映画レビュー0877 『メリー・ポピンズ リターンズ』

特に観に行こうとも思ってなかったんですが、母親が前作の大ファンだったらしいので親孝行も兼ねて連れて行くことに。ちなみに僕は前作未見です。

メリー・ポピンズ リターンズ

Mary Poppins Returns
監督
脚本

デヴィッド・マギー

原案

デヴィッド・マギー
ロブ・マーシャル
ジョン・デルーカ

原作

『メアリー・ポピンズ』
パメラ・トラバース

出演
音楽
主題歌(日本版エンドソング)

『幸せのありか』
平原綾香

公開

2018年12月19日 アメリカ

上映時間

130分

製作国

アメリカ

視聴環境

劇場(大きめスクリーン)

メリー・ポピンズ リターンズ

ものすごいディズニー感。まさに観る夢の国。

9.0
「メリー・ポピンズ」54年ぶりの続編
  • 前作から25年後のロンドンが舞台
  • 前作に登場した子どもたちが成長し、大人になって登場
  • 自宅差し押さえの危機に再び訪れるメリー・ポピンズ
  • 劇伴・ミュージカルシーンともにディズニーっぽさが爆発

あらすじ

前作未見のために説明が怪しいかもしれないよ、と最初にお断りしておきますが、一応前作から25年後のロンドンが舞台になっております。

主人公は前作で“メリー・ポピンズに育てられた”子どもである、マイケルとジェーンの2人(とメリー・ポピンズ他)。当然ながら大人になりました。

マイケルは3人の子どもに恵まれ、幸せに暮らしていた…んですが、前の年に「家のことは任せっぱなし」だった奥さんが急死してしまい、同時に世界恐慌という環境も相まってかなり苦しい生活を強いられている様子。演じるのはベン・ウィショー。喋るたびに「あ、パディントン喋った」と思っていたのは内緒です。

そんな彼を優しく支える姉・ジェーンは別のところで暮らしているんですが、マイケルの窮状を見かねて毎日のように手伝いに来ています。演じるのはエミリー・モーティマー、いろんな映画で見かけますが彼女ももうアラフィフ…なのに超わけぇ!! この人のかわいらしさはとても映画に合っていて良かったですね。

この二人の実家であり、今はマイケル一家が暮らす家が差し押さえの危機に陥るところから物語はスタート。「父が残した銀行の株式があるはず」と探すも見つからず、困り果てたところにやってきたのが…かつて姉弟の面倒を見た、メリー・ポピンズその人。

ちなみにメリー・ポピンズはいわゆる“ナニー”だそうで、学校教育前の教育担当の女性、って感じでしょうか。「私がクマにキレた理由」でスカヨハがやってたやつですね。

彼女はご存知の通りちょっとした魔法を使える(っていうか初登場シーンからして空からゆっくり降りてくる)んですがそれは公にしておらず、とは言え特に隠しもしていないというなかなかゆるい感じの魔法使い。容姿もマイケルたちが育ててもらっていた頃と変わっていない(という設定の)ようですが、登場人物たちもそのことを特にそこまで気にしていない感じがこれまたゆるい。クマが喋ってるのにさして気にしない「パディントン」の世界となんか似てる。

そんなファンタジックな世界を舞台に、危機に陥った一家の元にやってきたメリー・ポピンズが、子育てを通じて大事なことを伝えながら、果たしてマイケルは無事家を守れるのか…というお話になっております。

ディズニーが好きだった頃に引き戻される力

かねてから何度か書いていますが、僕はあまりディズニーが好きではありません。

厳密に言うと、昔はすごく好きでした。10代ぐらいまでかなぁ。ディズニーランドには毎年行ってたし、あのハッピーな世界観がすごく好きでした。

が、コレもある種の中二病的なものなのかもしれませんが…次第にディズニーの負の側面が気になるようになってしまい、いわゆるプロパガンダ的な面が引っかかるようになったことで、ディズニー=商業主義の巧妙な思想誘導的な印象を持つに至りました。

まあ有り体に言ってしまえば「騙すのがうまい」ことが気になるようになった、ってところでしょうか。

ところがですよ。

この映画はもう全編丸々、頭の天辺から足の爪先までどっぷりディズニー100%なんですが、それがものすごく良かったんですよね。

好きだった頃のディズニーを思い出す、「そうだよこれこれ!」って感じのハッピー感。その力強さと熱量に完全にやられました。

裏がどうとか関係ねーよ的な。これはもしかしたら個人的ディズニーとの和解の映画になったのかもしれない。それぐらい、文句なしに素晴らしいミュージカル映画だったし、素晴らしいディズニーのクリエイティブだったと思います。

これきっと、今より10歳若かったら多分「ディズニー嫌いの自分」が勝って評価してなかったような気がします。あまりにもストレートで、ディズニーの世界観そのものすぎるので。逆に言えば、それだけディズニー好きにはたまらない、どこをどう切り取っても「ディズニーの世界」として成立しているぐらいにディズニー濃度の高い映画だとも思います。

まあ僕は今現在のディズニーに詳しいわけではないので、本当に好きな人たちからすれば逆にいろいろ不満も出てくるのかもしれませんが、そうではない人間からすると「ここまでやりきる、それだけですごい」と胸がいっぱいになるような良さがあり、改めて「いやディズニーすげーわ」と呆然とさせられましたね…。

