映画レビュー1298 『ズーム/見えない参加者』

今回はコロナ禍らしい映画として割と話題になっていたのでどこかのタイミングで観たいなと思っていたところJAIHOに来たので観ました。観たぜ!(観た)

ズーム/見えない参加者

Host
監督

ロブ・サベッジ

脚本

ジェド・シェパード
ジェマ・ハーレイ
ロブ・サベッジ

出演

ヘイリー・ビショップ
ジェマ・ムーア
エマ・ルイーズ・ウェッブ
ラディーナ・ドランドヴァ
キャロライン・ウォード
エドワード・リナード

音楽

Calum Sample

公開

2020年7月30日 各国

上映時間

68分

製作国

イギリス

視聴環境

JAIHO(Fire TV Stick・TV)

ズーム/見えない参加者

ジャンプスケアとパワープレイが目立つばかり。

5.5
「Zoomを使って交霊会しよう」と集まった男女6人、次第に異変に見舞われる
  • 今の時代らしいZoomを使った画面越しホラー
  • ほぼZoom上で展開する低予算、企画勝負な一本
  • しかし斬新な設定に追いついておらず結局パワープレイが目立つ
  • ジャンプスケア多めでチープな感も拭えない

あらすじ

話題になっていただけにそれなりに期待していたものの、話題先行で中身を伴っていない残念映画だなという感想です。もうちょっとなぁ…。

舞台はコロナでロックダウン中のイギリス。

なにせロックダウンなので外に出ることも出来ず暇だぜ、ってことでZoomで定期的に集まってダベっていた男女6人ですが、ある日その中の1人であるヘイリー(ヘイリー・ビショップ)が「霊媒師をゲストに呼んで交霊会をしよう」と提案。

なにせ暇なのでやろうやろう、ということで霊媒師を呼んでZoomで集まり、交霊会開始。

霊媒師の呼びかけに話を進めようと考えたのか、参加者の1人であるジェマ(ジェマ・ムーア)がジョークで嘘をついたところ徐々に“心霊現象”が起き始めます。

しかし肝心の霊媒師は回線状態が悪く離脱、仕方なくいつものメンバーで続けていたところ徐々に異変は大きくなり、やがて大変なことになるわけですが…あとはご覧ください。

ロジックなしの力技

ということでZoomを使った「霊の呼び出し」がテーマのホラー。

もう本当にピンポイントに「今の時代だからこその映画」という感じで、10年もしないうちに「Zoomとかあったねぇ」みたいに陳腐化してしまいそうな気もするし、あらゆる意味で“企画一発勝負”だなと思います。それが良い悪いではなくて、割り切ったポジションの映画というか。

時間も1時間ちょっとと非常に短く、また映像的にも(Zoom主体なだけに)当然低予算なのでいかにもなインディーズ映画ですね。名監督の初期作にありそうな雰囲気。

僕はホラーはあまり観ない方なので全然詳しくないですが、一応ホラーとして観た場合に「怖いか怖くないか」で言えばそこそこ怖い映画にはなっているんじゃないかなと思います。

なにせZoom経由である以上、条件的に「誰でも遭遇する可能性がある」みたいな身近さはあるし、自分のPCの前にいる状況で“コト”が起きる以上、「ドコドコにいれば安全」みたいな概念が存在しないのがホラー的な旨味というか。逃げ場のなさ故の怖さ、みたいなものはあったような気がします。

が。ががが。ガガガガ…。

こんなことを言ったら野暮、ボーヤーだとも思うんですが…ロジック的にまったく納得感が無いんですよね。

結局離れた位置にある参加者たちがそれぞれ何らかの異常に出くわすんですが、じゃあ霊って降りてきてZoom経由で移動してるわけ? とかそういう裏の部分を気にし始めたらもう全然リアリティが無いわけですよ。

そこについてのロジックが劇中で触れられればまた違ったんですが一切触れられないし、ただただわけも分からずいろいろやられちゃう参加者たち、現実なら気の毒だなぁとは思いますが現実に起こり得るロジックがない以上、完全に作り物としか観られない悲しさ。

もちろん作り物なんて百も承知で観てはいますが、なんとなく騙されたいというか、現実と虚構の境界線が曖昧だからこその怖さ、みたいなものを感じたいじゃないですか。

「これは作り物だけど、実際こういうことはあり得るかもしれない…(と騙されに行きたい)」感じ。そこがごっそり削り取られているので、「ふーん」でしかない映画になっているのが非常に残念だなと。

これがもっとリアルで「有り得そう」なロジックが込められていたら、きっとリアルのZoom中に(ジェマのように)嘘ついて「霊が来た」的な話をされたらちょっとゾワッとできる“楽しみ”すら奪っている陳腐な内容で、そこが非常に不満でした。

