映画レビュー0688 『ニッポン無責任時代』

本日はBS録画より。

日曜日ちょっと遅めに起きてしまったため、「お昼ご飯は遅くしたくない!」とのご意向(おれの)を鑑み、短めの映画からチョイス。

さらに「今時この映画を取り上げる人間も珍しいでしょ」とニッチ狙いの安っぽいスケベ根性から選ばれた一作です。

ニッポン無責任時代

Japan’s irresponsible times
監督
脚本
松木ひろし
出演
重山規子
中島そのみ
藤山陽子
音楽
神津善行
主題歌
『無責任一代男』
『ハイそれまでョ』
植木等
公開
1962年7月29日 日本
上映時間
86分
製作国
日本

ニッポン無責任時代

前職をクビになり、一人バーで酒を飲む男・平均(たいらひとし)。彼は「太平洋酒」という洋酒メーカーへの乗っ取りを画策している客の話を聞き、持ち前の機転と図々しさで太平洋酒の社長の元へ赴いて信用を得ると、まんまと太平洋酒総務部の社員として入社することに成功する。その後も無責任な言動に同僚の反感を買いつつも、要領の良さで出世し、会社の買収にも負けずうまくお偉いさんに取り入っていくが…。

そうだなそのうちなんとかなるな!

9.0

無責任男の代名詞、植木等主演の大ヒット映画。

植木等を生で観ていた記憶があるのはおそらく僕ら世代が最後でしょうねぇ…。寂しい。幼少期、TBSでやっていた「オヨビでない奴」というドラマを観ていました。ワタクシ。植木さんすごく好きだったんですよ。文字通り好々爺、って感じで。

わからない若い人たち(読者にいるのかは不明)にご説明しておくと、植木等という人はそれはもうまさに「国民的大スター」で、今で例えるなら…ミスター長嶋さんのような感じでしょうか。「例えも昭和じゃねーかよ!!」という怒鳴り声が聞こえてきますが、それも仕方ないんです。物は投げないでください。

もうね、このレベルの大スターって今じゃ絶対出てこないんですよ。間違いなく。それは今のスターたちにこの頃のスターよりも魅力がないとかいう話ではなくて、時代的にテレビが一番の娯楽で、他の娯楽の種類も少なかったからこそえらく幅広い支持を受けるスターが生まれる土壌があった、それ故の大スターなわけです。変に「この人好き」って言うと叩かれる、みたいなネガティブSNS的な絡みもない、大らかな時代だったこともあるでしょう。

海外でもスターシステムによって作り出された大スターほどのスペシャル感のあるスターって多分出てこないだろうし、これはもう完全に時代の特性として登場した「今ではありえないほどの大スター」、それが植木等というお方です。

さて、その植木等と言えば「無責任男」というのが世の常識だったわけです。ミスターと言えばどうでしょう、みたいなもんです。長嶋さんを例えに出しておいて別のミスターを出すとかどうなんだと。でもそうなんです。

そんな「無責任男」の口火を切ったのがこの「ニッポン無責任時代」ということで、とんでもないドタバタコメディなんだろうな…と思いきや意外としっかりとしたストーリーのコメディで、ひじょーに楽しめました。

植木等演じる主人公・平均(たいらひとし)は、いわゆる普通のサラリーマン。一人バーで飲んでいたところ、「太平洋酒」という洋酒メーカーの乗っ取り話を耳にします。そこに偶然、その太平洋酒の社員たちが来店。相席して「乗っ取りの話があるそうですが、私に任せてください」とテキトーなことを言って酒を飲み、頃合いを見計らって中座…のフリをして飲み代を払わせ、一路太平洋酒の社長宅へ。

社長不在の中ズケズケと上がり込んで息子といきなり打ち解け、社長は明日葬儀に出る…という情報を聞きつけ翌日斎場へ、社長と対面しては「私も故人にはお世話になっておりました」と取り入って相談相手に収まり、見事太平洋酒の社員として採用…という具合にトントン拍子に事が運び、その後もいろいろありつつ持ち前の機転といい加減さと図々しさで乗り切る男の物語でございます。

キャストは植木等を始めとしたクレイジーキャッツの面々に由利徹その他というオッサン世代にはたまらないメンバーで、もうほぼ皆さんお亡くなりになっていますが…さながら「昭和版オーシャンズ」とも言える豪華キャスト。あと僕は知りませんでしたが「お姐ちゃんトリオ」という直球ネーミングな当時人気の女優陣が華を添えますよ、と。