最高のファンタジーミュージカル

ジャンル的には当然「ミュージカル映画」なんですが、メリー・ポピンズは魔法が使えることもあってファンタジー色も強め。そのファンタジー色とミュージカルの相性もとても良く、そのカラーを全面に押し出したミュージカルシーンの完成度やハッピー度は他にない素晴らしさがあり、これまたディズニーすげーわと。

途中でアニメーションと融合したミュージカルシーンも出てくるんですが、これなんてもう「ディズニーここにあり」感がすごい。完全にディズニーの世界に実写が入り込み、まさに“観る夢の国”として完璧なショーになっています。

僕も詳しくはないんですが、どことなくアニメのテイストも“古き良きディズニー”感がすごく強くて、そこがまた「古い映画の続編」という立ち位置にマッチしていたと思います。今のアニメ感が強いテイストじゃないんですよね。これがすごく良かった。

大げさでなく「ここはディズニーランドなんじゃないか!?」と思っちゃうぐらいに眼前で展開されるショーが本当にディズニーそのもので、曲も歌もダンスも、そして映像もすべてレベルが高い。んでもって主演がエミリー・ブラント。そんなの良くないわけがない。

家族みんなで観るべき

物語自体は先が読める…かと思いきや、なかなか紆余曲折もあって飽きさせず、また嫌味もなく安心して観られる仕立ての良さ。この辺も「パディントン」っぽい素直な良さがあると思います。

監督は「シカゴ」「NINE」等のミュージカル映画を手がけたロブ・マーシャルなのでミュージカルはお手の物だし、いかにもディズニーらしいオーケストラを駆使した劇伴の“それっぽさ”も見事。

100%安心して家族みんなで観られる最高のファミリー映画と言って良いでしょう。ミュージカルシーンはなんでかわからないまま胸熱でちょっとウルっときたりして。あまり期待していなかったこともあって、想像以上に良くて感動的ですらありました。

欲を言えばIMAXで観たかったなぁ…。近場のIMAX上映が早々に終了しちゃって残念。

ネタバレ・ポピンズ

一応ネタバレ項に書きますが、一つ大きな不満として「コリン・ファースが歌わない」っていうのがね。すごく残念でしたね。

悪役だから仕方がない…のかもしれませんが、それでもコリン・ファースですからね…。「マンマ・ミーア!」にも出てたぐらいだし、「おっ、コリン歌ってくれるんだな!?」ってちょっと期待しちゃうじゃないですか。それが無かったのが…もったいないし残念。

ただ最後の風船買うシーンは「最終的にみんなハッピーになってニッコリ」かと思いきや裏切ってくれたのが最高だったけど。逆に。最後まで許さないよ、っていう。

株式は「絶対凧だろ」と思っていたので予想通りだったんですが、でもあんなのでうまくいくかな〜と思っていたらやっぱりダメで、最終的には前作つながりの人物&エピソードでハッピーエンドに持っていくのは素晴らしいですね。前作観てたらものすごくグッと来てたんじゃないかと思います。その辺の展開の巧みさも見逃せません。

あとはアレですよね。時計のシーン。「飛んでいくなら最初からやれや!」っていう。笑ったけど。

このシーンがイイ!

バスタブの中のミュージカルシーンと、やっぱりなんと言っても「ロイヤル・ドルトン・ミュージック・ホール」ですよね。あのミュージカルシーンは本当に胸がいっぱいになりました。

ココが○

そんなわけで全体的に良かったんですが、そのすべてを支えていたのがきっとマーク・シャイマンの音楽だったと思います。

本当に一曲一曲ディズニーの雰囲気に溢れていて、「ディズニー専属の作曲家なんじゃねーの!?」と思わされるぐらいに完璧なスコア。すごい。本当にすごい。

あとメリー・ポピンズは魔法が使えても直接的な手助けをしないのがとても素敵だと思いました。これぞ教育だな、って感じで。

ただ時計のシーンは笑ったけど。

ココが×

ネタバレにちょっと書いた点を除けば特に無いと思います。

MVA

ジャック役のお兄さんがちょっとイメージ的に微妙だなと思ったんですが、でもやっぱり歌にダンスに良かったので良いんでしょう。結局。

エミリー・モーティマーの若さに差し上げたいところですが、それでもやっぱりこの人かなー。

エミリー・ブラント(メリー・ポピンズ役)

なにせ前作のイメージもあるだけにかなりの重圧だったと思いますが、観ればもう完全にメリー・ポピンズ。前作観てないけど。でもきっとそう。完全にメリー・ポピンズだった。この人。

姿勢の良さ、所作から来る雰囲気、ちょっとだけ鼻につくエリート感、そして何より歌とダンス。全部完璧だったと思います。

予告編でも流れたバスタブに沈むシーンの笑顔なんてかわいすぎてズルすぎるし、マジで「ボーダーライン」とか「オール・ユー・ニード・イズ・キル」と同じ人とは思えない。なんなんだこの人。

とりあえず当方クラシンスキーとの離婚待ちでーす。現場からは以上でーす。

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