映画レビュー1289 『HOMESTAY』

ここのところイマイチJAIHOで観たい映画がないので、せっかくだしとアマプラでいつか観ようと思っていた「カラフル原作映画」の日本版を観るぞ観るぞ観るぞということでね。観ましたけども。

HOMESTAY

Homestay
監督

瀬田なつき

脚本

菅野友恵
大浦光太

原作

『カラフル』
森絵都

出演

長尾謙杜
山田杏奈
八木莉可子
濱田岳
石田ひかり
望月歩
眞島秀和
渋川清彦
渡辺大知
阿川佐和子
篠井英介
佐々木蔵之介

音楽

mio-sotido

主題歌

『袖のキルト』
ずっと真夜中でいいのに。

公開

2022年2月11日 各国

上映時間

112分

製作国

日本

視聴環境

Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)

HOMESTAY

物語はさすが。しかしややチープ。

8.0
とある高校生の身体に“ホームステイ”を命じられた魂、その死の原因を探る
  • タイ版「ホームステイ」と同様、小説「カラフル」を原作にした作品
  • 内容も大枠は近いものの、ヒロインのアレコレ等違いもそれなりに有り
  • 一部演出や演技にややチープさが感じられ、総じてタイ版の方がレベルが高い
  • しかしそれらをすべて帳消しにする山田杏奈のパワー

あらすじ

年明けの「なんプロアワード」にもランクインしたことで読者の皆様にも記憶に新しいタイ映画「ホームステイ ボクと僕の100日間」と原作を同じにする兄弟作という位置付けになりますが、そもそもその「なんプロアワードを記憶している読者」がイマジナリーという説もあり、果たしてこの前フリは正しいのかと自分に問いただしている現状です。

突然の死で魂となった“シロ”は、「管理人」と名乗る人物(濱田岳)によって男子高校生「小林真(長尾謙杜)」の身体へ“ホームステイ”させられ、「100日間で真が死んだ原因を見つけ出す」ように言われます。

かくして高校生活スタート、親兄弟や学校の人たちとの生活を通じ、自分(真)がどんな人間だったのかを学びながらその死因を探っていくシロ。

時折姿を変えて接触してくる“管理人”にヒントをもらいながらも徐々に迫るタイムリミット。

果たして彼はこのミッションを無事終えることができるのでしょうか。

良い映画なだけにいろいろ言いたい

ということでめんどくさいこともあり結構端折りましたが、全体のあらすじはタイ版とほぼ一緒です。

幼馴染にしても兄にしても母にしてもその立ち位置は変わらず、先輩に憧れるのも同様です。なのでこの辺はきっとどちらも原作に忠実ということなんでしょう。(ちなみに原作小説は最近Audibleの定額聴き放題に加えられたのでそのうち聴く予定)

原作自体が非常に良く出来ていると思われるだけに、この映画もまたタイ版同様にストーリー自体は非常に良い映画でした。人によっては、そして鑑賞するタイミング(年齢)によってはこれがバイブルと化す人がいてもおかしくないと思います。

一番わかりやすいタイ版との違いとしては、「中盤のピークとなる先輩に関わるエピソード」がまったく違うものになっている点でしょうか。

実に生々しくかつインパクトが大きいタイ版と比べると、こちらはややソフトで今っぽいものに感じられました。どっちが原作に近いのかはわかりませんが、なんとなく舞台も日本だしこっちの方が原作に近いのかな? とまったく根拠も意味もない推測をしております。

全体的な印象としては、タイ版の方がより恋愛映画に近い印象で、こちらは主人公の成長に重きを置いているように見えました。

総じて恋愛寄りで娯楽性が高いタイ版に対し、内面的なメッセージ性が強い邦画版、という印象です。どちらが良い悪いではなく、(物語としては)好みの問題として捉えていいでしょう。

ただ、先にタイ版を観ていた人間からすると色々と邦画の良くない面が出ている印象で、やはり昨今のタイ映画全般のレベルの高さからすると力不足は否めません。

これはきっと国を挙げての文化振興問題とかが関わってきそうな話なので、一概にこの映画の作り手や演者が悪いというミクロな話でもない気はしますが、それはそれとして例えば“管理人”が登場するシーン。

タイ版が先行しているからか、はたまた原作の描写故なのかはわかりませんが、時が止まってまったく関係のなさそうなその辺の人物に憑依する登場の仕方は同じなものの、見せ方は抜群にタイ版の方が上手いし綺麗だったと思います。ハッとさせる力があって。

先に観て知っていたのもあるとは思いますが、こっちはあまりハッとする感じもなく、また単純に映像にキレがないというか止まった周りがチープに見えるとか表現的にもう一歩な感じがしてしまい、少々惜しい印象です。似て非なるものというか。

