映画レビュー0029 『12人の優しい日本人』
この映画、元々は「十二人の怒れる男」というアメリカ映画のパロディである、今から20年前に公演された舞台を原作にした映画です。
この映画自体も19年前と古い映画ですが、最近になって裁判員制度が始まり、俄然現実味のある内容になりました。
ちなみにその原作の「十二人の怒れる男」は、かれこれ50年以上前の作品ですが、今観てもまったく古さの無い名作です。(その後再鑑賞、レビュー済み)
12人の優しい日本人
ストーリーはすばらしい…けど…。
議論開始から終了までの事件の解釈、推理というのは、サスペンス好きとしては非常に面白く、楽しめました。理論もその都度なるほど、と納得させられて。
役者陣も地味ながらみんな個性的で演技派揃い、非常に見ごたえがありました。
人物像も多少誇張されているとは言え、誰もが「あー、こういう人いるよねー」と思えるいかにもな日本人像でよく練られてましたね。
…ですが。
やはり、元となる「十二人の怒れる男」を観た後では、どうしても二番煎じの感は否めません。
「怒れる男」の方は、古いながらも新鮮さを感じ、観終わった後にむむむっと唸ったことを覚えてますが、こちらは当然ながらその「新鮮さ」がどうしても欠けてしまうので、そこまでの感想に至らない、という感じです。
面白いんだけど、どうしてもオリジナリティという部分でかなり減点されてしまうかな、と。
パロディというよりは、「日本版・十二人の怒れる男」という感じで、少し意地悪な言い方をすれば「事件と陪審員を替えただけ」なのが残念。
ただ、どっちを先に観た方がいいかはわかりませんが、どちらも「面白い映画」であることは間違いないように思います。
こっちを観て面白いと感じた人は、ぜひ「怒れる男」の方も観てみて欲しいと思います。ひょっとしたら「先に観た方」が評価が高くなってしまうものかもしれません。
ココが○
役者陣とシナリオは文句無し。舞台は一つだけながら、見応えあります。この辺りも「怒れる男」と似てますが。
ココが×
これはもう、上に書いた通り。あまりにもオリジナリティの無さが致命傷です。
MVA
今回は本当に迷いました。
守衛さん含め13人、全員良い味を出していて。ただ、どうしても一人と言うならこの人かな、と。
加藤善博(陪審員12号役)
どこがいいのかは観てもらえれば、と思います。「こういう場面でいかにもいそう」な感じかな、と。
もう一人、いいなと思ったのが陪審員9号役の村松克己という人だったんですが、今調べたら、加藤さんも村松さんもどちらも他界されているようです。特に加藤さんの方は自殺されたとのことで、詳しいことはわからないので勝手なことは言えませんが、非常に良い役者さんなのに…とすごく残念に思います。
この場を借りて、加藤さん、村松さんお二方のご冥福をお祈り致します。