おまけに細かくは書きませんが、問題の霊が起こす“異変”がかなりパワープレイなんですよね。文字通りパワープレイ。力技。

そもそも実体を持たない霊がそんな力技使うものなの!? と結構違和感を感じてしまい、さらに脅かしはジャンプスケア頼みなのでもう「怖さ」自体が全体的にチープで楽な方に流れていっている印象がありました。

まあこれはきっと「Zoom上で成立するホラー表現」としてパワープレイせざるを得ない、という設定故の制約もあったとは思います。「なんかいる」みたいなジワジワ系の怖さは見せづらいですからね、きっと。

なので構造的にパワープレイに頼らざるを得ず、つまりは「Zoomでホラーをやろう」と決めた時点でこうなってしまうのはやむを得ないんだと思います。

その上で理論的なバックボーンがあればまだ怖さがあったと思うんですが、そこもまったく触れていない以上もうただのファンタジーでしか無いわけで、ファンタジーと認識してしまうとなおさら怖さも無いな、という残念感。むしろなんなら笑える方にシフトしていってしまうという。

まーロジックだのなんだの言うのはめんどくせえ客だなと我ながら思いますが、でもやっぱり観ていてそう感じてしまったので仕方がないんですよ。それをふっ飛ばすだけの勢いが無かったとも言えます。

おそらく自己評価するに、僕は夢中になれる≒冷静さを欠いてしまうぐらいに好きなものについてはあんまり理屈っぽくならずにただ目に入るものを受け入れて興奮すると思うんですが、そうではないもの≒好みでないからあまり触れないものについては何よりも理屈を求めてしまうような傾向があるのかもしれません。つまりあまり好きではないホラーだからこそうるさくなってしまう、という。

一方で冷静さを欠きがちなもの、もっとも顕著なものはエロいこと方面ですが、そっちについては甘々の甘なのでお金ないのにセールしてるからと大量にAV買っちゃったりとかするダメ人間なんですよ。理屈考えずに。切ないですね。

観る環境によるかも

だいぶ話がズレましたが、そんなわけで「Zoomを使ったホラー」という設定の面白さを超えられない残念さが目立った映画だなと思います。

これがPCのウイルス感染(コロナもあってダジャレにもなるお得感)によって「PC自体の異常を引き起こす」ような話だったら多少は納得感もあってよかったような気がするんですけどね。

「エンターキーが急に飛んできて目に刺さったわ!」みたいな。(それは怖いのか)

ただネットのレビューを読んでいてなるほどなと思ったのは、「タブレットで観てたらすごく怖かった」みたいな意見があって、確かにそういう「自分も参加している」感じのシチュエーションを作れるとまた少し違うかもしれません。ちょっと後ろ振り返っちゃうような。

そしたらまず最初の劇場公開の時点で失敗じゃね!? とも思いますが、まあそういう違ったアプローチの映画があるのは良いことだと思うのでそれはそれで各々楽しみ方を考えると良いんでしょう。

まあなにせ上映時間がかなり短い、なんならドラマ感覚で観られる映画なので、興味があったらちょこっと観てみるのは良いかもしれませんね。オススメはしませんが。

このシーンがイイ!

録画した自分を背景に設定している女子の顛末は結構好きでした。映像は平和なのに…みたいな。ちょっとかわいかったし。(そこ)

ココが○

まあ今の時代だからこその設定は良いと思います。やっぱり新しいテクノロジーを採り入れていかないと「どっかで観た話」になっちゃうのは避けられないので。そういう意味では新鮮な映画ではありました。

ココが×

上に散々書いた通りですが、一番はやっぱりロジックのところかな…。肝心の霊媒師もチョイ役でしかないのでもうちょっとあの人活かしてアレコレやればいいのに、と思いました。はい。

それと唯一参加の男子が不憫すぎて笑っちゃった。

あと若干ネタバレになりますがどうでもいいと思うので言うと、ラストのスタッフ交えたZoomの部分はマジでいらないと思いました。

リアリティ出したかったんだろうけど地味すぎるしほとんどの人が「よくわからないしいらなくね?」って思ったはず。

MVA

ぶっちゃけ誰でも良いんですが…一応この人に。

ヘイリー・ビショップ(ヘイリー役)

主人公の女子。言い出しっぺ。

ホストだけに会話をリードする役割だし、その他は(ジェマ以外)受け身なので選びようがないというか影が薄いというか。

一方ジェマはジェマで絶妙に憎ったらしい感じがして彼女は彼女で良かったんですけどね。

お前が最初に嘘ついたから…! と誰もが思うところですが、まあ嘘つかなかったら始まらないんだからしゃーない。

そういう現実的な視点で判断させちゃう時点で失敗なんですけどね。騙してくれない残念さ。

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