ける爺さんとか。そういう人たちが目視で判断できないぐらいの人数でひたすら作業してるんですよ。

で、そのにんにくを回収する人が現れて拾って去っていく。その一連の流れを他の材料でも(おそらく同時進行で)やっていると。

他にもひたすらチャパティ(多分)の元生地を丸めて放り投げる(だけの)人、それを受け取って延ばして広げる(だけの)人、それをまた受け取って焼く担当の人、とすべて分業でベルトコンベアーのように料理が作られていきます。

そうして出来上がったそれぞれの料理をまた運ぶ人がいたり、まあとにかく経済合理性からすればあり得ないような人海戦術で恐ろしい人手のもと料理を作り、そして1度に5000人が同時に食事、それを入れ替えしながら1日10万食、と…。

こうして文字にしただけでもその規模のすごさがわかると思うんですが、これが映像として観るともう本当に想像を超えた、日本人の経済観念の範囲外にあるとんでもない作業になっていて、そこにはやっぱり「宗教」のすごさというものを感じざるを得ません。

なのである意味、「世界で最も経済的かつ宗教から縁遠い」日本人が観ると一番驚ける映画なのかもしれないですね。本当にただ「そこの場所を写しているだけ」ながら日本人が常識(だと思っているものの)理解の外にある光景、それが毎日ですからね。畏怖の念すら感じるものすごい映像でした。

映画としては上記の通りまったく説明がない、ただ眼前で行われている光景を観ているだけのものなので、退屈に感じる人がいても不思議ではないと思います。僕も観るタイミングによっては絶対寝てたと思う。

ただ「まったく知らない」ことが功を奏したのか、もう上映時間中ずーっと「はーすげぇな」「うわすげぇ」「なにこれ祭りかよ」ってずっと驚いてた気がする。それぐらい“日常風景なのに”映像にパワーがある。これはすごいドキュメンタリーだなと思いましたね…。

食器を片付ける風景もその音だけで崇高なライブじゃないかと思わされる何かがあるし、なんなんでしょうね、ほんとね…。もう観ないとわからないと思います。このすごさって。

ある意味ではとても良質な旅番組のようでもあり、また見ようによっては「インド版デザインあ」のような心地よさもありました。とにかく一つ一つのシーンが新鮮で驚きに満ちているので、ちょっと気になる人は一度観てみると良いのではないかと思います。1時間ちょっとで観られるのも◎。

このシーンがイイ!

どのシーンが良いとか悪いとかって特に無いんですよね。やっぱり。どれもすごかったですよ。

それとところどころで登場する子どもたちもすごく良い。文字通り老若男女、作る側も食べる側もみんな平等な感じ。この理念の尊さったら無いですね。それが伺える構成なのが素晴らしい。

ココが○

とにかく数の暴力と言うか、作る側も食べる側も人の数がハンパじゃないわけですよ。

それが毎日行われているというその事実だけでもうとんでもないな、と。本当に理解を超えたものがそこにあって、それをただただ観させられている感じが他にない体験だったと思います。これは「この映像だけで映画を作ろう」と思った監督の気持ちもよくわかる。それだけその“場”だけでも圧倒的な力がある証拠なんでしょう。世界遺産と言われてもおかしくない感じ。

あとはやっぱり上映時間が良いですね。これで1時間半以上あるとちょっとダレそうな気も。

ココが×

本当にまったく説明がないので、もうちょっと周辺事情を知りたいな、と思うような面も結構ありました。ただそれは観たあとに調べれば良い話でもあるし、自分が圧倒されたことを考えれば、この見せ方しかなかったのかもしれない。

これぞドキュメンタリー、だなぁ。

MVA

中心になる人物もおらず、市井の人々しか出てこない映画なので、今回は該当者なしとさせていただきます。

妙に味のある爺さんとかも出てくるんですけどね。名前もわからないしね。

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