映画レビュー0955 『殺人の追憶』

例のごとく配信終了の映画を漁っていたところ、何度か耳にしたことがある映画だったので観ることにしました。

韓国映画は良い映画が多いとは聞くものの、やっぱりグロいイメージが強いので若干躊躇しつつ…。

殺人の追憶

Memories of Murder
監督

ポン・ジュノ

脚本

ポン・ジュノ
シム・ソンボ

出演

ソン・ガンホ
キム・サンギョン
キム・レハ
ソン・ジェホ
ピョン・ヒボン
パク・ノシク
パク・ヘイル
チョン・ミソン
リュ・テホ

音楽
公開

2003年5月2日 韓国

上映時間

130分

製作国

韓国

視聴環境

Netflix(PS4・TV)

殺人の追憶

刑事の感情面にフォーカスした一風変わった刑事モノ。

8.0
連続婦女暴行殺人事件の捜査に挑む二人の刑事
  • 韓国で実際にあった事件を元にした映画
  • 自白強要手段や刑事の迷走等「かっこよく描きすぎない」リアルな刑事像
  • 結末も少し変わった着地点でアジアの映画っぽさを感じる
  • グロさもなく観やすい

あらすじ

韓国で実際にあった「華城連続殺人事件」を元にした戯曲の映画化作品だそうで、ってことは元々は舞台用のお話なんでしょうか。一応元の事件があるとは言えフィクションだそうなので、よくあるインスパイア系ってやつですかね。なんとなく。

舞台は1986年、韓国の農村地帯…要は田舎の用水路で一人の女性の遺体が発見されます。

彼女は自分の下着で手足を縛られた状態で絞殺されていて、また地元では美人として有名だった模様。

遺体を発見した地元警察のパク・トゥマンとチョ・ヨング、そしてその上司であるク・ヒボン課長が捜査にあたるもずさんな現場管理等もあって進展せず、やがて2人目の被害者(ビョンスン)が。

パクたちは生前のビョンスンにつきまとっていたと言う知的障害を持つグァンホに対して厳しい取り調べを繰り返し、自白を得て逮捕するんですが、ソウルから応援にやってきた若手刑事ソ・テユンによって否定され、事件はまたも振り出しに。

その後も被害者は増え続けるも一向に捜査が進展せず、またパク刑事とソ刑事の喧嘩も耐えない状況の中、果たして彼らは事件を止めることができるのか…というお話です。

人間臭い刑事の姿が印象的

舞台設定が30年以上前ということもあってか、当時の韓国警察の過酷な(拷問に近い)自白強要であったり、また主人公のパク刑事が捜査の行き詰まりから占いに頼ったりといわゆる「(日本人の考える)刑事モノ」としてはなかなか珍しい“ひどさ”も描いていて、そういう意味でも面白い映画でしたね。これ文化の違いなのかなぁ。

別にどっちが優れているという話でもないですが、こと日本の創作物の場合、刑事って「かっこいい」「憧れの職業」みたいなイメージをことさら強調している気がするんですよね。「だから警察って頼れるよね!」みたいな。最も日本のドラマはほぼ観ないのでかなり古い印象ではあるんですが。

実際のところ、日本の警察も自白強要はひどいしこの映画で描かれるような側面は少なからずあるはずなんですが、しかし創作物では何故かその手の表現が出てこない不思議。

日本で描かれる警察はさながらヒーローのように見せる傾向が強いと思いますが、この映画ではまったくそんなヒロイックな雰囲気は無く、いかにも人間臭い。

「人間だからこそミスもするし迷いもするし感情的にもなる」、そんな二人の刑事の姿がとても良かった。

僕は韓国事情に詳しいわけではないので、社会としてどうなのかはよくわかりませんが、こと「刑事の描き方」としてはこちらの方がより成熟した、観客の感受性を信頼した描き方のように感じるし、それ故今でもタイトルを耳にするぐらい評判が良い映画ということなんでしょう。

なんでもタランティーノは今作を「21世紀最高の韓国映画」と評しているそうです。正直言うと僕はそこまでハマりませんでしたが、ただ良い映画であることは間違いないと思います。

まっさらな状態で観た方が良さげ

また…ネタバレになるので詳細は書きませんが、結末に関してもこの手の映画にしてはやや変わった形のものになっていて、そこが評価の分かれ目になりそうな気もしつつ…ただその終わらせ方に「事件そのものより、事件を通した刑事の人間性を重視した」物語としての味付けが色濃く感じられるものになっています。

