映画レビュー0966 『クロース』

去年は「クリスマス・クロニクル」という傑作クリスマス映画を世に送り出してきたネトフリ、今年は聞こえてくる評判からこの映画なのかな、っつーことで今年のクリスマス映画はこいつに決めた by 石立鉄男。

古いよ。

クロース

Klaus
監督

セルジオ・パブロス

脚本

セルジオ・パブロス
ジム・マホーニー
ザック・ルイス

出演

ジェイソン・シュワルツマン
J・K・シモンズ
ラシダ・ジョーンズ
ウィル・サッソー
ネダ・マルグレーテ・ラッバ
セルジオ・パブロス
ノーム・マクドナルド
ジョーン・キューザック

音楽

アルフォンソ・ゴンサレス・アギラール

公開

2019年12月8日 各国

上映時間

96分

製作国

スペイン・イギリス

視聴環境

Netflix(PS4・TV)

クロース

できすぎた話だからこそ、現実もそこに近づけるように努力する大切さを思う。

8.0
サンタクロース“始まり”の物語
  • 劣悪な環境の島に放り込まれたボンボンの郵便局員が帰るために起こした行動でサンタ爆誕
  • 現在のサンタクロースに関わるエピソードが生まれた理由付けとして綺麗な物語
  • うまくいきすぎなマンガ的展開ではあるもののその素直さが身に染みる
  • 老若男女問わず楽しめる良作

あらすじ

ということでアニメです。書いてて思いましたが「マンガみたいな展開」とは言っても「アニメみたいな展開」って言わなくないですかね? 言う? どうでもいい? いやどうでもいいねこれはうん。

キャラデザがかなりアメリカンな気がするので絵柄は好みが分かれそうではあります(実際僕も見た目としてはそんなに好きではなかったです)が、話の内容はしっかり感動、きっちりほっこりというなかなかの良作。これもまた新たなクリスマス映画のスタンダードとしてその名を刻んじゃっても良いかもしれません。

なんと言ってもアニメなので(小さい)子供と一緒に観やすいのが良い点ですね。

主人公はジェスパーという見習いの郵便局員。この映画の世界における郵便局員は軍隊のような厳しい訓練の果てに拝命するお仕事らしく、エリート集団的な雰囲気が漂っているんですが…主人公のジェスパーはこの「郵便局アカデミー(名前うろ覚え)」の所長(?)が父親のため、親の七光り丸出しで偉そうにふんぞり返って過ごしております。

そもそもが「別に郵便局員になりたくないし」ってな感じで半ば無理やり連れてこられたのか、訓練や実習も超いい加減で「さっさと失格の烙印を押して家に帰してくれよ」ってな状態ですよ。

やがて父に呼ばれたジェスパーは「ようやく家に帰れる」と喜んだのもつかの間、実際は郵便局員として任命されることとなり、その配属先は泣く子も黙る悪名高き島・スミレンズブルク。

彼はそこで「1年間に6000通の手紙の配達を請け負うことができたら帰還、できなかったら勘当」という厳しい任務を与えられます。もうお父さんとしても目に余るぞコノヤローと。ええ加減にせぇよと。

赴任先のスミレンズブルクは2つの部族が常に争っている険悪な場所で、さらにあてがわれた住居は壁も天井もスカスカでろくなものではなく、いやこれ二晩も寝れば死ぬでしょ的なところなんですが、なんだかんだ適応しつつ暮らしを始めるジェスパー。

しかし郵便なんて一切無い島故に序盤からすでに勘当やむなし的な雰囲気が漂っているハードモードの中、ある日訪れた木こりの家に大量のおもちゃを発見し、さらに子供たちも巻き込んで、ジェスパーは一計を案じることにしたわけですが…あとはご覧ください。

サンタさんに手紙を書くという風習

この映画は、日本ではそこまで一般的ではない(?)ものの欧米ではメジャーな「サンタさんに手紙を書く」風習の元となる(架空の)エピソードを描く映画になっていると同時に、そもそものサンタクロースの始まりであったり、「いい子にしているとプレゼントがもらえる」話だったり、ありとあらゆる「サンタクロースと言えば」的なイメージの根源を描く物語になっております。ただサンタさんの赤い服はよく言われるようにコカ・コーラの広告のせいなんですがその辺はスルーしてます。

アニメ映画らしく、街のいがみ合いも様々なエピソードも実にマンガっぽい、ファンタジー色の強い内容になっていて、どこか絵本を読んでいるような…大人にとっては懐かしさを感じるようなエピソードの“純度の高さ”みたいなものが心地良い映画でした。

