映画レビュー1338 『ミッション:インポッシブル』
先日の最新作を観たときに、いろいろ過去作から引っ張ってきている要素があったんですがやっぱり結構忘れてるなーと思い、改めて全部観直したいぞと思ったらちょうどお盆休みが6連休だったもんで、じゃあ1日1本観ていくか、ということで改めて全作観直しました。
ただ3作目以降はもうレビューしているので、遅まきなら1と2だけ追加していきたいと思います。
ミッション:インポッシブル
1996年5月22日 アメリカ
110分
アメリカ
Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)
今となってはコレでいい気がする。
- 言わずと知れた「スパイ大作戦」の映画化作品、役も原作から一部引き継ぎ
- それ故原作を愛する層からは反発を食らうが今となってはコレでいいかもしれない
- 当然ながら規模はまだまだ小さめ、それでもしっかり娯楽作
- 意外と贅沢なチョイ役たち
あらすじ
改めて、記念すべき第一作目。今も続いていることを思えば歴史的にも結構重要な作品ですね。
今回のIMFの作戦は「東欧で活動するCIAの非公式工作員のリストを盗み出そうとしている大使館職員を拘束せよ」というもの。
司令を受けたチームリーダーのジム・フェルプス(ジョン・ヴォイト)は現地へ飛び、すでに任務を開始していたチームメンバーと合流。
この任務は「簡単な任務」であり、問題なく終了するかと思われたもののメンバーは次々と死亡、ジム自身も銃で撃たれ、残ったメンバーはイーサン・ハント(トム・クルーズ)ただ一人。
イーサンは現場から逃げ、今回の任務の司令役であったキトリッジ(ヘンリー・ツェニー)と合流。そこで今回の任務はニセの任務で、IMF内の裏切り者をあぶり出すためのものだったことを知ります。
ハメられたことに気付いたイーサンはとっさの判断で再び逃走、一人なんとか隠れ家にたどり着き、本物の裏切り者を探るべく行動を開始します。
今から観ればだいぶ違う印象
ということで「スパイ大作戦」リブート第一作ですね。
当時…確か劇場まで観に行ったような記憶があるんですが、ただその頃は結構不満でした。
その理由はきっと「スパイ大作戦」が好きだった人はみんなそうだったと思うんですが…ってこれちょっとネタバレに抵触するな…。まあもう今さらそんなに気にすることもないか、ってことでちょっとだけ踏み込んだことを書きますけども。
まず大前提として、もはや観たことがある人も少ないでしょうが「スパイ大作戦」の主人公はジム・フェルプスなんですね。初代も「新・スパイ大作戦」も。(僕がハマったのは新の方)
演じていたのはピーター・グレイブス。僕が観た作品としては「第十七捕虜収容所」にも出ています。
今作では彼ではなくジョン・ヴォイトが演じていて、まずこのキャスティングの時点で不満でした。なんでピーター・グレイブスにやらせないんだよと。ちょー渋くてかっこよかったんでね、ピーター・グレイブス。
ただそれは当時すでにお爺ちゃんだった年齢にも理由はあったんでしょうが、同時に役柄的にあえてキャスティングを変えたんだろうなと思われるので、鑑賞後にはそれはそれで一応納得はしつつ、ただそうなると今度はその「役柄的に」納得ができず、「スパイ大作戦の映画化でこういう話にしちゃうのかよ」とご不満だったわけです。そしてそれはきっと原作ファンはみんなそうだったんだろうと思うんですよ。
実際ピーター・グレイブスご本人にしても、そのチームメンバー役を演じていたあの名優マーティン・ランドーにしても不満を表明していたそうです。
と同時に、知的に追い詰めていくシリーズだった「スパイ大作戦」がだいぶ趣を変えた“スパイアクション映画”になってしまった部分にも違和感があり、それ故に「なんだかなぁ」と違和感と不満が強く感じられる映画だった、と。
当時は。
そう、当時の原作ファンはそう感じるのが普通だったんだと思います。
が、27年(!)の時を経て改めて考えると、正直もはや「スパイ大作戦<ミッション:インポッシブル」なのは疑いようもない事実になってしまったわけですよ。
この頃は圧倒的に「スパイ大作戦>ミッション:インポッシブル」だったので、どうしても前者に引っ張られて評価していましたが、今となってはもう完全に後者の方が世界的にもメジャーな作品になってしまったがために、その文脈で観れば「まあ一作目としてはこうせざるを得なかったんだろうな」と思えたので、当時よりは全然良い映画だなと思いました。
まず思った点としては、(やり方に納得感があるかどうかは別として)主人公の交代はやっぱり通過儀礼としてやっておかないといけないことだと思うので、それを踏まえてジム・フェルプスからイーサン・ハントへの“交代劇”としての作品であるという点は間違いないでしょう。(だからこその配役変更でもある)
この一作のみであれば「(まだ)若造のトム・クルーズがでしゃばってんじゃねぇ」と取られがちだったところですが、その後の積み重ねを考えれば至極当然の作りだったのかもしれない、という話。
