映画レビュー1262 『ミザリー』

TVにつないでいる録画用のHDDがフォーマットしないと機能しない状況になったため、ここから3本は録ってあったBS録画シリーズになります。

最近は配信で手一杯なのであんまりBSのチェック自体していないんですが、やっぱりBSプレミアムからしか得られない栄養的なものもあるので改めて今後もチェックしていきたい所存。

ってこの前も書いてたなこれ…。

さて、ここから毎年恒例のスクランブル更新をやって参りますよぉ〜。今年は30日から、1日早く開始で余裕を感じさせます。(余裕)

今年の年末は皆さんいかがお過ごしでしょうか。

僕はずっとRTA in JAPANを見てます。めちゃくちゃ楽しい。

ミザリー

Misery
監督
脚本
原作

『ミザリー』
スティーヴン・キング

出演
音楽
公開

1990年11月30日 アメリカ

上映時間

108分

製作国

アメリカ

視聴環境

BSプレミアム録画(TV)

ミザリー

生々しい恐怖は良いものの…。

7.5
事故った大人気作家、熱狂的なファンに助けられるも…
  • 最新作を仕上げ、帰宅中に事故ってしまい生死をさまよう大人気作家ポール
  • 事故車を偶然見つけた彼の“大ファン”の元看護師が自宅に連れ帰って看病
  • 甲斐甲斐しく世話してくれるもなんだかんだ理由をつけて外部とのコンタクトを取らせてくれず…
  • キャシー・ベイツのドハマリぶりがお見事

あらすじ

申し訳ないんですが骨折により鑑賞からだいぶ時間が空いてしまい、やや忘れがちな部分もありますが気にせず行きましょう。

代表作「ミザリー」シリーズがそのまま作家活動になっていると言っていいぐらいにミザリーだけで食ってきた感のある作家、ポール・シェルダン(ジェームズ・カーン)。

長編デビュー作が当たりすぎてそれだけを(本人の意志とは関係なく)“作らされる”系の作家さんですね。虎舞竜みたいな。ロードだけ歌ってろよ的な。いや何章も作ったのが本人の意志とは無関係だったのかは知りませんが。イメージ的に。

で、もう本人すらうんざりしていたこともあってか、最新作で主人公の「ミザリー」を殺す、という読者にとっては大変ショッキングな展開をご用意して「違う作品を作るぞ」と心機一転頑張るぞ的な感じなわけですよ。

そして(確か)そのミザリーグッバイ作が発売になる直前に新たな作品を書き上げまして、意気揚々と帰還しようと車を走らせるも大雪のために事故にあってしまいます。

現場はひどい吹雪故に誰からも発見されずにこのまま死んでしまうのでは…と思われたところで現れた1人の人物によって車から救い出されるポール。

彼を救ったのは「ミザリーシリーズの熱狂的なファン」という元看護師のアニー・ウィルクス(キャシー・ベイツ)。

やや思い込みの激しいタイプっぽいアニーですが、さすが元看護師らしくそれなりの処置を施してくれたおかげか徐々に回復していくポール。しかし心配する娘や担当編集と連絡を取らせてくれと言っても電話が不通だのなんだのと理由をつけて何もさせてくれません。

なにか怪しい…と踏んだポールは彼女が不在のときに部屋を抜け出そうと画策しますが…あとはご覧ください。

ヤバくなるとヤバいキャシー・ベイツがヤバい

大半の人には説明不要と思われる、もはや古典と言っても良いホラーの名作です。

おなじみスティーヴン・キング原作ということもあり、また雪山が舞台なのも手伝って、なんとなくシャイニングを彷彿とさせるものがありました。

なお例によってキャシー・ベイツの役が「ミザリー」なんだと思ってましたがミザリーは小説のヒロインの名前でしたとさ。

「熱狂的なファンに監禁される」話は割と他でも目にしたりしなかったりしますが、その元祖的な印象のお話ですね。

まあやっぱりなんと言ってもアニーを演じたキャシー・ベイツのハマりっぷりが恐ろしく、「パッと見ではいい人なんだけどネジが外れちゃっててヤバくなるとヤバい」という語彙力のなさを発揮せざるを得ない恐ろしさが素晴らしいですね。「これこれぇー!」と歓喜しながら観ましたよ。

