映画レビュー0236 『かもめ食堂』

今月は毎日更新してたおかげか、ありがたいことにヒット数がちょっと増えました。が、増えたら増えたで逆になんか変な陰謀に巻き込まれてるんじゃないかとドギマギする小心者がお送りしておりますなんプロです。

本日は自分でもビックリ、「キサラギ」以来約1年2か月ぶりに観ました邦画のご紹介です。

1年2か月なんて大したこと無いかもしれませんが、観ている本数の割合からすれば1%にも満たないわけで、まー自分が(映画好きの割に)邦画を観てないのがよくわかりますね。

かもめ食堂

Kamome Diner
監督
脚本
荻上直子
原作
『かもめ食堂』
群ようこ
出演
片桐はいり
ヤルッコ・ニエミ
マルック・ペルトラ
音楽
近藤達郎
主題歌
『クレイジーラブ』
井上陽水
公開
2006年3月11日 日本
上映時間
102分
製作国
日本・フィンランド

かもめ食堂

フィンランドのヘルシンキで「かもめ食堂」を営むサチエは、初めて訪れた日本かぶれの青年にガッチャマンの歌の歌詞を聞かれるが思い出せず、悶々としていた時に本屋で日本人らしき女性を見つけ、声をかける。

日本人の夢の映画。

7.5

てっきり日本が舞台の「ド邦画」なのかと思っていたんですが、「フィンランドで暮らすサチエと、彼女が営む“かもめ食堂”と、彼女と出会った日本人旅行客のアレコレ」的なお話でした。

フィンランドと言えば、北欧、そしてサウナ。(個人的印象)

全然詳しくないのでかなり適当な発言ですが、なんとなく「北欧」というと、過酷にムイサーな気候とは裏腹に、緩やかでノンビリ、良い人多そうみたいな印象なんですが、まさにそういう空気が乗っかった映画で、緩やかで心地良い、あくせくしないでノンビリ行こうぜ、という雰囲気。

これはきっと「日本人の北欧のイメージ」を大事に、良い意味で“利用した”舞台を元に作り上げた映画なんでしょう。

そんなフィンランドが舞台とは言え、基本的には日本語だし、主演3人も日本人なので、これはやっぱり「きっちり邦画」だなとは思ったんですが、ただ僕の持つ邦画のイメージとはちょっと違って、無理しない、背伸びしない等身大の脚本がすごく良くて、逆にそこに監督の自信が見えた気がします。

例えば日本でも「24」をパクった映画とかドラマとか結構ありましたが、軒並みクズなんですよね。当然のようにオリジナルは超えられないわけです。パクリ自体はスタート地点としては決して間違っていないと思いますが、自信がないから(もしくは考える頭がないから)そのまま安易にフィニッシュまで持って行っちゃって大怪我するのが大体の日本の制作物。

でもこの映画はそうじゃない。

日本人そのままの姿で認めてもらいたい、という願望が見える映画というか。ただ「ありのままの姿で認めてください」っていうのは、やっぱり地力がないとできないことなので、それなりの自信がないと作れないんですよね。実は。この映画にはそういう自信が間違いなくあったと思うし、それをさらりと漂わせる程度に見せる辺りが、女性監督らしいセンスなのかな、という気がしないでもなかったです。

その自信というのは、イコールでストーリーについても当てはまるんですが、もう映画の主題自体が「等身大の自分を受け入れてもらうこと」だと思うんですよね。「かもめ食堂」のコンセプト然り、サチエの人生観然り。

ただ、「等身大の自分を受け入れてもらう」には、上に書いた通り相当の自信か開き直りスキルが必要なわけで、「飾らない自分を認めてもらって、肩肘張らない生活を送る」っていうのは相当難しいことだし、きっと日本、とかく都会にいる限りは無理なんですよね。時間に追われたりがんじがらめの日常に生きるのが基本になっちゃうから。

だから、その舞台をフィンランドに持ってきて、日本では成立しないけど日本人が潜在的に望んでいる“夢”を描いた映画なんだと思います。

日本人が好きな家庭料理は、「飾らない自分」の投影。知らない土地=知らない人たちの前でも、自分は変えないで、その良さを認めて欲しい、という願望。それが認められて繁盛すれば、自分、ひいては日本人の肯定にもつながるんだ、と。こういう生き方したいでしょ? すればいいんじゃない? っていうメッセージ。