そしてそれは作風も同様に当てはまり、1作であれば「こんなのスパイ大作戦じゃない」ですが、もはや7作も作られた化け物シリーズとなってしまった今から思えば「今後この路線で行くからね」という宣言にも取れるわけで、将来を見据えた1本だったのかなと思うんですよね。
もちろん各作品がヒットしたからこそ続きが作れる、つまりはその都度勝負を制してきたからこそ今があるわけで、その功績もお見事だとは思いますが、同時にきっと最初からトム・クルーズは大きなシリーズとして育てたくて始めたんじゃないかなと改めて観て思いました。
そしてそれが成されたことを考えると、やっぱり大したもんだなと。今や「シリーズモノ」として見れば名実ともに世界一の映画のような気がするし。
まーとんでもないシリーズを作ったなと思いますが、その取っ掛かりとして「過去(スパイ大作戦)との決別」を宣言しつつ映画としても破綻しない娯楽作品に仕上げた、という意味ではなかなか上手く作った映画なのではないでしょうか。
キャスティングも興味深い
当然誰でも好みはあるので許容できない部分もあると思いますが、今となってはコレでいい、ちゃんとやることやってこういう内容になったんだなと妙に納得できたのが今回改めて観た収穫です。
今観ると、当然最新作(デッドレコニング PART ONE)に出てくるオマージュの元のシーンが観られたり、という楽しみもありますが、もう一つキャスティング的な旨みも確認しておきたいところでございますね。
まずトム・クルーズ以外で唯一全作に出演しているおなじみルーサーを演じるヴィング・レイムスの(当たり前ですが)デビュー戦です。やっぱり若い。
しかし当時は当然ルーサーの重要度など知る由もない僕は、そんなことに気を向けることもなく「チームメンバーの女の人綺麗だなぁデヘデヘ」と喜んでいたら即死して大変ショックを受けたんですが、彼女はなんと今や押しも押されもせぬ大女優のクリスティン・スコット・トーマスでした。あとになって返ってくる衝撃。
調べたところもうすでに「フォー・ウェディング」のおヒュー親友役もやったあとだったので、この当時ですらかなり贅沢な使われ方だなと思います。イギリスからアメリカに活躍の場を広げる端緒だったんでしょうか。ちなみに同年「イングリッシュ・ペイシェント」でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされていることもあり、余計に贅沢な端役と言えます。
同様にオープニングで即死するテクニカル担当的なポジションのメガネはエミリオ・エステベスですよ。しかもノンクレジットで。これまた衝撃。
彼の場合は若手俳優時代からトム・クルーズとは親しかったそうで、その流れで出たようなのでまあカメオ出演的な感じだったんでしょう。すぐ死ぬけど。
最新作でも登場するホワイト・ウィドウの母親である武器商人・マックスを演じるのはこれまた大女優ヴァネッサ・レッドグレイヴだし、本当に改めて観るとすごいメンバーが出てる映画だったんだなと思います。
ちなみに物語のキーマンであり、「スパイ大作戦」とのつながりという意味でも重要な人物であるジム・フェルプスを演じたのはジョン・ヴォイト。こちらもまた名の知れた名優ですが、ふと「もしかして…」と思って調べたところ、この映画当時のジョン・ヴォイトは58歳でした。そう、最新作のトム・クルーズより若い…!
今作でジョン・ヴォイトが全力ダッシュしたりバイクで崖から飛び降りたりしたら「おかしいだろ」と総ツッコミされること間違いなしだと思いますが、そんな明らかにおかしなことを普通にやってのけてしまう今のトム・クルーズ、やっぱりおかしくね? と違う意味で異を唱えたくなる初作の鑑賞となりました。
アバヨ!
このシーンがイイ!
やっぱりおなじみの地面スレスレの例のあのシーンでしょうか。もう数え切れないぐらいパクリも観たぐらいの名シーンですね。
あとさり気ないところではライターつけるとすぐに迎えに来る車のシーンが好き。あのスピード感が“らしい”なと。
ココが○
いろいろ不満はあれど、その後を思えばしっかりやることをやっているところは今観て評価できる点でしょう。ちゃんと先を見越して作ってたんだな、と。
ココが×
くどいようですがジム・フェルプスのアレコレはやっぱり「スパイ大作戦」ファンとしてはモヤモヤするのは間違いないところです。
キャスト変えるにしてもジョン・ヴォイトはちょっとイメージと違うんだよな…というのもあるし。ネームバリューとしては文句ないんですが。
MVA
まあ無難に。
トム・クルーズ(イーサン・ハント役)
主人公。この頃はまだリーダーではないのが新鮮。
当時はまだアクション俳優と見なされていなかったトムクルさん、その事実もまた隔世の感がありますね。
この映画を経てまた印象を変えていったようですが、今となってはこの映画のイメージが一番強いという。不思議なもんです。