それに思っていたより“オンオフ”があるのが嫌すぎて良いですね。終始狂ってないのが。

ただ途中で「小説のヒロインであるミザリーが死ぬことを知って激怒」してからの行動は(良い悪いは別として動機としては)理解できるものの、そこに至るまでに彼を看護しつつ監禁していた部分についてはイマイチ動機が不明な面もあって、その辺もうちょっと納得したかったなという気もします。(詳細はネタバレになるのでネタバレ項に)

ちなみに「作品が大きくなりすぎてやめるにやめられなくなってしまって主人公を殺そうとする」、まさにそんな自身の立場を皮肉った話をさいとうたかを先生がゴルゴ13で描いていたりもして、これは結構「作者あるある」なんでしょうね。きっと高橋ジョージも橋かなんかを爆破してロードを分断したかったに違いない。

また上記あらすじには書いていませんが、世間的にはポールは事故死したと見なされる中、早い段階で彼の車の様子から生きていると踏んで独自に捜査を進める現地の保安官があのリチャード・ファーンズワースというのもポイントが高い。実に良い好々爺感。(しかしその扱いは結構不満でしたが)

基本的にはほぼほぼジェームズ・カーンとキャシー・ベイツの二人芝居ではあるものの、彼の存在のおかげで「外から救出される可能性」が程よい緊張感にもつながっていて、まあ確かに「誰もが知るホラー」ではあるな、と思います。怖いのはお化けとかゾンビとか怪物なんじゃない、人間なんだぜ…! 的な。

ただどうしても…やっぱりこの手のお話はケリの付け方、要はオチが大事なのは言うまでもなく、「なんだかんだ結局ポールは助かるんでしょ」と思って観ているこっちに対してどれだけ裏切ってくれるのかが重要だと思うんですが、そこがやっぱり…よくある力技で済ませちゃってたのがすごく残念。

そこがもうちょっと緻密で意外性のある話であれば断然評価が高まったと思うんですが、まあこればっかりはしょうがないですね。残念だったけど。

不満はあれど良いホラー

そんなわけでオチの意外性のなさ…というか「またこのパターンかよ」で結構ガッカリしてしまったのでそこそこの評価に落ち着きましたが、たださすがに有名作だけあっていろいろと「こわっ」と思わせてくれる良さもあり、面白かったのは面白かったです。

僕はホラー好きでもないしそんなに観てもいないので詳しくもないですが、いわゆる(以前学習したことでおなじみの)ジャンプスケアとかいかにもな煽りBGMで怖がらせてきたりとか、ただ痛い・グロいの過激さだけでパワープレイしてきたりする映画は醒めてしまう分、この手の「人間の怖さ」で勝負してくれるホラーは好きですね。地に足のついたホラーというか。

やっぱり願わくばオチの付け方にもう一捻りほしかったところですが、まあそれでもキャシー・ベイツのリアルな怖さだけでも観る価値があるような気もします。まじでこんな人じゃないの的な。

「なんでこうなった」状態になってしまった監禁状態のポールもきっとこう思ったことでしょう。

♪なんでもないようなことが〜 幸せだったと思〜う〜

ってね。

ネタバレー

キャバレーみたいなタイトルになっちゃいましたがミザリーをもじったタイトルです。どうでもいいですね。

最初に軽く思ったことを書きますが、あのワインをこぼすシーン、あれわかってやってたような気がしてそこが嫌だなぁと思わされたのが良かったですね。ナチュラルに倒したラッキーガールよりも「私は知ってるのよ?」の方が怖いのでそう解釈しました。

