映画レビュー0879 『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』

「なんか面白い」らしいと聞いていてずっと観たかった一本、いよいよネトフリ終了が来るよということで。

なんでも「スリー・フレーバー・コルネット3部作」の2作目らしいですが、あんまり前後関係無いようなので気にしないで観ます。

ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-+

Hot Fuzz
監督
脚本
出演

サイモン・ペッグ
ニック・フロスト
ジム・ブロードベント
ティモシー・ダルトン
パディ・コンシダイン
ビリー・ホワイトロー
エドワード・ウッドワード
ビル・ベイリー
デイビッド・ブラッドリー
アダム・バクストン
オリヴィア・コールマン

音楽
主題歌

『コウト・バイ・ザ・ファズ』
スーパーグラス

公開

2007年2月14日 イギリス

上映時間

121分

製作国

イギリス・フランス

視聴環境

Netflix(PS3・TV)

ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-

アガサ・クリスティがコメディ化して暴走的な謎のすごさ。

8.0
左遷先で起きた連続殺人、しかし周りは誰も信用しない…
  • 優秀過ぎて田舎町に左遷させられた警察官が直面する連続殺人
  • しかし街は平和すぎて誰も殺人だと思わない
  • アガサ・クリスティ的なミステリーをバカバカしいノリでねじ伏せる
  • テンポよく、独特の作風が癖になる(かも)

あらすじ

主人公のエンジェル刑事を演じるのはおなじみサイモン・ペグなんですが、いつもの彼らしい憎めないコメディキャラかと思いきやこの映画では割と真面目な役でですね。物語スタート時はロンドン警察でトップクラスの成績を誇る超優秀な刑事という設定。

しかし悲しいかな優秀過ぎて上層部に疎まれてしまい、平和な田舎町「サンドフォード」の警察に左遷されてしまいます。ちなみにあえて誰かは書きませんが、ちょっとしか出てこないロンドン警察上層部の面々が無駄に豪華でスタートから笑わさせられました。ちょい役でこの配役かよ! っていう。イギリス映画好きには堪らない人選なので、ここもある意味見どころです。

さて、左遷されたエンジェル刑事ですが、それでも仕事は超真面目、微罪だろうが空気も読まずに検挙していく豪腕ぶりで…ここでもやっぱり疎まれるような状況。

そんな中、初日に検挙した人物の一人で当地の署長の息子・ダニー(ニック・フロスト)とコンビを組んで徐々に親しくなっていくんですが、この平和な街に突如として首から上が吹っ飛んだ“事故死体”2体が発見されます。

どうもこれは殺人なんじゃないか…と睨んだエンジェル刑事ですが、住民誰もが顔見知りという狭いコミュニティの中で「殺人事件なんてあり得ない」と考える住民や同僚の警察官たちには相手にしてもらえず、そうこうしている間にまたも“事故死”が発生、疑念を深めていくエンジェルに対し、「彼は頭がおかしい」と相手にしない住民たち。果たして事件の真相は…というお話です。

“スリー・フレーバー・コルネット3部作”の2作目

ということで“盟友”サイモン・ペグ&ニック・フロストコンビの映画でございますね。この二人に監督のエドガー・ライトを加えた3人で作った映画シリーズが、冒頭に挙げた「スリー・フレーバー・コルネット3部作」だそうです。

公開順で「ショーン・オブ・ザ・デッド」「ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-」「ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!」の3作なんですが、物語自体に具体的なつながりがあるわけではなく、あくまでこの3人が作った映画シリーズ的なゆるいくくりっぽいですね。

エドガー・ライトの映画を観たのは監督作で言えばこれが初めてなんですが、なんとなく主演の二人のノリからしてふざけてはいるんだろうなと思ってました。が、実際は思いの外それなりにしっかりとしたサスペンス仕立てになっていて、コメディ感が強まるのは実は最後の方だったりするというなかなか珍しいタイプの映画だと思います。(序盤からコメディではあるんですが、終盤はより笑わせに来ていた印象)

結構「序盤はコメディなんだけど終盤良い話にしたがる映画」が多いような気がする(「俺たちステップ・ブラザース」とか「テッド」とか)ので、逆に終盤コメディ的にも本腰を入れつつ物語を収束させる作りは力量を感じて、やるな〜と唸りましたね。

