映画レビュー0189 『メメント』
三連休も最終日ですね。
僕はいつものように特に予定もないので、あの切れ味鋭いレビューでおなじみのオビ湾兄さんがお送りする「カジノロワイヤル」にて大絶賛されていたエロエロ長澤まさみを観たいぞ! と「モテキ」を観に行こうかと思いましたが、この歳でこの境遇でその狙いはあまりにも終わっているゆえにストーリー関係なく泣いてしまいそうだったのでやめました。
そんなわけで今日もおうちで映画。今回のお題は…結構久しぶりに観ますが、2回目の観賞となります。
メメント

ザ・サスペンス。
かつて「クリストファー・ノーラン」という名前に対する認識もない頃に初めて観た時の感想は、「この監督天才だな…!」でした。時が経ち、話の筋も知った上での2回目でしたが、やっぱりこれを観たらノーランのすごさというのは感じざるを得ません。
去年「インセプション」を観て劇場の椅子からずり落ちつつ「どひゃー」と驚愕した感覚、あれに近いものがやっぱりあります。
いかにも低予算映画だと思うんですが、役者の数は極力絞り、ロケーションもアリモノを使って、まさにストーリー勝負で描かれる作品。これはもう、ネタバレも書きたくないし「一回観てみて」としか言いようがないんですが、まーとんでもない映画ですよ。
僕自身、それなりに「ライトな映画ファン」ではないよね、ぐらいの本数を観てきた自負がありますが、この映画に似た映画というのは観たことがありません。実際、「一発目の衝撃」ゆえに、似たものを作ったとしてもどうしても二番煎じ感が拭えないし、作るのが難しい種類の映画ではあると思いますが、それにしてもやっぱりこの映画をこれだけ強烈なサスペンスに仕立て上げられるのは、ひとえにクリストファー・ノーランの才能ゆえ、ではないでしょうか。
まだ観たことがない人のために、ちょっと説明。この映画は、レナードがテディを殺害するところから始まります。「なぜ彼がテディを殺したのか」という話を、時間軸を遡って展開していくわけですが、この遡り方が普通じゃない。
例えば、ここに一つの「時間」があるとします。
1→2→3→4→5→6→7→8→9→10
1がスタート、10がラスト。この映画で言えば、10がオープニングであり、テディが殺される場面です。
で、ここから遡る映画というのは、普通は10のあとに1に戻り、そこから9までを追って行きますが、この映画はその逆で、9から1に向かって描いていきます。かといってもちろん全編逆回しなんていう斬新すぎるコメディ映画ではなく、上の時間で説明すれば、
10-9→10-8→9-7→8-6……
というように、少し前からさっきまでのシーンを描いて、それからまた少し前に戻ってまたさっき観たシーンに戻って…を繰り返すわけです。
さらにもう一つ、モノクロで展開される別の時間軸のシーンが挿入されます。このモノクロのシーンに関しては、普通に1→10という展開で追っていくので、仮にメインがA、モノクロがBとした場合、
A/10→9 B/1→2 A/10→8 B/2→3……
と二つの時間軸が入り乱れ、ものすごく頭を使う構成になるわけです。
ラストでAとBがつながりすべての時間軸が理解できるようになっていますが、ご丁寧に「順番通りのストーリー」が特典に入っていることからもわかる通り、まー「わかっちゃいるけど難しい」映画なのは間違いないです。
初見の方はぜひ特典も観てみてください。きちんと内容が理解できると思います。と同時に、「普通に順を追った話」がいかに面白くないのかもよくわかるんですよねー。これで「ノーランすげぇ!」という意味がより理解できるんじゃないかと。
普通に順番通り追っていくと、ただの殺人事件でしか無いんですよね。記憶障害の特異さはもちろんあるんですが、でも映画として成り立たないような浅い話にしか見えない。それが、構成を入れ替えて、見せ方を変えただけで映画の味わいがガラッと変わる。これぞサスペンスだと思いますよ。ものすごいサスペンス。
先も全然読めないし、「なんでレナードはテディを殺すに至ったのか」、もっと言えば「テディのウソに騙されるな」を始めとした数々のメモをレナードが書くに至った理由はなんなのか、その辺りが気になってしょうがない。
登場人物も少ないし、当然色恋沙汰もないし、すごく地味な映画なんですが、展開の妙でグイグイ引き込まれる。「サスペンス好きです」って言ってる人は絶対に観た方がいいと思います。逆にこれがダメなら「サスペンス好き」って言っちゃダメ。認めない! 今回改めて観て、やっぱすげーぜ、ってことでこれはもう満点だなと認定しました。
劇中、記憶障害のレナードが「(メモよりも)記憶の方が怪しい」とテディに語るシーンがあります。これはそっくりそのまま、ノーランの観客に対する「記憶を信じられるかな?」という挑戦状みたいなものでしょう。
上に書いたように展開がややこしいので、「あれ? これってなに? なんで?」と考えながら、頭の回りハテナマークだらけでの観賞になること間違いありません。それが楽しいんだ! この映画は。
そんなわけで、ハナからそういうつもりで混乱させようとして作っている映画なので、そこから振り落とされないようにしっかり集中して観て、ぜひこの「サスペンス的楽しさ」を味わって頂きたいとワタクシは思うわけです。
サスペンスとしては文句の付けようがない作品でしょう。
あ、一つだけあったかも…。!
このシーンがイイ!
シーン一つ一つがすごくいい、という映画ではないんですよね。まさに構成力の上に成り立った名作なので、どのシーンもある意味では凡庸。
ただ一つだけ挙げるとすれば、「前に観たシーン」と「今観ているシーン」が重なる場面、「あ、ここでさっきのシーンとつながるのか」とわかるシーンは、さすがによくわかるように印象的なシーンが多いんですよね。
テディの「ッレニー!」という大げさな呼びかけ方だったり、ちょっとした小道具を手にしたシーンだったり。
この映画では「ここであそことつながります」というメッセージはかなり重要なので、そこを自然に、でもわかりやすく作る辺りのセンスもまたさすがノーランだな、と。
ココが○
もー書き尽くしましたが、「頭を使って映画を観る」のが好きな人に、「じっくり映画を観たい」時に、これほど打って付けな映画ってなかなか無いです。
「映画のすごさ」とか「映画の娯楽性」の極み、みたいなものが垣間見える作品ですね。
ココが×
さあ、そんなわけで唯一の欠点。
それは、レナードが執拗に犯人を追うほど入れ込むことになった、亡くなったベタ惚れの奥さんが
全 然 か わ い く な い
これに尽きます。あの「ダークナイト」のマギー・ジレンホールと同(以下、書きすぎてるので略)
あ、そういやあの映画もノーランだった…。
MVA
初めて観たときは、あの「L.A.コンフィデンシャル」のガイ・ピアースとは全然イメージが違ったので、こんなかっこいい兄ちゃんだったのか! とビックリしたもんです。彼の演技あってこその名作だとは思いますが、この映画で一人挙げなさい、と言われれば僕はこの人を推しますね。
ジョー・パントリアーノ(テディ役)
結末でありオープニングでもある事件の被害者であり、なんか胡散臭い親しげなオッサン。
彼の胡散臭さがこの映画のキモというか、すごく重要な要素になってるんですよねぇ。
妙に親しげで胡散臭いし、メモには「ウソを信じるな」ってあるし、そりゃ殺されるだろうな、というオープニングの納得感と、でもなんでこの人こんなレナードに関わろうとするんだろう? という謎と…。
元々好きな役者さんなんですが、この役に彼をあてたキャスティングはスバラシイ。そして奥さんが
全 然 か わ い く な い