まあただここは些末な部分でもあるのである程度目をつぶってあげるのが大人でしょってな気もするんですが、一方でどうしても“劣る”と感じてしまった点は演者の部分。

まず大変申し訳無いんですが、主演の長尾謙杜さん。

演技自体は非常に頑張っていたと思います。決して手を抜いている感じはしなかったし、彼のできる最大限の演技だったと思います。

ですが、声の出し方にどうもセンスを感じられなくて…セリフに心を乗せる技量の無さというか。

有り体に言ってしまえば少し子どもっぽい演技に感じられてしまい。役柄も高校生だからその事自体は悪くはないんですが、もう少しうまく演出してあげられればかなり改善したように思うので、そこが少し残念でしたね。

スパパンピンヨーの方が良かったな、みたいな。名前言いたいだけじゃないの、っていう。

もう一人は、これまた大変申し訳無いんですが先輩役の八木莉可子。好みの問題かもしれませんがまったくときめかなくて、主人公の心情に感情移入できませんでした。

ただこれも彼女が悪いと言うのは少々酷なのも重々承知しております。理由は2点。

1点目、比較対象となるタイ版のチャープランが強すぎること。

彼女のかわいさはタイ版を観た人であれば誰もが頷けると思うんですが、あまりにも良すぎたので彼女と比べちゃうのはちょっとかわいそう、でも役が同じである以上比べざるを得ないのが厳しいですねと。

役柄的にもタイ版の方が俄然先輩の存在が大きい物語になっているので、映画に対する重要度の意味でも同一視するのは酷だとは思います。

でも…でもさ! やっぱりタイ版観てたら「来るぞ来るぞ…一目惚れ先輩来るぞ…!」って期待しちゃうじゃない!

で、勝手に期待して勝手にがっかりするクソ野郎と自認してはおりますが、その「勝手に期待」させる意味でも問題があると感じたポイントが2点目ですよ。

それは…この映画を観た人であればもうおわかりでしょう。幼馴染の晶役、山田杏奈の存在です。

出てくる順番としては山田杏奈の方が先で、真に“移住”した主人公が最初に会う異性(母親を除く)でもあります。

その初登場のシーンで「もしかして…彼女!?」みたいなモノローグもあって、それがまた余計と言うか…「そう思ったなら絶対惚れるだろ」というツヨツヨビジュアルすぎてもう…。

早い話がめちゃくちゃかわいいんですよ。いや知ってる人にしてみたら今さら何言ってんの、って話だとは思いますが。

細かい話ですが、(魂である)“シロ”は晶を幼馴染と知らずに初見を迎えるわけじゃないですか。

そもそも幼馴染だから恋愛対象外だよ、っていうのはまだわかるんですが、その前提がない状態で山田杏奈出てきたら絶対恋愛対象になるに決まってるじゃないですか。マジで。

その後先輩に会って「美人〜!」ってそれはどうなのって話ですよ。その前に死ぬほどかわいい女子と会っとるやん、っていう。むしろ山田杏奈が幼馴染という天の配剤に感謝する2時間で映画終わってもいいレベルですよこんなの。いくらなんでもミスキャストすぎねーかと思ったわけです。

とは言え人の好みは千差万別なので、真(及びシロ)くんにとっては先輩の方がタイプだった、ということで納得するしかないわけですが…ただそんな物語的な配慮をぶち抜いて来る山田杏奈のかわいさには正直参りました。

話がブレるんですよね。かわいすぎて。

しかも甘々なかわいさではなく芯の強いかわいさなので余計に。なのでやっぱりミスキャストだと思います。ある意味。これにはチャープランも降参するかもしれない。悩ましい。両方に告白されたら死ぬほど悩む問題ですよ。いわゆる。どっちも告白してこないから安心しな?

せめて登場順が逆だったらと思わずにはいられません。先輩が先だったらまだギリギリ許容できたかもしれない。

ちなみに山田杏奈の方が八木莉可子より1つ上(と言っても早生まれなので同学年)だそうなので、年齢順で配役すれば逆になっていてもおかしくないんですが…まあ山田杏奈の方が童顔だし、役柄的には合ってはいたと思います。しかしかわいすぎていろいろおかしくなるのがね…。

中盤「お前それあり得ないだろ!?」と主人公にいきり立つエピソードもあるんですが、それもすべて山田杏奈がかわいすぎるが故なので、もうちょっと控え目な女優さんでも良かったんじゃないかな、と。かわいさは罪。

感想は山田杏奈の存在

そんなわけで結局最終的に残ったのは「山田杏奈かわいすぎだろ」という感想のみでした。物語自体への思いはタイ版で固定されてしまった事情もあります。

とは言えタイ版と比べればおそらくこっちの方が圧倒的に(環境的に)観やすいはずなので、「カラフル原作映画」に触れるには良い1本かもしれません。

ちなみにこの映画はアマプラオリジナルなのでアマプラ会員であればきっと永遠に観るチャンスがあると思われます。

一方タイ版は以前まではアマプラ特典にありましたが今は有料化しているので、観たければ別途お金払えよという形になります。

この映画を観た人はぜひチャープランのかわいさにも触れてみてほしいなと思いますが…無料が多い分、金額以上に有料へのハードルが高い気がしちゃうのがアマプラの良し悪しだなぁと思いますね。

