映画レビュー0150 『ホテル・ルワンダ』
あちくなったりさみくなったり大変ですね。みなさま体調崩さぬよう。ゴホゴホ。
ホテル・ルワンダ
話としては観て損は無いけど…。
まず話として。
やっぱり内戦というのは悲劇ですよね…。戦争はどれも悲劇だと思いますが、同じ国にいる人たち同士が殺し合うというのは…。しかもほとんど違いのない民族同士の対立の話だけに、関東人と関西人が戦争するようなもので…。この過酷さはやっぱり考えさせられます。今も世界ではこういうことが起こってるわけですからね…。
さて、物語は一人のホテル支配人を主人公に進みます。彼は武器も持たず使えず、頼れるのは政治力だけ。この政治力の描き方…というか、実話なので彼が実際そうだったのかもしれませんが、そこに他のこういう戦争生き抜き系の映画とは違う“色”を感じました。
虐殺をしている民兵の知り合いに食料を譲ってもらいに行ったり、良い意味で綺麗すぎない、現実的な行動を取る辺りに実話らしいリアルさがあって。
演じているドン・チードルもすごくよかった。今回はバシャー(オーシャンズ)の影がちらつかなかったよ! !
途中でチラッと話に出ますが、国際的に「介入の価値がない」と思われると虐殺が起こっていようが先進諸国からそっぽを向かれる、という現実には考えさせられますね…。映画のモデルとなったポールさんは、この映画の公開翌年にアメリカから「大統領自由勲章」なる勲章をもらったそうですが、劇中の先進諸国の話と照らし合わせるとなんとも皮肉です。
コストも人命も関わってくる以上、そうそう介入なんてできません、という国家の判断はやむを得ないのもわかりますが、それでもやっぱり現場(の描写)を観てると「人としてどうなんだ」と。
今の東電もそうですが、結局お偉いさんは現場から遠い安全圏内でふんぞり返ってるのが世の常なわけで、現場の人たちの苦労や無念を思うととても辛いですね…。この映画でも現場で奮闘する国連の大佐がいましたが、こういう状況では国連という旗すら大した意味を持たないという事実も重く感じました。
…と話の内容についてウダウダ書いたところで、肝心の「映画として」のお話。
オープニングから非常にテンポ良く、かなり観やすい映画だったと思いましたが、その「観やすさ」がこなれている感じに見えてしまい、“裏の意図”とまで言うと言いすぎでしょうが、「事実を知らしめる映画」というよりは「物語として味わえる映画」の方向に若干重点が置かれている気がして、そこがちょっと残念でした。
テンポが良い=無駄なシーンは省くわけなので、おそらく本来の彼はもっと苦悩して、もっと精神的にもしんどかったんだろうと思いますが、割といつも小綺麗で、そこまで切羽詰まってないんじゃないか、と思わされる感じが惜しい。
ただ、この辺はちょっと映画慣れしてきちゃった自分の問題のような気もします。2年前までに観てたらまただいぶ印象は違ったかも。
あと一つ感じたのが、劇中でどれだけ日数が経ったのか、途中途中で「○日後」みたいなお知らせがあってもよかったんじゃないかなーと思います。経過時間がわからないのは意外と状況把握しにくくなるな、と気付きました。一人の民間人の戦いを描いた話だけに、時間って大事だと思うんですよね。
そんなわけで、「映画として」際立つ何かがあったかと言われれば、答えはノー。もっとある意味で「つまらない」、リアルな方に寄せるか、いっそ娯楽に寄せるか、どっちかにすればまた印象が違ったと思います。
ただ、そんなに昔の話でもないだけに、今の時代を生きる人として知っておいて損は無い話だと思います。
このシーンがイイ!
川縁走行のシーン。
実際、映画的にも見所というと変ですが、大事なシーンだったと思います。あれも(演出ではなくて)事実なら…壮絶な話だ…。
ココが○
実話だけに、世界で何が起きている(いた)のか、そういう知識欲を刺激する部分はあると思います。
ココが×
特に何がダメ、っていうのはないと思います。良くも悪くも無難な映画ですね。
MVA
本来であれば、“大佐”ニック・ノルティにしたんですが、さすがに今回は…いい加減、この人に。
ドン・チードル(ポール・ルセサバギナ役)
勝手にコメディの人だとずっと思っていて、真面目な演技はイマイチ判定してたんですが、今回は良かった。鼻の穴がでかいけども。良かった。
ただ、でもやっぱりバシャーが好きです。一番。