それと最後、どうやって生還したのか(アニーを殺したあと誰かが来て助かったのか、自力で這い出して車に乗ったのかとか)が1シーンほしかったなと思います。あそこで飛んじゃうのも結構力技感を加速させた気もするし。

ということで本題。

本編に書きましたが、アニーが「ミザリー殺すんじゃねぇ!」で激怒して「ミザリー実は生きてましたバージョン」を書かせるために監禁し、追い詰めていくのはまあわかります。狂った自己中らしい動機と行動として。

ただそこに至るまでがイマイチ納得いかないというか…。

元々ミザリーシリーズ≒ポールの大ファンで、それ故彼のスケジュールと行動原理を把握していたために助け出すことができた、そこまではいいでしょう。

でもそこからなぜ外部とのコンタクトを一切取らせないのか、執拗に帰らせようとしないのかの理由がよくわからず。

終盤明かされるように彼女は何人か(恋人や元恋人?)を手に掛けている過去があり、同じようにポールを狙った…というお話っぽくなってはいますが、彼を救い出した直後からそれを狙う意味がわからないんですよね。

最初からポールを殺したいだけなら救い出す必要はないし、そもそも大ファンなんだから死んでもらっては困るはずです。ミザリーが死ぬのを知るのはもっと後だし。保険金的なものも当然関係ないだろうし。

となると最初は純粋な好意でやっていて、あわよくば一緒になりたいと思って自分に惹かれるように甲斐甲斐しく世話をした…のはわかるんですが、であれば外部とのコンタクトを取らせないのも不自然な気がして。

…と書いていて気付きましたが、「自分の管理下にいれば自分の影響力が及ぶから好きになるかもしれないけど病院に行ったらそれっきりになるからそれを嫌がって」自分の家にいさせた、でも途中から無理ゲーと化したために殺すことにした、ってことなんでしょうかね…。

普通に考えれば病院に行かせてスッキリ治ってから「君のおかげで助かったよ」ってお礼に来てもらう方がよっぽど色恋沙汰に発展すると思うんですが、そう思わずに束縛しようとしちゃうのが彼女の悲しいところであり狂ったところでもあったんでしょう…。

書いてて自己解決してしまいましたが、そういうことがあるからレビュー書くのも有用だよね、と自分を納得させて終わりたいと思います。ありがとうございました。

このシーンがイイ!

これはもう「足かせ」のシーンですよ。きつすぎる。骨折前に観ててよかったな、と謎の納得。

ココが○

上に書いた通り、「人間の怖さ」主軸なのがとても良い。オカルト皆無、なんなら外も明るい。でも怖い。

狂った人間と関わらざるを得ない状況に置かれる怖さったらないし、誰にでも起こり得るかもしれない出来事だけにリアリティを感じられるのが良いですね。

ココが×

オチの力技感と、リチャード・ファーンズワースの扱い。

MVA

ほぼ3人で皆さん良かったんですが、まあこの映画はこの人でしょうね…。

キャシー・ベイツ(アニー・ウィルクス役)

ポールを助け出し、そして追い詰めた張本人。狂人。

サイコパスっぽくもあるんですが、なんとなくサイコパスっていうより狂人なんですよね。イメージ的に。サイコパスほど狡猾ではないというか…自分でも良くないと認識していてそれを表に出したりもするんだけど狂気に絡め取られる辺りがマジで狂っててよかったです。

そしてそれをまったく違和感なく演じるキャシー・ベイツのすごさ。さすがアカデミー賞受賞しただけあります。

一方で被害者ポールを演じたジェームズ・カーンも「ゴッドファーザー」のソニーはどこへやら(未だに比較するのもどうなんだって話ですが)、知的で弱さと強さを感じさせる小説家を見事に演じていたと思います。

そのジェームズ・カーンは今年の7月にお亡くなりになってしまったこともあり、勝手にこの鑑賞をもって追悼とさせて頂きます。ソニーのイメージが強すぎますが、目にした作品はどれも存在感があったなぁと思います。ドッグヴィルとかね。

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