映画レビュー0714 『ジョンQ -最後の決断-』

今回もNetflixより配信終了間際に観たこちらの映画。ずっと観ようと思ってたらもう15年も経った、っていうね…。衝撃ですね…。

ジョンQ -最後の決断-

John Q.
監督
脚本
ジェームズ・カーンズ
出演
キンバリー・エリス
ダニエル・E・スミス
アン・ヘッシュ
音楽
公開
2002年2月15日 アメリカ
上映時間
118分
製作国
アメリカ
視聴環境
Netflix(PS3・TV)

ジョンQ -最後の決断-

フルタイムからパートタイムに格下げされて苦しい生活を送るジョン。ある日、明るく元気で誰からも愛されるジョンの息子・マイクが野球の試合中、突如倒れる。検査の結果、莫大な金額がかかる心臓手術をしなければ死を待つしか無いことを伝えられたジョン夫婦は、なんとかお金をかき集めようと奮闘するもマイクの退院を告げられ、万策尽きてしまう。やむなくジョンが取った手段は…。

社会派に寄せようとしすぎ?

7.0

オープニングは謎の自動車事故から始まるんですが、まさにドオープニングと言うか、劇中最初のシーンの車を追った空撮がもう完全にシャイニングだろこれ、みたいな感じで。いや、多分違うんですが。そんな感じのオープニングでしたよ、というどうでもいい情報でですね、まずはご説明をば。

ジョン・Qというのは主人公であるデンゼル・ワシントン演じるジョンのニックネームなんですが、その彼の決断を見守る社会派サスペンスドラマと言った感じでしょうか。

ジョンはオープニング早々に車をボッシュートされてしまい、いかにもお金に苦労していますよという描写がご挨拶代わりなんですが、そんな家族の危機でも明るく元気に振る舞う愛くるしい息子・マイクが家族の支えになっている模様。

しかしそんなマイクが野球の試合中に急に倒れてしまい、検査の結果心臓に大きな問題が発覚。緩和ケアで緩やかに死を待つか、心臓手術をするかの二択ですよ、と。しかし心臓手術はなんと25万ドルかかり、おまけに心臓手術リスト…要は移植可能な心臓ドナーが現れたときにその心臓に最も適合する患者は誰なのかを照合するためのリストなんですが、そこに載せるためだけの、言わば前金的なものだけでも3万ドル(確か)は必要になるという鬼畜仕様のため、貧乏家族のジョン家は途方に暮れるわけです。

かと言って最愛の息子を諦めるわけには行かず、優しい友人・隣人に協力してもらいながらお金をかき集めていたんですが、無情にも病院側から「マイクは退院してもらう」との通告が。万策尽きたジョン・Qは最後の策として病院に立てこもり、息子をリストに載せろと病院側を脅迫する…というお話です。

まずオープニングで「金ねーんだわ」とご説明→心臓手術にはお金が必要という流れ、そしてジョンが入っている保険がコストカットのせいで手術の対象にならない、というお話からもわかる通り、全体的にアメリカの保険制度や医療制度の問題点に「これでいいんですか?」と疑問を呈するようなお話になっていて、(オバマケア等でこの後どう変わったのかは不明ですが)「お金がないと生きる権利がない」という言わば人権にも関わってくるような問題を一人の男の立てこもり事件を通して世に問うような映画と言えます。

また若く美人な病院の院長が非常にドライな(ために悪役として据えられている)点からも“弱者の味方”の視点が強く、もうありとあらゆる手段で問題を突っついてやるぞ、という感じのお話でした。

そのこと自体はもちろん悪いことだとは思わないんですが、ただ結局フィールドを変えたプロパガンダみたいなものなので、「これで問題提起してより良い世の中に」はよーくわかるんですが、その色が強すぎると逆効果なんじゃないのかな、と思うんですよね。結構ご丁寧に貧困アピールも息子かわいいアピールも病院悪者アピールもしてくれるので、となると天邪鬼の自分としてはそうそう素直に受け取れないよな、って思っちゃってですね。もう少しサラリとうまく含ませる感じに見せられなかったのかなぁ、というのがちょっと残念ではありました。人質の設定もあからさまにマイノリティ寄りだし、端々から「これが言いたいんだ!!」と強いメッセージ性が伺える感じ。