原作について

ついに原作も読んだ(というかAudibleで聞いた)ので改めて映画との差異など思ったことを。

まずはっきりした点としては、邦画版のこの「HOMESTAY」はタイ版「ホームステイ」のリメイクということ。大体この映画で原作と違う部分に関してはタイ版を踏襲している感じで、ただ映画版2作の間にも当然ながらいろいろ違いがある、という感じでした。

読み終えてから少し時間が経ってしまったので思い出せる限りではありますが、以下、原作と映画版の違いについてのまとめ。

  • 原作の管理人は1人で、準主役と言ってもいいぐらい重要な役回り。映画版の管理人とはだいぶ存在感が違う
  • 主人公が自殺した原因となる諸々の出来事は最初に明かされる。その謎を追う作りになっている映画版は順序が逆
  • 原作における主人公は中学生で歳が若い。好きになるのは後輩女子で、幼馴染も存在しない(それに近しいと思われる存在の女子も出てくるものの扱いはかなり軽い)
  • 好きな女子にショックを受ける出来事は最初に明かされる自殺の原因の中に含まれるため、その出来事が「起承転結」の「転」にあたる映画版とは重要度が異なる
  • その出来事自体はタイ版の方が原作に近く、邦画版はそこからさらに少しひねった形

ざっと思いつくのはこんなところですが、序盤に自殺の原因を明かしてしまうことからも物語の流れは原作と映画でだいぶ違い、それもあって原作派と映画派に好みが分かれそうではあります。

僕は原作の主人公が(映画以上に年齢が若い設定のために仕方がない面もありつつ)あまりにも自己中心的で、特に母親に対する態度が好きになれなかったこともあり、読書評価としては今ひとつ。結局タイ版「ホームステイ」が一番好きです。

ただこれは原作ありきの映画には常に付きまとう問題である「先に摂取した方を正史と見なす」認知の歪みみたいなものもあるので、あまりアテにならない意見ではあるでしょう。

ネット上のレビューを見ても、タイ版に「原作はこんな話じゃない」と拒否感を示している人たちも結構いるようなので、やはり最初に接したものによって好みが分かれそうな感じはあります。

とは言え僕は改めて原作を読んだあとに振り返れば、タイ版はよくこんな良い映画にしたなと思うぐらいにうまく脚色しているように思いますね。ちなみに「L.A.コンフィデンシャル」でも同じようなことを思いました。

邦画版については、これがタイ版よりも原作忠実なのであればそこに評価をプラスすることができるかもしれないと思っていましたが、原作との違いはほぼタイ版と同様で、そこから少しまた改変を加えているもののタイ版ほどの完成度には無いと思うので、やはりタイ版の「ホームステイ」が一番良かった、という結論です。

ただ邦画版のみの推しポイントとしてはなんと言っても山田杏奈がいる、と…。

チャープラン vs 山田杏奈、答えは永遠に出ません。

このシーンがイイ!

もはや(早くも)山田杏奈しか覚えていないので、彼女の初登場シーンにしましょう。「えっ」って声が出るぐらい凛としたかわいさにびっくりしました。

ココが○

やっぱりすごく良いテーマを扱っている物語なので、年頃の人たちには一度触れてみてほしいなと思います。いくつも映像化されているのは伊達じゃないぞと。

ココが×

上に書いた通り、ところどころチープさが感じられる点。

どうしても邦画はSF的描写が少々苦手というか、CG含めてあまり作り慣れていないような雰囲気が感じられますね。

MVA

ここで他の人を挙げたら詐欺だろと自分でも思います。

密かにお兄ちゃんも良かったと思いますが、残念ながら(リトルおれたち)満場一致でこの方です。

山田杏奈(藤枝晶役)

主人公の幼馴染。

かわいさも去ることながら、演技も一番上手かったと思います。意志を感じる眼力が素晴らしい。

今作はタイ版と違って先輩よりも幼馴染の方がヒロインに近いポジションなだけに、そういう意味では良いキャスティングなんですが…ただ主人公の心情に説得力を持たせるにはやっぱりミスキャスト感があるのが悩ましい。くどいようですがこんな幼馴染絶対惚れるでしょうよ。

なお僕が中学の頃に好きだった幼馴染が山田さんだったことも幸いしました。(幸いなのか)

ちなみにこの映画を観た後にネットでパナソニックの広告を見かけた瞬間「これ山田杏奈じゃね!?」と急いでリンクを踏んだところ山田杏奈でした。彼女を知覚できるようになったのが最大の収穫です。

まんまとパナソニックの戦略に乗せられましたが商品自体はまったく興味がなかったので痛み分けです。ありがとうございました。

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