映画レビュー1243 『セラヴィ!』

今回はJAIHOに戻りまして、気楽な映画が観たい自らのご意向に沿ってコメディを選択しました。

セラヴィ!

Le Sens de la fête
監督

エリック・トレダノ
オリヴィエ・ナカシュ

脚本

エリック・トレダノ
オリヴィエ・ナカシュ

出演

ジャン=ピエール・バクリ
ジャン=ポール・ルーヴ
ジル・ルルーシュ
ヴァンサン・マケーニュ
アルバン・イヴァノフ
バンジャマン・ラヴェルネ
アイ・アイダラ
スザンヌ・クレマン
エレーヌ・ヴァンサン
ジュディット・シュムラ

音楽

アヴィシャイ・コーエン

主題歌

『君の瞳に恋してる』
ボーイズ・タウン・ギャング

公開

2017年7月5日 フランス

上映時間

117分

製作国

フランス

視聴環境

JAIHO(Fire TV Stick・TV)

セラヴィ!

よくあるコメディ、でも詳細を知らない仕事現場は面白い。

8.0
ポンコツ従業員の手綱を握るウェディングプランナーはつらいよ
  • ベテランウェディングプランナーが取り仕切る、ある日の豪華な結婚式
  • 部下はポンコツだらけ、主役はエゴまみれでトラブルだらけ
  • 全員欧米らしい我の強さで日本にはないしんどさが面白いやらかわいそうやら
  • よくあるパターンではあるものの面白い

あらすじ

日本ではここまで我の強い人たちばっかりは想像しにくいですが、それでもこれは同職のウェディングプランナーの人が観たら「あるある〜!」ってなるんですかね〜。なかなか大変なお仕事ですね…。

ベテランのウェディングプランナーであり、かつブライダル企業の社長でもあるマックス(ジャン=ピエール・バクリ)が次に取り仕切る結婚式は、由緒ある城で行われる豪華絢爛な結婚式。

しかし準備のため当日現地に赴くと、右腕のアデル(アイ・アイダラ)へのメールの文面にミスがあったせいで早々に給仕が一人クビになっており、代わりに彼女が雇った給仕はズブの素人の問題児。

さらに司会として呼んだバンドのボーカル・ジェームス(ジル・ルルーシュ)はワンマンショー気取りで我が強く、アデルと大喧嘩。

そして本日の主役の一人でもある新郎のピエール(バンジャマン・ラヴェルネ)は注文が多くめんどくさいことこの上ない人物で、悩みの尽きないマックスでございます。

とは言え式は無事に終わらせなければなりません。その他にも立て続けにトラブルに見舞われる中、果たしてこの結婚式はどのような結末を迎えるんでしょうか。

キャラ設定の良さ

ということで、よくある「トラブル続きのコメディ」です。舞台は結婚式。

本当によくある、どこかで観たような内容ではあるんですが、それでも面白いしちょっとエスプリが利いているような気がしないでもないのはフランス映画だからでしょうか。エスプリってフランス語だし。「エスプリって何?」って聞かれても上手く答えられないんですけど。

主人公のマックスは老齢に差し掛かっているような結構なベテランさんなんですが、それ故かもうさながら「彼が全権を担う結婚式」の様相を呈していて、いちいち彼にお伺いを立てて決断してもらわないと物事が先に進まないような、まあこれまた(現実でも)よくある「一人にあらゆるものが集中しすぎてボトルネックになっている」現場の様を描いています。

観た感じ、マックスは特段ワンマンっぽくもないし、多少言い方に難があったりはするものの、まあ「仕切る人」としては別に悪くは見えません。それなりに有能で、それなりに決断力もあるし、伊達にベテランじゃないなという感じ。

ですがその下に連なる面々がまーポンコツだらけ。本当にマックスが気の毒になるぐらいポンコツ。

詳細は観てもらうとして、我が強かったりワケアリだったりそもそもの能力が低かったりで観ているこっちも胃が痛くなりそうな面々。とか言いながら他人事なので笑っちゃいますけども。

