映画レビュー1400 『空手ガール』
今回はGW特別企画(で観たよ)ということで、かねてより観たいと思っていた一部界隈で大変な話題になったこちらの映画です。
おそらく日本で字幕なり吹き替えなりの「通常鑑賞」する手段は無いんですが、最近になってYouTubeに全編転がってる(違法なのかどうかも定かではない)ことを知ったので自動翻訳を使って観てみました。
なので当然字幕についてはかなり怪しい感じではあったんですが、それでも話を理解するには十分なレベルだったのでテクノロジーサンクスの巻。
なお人名はこれまた自動翻訳に頼ったものが大半なので、読みがあっているかは不明です。
空手ガール
オルハン・アクソイ
エルドアン・トゥナス
ファト・オズリュール
フィリズ・アキン
エディズ・ハン
ハヤティ・ハムザオール
オスマン・ビュレント・カヤバシュ
ヌバール・テルジヤン
1973年12月1日 トルコ
85分
トルコ
YouTube(ウルトラワイドモニター)
間違いなく面白いがオススメはできない例のパターン。
- 話すことが出来ない娘は父が育てた花を売り、その稼ぎで手術をしようとお金を貯めていた
- やがて脱獄した凶悪犯5人が偶然親子の家に訪れ父を殺害する
- 復讐を誓った娘は知り合ったイケメンに銃を習い、さらに空手も修得する
- 「映画史上最悪の死亡シーン」で有名な怪作
あらすじ
数年前にTwitter上で話題になり、僕も涙が出るほど笑った「映画史上最悪の死亡シーン」で有名な一本。想像通りにひどかったんですが、それでも想像ほどひどくない面もあり(どっち)、意外と観られたなというのが率直な感想です。
言葉を話すことが出来ない女性、ゼイネプ(フィリズ・アキン)は父が育てた花を街頭で売り歩き、それで食料を買ったりして非常に慎ましい生活を送っております。
父はそんな健気な娘を誇りに思ってはいるものの、言葉を話せない彼女を不憫にも思っており、またいつか「パパ」と呼んでもらいたいという願いもあってお医者さんへゴー。「言うほど可能性がないわけじゃないよ」との言質を取りますが、しかし手術には高額の費用がかかる模様。
そこで2人は地道に花を売ってはお金を貯め、来たるべき手術に備える毎日を送っているのでした。
一方刑務所からは凶悪犯5人が脱獄、テレビや新聞を賑わせますが…やつらは運悪くゼイネプ不在中に彼女の家へやってきてしまい、隠していた手術のための貯金も見つけられ、挙げ句父は殺されてしまいます。
その日も花を売って帰宅したゼイネプは男たちに襲われかけますが間一髪で警察が到着、犯人たちは逃げていきますが残ったのは父の死体。
父を殺されたショックから「復讐してやるー!」と(文字通り)叫ぶゼイネプ、手術は必要なくなったけどしんどいよね…ということで父の仇を討つべく、急に拳銃の練習を始めるのでした…あとは観てね…!
ネタバレ炸裂します
先に書いておきますが、今回に限り
- 普通に観る手段が無い
- そもそも観る人もほぼいない(と思われる)
- ツッコミどころしかない
- どう考えてもネタバレを気にするような映画でもない
ためネタバレ全開で書きます。ご承知の上ご覧ください。
まず最初に「父」と書いていますがこれも実際に父なのかは不明なようで、サイトによってはお爺さん(祖父という意味ではなく見た目だけのニュアンスかも)だったり養父だったりします。養父だったら普通に考えて父でいいんじゃねーのと思うんですが。(ゼイネプ結婚してないし)
まあでも自動翻訳とは言え何度も「父」って言ってたし話的にも父で間違いないと思うんですけどね。「パパって呼ばれたい」って言ってたし。ただ何度も謎に「購読」って出てくるし自動翻訳も一切信用はならないんですが。
母親の話はまったく出てこないんですが、おそらく早くに亡くしているんでしょう。別れた、って感じではなさそう。なんというか全体的に薄幸っぽさを醸し出してるし。
必死に貯めた手術費用が奪われる展開はあの胸糞映画を思い出してゲンナリしちゃったんですが、それはさておきお父さんは虚しく惨殺されてしまいまして、そのショックから言葉を話せるようになっちゃうので「えっ」とまず軽くジャブですよ。貯金なんだったんだ…と。でもまあこれはショックがデカすぎて、でなんとなく納得もできます。
彼女はその後警察に聴取を受けるんですが、この時点で「自分で復讐する」ことを心に決めていたのか、犯人の写真を示されても「知りません」と頑なに証言を拒み、帰宅したら銃の練習を始めます。いきなり。あの頭巾被って健気に花売ってた娘と人の良さがにじみ出た父親が住む家のどこに拳銃があったの!?