リアリティが無いから良いのかもしれない

当然ながらリアリティという部分はあまりなく、細かいことを気にすれば、例えば「どうやって生活してるんだよ」みたいな疑問は山ほど出てきます。

また当然、サンタさんの原初の話なので最終的には「イイハナシダナー」となるんですが、そうなっていく過程もかなりうまくいきすぎな面はあり、物語の作りとしてはアマアマですよアマアマ。大甘。

ただねー、だからこそ良いんだと思うんです。「現実味がない」って切り捨てちゃうのは簡単ですが、やっぱりいろいろおかしくなってきている今の世の中、せめて作り物は綺麗事で固めたって良いじゃない、と思うわけですよ。

最近は(特に日本で)経済最優先、損得勘定が行動原理の人間ばっかり目立つ世の中になってきた今だからこそ、あえて青臭い理想を語ることの重要性ってきっと数年前よりも増してきているんじゃないかと思うんですよね。個人的に。僕がそっち側を好む人間だから、っていうのもあるんでしょうが。

この物語のキーマンは“子供”なんですが、まだ無垢な状態の子供たちにどんな教育をして、どんな人間に育ってほしいのかを(間接的に)掲げることの大切さを僕はしみじみ感じましたね。歪んでしまった大人に無い素直さを持っている、そのこと自体が大きな可能性なんだなという。

ただ「どんな教育をするか」というのは作為的なものになってしまうのでこれまた難しいんですが。それこそヒトラーのように子供たちを洗脳してエリートに育て上げようとする人間もいるわけで、“大人にとって都合のいい存在”に育てるのではない、その子自身にとって大切な学びを得られる環境を用意してあげることができるかどうかが重要なのかもしれません。

この映画は別にそう言う話でもないんですが、そんなようなことにいろいろと思いを馳せる、広がりのあるお話だったような気はします。

浄化されるようなお話

少し話が逸れましたが、そんな感じで割と根源的な問題を考えたくなるような素直さと、誰にも共通で響く感情面を持った映画ではないかなと。

誰もが知っているサンタクロース、その始まりの話はこんな話だったのかもしれない…と観ていくうちに、観客も純化して素直になっていくような、浄化されるようなお話でした。

それ故に裏切りはないし定番の流れではあるんですが、そうじゃないと観てる方もやさぐれちゃうしこれでいいんでしょう。

安心して誰にでもオススメできる、そしてできたら親子で観て欲しい、まさにクリスマスに観るべき一本と言っていいでしょう。

まあおれは例年通り今年も一人だからやさぐれてるけど。結局。

ネターバレ

最後のクロースの消え方から察するに、彼は人ではない存在として描かれていた、ってことでしょうか。

ここは少し不満ではあったんですよね。綺麗に逃げようとしてる感じがして。ただ今も世の中にサンタはいることになっている以上、こういう話にせざるを得ないのもわかるんですけどね。少しだけモヤッとしました。

クロースが亡くなることで後を継ぐ人間が出てくる…それはつまり主人公になるんでしょうが、そうして“代を経ている”形を見せればまたちょっと違った印象になったかもしれませんね。

ただサンタクロースって実際各国の伝承的にはどういう存在なんだろう? ずっと同じ人がやってる、ってことになってるのかなぁ…。

だとすればこのエンディングもやむなし、と言ったところでしょうか。

このシーンがイイ!

空飛ぶソリのくだりとか好きですねー。ちょくちょくサンタの由来を挟んでくるサービス精神が素敵。

ココが○

世にサンタの話は数あれど、根源を描く物語は意外と目にしない気がするんですが、それを真正面から綺麗にきっちり描き、サンタの小ネタもたくさん入れ込んでしっかり「始まり」を作り上げたのは見事だと思います。良い方のジョーカーみたいな。

ココが×

贅沢な話ですが、想像を超える深い感動にまでは至らなかったのが少し残念。ちょっと事前に見た口コミでハードルが上がっちゃってたかも。

MVA

調べたら声の出演もなかなか有名所が多くてびっくりしましたが、ここは順当にこの人にしましょう。

ジェイソン・シュワルツマン(ジェスパー役)

主人公としてきっちり表情豊かな声の演技だったかなと。ちょっと嫌なタイプの人間なのがまた良かったですね。

クロースがJ・K・シモンズだったのも驚き。全然気付かなかった…。

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