映画レビュー0274 『愛されるために、ここにいる』

信じられないような話ですが、少し前、某お方のご厚意により、「使ってないからヤルヨ」と3DSを譲っていただきました。大変ありがとうございます。

純粋な厚意ってものすごい威力だな、となんだか申し訳ない気持ちでいっぱいに。でも今月は忙しくてそんなにムーゲーやってる場合じゃなさそうな予感が。でもそんなのお構いなしにとりあえずムーゲーより映画に比重を置きたいぜ! と意気込みつつ、本日ちょい久しぶりのフランス映画。

重ね重ね某お方、ありがとうございました!

愛されるために、ここにいる

Je ne suis pas là pour être aimé
監督
ステファヌ・ブリゼ
脚本
ステファヌ・ブリゼ
ジュリエット・サレ
出演
パトリック・シェネ
アンヌ・コンシニ
ジョルジュ・ウィルソン
リオネル・アベランスキ
シリル・クトン
音楽
エドゥアルド・マカロフ
クリストフ・H・ミュラー
公開
2005年10月12日 フランス
上映時間
93分
製作国
フランス

愛されるために、ここにいる

50歳を超えたジャン=クロードは、医者から健康のためにと運動を勧められ、職場の向かいのビルで開かれているタンゴ教室に通い始める。そこで子供の頃に近くに住んでいたという、近く結婚する予定の女性と親しくなっていき…。

シニカルな悲哀感たっぷりで○。

7.5

ビジュアル系ニューシングル的なタイトルの映画ですが、そのタイトルの印象ほどに色濃い恋愛話ではなく、(ものすごい陳腐な表現ですが)「大人の恋愛物語」がメインにありつつ、人生の悲哀を綴ったいかにもフランスっぽい味わいのある映画でした。オシャレと言うには(いい意味で)重すぎて、「ああ、人生ってこういうもんだよね」と共感できること受け合いです。(多分)

主人公のジャン=クロードは、司法執行官という…簡単に言えば「お金払えと裁判所が言ってます」とか「差し押さえの時間だよ!」とかいわゆる“憎まれ役”的なお仕事をしてます。当然、その仕事にも嫌気が差してきているような状態。おまけに施設にいる父親は毎週会いに行っても文句ばかり、事務所に入れた息子は自分と同じく仕事が嫌そう…と、なんというか…周りにハッピーが一切ない。淡々と日々をこなす以外に自衛の手段がないような、かなり“枯れた”御人。

そこにタンゴ教室で若い女性(と言ってもいわゆるアラフォーですが)と出会い、もはや火が灯ることなんて無いと思っていた自分の心に小さな炎が…。でも彼女は近々結婚する身。しかもそのことをジャン=クロードに伝えていなくて…。

…というお話なんですが。

んー、なんなんでしょう。特段フランス映画に詳しいわけではありませんが、この佇まい、味わい、雰囲気、やっぱりフランス映画なんですよね。なんなんだろうなぁ。音楽とかセリフ(の発音)とか一切抜きにしても、すぐにフランス映画だとわかる雰囲気というか。

そもそもこの“枯れた50歳”が主人公、生活には問題だらけという時点でそれっぽい感じはありますが、それより何より、やっぱりセリフ回しやら演出やら話の内容やらで、明らかにアメリカ映画ともイギリス映画とも、もちろん邦画とも違うんですよね。前々から思っていましたが、やっぱり映画でもお国柄がわかっちゃう、っていうのは面白いですねぇ。

さて、そんな「フランス映画っぽさ」をブリブリ感じるこの映画ですが、以前観た「列車に乗った男」の時に感じたような、「本当に普通の日常を描いているだけなのに妙に引き込まれる」世界で、1時間半程度でサックリ終わる長さと良い、地味なくせにひじょーに観やすい良作でした。

思うに、やっぱり順調じゃない人が主人公、って言うところがいいんでしょうね。主人公にしても相手の女性にしても、いろいろ共感できる問題を抱えていて、僕の大好きな“生きている”感がよく出てます。リアリティと言ってもいいでしょう、「ああ、この人生きてるな」っていう人生らしさ、「世の中甘くないよね」っていう共感性、そこのうまさのおかげで、地味でも惹きつけてくれる要因になっています。

例えばオープニングの、疲れたオッサンがいかにも疲れた雰囲気で階段を上るシーン。そこだけでもう、悲哀ってものを感じずにはいられません。その上、一つ一つは関係なくても、一気に降り掛かってくるとブチ切れちゃうわよ☆的な、「人生っていろいろあるよね」の“いろいろ”の見せ方がうまい。イライラポイントその他、個人の感情に訴える要素の描き方もひじょーにお上手なので、「ああ、そうなるよね…。わかるわかる」という共感要素がたくさんあります。

正直、ラストの展開はややリアリティに欠けると感じてしまい、そこで少し評価的にマイナスにはなったんですが、ただ全般的な「人の描き方」はフランス映画にしか出せない何かがあるな、と感じるほど、普通でありながらオリジナルな悲哀感のある展開がスバラシイ。

結局のところ、何を持って「これぞフランス映画です」とは言えないんですが、きっと誰が観ても一発で「ハリウッド映画とは違う!」と思えるものだと思うので、くたびれたオッサンの人間ドラマが嫌いじゃないぜ、って人は惹きつけられるものがあるように思いますが、ただそんな人っているのかという根本的な問題もあったりします。そんなまとめ。

このシーンがイイ!

家族会議で揉めてるところなんて、「ああ、わかるわかる」感がすごくあって良かった。そんなシーンが結構あります。

ココが○

上映時間の短さと、最小限の音楽は「丁寧な仕事」感があっていいですね。派手さは無いものの、むしろ派手さが無いのがいいな、と思わせる堅実な作りが素敵です。

ココが×

展開に対する個人的な納得感を別にすれば、特に何がダメだな、とかは無かった気がしますが、一点だけ言うならやっぱり“地味”に尽きるかな、と。こんな映画観て「ちょー面白くね!?」なんて言うギャルがいたらお目にかかりたいぐらい、「わかりやすい映画」が好きな人には向いてません。

MVA

登場人物も非常に少なかったんですが、一人選ぶならこの人かなぁ。やっぱり。

パトリック・シェネ(ジャン=クロード・デルサール役)

ちょっとジャン・ロシュフォールっぽい、これまたフランスらしいオッサン俳優。

この人のくたびれっぷり、静かながら流れのわかる感情の表現はなかなか良くて、妙な説得力がありました。フランス映画ってこういう俳優さん、ほんとうまく使うよな~と思います。

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