さすがに最も大切にしていた手術費用を強奪されている以上、買うお金があるとも思えません。トルコでは花みたいに種を植えると銃が生えてくるのかな?
とりあえず一旦その辺の疑問は置いといて先に進めますが、ゼイネプが銃の練習を始めると今度はイケメンが「雇ってくれ」って急に来ます。全然人不足っぽい感じもないのに突然。
そもそも自宅の庭とは言え銃をガンガン(銃だけに)練習してるところに不用意に近付いてくる男も怖いし、「きゃー!」って急に撃たれたりしそうで男の方も怖いと思うんですがそういう懸念も無く、とりあえず銃を構えて「出てって」と男を追っ払ったゼイネプは即座に銃の練習を再開、すると途端にガンガン()当たり始め、振り返ると男が銃の名手ぶりを見せつけていましたとさ。
そんな成り行きから彼に銃を教わることにしたゼイネプ、ここからは本格的に銃練習フェーズに入るんですが…男の立ち位置が的に超近くてすごく気になるんですよ。絶対当たるじゃん、って。死にたいのか!?
おまけに振り返ると着てるセーター(?)の肩辺りに穴開いてるんですよね。すでに当たった後なのか!?
彼はゼイネプ宅の近くなのか地下なのか謎の場所に寝泊まりしているんですが、ある夜ゼイネプが寝静まっているところに例のヒゲ(映画史上最悪の死亡シーンの男)が夜這いにやってきて「助けてー!」と叫ぶ事件があり、聞きつけた男はダッシュで助けに来る…んですが長い! 来るまでが長い! めっちゃ長距離走る! そんな長いのに聞こえるのすごくない!?
そんなこともあったのでゼイネプは「自らを守る」必要があり、そのために空手を習えと男に言われて入門。型とかひどいもんですがセンスがあるらしく即座に達人級になります。
そしてその後彼とゼイネプは例によっていい感じになるんですが…実はこの男警察官でして、脱走犯のうち1人を捕らえるお手柄を挙げた際に撮られた写真が新聞に載ったことでゼイネプに素性がバレてしまい、「騙したのね!」と糾弾された直後、急に男のヒゲが全剃りされていて「えっ誰」と混乱します。なんでこのタイミングで剃ったの?? 頭丸める的な意味合いでヒゲ剃るのか??
ヒゲが無くなってスッキリした男はまだスッキリしていない例のヒゲを狙い、その恋人らしきダンサーをダシに夜のスタンドに呼び出しますが不意を付かれ敗北。ヒゲがふわっと投げたまったくコシの入っていないナイフがミラクルぶっ刺さりで致命傷を受け、なんと死亡します。絶対嫌だあんなナイフで死ぬの。
父に続いて彼氏の復讐も背負うこととなったゼイネプは警察に赴き、いよいよ協力を仰ぐ…のかと思いきや入った次のシーンに出てきたときには警官の制服を着ていて即警察に就職してました。斬新!
しかも「彼の後を継ぎたい」と申し出てそれなりの地位にあったっぽいイケメンの後釜に即座に据えられ個室を与えられる高待遇。進行が早すぎてめまいがしますが、しかしこのおかげで(雑な作りだけど)飽きないという妙な効用もあり、意外と観られちゃう不思議な映画です。
その後なんやかんやあって問題の「映画史上最悪の死亡シーン」に突入。あのバズった動画は実は「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーーーー」って叫びが後付けされているので、実際は叫んでおらずもっとマイルドです。マイルドなんですが…それでもやっぱりあの「撃たれてからスローでしばらく吹き飛んだ雰囲気を出しつつようやく自分のお腹辺りで血糊を握って血が出る」展開の遅さは爆笑です。これはもう本当に必見。「自分で握って血糊を出す」ひどさに目をつぶったとしても撃たれて吹っ飛んでるのに血が出るのが遅すぎる。その後続けざまに2発受けますが(当然)血糊のストックが無いので血も出ません。シーンが切り替わるまで出血は我慢。いいね!?
