映画レビュー0173 『ビヨンド・サイレンス』
突然ですが、十何年ぶりかにファイナルファンタジータクティクスをやってます。いやぁ、やっぱり名作ですねこれは。あの頃はゲームに芯が通ってて良かった…。
と振り返る辺り、どんどんオッサン化してきてることを自覚する今日この頃でございます。今週も一桁カウンターにめげず、更新していくぜー。
ビヨンド・サイレンス
クラリネットらしい優しい映画。
クラリネットというと、やっぱりあの何とも言えない柔らかな音色が優しい雰囲気を醸し出すイメージが強いわけですが、この映画もまさにそのクラリネットのイメージそのもの、全体的に柔らかで優しくて、しみじみと「家族愛」について想いを馳せたくなるような映画でした。
この映画は幼少期のララと青春期のララが登場する話なんですが、他では割とすぐ終わっちゃうイメージの強い幼少期部分が結構長めに、大体全体の3分の1ぐらいは幼少期で展開されます。
この子供の頃のララがほんとにイイ子ですごくかわいい。「そう言う家に生まれて育った」から当然なのかもしれませんが、両親が共に聴覚障害者であるという部分に疑問を抱いたり反発するようなこともなく、愛情溢れる接し方ですごく微笑ましい。特に、お母さんの恋愛ドラマ観賞をテレビの前で通訳してサポートする場面なんて、なんてことないシーンなんですが、じわっと来ちゃいましたねぇ…。
この幼少期の全体的な温かい雰囲気はものすごくよくて、「これは名作の予感! 涙腺崩壊注意報!!」と思っていたわけですが…。
話変わって青春期。やっぱりそれなりの年齢になって、反抗期的な面もあるんでしょう、お父さんと喧嘩したりします。それはそれですごく真っ当な話だと思うんですが、あまりにも幼少期が良すぎて、一気にテンションダウンというか…。なんとなくこの映画らしい雰囲気の良さ、みたいなものが失われちゃった気がして、最後までその「惜しさ」が引っかかっちゃった感じでした。
正直なところ、主演の女の子にあまり魅力を感じられず…。ご本人は手話もクラリネットもさらにドイツ語も(本当はフランス人らしい)かなり練習して臨んだおかげで、ドイツ映画賞の主演女優賞をもらったらしいんですが、僕には幼少期の子の良さがすごく際立って見えたので、そこの惜しさがまた…うーん、残念。
そんなわけで主演の違いで自分自身の気分の“ノリ”の違いが出ちゃったのが期待してただけに切ないことこの上無かったんですが、でも脇を固める役者陣の方々は、一人も知ってる役者さんはいませんでしたがどの方もすごく良かったと思います。
両親はもちろん、美人の叔母さんも、優しい叔父さんも、ちょっとヤンチャな妹も、みんな良かった。それだけに…主演の子が(僕にとって)ハマらなかったのが悔やまれます。
ふと、ラストのお父さんとの会話を観てたら思ったんですが、この映画は結構「アイ・アム・サム」に似ている気がします。あっちは「良かった幼少期」で全編通してくれたからそのまま良かった、こっちはその後が描かれたからそこまでじゃなかった、という感じでしょうか。
ただ、この映画の「ハリウッド映画とは違うぞ」、という実直な感じはやっぱり評価せざるを得なくて、こういう映画もあってこその“映画”だな、とふと思ったりもするわけです。
派手な味付けですぐ飽きる料理じゃない、煮物のような味わい。渋い映画ですが、でも良い映画だと思います。
このシーンがイイ!
上にも書きましたが、お母さんの恋愛ドラマ観賞をララが手話で通訳してあげるシーン。すっごい良いシーンでしたね。愛に溢れてて。なんてことない序盤の1シーンなんですけどね。
ココが○
当然ながら音楽もクラリネットが多用されているわけですが、その音色がまた…この映画の雰囲気をうまく作り出してると思います。優しいくてちょっと抜けたような…独特の雰囲気。じんわりじんわり来る雰囲気がありました。特に序盤。
ココが×
特に何がよくない、ってわけでもないんですよね。主演の子がどうこう、っていうのは完全に好みの問題だと思うし…。
話としても、当然ながら日常を追った地味な話ではあるんですが、終始真っ当な話なので不満は無かったです。途中で
し。MVA
今回はすごく候補者が多かったんですが、序盤の「この映画らしい」(と勝手に思っている)優しい雰囲気を醸し出してくれたこの方に。
エマニュエル・ラボリ(カイ役)
ララのお母さんで、実際にこの方も聴覚障害者らしいです。
もーこの人の「母親らしい愛情の塊」感たるや素晴らしいものがありましたね。特に綺麗とかいうわけでもないんですが、すごく良い役者さんだと思います。
ただ、やっぱり実際に聴覚障害者となると、こういう役しか出来ないところが悲しいというか、もっと活躍の場があればなぁ、と思っちゃうのも事実です。