アガサ・クリスティ原作かのようなサスペンスのような気がするような気がする

序盤からテンポよくテンション高く展開し、全体的に飽きさせないし作りの巧さが誰にでもわかるような、キレッキレの作風を感じる映画でした。

サブマリン」にもちょっと似たような雰囲気を感じたし、きっとこういう作風ってイギリスの若手監督が得意とするものなのかもしれないですね。テンポよく無駄を省いてサクサク進む、キレのある作風。

正直、邦題はちょっと軽すぎると言うか、タイトルの雰囲気ほど脳天気なコメディという感じではないです。コメディではあるけど字面から受ける印象よりはもうちょっと知的だし、ベースにあるサスペンス的な要素もきちんと作っている感じ。

サスペンス的には「これアガサ・クリスティが書いたんじゃね!?」と思うぐらいには割とちゃんとしているんですが、ただそんな例えを言えるほどアガサ・クリスティ詳しくないよっていうね。なんとなくの雰囲気で言ってますけども。

まあとりあえず言いたいのはですね、邦題ほどいい加減な内容ではないし、コメディではあるけどちゃんとサスペンス的な見せ方もしているし、でもきっちり両方活かして見せきる力量もあるしで、なかなか良く出来た映画だと思いますよ、と。

エッジの立った万人受け映画

その「意外とちゃんとサスペンスしている」こともあってか、それなりにグロいシーンもあったりします。その辺も含めて「大人のコメディサスペンス」と言った感じ。

とは言えちょっとだけセリフに下ネタが出てくる程度でエロ方面はまったくないし、グロい部分もある意味大げさで作り話感が強調されているのでそこまでキツいわけでもないし、それなりの年齢の人であれば大抵の人にはオススメできるぐらいに万人受けする作りの巧さがある映画ではないでしょうか。

サスペンスにしてもコメディにしても、これが中途半端だと「どっちかにせい」と思いがちなんですが、両方が高次元でまとめられているような映画なので、逆にどっちかの気になる部分も「まあいいか」で許せちゃうような力強さがあると思います。

いやぁ、なかなかですよ。なかなか才能豊かだな、と思います。エドガー・ライト監督。そこにサイモン・ペグとニック・フロストのキャラクターも見事だし、こりゃー他の2作も観ないとな、と思わされた次第。

このシーンがイイ!

終盤、ダニーがある映画のオマージュ的な行動に出るんですが、そこが一番笑いました。「ここでぶち込むか〜!」って。うまい。さすが。

ココが○

単純に完成度が高い映画だと思います。ジャンル故ものすごい驚きとか呆然とするようなものは無いですが、その分あまり人を選ばない良さがあるんじゃないでしょうか。

ココが×

ややグロいところと、とは言え「そんな話ねーよ」って話ではあると思います。まあそこはマジレスしても仕方がないので、コメディにした分許容範囲だとも思うんですが。

これまんま大真面目にサスペンスにしちゃうと、それこそアガサ・クリスティ原作の「オリエント急行殺人事件」みたいに「そんな話あり得ねーよ」ってなっちゃうと思うんですよ。だからこそアガサ・クリスティ原作じゃないのか的な思いが出てきたわけですが。

まあ(いないとは思いますが)サスペンス的な面に過度な期待はせず、「コメディだけどちゃんと事件を描いて」いてラッキー、ぐらいに観ればいいかなと。

MVA

サイモン・ペグが本当に真面目な役なんですが、これがまた意外とハマってるのが逆に面白いっていう。

その他「ブリジット・ジョーンズのお父さん」でおなじみのジム・ブロードベントとか、まさかの元ジェームズ・ボンド(ティモシー・ダルトン)も出てきたりしていろいろ見どころもありましたが…この人にしようかな!

ニック・フロスト(ダニー・バターマン警部補役)

サイモン・ペグ演じるエンジェルの相棒で署長の息子。

まあちょっとズルい役どころではあるんですが、「キンキーブーツ」の頃からちょっと気になる俳優さんなんですよね。決してイケメンではないし、デブなんだけどなんか味があって良いんですよ。

パイレーツ・ロック」でも良かったし、まあ好きなんでしょうね。単純に。

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