一応単純に物語として観た場合は結構面白いとは思います。追い込まれてやむにやまれない状況になった主人公が立てこもる姿は、「狼たちの午後」のようなシンパシーも感じるし、実際野次馬たちも彼をヒーロー視してくることからもある程度の影響はありそうな気がします。後発ですが、「マネーモンスター」も同じ系譜という感じで。ほんのり「マッド・シティ」みも感じる。

ジョン・Qの考え方もよくわかるし、行動自体は悪いんだけど味方したくなる見せ方は魅力的でもありました。それだけに…もう少し「これが言いたいんだよ!!」を抑えた方がより効果的だったんじゃないかなーと思います。

ただなんとなく漠然と2000年代ってこんな感じのストレートな映画が多いような気もするので、時代的に「はっきり言ってやろうぜ」的なものもあったのかもしれません。

その他いろいろ感じたこともあったんですがネタバレなので割愛。

やや批判的な内容になってしまいましたが、とは言えヒューマンドラマ的にはしっかり見せてくれるし、「立てこもり犯」という先の見えない犯罪がどう帰結するのか…はこの手の映画らしく最後まで目が離せないサスペンス感もあって、「社会派寄りでありつつも楽しめる娯楽映画」としては悪くない作りじゃないかなと思います。

ジョンQ -最後のネタバレ-

気になった点をいくつか。

まずオープニングで見せられる事故、あれはちょっとフリが効きすぎじゃないのー? と思いました。どう考えてもオープニングとジョン周りの話がつながらなすぎるので、となるともうあの事故の被害者がドナーになるよ、っていう話しか見えてこないじゃないですか。そうするともう最後は間一髪間に合いました的なお話にしかならないので、いかにギリギリまでジョンが引っ張ろうがどうせ生き残るんでしょ、って思っちゃうんですよね…。

もちろん「ミスト」のような間一髪間に合いませんでしたバカめーっていうパターンもあるとは思いますが、まあ普通に考えれば間に合うでしょう…。そう考えると終盤最も盛り上がるべきところが盛り上がれない、というとても悲しい状況になってしまうので、この辺もう少し上手くやってほしかったなぁという気がします。

それに加えて、細かいですがジョンの自殺話とその“間一髪心臓が届く”一連のシークエンスに少しズレを感じたというか…早い話がジョンの自殺が先に進みすぎな気がしたんですよね。ギリギリ間に合うように展開するなら、もう少し彼の進行を抑えめにした方がリアルだった気がしたんですよ。あのタイミングだともっかい弾込めてさっさとバン! で間に合いませんでしたバカめーパターンになりかねないような感じで。

もっともそれが「実は間に合わないパターンなのか!?」と思わせるための演出だったのかもしれません。そしたらそれはそれでうまいなーとも思うんですが、ただその割にシーンが切り替わるとあっさり「間に合ったで!!」って感じなのでそこもちょっとチグハグな気はしました。

このシーンがイイ!

マイクの病状を聞きに行ったジョン夫妻の演技はとても良かったですね。すごくリアリティもあって。

ココが○

やっぱり立てこもりっていうのは単純に引力が強いよなーと思います。つい観ちゃう感じ。現実で立てこもり事件が起きたときについニュースを観ちゃうのと似ているのかもしれないですね。

ココが×

上に書いた通り、ちょっと主張が強すぎる部分と、これはネタバレになるので詳細は避けます(ネタバレ項には書いてます)が、若干構成がまずい部分があるかなと思います。もっとドキドキさせて欲しいんだけどフリがわかりやすいというか…。

MVA

純粋に考えれば間違いなくデンゼル・ワシントンだと思うんですよ。相変わらず素晴らしい演技でした。やっぱり彼の涙に誘われて泣いちゃう部分もあって。ただそれもつまらないので、こちらの方に。

キンバリー・エリス(デニーズ・アーチボルト役)

ジョンQの奥さん。

ちょーっとオーバーな気もしないでもないですが、でも泣きの演技がすごく良くて。良い両親だよなぁ、とこっちも泣かされました。

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