映画レビュー1526 『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』
前回の「リバー、流れないでよ」を観て「やっぱりループもの好きだな〜」と再認識し、続いて気になりつつ観ていなかったこちらの映画をチョイス。これも配信終了ではないのでまだ(2025年12月現在)観られます。
MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない
竹林亮
夏生さえり
竹林亮
円井わん
マキタスポーツ
長村航希
三河悠冴
八木光太郎
髙野春樹
島田桃依
池田良
しゅはまはるみ
大木嵩雄
『WORLD’S END』
lyrical school
2022年10月28日 日本
82分
アメリカ
Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)

もしかしたら日本版「素晴らしき哉、人生!」かもしれない。
- 日曜も会社に泊まって迎える月曜朝、その1週間が延々と繰り返される
- 仕事は超ブラックで余裕もない中、一人ひとり「ループに気付かせて」脱出を目指す
- コメディらしくワハハハ笑ってたら最後はちょっとグッと来ちゃう作りもお上手
- マキタスポーツの代表作では
あらすじ
いやめちゃくちゃ面白かったですね。これは誰にでもオススメできるかなり質の高いコメディではないかと思います。
月曜日の朝。
舞台は小さな広告代理店、ほとんどの社員が会社で寝泊まりしている中、出社してきた事務の神田川(島田桃依)が電気をつけて皆さんお目覚め。
憧れの広告代理店からのお誘いの声がかかっている吉川(円井わん)は、その代理店からの無茶振りに応えるべく新しい商品「味噌汁炭酸タブレット」の広告案をひねり出す毎日です。
隣では後輩の遠藤(長村航希)と村田(三河悠冴)が「繰り返してる…よな…?」と真剣な表情で何かに気付き、やがて吉川に言ってきます。「僕たち、同じ一週間を繰り返しています」と。
当然信じない吉川は仕事に戻り、また次の月曜日。
同じように目覚め、同じようにループに気付いた遠藤と村田はなおも吉川に粘り強くタイムループしていることを説明し、それを証明する“スイッチ”として「月曜朝に必ず窓ガラスに激突してくる鳩」を覚えるよう強く進言、結果信じるに至った吉川は遠藤・村田と3人で解決策を相談します。
遠藤・村田コンビからどうやら原因は永久部長(マキタスポーツ)にあると言われた吉川は、「だったら部長を説得すればいいでしょ」と部長に掛け合いますがまったく取り合ってもらえません。
なんでも遠藤・村田コンビによると「ヒエラルキーに従って順番に説得していく必要がある」とのことで、やむなく吉川は対面に座る先輩の森山(八木光太郎)の説得にあたります。
こうして連鎖的にループに気付いた人を増やしていこうとする3人ですが…あとはご覧ください。
意外と深い
今回も前回と同じくループもののSFコメディですが、2分間を繰り返す「リバー、流れないでよ」とは打って変わってこちらは1週間のループ、しかも超ハードな仕事を繰り返す地獄のようなループものです。観ていて胃が痛い。部長と事務の神田川さんを除いて全員多分1週間帰ってませんからね。
そんな超絶ブラックな環境なので、ループしていても夢だと思っちゃって信じない、という下りがお上手です。もうずっとこんな感じで働いてるじゃん、みたいな。
いやそれでも気付くでしょとは思いますが、でも実際ここまでハードに働いて大して睡眠時間も取れずにいると、もはや何が何やらわからなくなっても無理はないと思うんですよ。もう夢なのか現実なのかその境界もわからないような状態で。
いわば極限状態なわけで、そこから一人ひとり正気に戻していく作業みたいな。これは大変だ。
また無理言ってくるクライアントも上からガツンと言ってくるわけではなく、なぁなぁで「ちょっとイメージと違うんですよね〜(修正やってくれますよね?)」みたいな、こっちからの「直します!」を言わせるための柔らかな強制感みたいなものを醸し出してくる生々しさが本当にいやらしく、僕も徹夜で働いていた頃を思い出しましたね…。本当に胃が痛くなる広告代理店解像度の高さ。
そんな“地獄”に気付いた末端から最上位の部長までなんとか説得していく奮闘ぶりも面白いし、そこから先も一捻りあって飽きさせません。
上映時間は「リバー、流れないでよ」よりさらに短く80分ちょっとでこの満足感。これは文句なしにオススメの映画ですね。
テンポも演出もキレキレで飽きないし、コメディらしい笑いの入れ込み方も素晴らしい。何と言ってもマキタスポーツが良すぎる。
唯一暇そうな彼は仕事中も漫画読んでるし、空気読まずに飲みに誘ったりするしでとにかく他のメンバーとの精神的な距離がかなり遠い。全員「あの人は何もわかってないから」って思ってるのがセリフになくても伝わってきます。のけ者というか、もう完全に置物として置いてある感じだし、何ならおそらく全員が彼を見下してる。そこの解像度もかなり高い。
ところがそんな彼がキーマンで、それ故やむなく“取り込んで”いく必要があるために他のメンバーとの距離が詰まっていくことで話が展開していく作りも本当にお見事でした。
ループの原因となるエピソードについても、ベタかもしれませんが上手く盛り込んでいて意外と深いし、実は「素晴らしき哉、人生!」とか「ホームステイ」のような作品にも通ずる価値観が垣間見えるところがとても良かったです。
そう、「意外と深い」がこの映画のポイントではないでしょうか。ただループするお仕事コメディじゃないぞ、っていう。
主人公も「憧れの業界人が率いる会社から引き抜きの話が来ている」というスタートのポジションが絶妙で、それ故に無理もするしいろいろ犠牲にして頑張るんですが果たしてそれが正しいのか…と社会人なら誰もが感じる価値観に訴えてくるストーリーも本当に見事だと思います。
ここまでブラックな働き方をしている人はかなりレアだろうとは思いますが、それでも社会人なら誰しも大なり小なり自分を犠牲に我慢して働いてきた経験は持っているはずで、その辺りの“共通言語”を巧みに利用して感情を揺さぶってくる脚本は本当に上手いなと思います。すごい。
めちゃくちゃ考えられてると思いますね、いろいろと。
今すぐ観よう
あとはもう観てチョーダイ系ですよ。いつもの。時間も短くて観やすいコメディなんだから観ない理由を探すほうが難しいって話です。
その上意外と深さがある、となったらもう最強でしょう。
今すぐ観ましょう。オススメします。
このシーンがイイ!
「暑いな〜」のシーンがグッと来ちゃってすごく良かった。あと「サクッと飲みに行く人〜手ぇあげてっ!」のポージング好きすぎて毎回真似しちゃったよね。
ココが○
「地獄のお仕事ループコメディ」というアイデアが良いから面白くなった映画…と思いがちですが、実は上に書いたようにそれぞれの膨らませ方や解像度の高さ故に完成度が上がっている映画なのではないかと思いますね。それ故に“本当に”良い映画だなと。
表面上で奇をてらっただけではこうはならないと思います。
ココが×
特に無いです。
あえて言うなら社会人的に職場がブラックすぎて胃が痛くなるぐらい。
MVA
もちろん皆さん良かったんですが、やっぱりこの映画はこの人でしょう。
マキタスポーツ(永久茂役)
部長。キーマン。
この人の“上司”っぷりも非常に解像度が高く、良い面でも悪い面でもどこかにいそうなキャラクターで本当に素晴らしかったです。
演技としても申し分無し、本当に良かったです。
もしかしたらこの人、和製トム・ハンクスになれるのでは…?

