映画レビュー1407 『マルセル 靴をはいた小さな貝』
今回の映画はX的な何かでオススメだと流れてきたヤツで、雰囲気的にも好きそうだったので期待しつつ早速鑑賞しました。
マルセル 靴をはいた小さな貝
ディーン・フライシャー・キャンプ
ディーン・フライシャー・キャンプ
ジェニー・スレイト
ニック・ペイリー
ディーン・フライシャー・キャンプ
ジェニー・スレイト
ディーン・フライシャー・キャンプ
ジェニー・スレイト
ニック・ペイリー
エリザベス・ホルム
ジェニー・スレイト
イザベラ・ロッセリーニ
ローサ・サラザール
トーマス・マン
ディーン・フライシャー・キャンプ
レスリー・スタール
2022年6月24日 カナダ
90分
アメリカ
Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)
フリが丁寧すぎる。
- 「喋る小さな貝をテーマにドキュメンタリーを撮った」モキュメンタリー
- 実写ドキュメンタリー(風物語)とストップモーションアニメの組み合わせ
- 作り方も内容も面白いもののフリが丁寧すぎるので展開がわかりやすい
- マセたマルセルのキャラが◎
あらすじ
観るきっかけとなったポストもそうですが、世間的にもかなり評価が高いので非常に期待していたものの、正直に言ってしまえば話の展開としてはあまり目新しさもなく、設定と撮影の良さで保っているような形なので少々期待しすぎたかな、というところ。
とある一軒家に祖母のコニー(イザベラ・ロッセリーニ)と暮らす貝のマルセル(ジェニー・スレイト)。なんでかわかりませんが彼の存在を知った映像作家のディーン(ディーン・フライシャー・キャンプ)は彼のドキュメンタリーを撮り始め、その日常を収めてYouTubeにアップ。
すると当然話題を呼び、半ばブームのような状態になって大人気になります。
それはそれでいろいろ困ったこともありつつ、一方で生き別れの両親他仲間たちの行方が知りたいマルセルを助けようと情報提供を呼びかける動画も作りますが…あとは観てチョーダイ、と。
繊細な映像の割に話が大味
実写とストップモーションアニメを組み合わせたモキュメンタリー。ジャンル的にはかなり珍しい映画でしょう。
開幕からすでに映像作家のディーン(この映画の監督でもあります)による撮影動画を観るような形でこの世界のアレコレを観ていくことになるんですが、もうその開幕の時点ですでに小さい貝が普通に喋っていて、「なんで言葉を話せるの?」みたいな当然の疑問は完全スルーして「そういうもの」として流れていくのがなかなかシュールです。
元は人間カップルの家に家族たちと“居候”していたもののそのカップルが喧嘩別れしてしまい、その際におばあちゃんのコニー以外とも生き別れとなって今は2人(2匹?)で暮らしている、とのこと。で、小さな貝だけだと生きるのも大変なんだよ…といろんなアイテムの利用法を紹介したりしながら「楽しんでサバイバルしてるよ」みたいなお話をアップしたらバズって大変系のお話になるわけです。
その暮らしぶりはなかなか興味深くて面白いんですが、同時に「絶対ムリでしょ」みたいな行動も結構出てくるのでモキュメンタリーっぽく作っている割にはどこまで行ってもファンタジーではあります。その辺細かく突っ込むようなつまらない大人にはなりたくないので言いませんけどね!
ただラストの見せ場にしても「いくらなんでもそれは…」みたいな点もあるので、全体的にツメが甘い印象はありました。そこもうちょっと控え目にしても良かったんじゃないの、っていう。
その部分にしてもそうなんですが、大体ちょっとフリが利きすぎてて「ああじゃあこうなるんだね…」ってわかっちゃうし、その上その展開もちょっと盛りすぎ(特にラスト)なのでダブルで大味感があり、海外で寿司食ってるようなコレジャナイ感がありましたが海外で寿司食ったことがないのでわかりません。
結局ちょっと方向性は違いますが「観客を信頼していない」映画に近い、“わかりやすすぎる”が故に「期待しすぎたかなぁ」とがっかりしてしまった面が大きくて、良さげなビジュアルと設定なのにもう一つ盛り上がらずに終わった印象です。
ただこれも子ども向けに作ったと言われれば「じゃあしょうがないか」と思えるような、ある意味では丁寧に噛み砕いたストーリーの映画とも言えるので、結局僕のようにいろんなジャンルを少しずつかじって観て文句言ってるような汚い魂を持った人間向けの映画ではなかった、ということなんでしょう。さっさと成仏することが推奨されます。
世間的にはかなり評価が高く、感動したとか癒やされたとか言っている人が多いので、素直に観ればそういう評価が妥当なのかもしれないですね。
まあフリを丁寧に描くと「わかりやすすぎ」、まったく描かないと「唐突すぎる」ってどっちでも文句が出てきちゃうものでもあるので、そのさじ加減は観る人によってその位置が変わってしまう難しさがあるのも事実でしょう。
実写の組み合わせは良し悪し
マルセルの、子どもなのにちょっと斜に構えたものの見方をする感じだったり、同じ目線で会話をして対等に話そうとする感じだったりのキャラクターはなかなか良いものだったし、コミュニケーションが取れない虫とも仲が良いお祖母ちゃんのキャラクターも優しくてとても良かったし、映像はもちろん面白いしでベースはすごく良いんですけどね。やっぱり展開の進め方がベタというかわかりやすすぎて評価を下げてしまった感じ。
ストップモーションアニメのご多分に漏れずかなり時間もかかっているようだし、その部分の価値が高いのは間違いありません。ただ実写と組み合わせたおかげで、「本当にいる」感じは出る反面「この映画オリジナルの世界」は見出だせないのがもどかしいところ。普通のアメリカですからね。
だからこそ面白いのもわかるんですが、やっぱり「JUNK HEAD」みたいな特有の世界ではないのは痛し痒しなのかなと。
さっきも書きましたが世間的な評価は大変高いし、上映時間も短めなので特に観るものが決まっていないときにちょこっとサクッと観ると良いのではないでしょうか。
このシーンがイイ!
車に乗ったらゲロゲロ吐いちゃうところ。ペッて感じでかわいい。
ココが○
現実世界と一緒にした作りは上記のように良し悪しはあるんですが、でもやっぱり現実と地続きになっている感じはなかなか他にないものだと思います。
ココが×
繰り返しになりますが、あまりにもフリが丁寧なので展開が読みやすすぎるところ。もうちょっと意外性がほしい。
それとこれは本国ではないので仕方がないことですが「60ミニッツ」って今の若い日本人はわからなくない? 僕ぐらいの歳なら昔日本の深夜でもやってたのは知ってますが…。
MVA
この人かなぁ。
イザベラ・ロッセリーニ(コニー役)
お祖母ちゃん(の声)。
そもそもかなり有名な女優さんですが、こんなにお祖母ちゃん役の声優がお上手だとは…。
コニー自身の言動もすごく良くて、影の主人公でしたね。