映画レビュー0186 『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』

去年の「インセプション」観賞後、いろいろ情報を追っていった先に知ったこの映画、ずっと観たかったんですがようやく観ました。

エディット・ピアフ~愛の讃歌~

La Môme
監督
脚本
イザベル・ソベルマン
出演
音楽
エディット・ピアフ
公開
2007年2月14日 フランス
上映時間
140分
製作国
フランス・イギリス・チェコ
視聴環境
BSプレミアム録画(TV)

エディット・ピアフ~愛の讃歌~

フランスの国民的歌手、エディット・ピアフの悲劇的な人生を描いた伝記映画。

本人と映画の評価は別です。

5.0

軽くWikipediaも見ましたが、まさに数奇な人生というか、シニカルな言い方をしてしまえば「映画向きな人生」。そういう意図が見て取れてしまうような鼻につく映画だった、というのが正直な印象ですね。

映画自体は割合長尺ではありますが、集中して観られました。面白かった…というと語弊がありますが、映画として、それこそエンタメとして「見せる」という意味では、十分狙いは成功していたと言えるでしょう。そもそもの「実話」が壮絶な上に、主演のマリオン・コティヤールの熱演もあり、映画的には成功と言えると思います。

が。僕はそこが、「映画として」ものすごく気に入らなかった。

特に(実話なのでネタバレもヘッタクレも無いので書きますが)愛するマルセル・セルダンが飛行機事故に遭った、という話のシーン。

印象的な長回しでピアフを追い、錯乱状態で舞台へ…という流れですが、もう監督が「こうしたら面白いだろう、印象的だろう」と言っている姿が目に浮かぶ。

これはねー、フィクションならいいですよ。全然。ただ、事実なだけに、ひどくエディット・ピアフご本人の人生を弄んでる気がしてならない。実際、この事故の一報はまったく別の形でご本人に届いたようなので、事実は同じだとしても、シチュエーションがまったく違う創作なわけです。言ってみれば、エディット・ピアフの悲劇的な人生を、監督その他この映画の製作者たちの名誉を高めるために利用したという印象。

この映画が好きな人や、もっと柔軟な方々は「堅いこと言うなよ」って言いたくなるかもしれませんが、僕はことこういうことに関しては非常に敏感でウルサイのです。故人だから、事実が元だから何をしてもいい、というのは違うでしょう。

そこまでひどいことをしたわけでもないですが、よくよく観察していくと、どうしても画面の奥に、「すごい人生だよね、大変だったんだと思うよほんと」と上から他人事のように言ってる監督の立ち位置が見えてくるんですよ。これが本当に気に入らなかった。

僕の勝手な思い込みなので、監督はもっと真摯な気持ちでやってたのかもしれませんが、だとすればそれはそれでだいぶクリエイターとしてズレてるんじゃないかなーと思うんですよね。だからこそ「クリムゾン・リバー2」はつまんなかったんだよ! ボケ!

繰り返しになりますが、本当に数奇な人生を歩んだエディット・ピアフという人は、「話として人々の興味を惹く」のは事実だと思いますが、それを利用して「こういう構成にしたら“面白くなる”」って気持ちで描くのは失礼だし、その先に「この人の伝記は儲かるな」なんて思想が見え隠れするのは最低ですよ。人の人生を自分の功績にしてる。そんな映画に感じました。個人的感想を一言で言えば「胸クソ悪い」。

だからこそ評価は難しかったんですが、マリオン・コティヤールの熱演と、エディット・ピアフご本人の人生、そして歌に捧げる意味で、5.0。作品として、監督に対して評価するのであれば、あの「ハート・ロッカー」とまったく同じ印象。映画人として最低です。

このシーンがイイ!

一番印象に残ったのは、オープニングの歌の場面。歌声の力強さ、かっこよさに一気に惹き付けられました。掴みとしてはこの上無かったんじゃないかと思います。

ココが○

僕はエディット・ピアフについての知識はほぼ無かったので、当然彼女の歌も(曲自体は知ってるものが多かったですが)ほぼ初めてでした。が、さすが「国民的歌手」と言われるだけあって、ものすごく力強いし、とにかく心に響くものがありました。曲もイイ。ちゃんと聞いてみたいな、と思いましたねぇ。

ちなみに歌の部分は、マリオンが歌ってる説も見かけたんですが、どうやら極力当時のご本人の歌声を使ってるみたいです。とは言え、もしマリオンが歌ってるシーンがあったのならそれはそれですごいですね。

ココが×

上に散々書いた通り。この映画で「号泣しました」って言う人は、もうちょっと人の汚い部分を疑った方がいいかもしれません。素直すぎます。

MVA

これはもうこの人しか…。

マリオン・コティヤール(エディット・ピアフ役)

まさに女を捨てた怪演。

メイクと言い、動きと言い、最初に浮かんだ言葉は「憑依芸人」。完全に入り込んでなりきってる姿はある種コントのようでもあり、壮絶でした。

ビッグ・フィッシュ」での優しくてかわいらしいイメージとか全然無かったなー。こりゃ確かにすごかったですよ。それだけに、もっと真摯な映画にして欲しかった。彼女がかわいそうです。

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