映画レビュー0915 『不思議惑星キン・ザ・ザ』
いやぁ、ようやく観ることが出来ましたよ。一応これもオススメされた映画ではあるんですが、ずっと観たかった映画の一つでもあります。
タイトルだけはかなり有名な…いわゆるB級映画の有名所ではないでしょうか。
不思議惑星キン・ザ・ザ
ゲオルギー・ダネリヤ
レヴァズ・ガブリアゼ
スタニスラフ・リュブシン
レヴァン・ガブリアゼ
エフゲニー・レオーノフ
ユーリー・ヤコヴレフ
1986年12月1日 ソビエト連邦
135分
ソビエト連邦
TSUTAYAレンタル(DVD・TV)

ひどく緩いしチープだし飽きてくるんだけどそれもまた良い。クー。
- 地球から遠く離れた砂漠の星が舞台
- 高度な文明を持ちながらみすぼらしく謎の文化を持つ宇宙人たち
- 全体的にシュールでチープ
- 真似したくなる謎のキュートさ
あらすじ
ソ連の映画は…「懺悔」とか強烈に覚えてますが、当然ながらそんなに観る機会はありません。やっぱり社会主義国家ということもあって検閲も相当なものだったようだし。
その検閲をうまく掻い潜って世に送り出されたこの映画、それなりに当時のソ連を風刺した内容のようなんですが、さすがにその辺の事情に疎い普通の日本人(おれだぜ)が観たところでその風刺するところもよくわからず、単に「ゆるいSF」ぐらいにしか感じられないものの…そのゆるさ、チープさがなんとも言えない味わいを醸し出していて、なるほどこれは有名なだけあるなという感じ。
めちゃくちゃ面白かったかと聞かれれば正直微妙で、期待していた分「こんなもんか」というような感覚もあったんですが、それでも「面白い」というよりは「好き」な映画だなと。いや好きだわめちゃくちゃ好きだわこれ。
開幕の舞台は1980年代のモスクワ。バイオリンを持った一人の青年(ゲデバン)が、「そこに異星人だって言ってる裸足の人がいるんですけど…」と一人の中年男性(マシコフ)に声をかけるところから始まります。
彼の元へ歩み寄った二人は、いろいろ聞くも(当然ながら)異星人と信じることもなく、彼が言うところの「座標さえわかれば元の星へ帰れる転送スイッチ」を試しに押してみたところいきなり見知らぬ砂漠の星へ転送されてしまいます。
そこはキン・ザ・ザ星雲にある、砂漠の惑星「プリュク」。程なくして1台の宇宙船(ぺぺラッツ)がやってきて、二人のみすぼらしい格好をした男たちが降りてきてポーズを取って一言、「クー」。
彼らは「クー」と「キュー」しか言葉を発しない異星人なんですが、同時に高度な文明と知能を有しているらしく、相手の思考を読むことが可能だそうで、少しするとロシア語を話し始めます。
彼らに頼るしか無い(地球からやってきた方の)二人はあーだこーだやりながら、果たして無事帰ることができるのか…というお話です。
チープさが愛おしい
一応SFではあるんですが、舞台はほぼ砂漠のみで出てくる機械類はひどくチープ(だけど高性能)だし、一部編集のつなぎも笑っちゃうぐらいに不自然だしで、80年代の映画ということを考慮しても全体的にものすごく安っぽい。そしてやり取りからしてとてもシュール。
ただそれがもうなんとも言えない愛おしさを感じるんですよ。ちょっと「未来世紀ブラジル」辺りと似たようなチープさを感じたんですが、あれ以上にもっとチープだし、そのローテク感がもう好きな人には堪えられないと思います。もうずっとニヤニヤしちゃう感じ。チープすぎて。
それは別にバカにして観てる感じではないんですよ。もう単純にチープさが良いなぁ、好きだなぁって感じでニヤニヤしちゃう。
いわゆるヘタウマ的な良さってやつでしょうか。上手いのもそれはそれで圧倒されるものですが、スキが見える緩い良さって言うのもあるじゃないですか。
その辺りの「愛されチープ」感が絶妙な映画だと思います。そして好きにさせたらもうこっちのもん的な強さがあるなと。
