映画レビュー0754 『ヒステリア』

ネトフリ配信終了間際シリーズ。イギリス系ヒューマンコメディ的な映画で良さげだぞということでチョイスしましたが…?

ヒステリア

Hysteria
監督
ターニャ・ウェクスラー
脚本
スティーヴン・ダイヤー
ジョナ・リサ・ダイヤー
音楽
ガスト・ワルツィング
公開
2011年11月17日 ロシア
上映時間
103分
製作国
イギリス・フランス・ドイツ・ルクセンブルク
視聴環境
Netflix(PS3・TV)

ヒステリア

いまだ非科学的な医療が中心だった頃のロンドンで、科学的な医療を主張していたために職を転々とさせられていた医師・モーティマー。ようやく住み込みの職を得たその病院では「女性のヒステリー治療のため」の下半身マッサージが治療の中心だったためにモーティマーは腱鞘炎になってしまい、またもクビとなってしまうのだが…。

テーマは最高に面白いものの人物描写が不親切。

6.5

いわゆる実話ベースの映画。

まずこの実話がすごく面白くてインパクトがあるお話なので、まずそれを観る(知る)だけでもなかなか価値のある映画だと思うんですが、しかしその面白さを活かしきれていない作りにモヤモヤしちゃうという…。しょっちゅう書いてますが惜しい映画だなぁというのが第一の感想。

主人公のモーティマーは先進的な(今では常識になっている)医療を主張していたために当時の保守的な医師たちからは煙たがられ、職を転々とする青年医師。ようやく住み込みで助手として雇ってもらった先の病院が「女性のヒステリー治療のためにマッサージ治療を行う」ところだったんですが、これがまあ早い話が前戯というか…手マンですよ。ぶっちゃけ。もちろんガン見してやっているわけじゃない(見ないようにしている)んですが。この時点でもうすごいんですが実際あった話ということで事実は小説より奇なり的な。

どうも女性がヒステリーを起こすのは(今で言う)ストレスが原因にあり、その緩和のための治療として性的なマッサージが有効だ、というのが当時の常識だったらしく、その治療を行う病院として大繁盛しているというのがこのモーティマーの就職先の病院だったわけです。

とは言え羨ましいとかそういう話でもなく、これまた早い話がおばさんからおばあちゃんという年齢の淑女の皆さまが通っているので…むしろかなり大変なお仕事という感じで。治療自体かなり長時間に渡るような描写もあり。それもあって真面目に頑張りすぎたモーティマーは腱鞘炎になってしまい、不評を買ったおかげでクビにされてしまうという。

結果、就職前に居候していた親友でお金持ちの発明家・エドモントの家に戻ったところで彼の持ち物にインスピレーションを得て、二人で偉大なるアイテムを発明するわけです。それが何を隠そう「バイブレーター」。これで手に負担をかけることなく治療ができる…!

ということで“あの”バイブレーター誕生物語に恋愛要素が混ざったお話でございます。

このバイブレーター誕生の逸話は概ね事実のようで、実際に「治療用」として作られたらしいです。今もまあ健康器具として売ってますからね。

大真面目に開発されたバイブレーターと現在の広まりっぷりを考えれば、いわゆるトリビアの泉的な面白さでかなり惹かれる物語…ではあるんですが、ここに絡める恋愛話がどーも薄っぺらくてですね。

あんまり心理描写もないまま急に結末に導かれるような部分があったので、強引だしその話いらねーよ感がすごかったんですよね。なので世間的なジャンルとしてはラブコメのようなんですが、「こんなんラブコメとして認められへん!!」と謎の関西弁によりうちでは伝記とかノンフィクションとかそっちの方にカテゴライズしました。

正直もっとバイブレーター開発話も(プロジェクトX的な意味で)しっかり観たかったのに割とあっさり完成しちゃうし、恋愛も発明も中途半端に描いているおかげでどっちつかずのお話になっちゃったなぁ、という印象でした。

全体の雰囲気としては僕が大好きなブリティッシュ・ヒューマンコメディ的なそれだったので、なおさら期待値が上がっちゃったっていうのもあったとは思います。もう少しさらっと「このあと二人は」的な話でも良かったんじゃないのかなーと思いますが…まあそんなこと言っても仕方がないわけですが。

バイブ開発に恋愛に加え、女性の権利的な社会派要素も入ってくるんですがこれまた薄い内容なので、扱っているテーマ自体はすごく良いのに丁寧さに欠けちゃってるがために残らないふわっとしたお話になっちゃってるのがとてももったいない映画だなと思います。惜しい…。

ネタバレア

まー普通に考えれば若くて美人のエミリー(フェリシティ・ジョーンズ)…じゃなくてお姉ちゃんを取る物語なんだよね、っていうのはわかるんですが、わかって観つつもどこに惹かれたのかイマイチ伝わらない流れで行って「愛してる!」はさすがにちょっとどうなのと。

影響を受けていったのはわかるんですけどね。っていうかわかってはいるんですよ。惹かれてるんだろうなっていうのは。でもきちんとエミリーに別れを告げてお姉ちゃんを選びました、って描写もなく、なんとなく立場がずれていってこっちにしました、みたいな流れで選択した感じもまたちょっと良くないなと思いました。

もう少しその辺の心理描写を丁寧にやればまた違ったと思うんですが…ちょっとテーマの面白さに技量が追いついていない感じで、つくづくもったいないなぁと。

このシーンがイイ!

エンドロールがね。僕が今まで観た中で最もシュールなエンドロールでしたね。シュール過ぎて笑っちゃうぐらいに。なのでそこは見どころだと思います。

ココが○

やっぱりご存知バイブレーターがどういう経緯で誕生したのか、っていうのは純粋に面白い話だと思います。こういう話を映画として作ってくれて情報として取り入れやすいっていうのは嬉しいなと。

ココが×

やっぱり心理描写的な部分でしょうか。欲張りすぎて手を広げたおかげで丁寧にすべき箇所を疎かにしちゃったような印象。悪い映画じゃないんだけどなぁ。

MVA

久々に観たジョナサン・プライスは渋い爺さんになってましたが、役としてはそこまで面白みもなく。

ローグワンの時とまったく違うフェリシティ・ジョーンズのかわいさも惹かれましたが…この人かなー。

ルパート・エヴェレット(エドモント・セント・ジョンスミス役)

主人公・モーティマーの親友の大金持ちの発明家。

この人の浮世離れ感みたいなのってすごく面白いと思うんですよね。だからもっと物語に食い込んできて欲しかったなと言う気もして。

一人だけ違う芝居をしている感じが面白かったし、なんとなくこの人だけこの時代にマッチした雰囲気があってそこが良かったなーと思います。

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