前方から撃たれてるのに(着地位置を目で追って確認してから)横に吹っ飛んでベッドに転がる辺りも最高で、そしてもちろんなかなか死なない。改めて観てもめちゃくちゃ笑いました。
このシーンだけ観ると「(空手ガールなんだから)空手使えよ」と言いたくなるんですが、実際は全編通して観ていると先に銃を練習してるしむしろ空手のほうがいらねーだろ感が強い話なのでそこは気になりませんでした。マジで空手の導入意図が謎。ネットで「空手ガール」を検索すると先に出てくる「KG カラテガール」の武田梨奈に謝れよ!
そして彼は実はラスボスではないという衝撃の事実。中ボスです。
ただ文字通り「男を刺した」腰抜けナイフ投げといい、妄想で舌なめずりするシーンといい全体的に演技が脂っこいので間違いなくラスボス級の存在感があります。逆に言えばラスボスの存在感が薄い。
そのラスボスは赤ちゃんを人質に取って逃げるんですが、この決着もかなりひどいので必見。最後ゼイネプと赤ちゃんの取り合いをするんですが(演技してて)埒が明かないと思ったのか明らかにスッと引き渡した感があり、謎の感動を呼びます。
あと余談としてはそれを見守る警察署長のルックスが今は亡きお父さんに酷似しており困惑。「えっお父さん?」とこれまた混乱しました。
レアアチーブメントゲット
駆け足で振り返りましたがそんな映画です。いやー笑った笑った。
評価としては非常に悩むところで、これも例によって間違いなく「ウォチパで観たら最高」な映画でしょう。超やってみたい。もうウォチパ自体終わっちゃったけどさ…。
ただ当然「映画として」は雑も雑でひどいのも事実なので、まあ間取って(?)60点ぐらいかな、という雑な評価です。
ただ90分無い絶妙な短さ故に自動翻訳だったとしても「ちょっと観てみようかな」とギリギリ思える絶妙なラインを構築しており、実際かなり怪しい翻訳でもそれなりに話が理解できて面白く観終えたので事前に予想していたよりは全然良い経験になったと思いますね。マジで。観てよかった。
何よりもある意味映画好きにとっては一つのアチーブメントみたいなものなので、観終わったところで取得率が(ほぼ間違いなく)1%未満のアチーブメントがゲットできたぜと思うと妙な優越感もあり、いつか機会があったら「俺は空手ガール、ちゃんと全編観てるからね」とマウントを取っていきたいと思います。ありがとうございました。
このシーンがイイ!
普通に選べば「映画史上最悪の死亡シーン」で間違いないんですが、もうこれは有名すぎるのでそこ以外で言えば上で挙げた「助けを求められてから向かうまでがやたら長いイケメン」のシーンを挙げたいですね。気付きから到着までが長すぎてなんならもうセックス終わってるだろっていう。
あと腰抜けナイフもめっちゃ笑ったしあそこも必見です。マジで声出して「うそーん」って言っちゃったよね。
ココが○
やっぱり妙な味があるというか…Z級ですが「箸にも棒にもかからない」ような映画ではないんですよね。結構観られちゃうという。
もう散々書いてますが、やっぱりこんなしょうもない映画と比べても僕は圧倒的に「ディナーラッシュ」の方がクソだと思います。笑えるだけ全然良い。
ココが×
中途半端な空手の導入がマジで謎。見せ場として何度か空手シーンもあるんですが、どれも「はいアクション、はいカット」って声が聞こえてきそうなぐらい段取り感が見えてきてひどい。(それがまた面白いんだけど)
MVA
オープニングとエンディングでまったく人が変わって見えるゼイネプさんの熱演も捨てがたいところですが、やっぱりこの映画はこの人の存在を抜きには語れません。
オスマン・ビュレント・カヤバシュ(フェルー・デュラック役)
役者名も役名も自動翻訳なので正確なところはわかりませんが、例のヒゲ男です。
なにせ観ようと思った動機があのシーンなので最初から「出た!」と存在感が強すぎて、もう出てくるシーンはこの人しか観てないぐらいの勢いでしたがそれに真っ向から応える脂っこい演技が最高でした。
「悪名は無名に勝る」じゃないですが、もしかしたら今となってはトルコ人俳優で世界一有名な人かもしれません。セルフオマージュとかしてないのかな。他の映画も観たいような観たくないような…。