真似したくなるキャッチーさ
また今でも…なのかはわかりませんが、ロシアの人たちはこの映画の真似を良くするそうで、そんな風に愛されるのもまたよくわかる、真似したくなる所作のおかしさも大きなポイントでしょう。
僕ももうこの映画を観たぞ、って人とは絶対に「クー」って挨拶しちゃうと思う。あのポージングで。やりたくなっちゃうキャッチーさがあるんですよ。これ観た人は絶対共感してくれると思うんですが。
独自の挨拶(言語)がある映画は珍しくないと思うんですが、それを真似したくなるぐらいにかわいくてやりやすくて劇中でも効果的に使いこなしている映画、となるとあんまり記憶にないし、本当に不思議な魅力とキャッチーさに溢れる映画だと思います。
最初に「クー」って挨拶してくる男二人なんておっさんなんですけどね。普通の。でも不思議なかわいさがあるっていう。なんなんだろう、この感じ。
おそらくは当時のソ連の社会風土や階級社会を皮肉っている部分があるんだろうと思うんですが、その皮肉の部分が滑稽でどこかかわいらしいので鼻につく感じもないし、むしろ愛すべき世界になっているのがなかなか他にない雰囲気で、すごくじっくり惹きつけられながらじっと観る感じでもないのに「ものすごく好きだわー」って観ちゃう感じ、ありきたりですが「味がある」世界観が最高でした。クー。
謎のオンリーワン感
まあもうこの頃のソ連の映画でありながら今現在DVDどころかブルーレイも販売されている、って時点でどれだけこの映画がたくさんの人に愛されているのか推して知るべしってやつでしょう。欲しい気持ちもよくわかる、妙に癖になる不思議な映画でした。タイトルにも不思議ってあるし。
おそらくこの映画は「当時の監督がソ連(という国家)に対して何を言いたかったのか」とか考えながら観るのがきっと正解なのかもしれませんが、そんなの気にしないでダラダラ観て「なんか好きだわー」って楽しみ方のほうが一般的だしそれで良いんじゃないのと思います。そう観ても楽しめるぐらいに間口が広い、オンリーワンの魅力を持った映画ではないかなと。
思っていたほど突き抜けた良さがあるわけではなかったので、面白いか否かは人によるとは思いますが、しかし一度は観てみて欲しい、そして観てみた人とは一緒にクーと挨拶したい、そんな映画でした。
このシーンがイイ!
エンディングもすごく好きだったんですが、一度だけ吹き出すぐらい笑ったのが「サボテンになっちゃう」って話のところ。設定が唐突すぎて笑いました。
ココが○
このB級感は他ではそうそう味わえないと思います。そして妙なかわいさ。
世界的にはちょっと「マッドマックス」っぽい気もする(類似点は砂漠なだけじゃねーの感もあるけど)んですが、アレよりもずっとずっとゆるくて辛くない感じがイイ。登場人物みんなどこか抜けてる感じで。
ココが×
すごくメッセージ性が高いとかそういうことも(一見した感じでは)ないので、あまり期待せずぼんやり観るぐらいがちょうどいい気はします。
あと序盤はどう観てもマシコフの方が食えない嫌な奴だったのに、急にゲデバンが悪いやつにされていっているのが割と謎でした。ちょっとかわいそうな気も。
MVA
マシコフ役のイケオジはちょっとダニエル・クレイグっぽいし、異星人の片方はちょっとビル・マーレイっぽいという見ようによっては豪華キャスト感がありましたが気のせいです。
みなさん良かったんですが…選ぶとしたらこの人かなぁ。
エフゲニー・レオーノフ(ウエフ役)
異星人の小さい方(チャトル人)。この人のクーが模範的クーだと勝手に思う。綺麗なクー。それが何なのかはわからないけどきっとそう。
僕も黄色ステテコのために今からでもカツェを集めてエツィロップに取り入りたいと思います。でも我慢できなくてキューしちゃって終身エツィフの刑食らいそう。


