映画レビュー0474 『インターステラー』
さて。
そうです。いよいよ本日から公開、クリストファー・ノーラン監督最新作。
もうね、こちとら1年どころじゃないですからね。楽しみにしてたの。そりゃー初日に観に行きましたよ。久々のIMAXで。
ただもはや過去にないほど自分の中でのハードルが上がっていたのも事実なので、楽しみでありつつもむしろ不安の方が大きかったぐらいですが、きっちりがっぷり四つで評価してやんぞ、と鼻息荒く観て参りました。
インターステラー
そして今回も、ノーランが化け物であることを思い知らされるのです。
毎回毎回、自分の文章力の無さに申し訳ないと思いながら書いているわけですが、今回ほど自分の能力の低さを恨めしく思ったことはありませんね。まあやっぱりというか…今回もとんでもない映画でした。
圧倒的な情報量を背景に、人類が初めて辿り着く世界を極力リアリティを持たせた形で描き、その上普遍的な家族愛や人間の善悪というテーマも内包させつつとてつもなく濃厚な物語を絞り出した作品でしたよ、と。
時間にして3時間弱、「今回もちょっとなげーな」と思った開演前の気持ちは丸ごと飲み込んでウンコとしてトイレに流してやりたい。
時空を旅してあの時の自分に言ってやりたい。その気持ちはウンコにしてやんな、と。それほどまでに濃密で、終始緊張感溢れる3時間弱。なんだったんだあの時間。ほんとに3時間近くもあったんでしょうか。
時間感覚が狂うほど、ここまで濃縮された時間を味わえるものってそうそうないような気がします。いやはやすごかった。
制作発表当時の情報では「ノーラン次回作はタイムスリップがテーマになるらしい」と聞いていて、でも予告編を観ると完全に宇宙を旅するSFっぽかったので、まあこの予告編はホントに導入でしかなくて、やがてとんでもないタイムマシン的なものであちこち飛び回るのかな、なんて浅はかに思っていたわけですよ。
「必ず帰るから」って娘に言った主人公が帰ってこなくて、待ちきれない娘が部屋の引き出しを開けたらタイムマシンでした、みたいな。ドラえもんかよ、みたいな。そういう話かなって。
その予想は半分当たり、半分外れました。
当たりの方は、予告編。やっぱりあの予告編はぜんっぜん導入も導入で、実際の物語はあの8万倍ぐらいの内容でした。顕微鏡かよレベル。
外れの方は、タイムマシン的なお話の部分。確かに“時間”は非常に重要な要素として出てきますが、今までのタイムスリップモノのように、単純に未来・過去に行き来してウェーイwwwwwwみたいな話ではありません。もっととんでもなく学術的な、科学とか物理学とか相対性理論とか、要はものすごく明確に理系のアプローチを強く打ち出していて、早い話が「よくわからないけど真実味あるよね」ってな受け手側の感覚をベースにして、とてもリアリティのある「宇宙と時空の旅」に人間ドラマを織り交ぜているわけです。
とんでもなく知的で、でもとんでもなく人間臭い物語で、この両極端のアプローチをしっかりまとめ上げるノーラン兄弟、今回もやっぱり変態だね、と言わざるを得ません。
ただし、監督ご本人がおっしゃっている通り、やはりこの手の映画として不可避な「2001年宇宙の旅」から受ける影響、あの映画に対するリスペクトのようなものも色濃くあり、その匂いが最も強く感じられる終盤のあるシーンでは、かなり賛否両論分かれるであろう内容は感じました。まあ、なにせいまだ人類が辿り着いていない部分の描写なだけに、真贋よりも感情的な良し悪しで語られがちな面があるので、こればっかりは仕方がないとは思います。僕は「そんな良し悪し以前にすげぇよこの映画は」というテンションで乗り切ってましたが。
そんなわけでですね。まあ語ろうと思えばいくらでも語れるとんでもない映画だったんですが、もはやこのレベルの映画となると、結局言いたいことは一つだけなんですよね。
「いいから観ろよ」と。
タコ、まで付けてもいいかもしれないですね。
「いいから観ろよタコ」と。
ただし、今回も「インセプション」同様、かなり人を選ぶ映画ではあると思います。ものすごく難しいし、状況説明も最小限なので何をしているのかがわからないまま次へ次へと進んで行く部分もあって、それ相応の映画に対する理解力、ある程度の地頭の良さ、そして集中力を求められることは間違いありません。
バカは観るなよ、って言っているわけじゃないですよ。「理解しようとする」意欲がないなら観るなよ、ってことです。
これほど頭を使ってまで映画なんて観たくねーよ、っていう人はそれなりに存在すると思うので、そういう方にはお勧めしません。
まさにがっぷり四つ、眼力でスクリーン切り裂いてやろうか、ぐらいの気合を持って鑑賞できる方はぜひ観てください。僕は(ノーラン贔屓という点を除いても)今回もまた、してやられました。
これほどの映画を撮れる人、作れる人が他にいないのは間違いないでしょう。お腹いっぱいです。
なお、ドラえもん予想は完全に外れた模様。猫すら出て来ない。ロボットは出てきたけど。
このシーンがイイ!
