映画レビュー1113 『マダムのおかしな晩餐会』

連続でウォッチパーティ。これは票数が惜しかったのと、個人的に観たいなと思ったので別個やろうぜと募集をかけてやりました。

マダムのおかしな晩餐会

Madame
監督

アマンダ・ステール

脚本

アマンダ・ステール
マシュー・ロビンス

出演

トニ・コレット
ハーヴェイ・カイテル
ロッシ・デ・パルマ
マイケル・スマイリー
トム・ヒューズ
スタニスラス・メラール
ジョゼフィーヌ・ドゥ・ラ・ボーム

音楽

マチュー・ゴネ

公開

2017年8月17日 オーストラリア

上映時間

91分

製作国

フランス

視聴環境

Amazonプライム・ビデオ ウォッチパーティ(iMac)

マダムのおかしな晩餐会

セレブもつらいよ。

8.0
セレブ晩餐会にニセセレブとして参加させたメイドにゲストが惚れちゃってさぁ大変
  • 人数合わせで無理矢理参加させたメイドに英国紳士が惚れてしまう
  • 諸々のすれ違いっぷりはアンジャッシュのコントのよう
  • それぞれ悩みも立場もあってのアレコレに人間臭さが見えるのも◎
  • エンディングは賛否ありそう

あらすじ

場面写真を見る限りではなかなか下ネタが多そうな面白映画じゃないかと期待していたんですが、思ったよりもちゃんとした(?)ドラマでなかなか味のある物語でしたね。主演はハリウッドでおなじみの面々ではありますが、フランス映画らしい内容だと思います。

トニ・コレット演じるアンは、夫のボブ(ハーヴェイ・カイテル)とパリで結構な住まいに暮らすいわゆるひとつのセレブです。ただ物語冒頭で飾っている絵画(最後の晩餐)を売りに出そうと話していることからもわかる通り、その生活は決して余裕があるものではなく、むしろ窮状が迫ってきているような状況の様子。

とは言えセレブなだけに対外的に良い顔をしておかないといけないという世間体もあるんでしょう、結婚記念だったかなんだったかで“ささやかな”晩餐会を企画しております。

本来の参加者は12人だった予定が、ボブと前妻の間の息子であるスティーヴン(トム・ヒューズ)が急遽飛び入り参加することになり、「13人は不吉よ!」と取り乱したアンは、家で雇っているスペイン人メイドのマリア(ロッシ・デ・パルマ)に「ただ座ってるだけで良いから」と無理矢理参加させます。

何度も断るもやむなく参加させられたマリアは、緊張からかワインをガブガブ、おまけに面白ジョークを振られてここぞとド下ネタをかますとそこそこウケることとなり、“素性”を知るアン&ボブ夫妻は渋い顔。

しかも事前にスティーヴンから「実は黙ってるけどマリアはスペイン王家の血筋なんだ」と大ボラを聞かされていたイギリス人のデヴィッドがあろうことかマリアに惚れてしまい、翌日にはデートのお誘いが…!

当然いい顔をしないアンですが、なんだかんだ黙認するうちに二人は盛り上がってしまいさぁ大変。

「僕は(由緒正しい血筋である)本当のことを知っているよ」とデヴィッドが言い、マリアはそれを「私がメイドであることを知って付き合ってくれてるんだ」と勘違いするむずがゆさ。

どう考えてもうまく行かない二人の関係ですが、果たしてどうなるんでしょうか。

セレブはセレブで大変だ

ということでマリアとデヴィッドの身分差違いの恋愛がメインにありつつ、その裏にはアンの“劣等感”とまでは行かない…“日常の違和感”のようなモヤモヤも描かれるコメディドラマです。

なにせセレブとは縁遠い人間としては「たっかいワインガブガブ飲んで良いご身分ですわね」と嫌味の一つも言いたくなるところですが、しかしやはりお金がある人にはある人なりの悩みがあるようで…セレブ交友に潜む不倫や嫉妬やその他ドロドロとしたものが口から出てくる頃にはフィルターを通って綺麗な言葉になって出てきます、的な“裏”の見えるやり取りはなかなか味があって面白かったですね。

上では笑顔で会話しつつテーブルの下では蹴り合っているようなバチバチのメンタルバトルが観られるセリフの数々は他ではあまり観られない気もするし、立場故の独特な虚飾が垣間見える生活と会話の数々に「セレブはセレブでめんどくせえな」とウンザリすることウケアイです。

