映画レビュー0423 『100,000年後の安全』

今回はちょっと番外編と言うか特殊なパターンで、YouTubeで無料配信中のドキュメンタリー映画を取り上げることにしました。前から観たかった映画でもあり、割とタイムリーでもあり。

YouTubeであるという点も、観たのが日本語吹き替え版であるという点もなんプロ初。ちなみに映画自体はこちら(もう観られないのでリンクは削除しました)で2月10日の正午まで観られます。

100,000年後の安全

Into Eternity
監督
マイケル・マドセン
脚本
マイケル・マドセン
イェスパー・バーグマン
出演
カール・ラインホルド・ブロケンハイム
ミカエル・イェンセン
ベリト・ルンドクヴィスト
音楽
カーステン・ファンダル
公開
2010年1月6日 デンマーク
上映時間
75分
製作国
デンマーク・フィンランド・スウェーデン・イタリア

100,000年後の安全

世界初の「放射性廃棄物最終処分場」となる、フィンランドの「オンカロ」を軸に、放射性廃棄物を処分することの難しさを問うドキュメンタリー。

知っておくべき内容なのは間違いない。

8.0

日本では…と言うよりもこの映画の舞台となるフィンランド以外では一つも決まっていない、放射性廃棄物の「最終処分場」、その意味するところを追ったドキュメンタリー。ある意味でひじょーーーーーーーーに重たいテーマですが、かと言って現代に生きている以上、無視することは許されないというなかなか厄介なテーマの映画です。

さてタイトルの「100,000年後の安全」の意味ですが、これはそのまま、放射性廃棄物が生物にとって安全とされるレベルに達するまで10万年かかると言われていることが所以です。(細かく書くと違う面もあるようですが長くなるのではしょります)

映画としては「遠い未来、この施設にやってきた人類に向けて」語っているような作りになっていて、その語りから「放射性廃棄物を処理することの意味」や「放射性廃棄物自体の罪深さ」を考えさせるような内容になっています。

ひとまず映画として評価をするのであれば、原子力(発電)に対する賛成・反対を取っ払ったとしても、まず着眼点としては文句なし、これほど意味のある、そしてタブー視されるという意味で挑戦的なテーマを扱ったドキュメンタリーは他に無いほどのもので、その存在意義たるや相当なものです。それこそ世界中から様々な圧力が考えられるテーマを切り取り、世に問う映画を作り上げたという意味で、偉業と言っても差支えがないかな、と。

しかも海外とは言え、あの大震災よりも前に作られた映画なんですよね。福島第一原発事故以前にこういう問題を提起した映画が作られていた、というのは素直にすごいなと思います。

ただ、内容に関して言えば、やはり意図的に「こんな馬鹿げた話は無い」という制作側の価値観が前提となっている作りなので、これまた賛成・反対は別として、「観ている人間の価値観を誘導する作り」になっているのは否めません。

例えば、漠然と「10万年後の人類」を想像した時に、今よりもとてつもない文明を持っていて、放射能なんて屁でもねーぜ、というような技術を確立しているもの…と僕なんかは安易に考えるんですが、この映画の立脚点はどちらかと言うと「(一旦滅ぶなりして)今よりも劣っている文明」を想定した話になっていて、それ故このオンカロに「入らせないためにどうするか」という部分に重点が置かれています。

…と、言うよりは、オンカロ自体がそういう想定の元に作られているもののようで、その前提に立った上で、「こんなバカげた話はありますか?」と問いかけるような内容になっています。

まあ実際、逆に今から10万年前がどうだったのかを考えれば、氷河期が来たり何なりして、人間自体が滅んでいてもおかしくないほどの長い時間であるのも確かだし、逆に「今よりも文明が発達していれば心配する必要はない」という考え方なんでしょう。

ひとまずその辺の価値観の提示の仕方どうこうは置いといて、この「10万年壊れない建造物に放射性廃棄物を閉じ込めておき、後世の人々(もしくは動物)に入っていけないという情報をなんとか伝わるようにする」というようなプロジェクトは、ある意味で「バカげている」、そうせざるを得ない状態に持ってきてしまった人類の罪深さを感じるものだし、何より後世の人々の文明が今より上か下か、どちらにせよ「今をエンジョイするために出てきた問題を後世の君たちがなんとかしてね」というやり方は無責任なのは間違いないわけです。

むしろ、それでも「ここを最終処分場に」と決めたフィンランドはまだ誠意がある方で、日本を含め「まだ決めていません」と先延ばしにして対策を打たない政治はまさに無責任の極みと言えるでしょう。

この時代に生きる人間として、これほど重く、また後世に対して申し訳ない思いを抱くテーマは他にないと思います。

あまりここで原子力(発電)に対する是非を書くと色がつくので避けますが、福島第一原発事故があった以上は日本人が看過していい問題ではないのは明らかなので、そういう意味でもこの映画は「日本人であれば観るべき」かな、と思います。結果、どっちの答えを持つかはその人次第なので。

ただ、それでも「原発推進」って言えるのは頭がオカシイとは思います。かと言ってヒステリックに「反原発!」とあることないことをすべて原発のせいにして騒ぐのも問題なので、いかにこうした現実を見て「普通に、冷静に判断」できるか、が大事なのかなと思いますが…。

時間も短く観やすい、おまけに期間限定ですが無料で観られるので、ぜひ。

余談ですが、僕はこれを観て「星新一の世界だな…」と思いました。未来の人類が、「危険だから掘らないように」と書いてあるとわかりつつも、好奇心から掘っていったその先で、まさに“パンドラの箱”を開けてしまったら…。そんなことを考えた後に感じるなんとも言えない後味。

星先生が生きていればなんと言うのか、聞いてみたかったですね。

このシーンがイイ!

ドキュメンタリーなので、特に無し。

ただSFのような「オンカロ」の説明は、「先進的なことをしています」と見えるように作っていながら中身が馬鹿げている、という意味ですごく皮肉だなとは思いましたね。

ココが○

取り上げたテーマ。

ドキュメンタリーとしてはこれがキモなので、そういう意味では100点です。よくこんな映画作れたもんだなーと思いますが、ただ噂では、日本以外の先進国では「原子力はもう過去のもの」というような風潮もちらほら出始めているようなので、あまりここに切り込むことで動き出す裏の力は無いのかもしれません。日本にはまだまだあると思いますが。

ココが×

上に書いた通り、やや価値観を誘導しがちな作りでしょうか。

もちろん言いたいことがあっての映画だと思うので、それはそれで間違ってないとは思いますが、あまり片方に肩入れし過ぎると「現実としてこんな問題がある」という見せ方がフラットにならないので、本当に問題だと思うのであれば、もっとバランスを取った作りのほうが効果的なのかな、という気がします。

MVA

今回はちょっと特殊な映画ということもあり、該当者なしということで。まあ、ドキュメンタリーなので演技どうこうでもないですからね。

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