もうどのシーンがどう、とか気持ちいいぐらい覚えてないですね。毎回大体観ながら「このシーンいいね(候補だな)」って思うんですが、今回はそんなことを考える余裕もなく。こういう経験も初めてかもしれない。一箇所抜き出してどうこう、って話じゃないんですよ。もはや。全部全部。もう全部だよ。(投げやり)
ただ、静と動の描き方というか、宇宙空間の静けさの表現力には脱帽しましたね。激しいシーンでも音が無かったりして、その見せ方が抜群にうまい。
ココが○
全体的にとんでもないので、これまた細かくこれがどう、みたいな話にもならないわけですが、やっぱりこういうとんでもないSF映画でありつつ、終わり方の余韻は素晴らしいなぁ、と思いました。人の使い方もすごくうまいし、まあやっぱり天才ですわな…。
あと「今回はハンス・ジマーじゃないの?」って思ったぐらい、いつもと違うアプローチで映画を盛り上げてくれたハンス・ジマー先生、この人もまたいい仕事していました。
ココが×
上に書いた通り、「かなり難しい」のと、「説明が少ない」点でしょうか。
置いて行かれる人も続出するでしょうし、「すげー寝た」って人がいてもおかしくない、かなり振り切った作りの映画だと思います。というか振り切らないとこんなすごい映画作れないですよ。
とんでもない名声を得ても守らずに、自分の世界を貫き通すノーラン、そこがまた素晴らしい。
あと一応指摘しておきますが、結構気になる部分を特に裏付けもなくさっくりやり過ごしちゃうシーンもいくつかあり、ご都合主義的な作りの部分があったことは否めません。今回はガッツリ科学ベースのストーリーにしているだけに、今後いろいろとアンチ方面から検証という名のイチャモンが付けられそう。
そういう意味で完成度という点では「インセプション」の方が上だったかもしれません。夢だからなんでもアリだし。個人的にも(どっちも好きですが)「インセプション」の方が好きです。
MVA
さぁさぁ、そんなわけでMVA。もーね、やっぱりみなさんいいわけですよ。当たり前のように。
主演のマシュー・マコノヒーはこれだけの大作を真正面から受け止める素晴らしい演技で、キャラクターもすごく似合ってて良かったし、黒髪ショートが激マブのアン・ハサウェイ、これまた脂が乗り切ってるぜという感じでパーフェクト。知的で魅力的なヒロインとしてこの人以上のキャスティングは無かった気がします。マイケル・ケインも相変わらず締めてくれるし、ジェシカ・チャステインもお見事…と悩ましいところですが! 今回はこの人だ!
マッケンジー・フォイ(マーフ(幼少期)役)
登場時間は主要メンバーと比べれば長くない方ですが、まさに物語のキーマンと言った存在。
やっぱり父親のクーパーが旅立った時点でのマーフが幼少期だったので、自ずと幼少期の彼女の存在が大きいわけです。物語的に。
アン・ハサウェイの幼少期か、ってぐらいかわいくて、演技もものすごく良かった。この子の一挙手一投足で涙が浮かぶ、って話ですよ。ぜひクロエばりに順調に育って欲しいところ。