その上欧米の人たちらしく日本人よりも我が強いので、なんかミスってもあんまり「申し訳ないっす」みたいなのが無い。結構平然としててそこがすごいし笑っちゃうという。

あちこちでそんな人たちがトラブルをボンボンお見舞いしてくれるのでそりゃあマックスは大変でしょうというわかりきったお話なんですが、まあよくもこれほどまでポンコツっぷりを見せつけてくれるよねと感心するぐらい次々とトラブルが起きるので飽きません。

っていうか今までの結婚式が(多分)うまく行ってた意味がわからないレベルでみんなポンコツ。

とは言え嘘くさいわけでもなく、畑違いの人間からすれば「うわーこういうこと結構ありそうだな〜」と思える絶妙な等身大感がいいですね。

また特筆しておきたいのが新郎の小人物感。

観客の誰もが「なんでこんなのと結婚するんだよ」と思うこと間違い無しのエゴまみれな小物っぷりが最高です。マジでうざい。このタイプの顧客。

当然ながら結婚式は(違う人もいますが)「一生に一度」の一大イベントなだけに、それだけこだわりがあるのもよくわかるんですが…それにしても他人の迷惑を一切考えない自己愛しかない人物像は素晴らしいの一言。きっと金だけはあるんでしょうね。これだけのお城での式だし。

最初はイラついてましたが段々面白くなってきました。近くにいたら絶対嫌だけど遠目に見る分にはめちゃくちゃ面白い嫌なやつ。

またマックスの親友のカメラマン・ギイも絶妙に「悪い人じゃないんだけど」と枕詞をつけたくなる小物感がまた良い。

結局その他ポンコツくんたちもそうですが、みんなそれぞれキャラ設定が良いんですよね。完全なる悪人もいなければ完全なる善人もいない。それはマックスにしてもそう。

だからこそリアルだしジワジワ面白く感じられる妙な味のあるコメディになっているんでしょう。

そんなに数は観ていませんが、フランスのコメディは割とこういうキャラの良さで観られちゃう上手さがあるような気がします。その他も観てみたいですね。

「最強のふたり」コンビの映画

ちなみに監督・脚本のお二人は「最強のふたり」と同じコンビです。

その謳い文句もあって観たんですが、確かに看板に偽りなしといったところで面白かったです。感動はゼロだけど。

こういうコメディはいくらでも観られますね。気楽だし。

こうして楽なことばかり選んで生きていくことで自分もこの映画に登場するポンコツのようになっていくんでしょう。深い。

このシーンがイイ!

これはもうやっぱり式の一番の見所でしょうピエールの出し物のシーンですよ。もうひどすぎて。これをやりたいと思う時点でピエールの自己愛が痛いんですが、その結末もまたひどい。

っていうか(ほぼ)ぶっつけでこんなことやるなよ。

ココが○

なんでしょうね、本当によくあるコメディなんですが、バランスが良いのか全然観られちゃうんですよね。わかりきってるのに。

やっぱり基本的に「みんなダメ人間」なのがいいのかなー。安心しちゃうというか。

ココが×

目新しさはあんまりないし、美男美女が出てくる映画でもないのでそこはあしからずということで。

もう一つ言いたいことがあるんですが、まあネタバレにもなるのでやめておきます。ただあの展開だけはベタすぎてちょっとなーと思いました。アデル絡みのアレ。

MVA

フランス映画なだけにあんまり馴染みのない面々だったんですが、それ故に新鮮で良かったと思いつつ、まあ無難にこの人でしょうか。

ジャン=ピエール・バクリ(マックス役)

主人公のウェディングプランナー。

上に書いた通り、この人も完全なる善人でもないし悪人でもないんですが、とは言え能力がないわけでもないしちゃんと判断して悪くないリーダーだと思うんですよね。

それでも上手く行かないのは…下の人間の問題なのか、はたまた根回し不足なのか、その両方なのか…いろいろ考えさせられます。

彼の苦悩と苛立ちもすごくリアルで良い演技でした。

ちなみに昨年亡くなってしまったそうです。合掌。

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