もう一つ、重要なのが「答えを出さない」。ところどころでいろんなエピソードが登場しますが、特に結論は出さないんですよね。「結局あれなんだったんだよ」みたいな形ではなくて、なんとなく、ゆる~くいなしていくような流れ。「あれ嬉しかったよね」とか「なんでああなったんだろうね」とかそういう答えも問答も無くて、受け入れるだけ。受け入れて、のほほんとやり過ごしていく感じ。この雰囲気が絶妙。ケセラセラ…はもちろん日本人とは関係ないですが、そういう雰囲気。

この辺はきっと、今の日本人に対する戒めというか、「もっと緩やかに、時間をかけて煮込んでもいいんじゃない?」みたいなメッセージに見えました。「先延ばし」って言葉の印象は悪いけど、でも逆に「今すぐ決めないと」ってことはそうそうないんじゃないですか? っていう姿勢とでも言いますか。この穏やかさがすごく心地よくて。昼間観てたら寝てたな、っていう。いや良い意味で。

“かもめ食堂”の繁盛、そして周りの拍手は、「日本人は日本人らしく、そのままで素敵なんだよ」という“日本人から日本人へ”のエールだったんじゃないでしょうか。そういう意味では、ものすごく「邦画」。

個人的には今週結構忙しかったので、良い感じにホッと一息つけさせてもらいました。「空気感」を大事にできる人には、素敵な映画だと思います。

このシーンがイイ!

なんてこと無い序盤のシーンですが、最初にミドリがサチエの家に泊まるとき、肉じゃが的なものが登場するんですよね。コレ見ると、やっぱり日本人としては「いいなー肉じゃが食いて~」ってなるんですよね。あそこで「ああ、俺やっぱ日本人だな」って再認識して、この映画の意味を知ったような気がしたので、さらりとしてるものの、この映画的にはすごくいいシーンだったな、と。

ココが○

上に書いたように、非常に穏やかにシンプルに、でも強力に価値観を提示した映画だと思いますが、その価値観がすごく良かった。

お金の話も、ミドリが給料いりませんって言った時ぐらいで後は全然出てこないし、ごくごくうっすらと、「お金がすべて」という価値観のアンチテーゼにもなってたような。考えすぎ?

あと、最後まで女性陣の関係性が変わらないところ。ずっと敬語で話すんですよね。そこがイイ。なんかそこでまた日本人らしい感じがより強く出てた気がします。

ココが×

当然ながら、非常に地味です。

それと、実はなにげに“映画スキル”が必要な映画だと思います。さらりと観てるだけではさらりとしすぎてて何が面白いのかよくわからないんじゃないかと。でもちょっと深く観よう、っていうスキルがあると、裏のメッセージがいろいろ見えてくるような。なんというか、スルメみたいな映画。

MVA

もーね、僕は完全にアノ世代なので、(他でもよく見る組み合わせではあるものの)小林聡美ともたいまさこのコンビはたまらないですね。やっぱり。レイちゃんどうしたのレイちゃん! って何度思ったことか。かと言って片桐はいりの代わりに室井滋が出てきたら「やりすぎ」だとは思うでしょうが。と、言うことで今回はこの方。

もたいまさこ(マサコ役)

小林聡美もすごく良かったんですよね。真っ直ぐで、でも大らかさがあって、かわいさもあるし。この映画的には、いかにも主役だし、カンペキだったと思います。

が、でも。

もうなんなんですかね、後ろ姿だけで笑えるというこの人のすごさ。かもめに餌をやる動き。存在感がすごすぎる。かーや。「きみちゃん!」っていつ言うのかとヒヤヒヤしてましたが、言いませんでしたねやっぱり。

あと“コーヒーおじさん”もいいなぁと思ってたんですが、この映画の公開翌年にお亡くなりになったそうで…ビックリ。この人も良い存在感があったんだけどなぁ…。ご冥福をお祈りします。

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