映画レビュー0288 『アベンジャーズ』
さて、「ダークナイト ライジング」と並んでこの夏話題の映画と言えば、この作品でしょう。早速観て参りました。
マーベル・コミックのスーパーヒーローたちが一堂に会して地球を守るぜ的な映画です。それぞれ前段となる「アイアンマン」「アイアンマン2」「インクレディブル・ハルク」「マイティ・ソー」「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー」の5本の映画があります。
ちなみに「今回こそは」と3Dではない通常の字幕版で鑑賞。IMAXと比べるとだいぶ画面も小さかったですが、お客さんは結構入っていました。
アベンジャーズ
想定内のイマイチ感。
基本的にはオールスターのお祭り映画なので、まあそんなに握りこぶしから血が出るほどのめり込める映画ではないだろうとは思っていましたが、事前の予想ではもっと「アイアンマン」寄りの、笑いありアクションありで楽しませてくれる映画なのかなと思いきや、地球存亡の危機というテーマだからか意外とシリアス路線。
…と、なると。
本当に出来れば半年でいいから、前でも後でも公開をずらして欲しかったと思っていましたが、やはり比べちゃいけないと思いつつも、比べちゃうんですよね。「ダークナイト ライジング」と。
実はキャストのオールスターぶりで言えばあっちの方が上だと思いますが、それでもどちらも割と多くの登場人物に見せ場を用意した辺りも似ているし、ご存知の通り、アメコミ元のヒーローモノという意味では完璧にバッティングします。
いや、もはやノーランの手による「バットマン3部作」は「ダークナイト ライジング」の完成で次元の違うところに行った感があるので、本当に比べるべきものではないと思うんですよ。思うんですが、なんせあの衝撃も生々しいこの時期に観てしまうと、ところどころで「うーん」と残念な感じが出てきてしまうのもまた事実です。それが(やや)シリアス路線で微妙に真っ向勝負っぽくなっちゃったから、余計に。
まずこの映画、前半はヒーローたちの内輪もめが大半。
ヒーローvsヒーローが観たい、描きたいというのはよくわかるし、事実一番面白かったバトルはアイアンマン vs ソーだったと思いますが、にしてもまとまるまでがまず長い。きっと逆算で、すぐにまとまっちゃってバトルが始まっちゃったらもうそれしかない映画になっちゃうので、それが出来ないっていうのも事実だとは思うんですが、上映時間も2時間超えの映画なだけに、もう少しコンパクトでもいいかな、と。
加えてもう一点、コンパクトでいいだろうというのは、侵略してきたチタウリ軍とのバトル。大量の宇宙人兵士たちにヒーローが立ち向かう構図ですが、まーこの戦闘が長い。というか長く感じた。結局同じようなシーンの繰り返しなんですよね。バトルが。特に状況が変わるわけでもなく、カットを切り替えては各個人の戦いにクローズアップする…の繰り返しなので、正直飽きます。
そして一番問題だったのは、やはりヒーローたちの能力の違いのせいで、明らかに戦力としてのランクに差が出ていること。
オールスター映画なだけに仕方のないところですが、でもやっぱり個々の映画のほうが、当然それぞれの個性を生かしたバトルになるので、強さがわかっていいな、と。
具体的には、強烈な飛行スピードと大量ミサイル同時発射が出来るアイアンマン、雷で一網打尽に出来るソー、ひたすら暴れまくってケタ違いのパワーで戦うハルク、この3人は上位陣。
対して、空も飛べないキャプテン・アメリカ、弓で狙っては一人ひとり倒すしか無いホークアイ、なんかスタンガン的なもので地味に倒すブラック・ウィドウはどいつもこいつも地味。それなりに見せ場はあるものの、戦力として大して役に立ってないのは明らかで、この辺のチーム内格差がイマイチ「おお、すげぇオールスターだ!」っていう狙った感じの感動に結びついていない気がしました。
それともう一つ、ハルクの存在。ご丁寧に仲間割れの時点で「制御できない存在です」と見せておきながら、なぜか後半では完璧に飼いならされた状態に…。なぜ? ?
…といろいろ細かい部分が気になっちゃったわけですが、それはきっと“勢い任せ”で突っ走るほどのテンポの良さがなく、妙に説明臭くて冗長な映画になっちゃったせいでしょう。この辺は多分監督がヘタなんじゃないかな…。途中に差し込まれるアメリカンジョーク的なものも、ちょっと間を外してて「アイアンマン」ほど乗れる感じもなく、違和感アリ。せっかくのイイ素材たちを…もったいない!!
おまけに展開はほぼ「インデペンデンス・デイ」のパク…オマージュのようで。なんだかなぁ、と観ながらどんどん醒めていくのが自分でもわかりました。あえて書きますが、きっと「ダークナイト ライジング」を2回観た方が満足したかな、と…。
まあ、こっちはそもそも楽しみでしたがそこまで期待もしていなかったので、ある程度は想定内だったわけですが。
このシーンがイイ!
チタウリ軍とのバトル中、メドレー形式で各ヒーローのバトルが展開されるシーン。ここだけは「おお、オールスター」って感じで、ベタですが良かった。
ココが○
結構酷評に近い感じになっちゃいましたが、それでも腐っても鯛(というとまた良くないですが)、アクションもやっぱり規模がデカイし、アイアンマンは相変わらずいいキャラしてるしで、そこそこ楽しめるのは確かです。
それと、個別の作品で評価が低めだったソーとキャプテン・アメリカ、この二人が逆に今回良かったように思います。単品だとキャラ的に弱いってことなのかな…。でもキャプテン・アメリカはキャラのポジション的に活きていたとは言え、上に書いた通り、バトル自体は守り主体ということもあってイマイチ。
ココが×
ご丁寧に「マイティ・ソー」のヒロイン(ナタリー・ポートマン)が出てこない理由を説明するシーンがあったり、キャプテン・アメリカの衣装が古臭いんじゃないか、っていう観客の声を予想しての言い訳じみたシーンが挟まってたり、まあかなりご丁寧な説明が多く、だったら2時間程度に収めた方がよほどいいだろ、という気がしました。その辺のテンポの悪さ、構成の悪さがイマイチ感につながったんじゃないかと。
これきっと、監督と脚本(奇しくも今回担当したのは同じ人ですが)が違えばぜんっぜん良い映画になり得たと思うので、ジョス・ウェドンなるハゲ親父の罪は重い。が、もしかするとこれだけの大作なだけに、会社側の要望のタチの悪さ(コレも入れろアレも入れろ的な)みたいなものもあると思うので、結局はプロジェクト自体のやり方がよろしくないんだと思います。
MVA
それぞれこの映画ありきとは言え、単品で主役を張ってきた人たちの集合なので、さぞや悩ましい…かと思いきやそうでもなく、結局観終わって選んだのは意外な(?)こちらの方。
コビー・スマルダーズ(マリア・ヒル役)
おそらく今回初登場、ニック・フューリーの下で働くシールド副司令官。キリッとした美人っぷりがかなり良かった。見せ場もちゃんとあったし。
ただこのチョイスも、「ヒーローたちが集まったのにイマイチ」な感じに対するアンチテーゼ的な意味合いもありそうな気がしないでも無いです。自分自身。