映画レビュー0468 『記憶探偵と鍵のかかった少女』
今月観に行きたかった映画その3。ひとまずこれでおしまいの予定です。
やや単館系の雰囲気を感じるサスペンス映画ということで、大外ししそうな恐怖感を覚えつつもこりゃ観なイカンだろ、と観に行って来ました。
記憶探偵と鍵のかかった少女
なかなかだけど、ちょっと薄いかな。
主演の記憶探偵にマーク・ストロングという激渋キャスティングのこの映画。もちろん予算的な事情があるんでしょうが、これがただのイケメン俳優だったら絶対観ていなかったでしょう。
それはさておき、「他人の記憶に入り込める探偵」が主人公ということで、ある意味タイムトラベル的な要素もありつつ、奥さんのトラウマにちょっと「インセプション」を感じつつ、最後まで観るとアノ映画(ネタバレなのでリンク注意)っぽさも感じつつ、いろんな映画のエッセンスを取り込んだ意欲作という印象。
なかなか面白かったんですが、ちょっと煽りに頼り過ぎな感じもあって、でも煽らないとスカスカになるような気もするしで、しっかり眺めるとちょっと内容が薄いかなぁという気がしました。ただ恐れていた大外しも無く、これはこれでよく出来ている映画だと思います。
何分(偉そうなことは言えませんが)個人的にもサスペンスは一番好きなジャンルなだけに、やっぱりどうしても観ながら「こういう話なんじゃないの~?」と読んじゃう悪い癖があって、結果的にその予想がそこそこ当たってしまい、あんまり驚きがなかったのも残念ではありましたが、裏を返せばそういう見方をしなければ、割と広い範囲の人が楽しめる映画のような気もします。
で、概要。
ご飯も食べずに引きこもっている若い女子の捜査を始めたジョン。目的は「何かを食べさせる」というもので、殺人事件の捜査とかでもなく、考えてみれば何の事件だよ、ってな話なんですが、この捜査対象の女子が非常に曰くつきで、頭が良すぎて周りと馴染めず、過去にもいろんな事件を起こしていたことが発覚。それでも「味方はあなただけ」ってな彼女の言葉もあって徐々に捜査に、そして彼女に傾倒していくジョン。果たして彼女の秘密は、過去のトラウマは…! というようなお話でございます。
って概要を書いたところでイマイチよくわからないとは思うんですが、結局は非常にミステリアスなんですね。彼女。
おそらくは深い闇を持っているであろうことは推測できるものの、頼ってくる彼女はとても悪い子には見えない。真実はどっちにあるのか…で捜査を進めるうちに…! という。まあ男としては痛いほどよくわかりますね。そりゃこうなるべや、と。
ってまあこう書いてるといろいろ読めちゃいそうではありますが、実際どうなのかは観てみて確かめてください。としか書けないので、いつも以上に薄っぺらいレビューになるわけですが。
おそらくこの映画のキモは…やっぱり“記憶”なんでしょう。劇中のセリフでも出てきますが、人は自分の都合のいいように記憶を改ざんすることがあるので、観ている過去(の記憶)も正しいのかどうかがわかりません。だったら“記憶探偵”なんて成り立たないやんけ、って気もしますが、そこは一応、(設定上)証拠としての説得力に差があったりもするようです。
その記憶の真贋を見定める方法も語られますが、それすらも段々怪しくなってきて、さぁ一体本当の彼女はどれなんだ…という、完璧に一人の女性の記憶が物語のすべての鍵を握っています。この設定はなかなか珍しいし、面白かったですね。
なんかすごいフワフワしてますが。やっぱりサスペンスでネタバレしないように、となると書くことも限られちゃうんですよね。申し訳ナイ。ビル・ナイ。
もーね、昨日の「アバウト・タイム ~愛おしい時間について~」が良すぎて、正直“そこそこ”ぐらいではあんまり残らないですね…。まあ、でも面白かったし、急に出てきてグサリ、みたいなくだらないドッキリシーンも無かったので、割合みなさん普通に楽しめるんじゃないでしょうか。
このシーンがイイ!
完全にどうでもいいシーンなんですが、ジョンが元教師が収監されている刑務所に向かうシーンがすごく好きでしたね。寒そうな土地に、灰色の空に。いかにもサスペンスです、って感じの風景が。「ああ、これこれ」って勝手に一人でニヤニヤしてました。
ココが○
いろんな映画の要素をつまみ食いしつつも、オリジナルにまとめようとしている意欲は良いですね。主演もマーク・ストロングで激渋だし。媚びずにやりたいことをやるんだ、っていう意志も感じられたし、結末の好き嫌いは別として、しっかりと作られた映画だと思います。
あとはこれもある意味でベタではあるんですが、「アバウト・タイム ~愛おしい時間について~」と違って邦題のセンスが◎。
ココが×
やっぱりちょっと音楽やアングルによる煽りに頼り過ぎな気はしました。「来るぞ来るぞ、怖いぞ気持ち悪いぞ」っていう。観ててやっぱりあんまり気分のいい映画ではないんですよね。嫌な予感しかしない、っていう。そこがいい、っていうのもあるとは思いますが。
反面、わかりやすい表現に頼らずに、想像させる形が主体だったのは素晴らしいと思います。
MVA
マーク・ストロングは期待通りで、地味ながらきっちり演じてくれて満足でしたが、でもやっぱりこの映画はこの人でしょう。
タイッサ・ファーミガ(アナ・グリーン役)
疑惑の少女。
綺麗で可愛くて、でもミステリアスで怖いという。この役に求められる要素、すべてを持っていたと思います。
聞けばあのヴェラ・ファーミガの妹さんなんだとか。でも21歳も離れてるという。もはや親子。確かにちょっと似てる。でも妹は若いだけあってカワイイ。いやー、でもちょっと怖い。それぐらいよく演じてました。