主人公はあまり優秀でもなさそうな田舎のおっさん刑事と、都会(ソウル)からやってきた優秀なイケメン刑事という凸凹コンビで、最初はいがみ合いつつも段々とお互いを認め合う…ようなよくあるパターンの組み合わせではあるんですが、その過程と事件の絡み方もよくできているし、非道な事件が連続して起こるために焦りを募らせていく感情面の描写も見事だったと思います。

実は僕は観る前にある程度(モデルとなった事件についての)結末について知ってしまっていたので、その分少し入り込みにくかった面はあったような気がするんですが、まっさらな状態で観ることができればきっとかなり先が気になる映画になったんじゃないかなと思うんですよね。

なのでこれから観る人はこの映画についても元になった事件についてもあんまり調べずに観た方が良いんじゃないかなと思います。

誰でも観やすい骨太な刑事モノ

最初に懸念していたグロさの面もほぼなく、ややつらい遺体描写はあったもののサスペンスとしては平常運転なので、このジャンルが好きな人であれば比較的誰でも観やすい映画だと思います。

今まで僕が観てきた韓国映画は、良くも悪くも少しクセがあったような気がするんですが、この映画は比較的そう言うアクの強さみたいなものもなく、すんなり“普通に観られる刑事モノ”的な観やすさがあるので、そういう意味でも割とオススメしやすい映画かもしれません。

上に書いた通り、結末については意見が分かれる可能性があるかもしれませんが、それでも観て損をするようなものでもないし、なかなか骨太で良い刑事モノなので興味がある方はぜひ観てみてください。

そして鑑賞後に実際の事件の話も少し調べると、これまた映画の世界が広がって良いんじゃないかなと。こういう楽しみができるのも実話を元にした映画の良さですね。

殺人のネタバレ

この映画の元になった「華城連続殺人事件」は時効によって未解決事件になっているんですが、しかしつい最近(今年の9月19日)、別の事件で終身刑を受けている男が犯人だと発表されたそうです。

この男は1994年から服役しているらしいので、となるとこの映画のラスト(2003年)の「まだ犯人が普通に生活している」、あの余韻は実際には無かったことになるんですが…まあその辺は元々フィクションだし気にしないでいいでしょう。

一応フィクションとは言え、映画自体も未解決で終わるのはなかなか珍しいと思うんですよね。それだけに少しモヤモヤする面はあったんですが、ただその辺の「答えのない日常」感に(まったく詳しくないくせに)ある種の東洋思想的なものも感じて、これ欧米の映画ではあり得ないエンディングなんじゃないかなぁとしみじみ思いました。

最終的に「わからなくなった」パク刑事が退職して別の仕事を選んだ、というところに「事件そのものよりも人間としての刑事」にフォーカスした感じがより強まったんだろうと思いますが、「未解決事件を元にした」が故に刑事の人間性に焦点を当てたのか、はたまた刑事の人間性に焦点を当てた故に未解決事件が都合良かったのか、その辺ニワトリタマゴではあるんですがなかなか上手な組み合わせだなと思います。

それとラストはパク刑事のその後で〆てましたが、ソ刑事の方がどうなったのか…そっちも観たかったですね。

このシーンがイイ!

ラスト近く、書類越しのソ刑事のシーン。

とても良い演技でグッと来ましたね…またトンネルっていうシチュエーションも良かったと思います。あの一連のシーン。

ココが○

全体的に観やすく理解もしやすく、程よく笑いも混ざってバランスの良い映画なので、韓国映画の取っ掛かりとしてもかなり良いのではないかなと思います。サスペンス好きであればなおさら。

ココが×

結末の感じ方によっては少し引っかかる人はいるでしょう。それぐらいかな。

MVA

最初「おっ、課長役のおっさんがなんか良さそうだな!」と思ってたら早々に左遷されて草。ということで主演どっちかかなーと悩みつつ…。

キム・サンギョン(ソ・テユン役)

ソウルからやってきたイケメン刑事。

きっと演技力で言えばおっさん(ソン・ガンホ)の方だろうとは思うんですが、ただ彼の見せ場の良さと役の良さとでこっちかなぁと。

序盤はソン・ガンホの方が主役だと思いますが、終盤は完全にキム・サンギョンの方が主役になっていったその物語の展開への思いも込めて、こっちにしましょう。ただソン・ガンホも良かったです。

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