植木大先生の若い頃を観るのは初めてでしたが、快活で人懐っこい笑顔に、なんならちょっとサイコパスなんじゃねーのか的な異様さが同居するという素晴らしいキャラクター。途中途中で歌も挟む芸達者ぶりはまさにエンターテイナーで、和製サミー・デイビス・ジュニアだなと。いや例えも古ければサミー・デイビス・ジュニアも詳しくないんだけど。そんな感じ。さすが昭和を代表する大スター、軽快な演技ながらその凄さに舌を巻きました。

その歌のシーンでは、

♪お〜れ〜は このよ〜でいちばん 無責任〜と〜言われ〜た男

の「無責任一代男」や

♪あなただ〜けが〜 い〜きがい〜なの〜 お願い〜 お願い〜 捨て〜な〜いで〜

の「ハイ、それまでョ」と言った、ワレワレオッサン世代には懐かしさで涙が出る名曲ばかりで最高です。

「うわー、やっぱ本家のコレはたまんねーなー」と喜びながら観ていてふと思いましたが、これってもしかして「ジャパニーズ・ミュージカル」なんじゃないのか、と。もちろんそんな大仕掛けでもないし、ほぼ植木大先生のワンマンショーなんですが、それでもどことなくミュージカルを感じさせる雰囲気があってですね。そこがまた良かったな、と。

キャラクターとしても、「無責任男」と言いつつも受け答えは至極真っ当な社会人っぽさがある意味リアルでですね。あり得ないトントン拍子っぷりではあるんですが、でもどっかで「昭和ならこういうのありそう」と思わせるギリギリさがとても良かったですね。

もっと破天荒でいい加減な話かと思っていたんですが、実際はギリギリあり得そうな世渡り上手感でうまく惹きつけてくれます。

ということで今から50年以上前の邦画ではありますが、逆にそれだけ昔の映画だけに変に商業主義に走らずに情熱で作り上げた雰囲気もあって、文句なしに楽しめました。いい加減ながらもたくましく、へこたれない主人公に元気をもらえて大満足。まさに「明日は明日の風が吹く」、なるようになるさでこれからまたがんばれそうです。

はー、楽して儲けるスタイル、憧れるわー。

ネタバレ無責任時代

ラストの結婚式では、曲がりなりにもひと様の結婚式でありながら相手の現状も考えずに己のプロポーズをした挙句、「祝辞代わりに」と歌った歌で「社長になった」と、まったくこの日の主役に関係のない自分のことを自信満々に(しかもバックダンサー付きで)高らかに歌い上げるというサイコパスっぷりが最高でしたね。

全編通して彼は本当にある意味でサイコパスでしたが、良いサイコパスだったので頭文字を取ってGPPと名付けましょう。

巻き込まれる側としてはたまったもんじゃない感もありましたが、でも今の時代だからこそこういうエネルギーがある人に閉塞感を打破して欲しいな、という気持ちもあったりして、やっぱりある意味では今の時代だからこそまた面白い、元気になれる映画なのではないのかなと思います。

このシーンがイイ!

序盤の「こっちだってれっきとした出世前の身体ですよ」は名台詞。植木大先生さすがです。

そして中盤の「エロとスリルのサンドイッチじゃ身体が保たねぇ」も名台詞。由利徹先生もさすがでした。くぅー! ザ・昭和がたまらない。

あと歌のシーンで「ふざけやがって ふざけやがって ふざけやがって コノヤロー!」のコノヤローの時にジャンプするんですが、その意味のわからないジャンプが最高。

ココが○

タイトルからは「完全に無責任で周りを巻き込むクズ」的な印象があったんですが、全然そういうお話では無いのが良かったですね。無責任ながら人を惹き付ける魅力と、クビになっても凹まないメンタルの強さに元気をもらえます。

ほんとね、悩んでる時に観るとすごく良いと思う。今の時代だからこそより良いかもしれない。

ココが×

特に無いかなー。上映時間の短さもとてもグッド。

MVA

氏家社長の息子と付き合ってる女の子が綺麗でしたねー。「お姐ちゃんトリオ」の(この時代っぽい)野暮ったい印象とは全然違ってびっくり。ちなみに社長の息子は峰岸徹でした。若い! でもこの方ももう故人です…。

その他皆さん良かったですが、やっぱりもうこの映画はこの人でしょう。

植木等(平均役)

軽快さ、真面目さ、歌のうまさ、全身からスターオーラがスゴイ。時代的にジャック・レモンを観ているのに近い感覚。

大先生の他の映画も観たいなぁ。

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