観ていてすごく考えさせられたのが、主人公夫婦であるアンとボブの関係。

二人は特に冷え切っている風でもなく、日本の夫婦から考えると比較的良好な関係性っぽいんですが、でもそれぞれさして罪悪感もなく浮気に意欲的だったりするんですよ。かと言って冷めているわけでもなく、パートナーに求めてほしいと願ってたりもするわけです。

狙い通りに行かない夫婦関係の反発から浮気に走るのか、はたまた「それはそれ、これはこれ」で浮気に走るのかはわかりませんが、どことなく…仮面夫婦とまでは言いませんが、それぞれのソッチに関する事情は黙認してお互いのプライドを守りましょう、みたいな契約的な関係性が伺えたのが面白かったんですよね。

やっぱりセレブ=成功者だし対外的に良い顔を見せないといけない、「幸せですという顔をしていないといけない」感じがそこはかとなく伺えて、そのこと自体に対する鬱屈したストレスみたいなものもあるんだろうと感じられて。

それ故に少女のように恋愛を楽しむマリアに対してアンは嫉妬したりストレスを感じたりしていたんだろうと思うし、その心情がまたいろいろと考えさせて面白いなーと。

ジワジワ味わう大人向けコメディ

エンディングに関しては当然詳しくは書けませんが、解釈は観た人次第な作りになっているので、これについては好みが分かれそうだし、イマイチ世間的な評価が低い理由もその辺りにありそう。

やっぱり最後スパッとわかりやすい方が好まれるし、観ている方の「こうなってほしい」期待もあるだけに、そうならないと評価が下がりがちなのはやむを得ないのかもしれませんが、とは言えネットで見られる評価ほどつまらない映画ではないと思うので、僕としては一度観てみて欲しいなと思います。

一言で言えば大人向けのビターなコメディ、って感じでしょうか。結構腹の底が伺えるようなやり取りはジワジワ来るものがあり、じっくり味わうには良い映画だと思います。

マダムのおかしなネタバレ会

やっぱりラストどうなったのか、の解釈自体も分かれそうですが…。

ラストシーンは晴れやかな笑顔になるマリアの表情で終わりましたが、あれが「デヴィッドが待っていてくれたからの笑顔」なのか、はたまた「メイドという立場から解放されて自由を感じている笑顔」なのか、そのどっちかのような気がしますが、どうなんでしょうか。

表情的には後者な気がするんですよ。デヴィッドが待ってたら多分もっと大きく変化する、いわゆる“破顔”するような笑顔になる気がするんですよね。

とは言えじゃあ後者で決定ねとも言えないのは、そもそもメイドという処遇に不満を持っていた描写も無いし、アンの言葉ぶりから娘に対してもしっかり援助してもらっていたようなので、「あの家から解放されて嬉しい」のも結構唐突な気がして。

なので僕はやっぱりその前にデヴィッドがフリを入れていた通り、デヴィッドの姿を見ての笑顔なんじゃないかなと思いました。遠くに待っているのが見えて、「きっとあれはデヴィッドだわ」って期待を感じての笑顔かなと。

そうじゃないと、その前のデヴィッドのセリフもただのクソ野郎じゃねえかという話なので、やっぱり「ハッピーエンド」に言及している以上、メイドだろうがお迎えに行きますよという話なんじゃないかなーと思いますが観た方々のご意見はいかがでしょうかね!

このシーンがイイ!

プールサイドで何人か集まって会話するシーンが最高でしたね。笑顔で会話しつつドロドロした探り合いの会話、セレブこえーなっていう。

ココが○

会話=セリフがとてもいいと思います。そんなに難しくないのにちゃんと裏が見えて考えさせるセリフになっていて、会話劇としてしっかり楽しめるようになっているのが。

ココが×

やっぱり解釈の分かれるエンディングについては少しモヤモヤもするし、好き嫌い出るのは仕方がないかなと。僕は結構ああいうオチ好きなんですけどね。

MVA

トニコレさんは相変わらず安定した良さがありましたが、やっぱりこの映画はこの人でしょう。

ロッシ・デ・パルマ(マリア役)

主人公のメイド。

見た目的にはおばちゃんだし綺麗とも言えないんですが、表情の良さもあって魅力的に見えてくるのがお見事。

恋する乙女感もよく出てたし、しっかり役にハマったいい演技でした。

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