映画レビュー0576 『マネーモンスター』

何度も書いていますが、まージャケ絵を描くのがめんどくさくてですね。

じゃあやめればいいじゃん、と仰られるのもごもっともなんですが、一応こんな末端ブログとはいえ唯一のオリジナル要素なので面倒でも続けないとな、と思いつつ描かないのでレビューが滞ってるわけです。それなりにレビューのストックはあるんですけどね…。ええ、今度描きます。今度。

ということで、必然的に(すぐには)絵を描かなくて済む公開映画が先に来ちゃうわけです。監督があのジョディ・フォスターということで、ちょっと読めない不安さも抱え込みつつ、面白そうなので観に行って参りました。

マネーモンスター

Money Monster
監督
脚本
アラン・ディ・フィオーレ
ジム・カウフ
ジェイミー・リンデン
原案
アラン・ディ・フィオーレ
ジム・カウフ
音楽
ドミニク・ルイス
公開
2016年5月13日 アメリカ
上映時間
98分
製作国
アメリカ

マネーモンスター

人気投資バラエティ「マネーモンスター」の放送中、番組で勧められた「アイビス」社の株を買い、その後暴落したことで全財産を失った男・カイルが番組に乱入。司会者のリーを人質に取り、金融界への不満と、アイビス株暴落のからくりを教えろ、と迫る。

良い意味で“短く感じない”展開力が◎。

9.0

ということで鼻がなんかアレなジョディ・フォスター監督。

僕は知らなかったんですが、過去にもそこそこ撮っているようで、監督作としてはテレビを除けばこれが4作目とのことです。正直、大女優の監督作品ということで少し不安な気はしたんですが、ところがどっこいこれが素晴らしくてですね。いやー、すごいですよジョディ・フォスター。なかなかの捌きっぷりが。一気に(監督として)ファンになってしまいました。こう言う映画を撮れる人は今後も一生食いっぱぐれないんじゃないかなぁ。

物語としては、生放送に犯人乱入、その膠着状態からどう動き、どういう結末を迎えるのか…という、まあこういう人質モノとしてざっくり言ってしまえばお馴染みの展開ですが、ただこの映画はちょっと後半のひねりがなかなか他にない感じでとても面白く、「生放送」という舞台をうまく使った極上のエンタメサスペンスと言って良いと思います。

固すぎず、ゆるすぎず、大衆ウケする程よい軽さを持ちつつ、さり気なく風刺も混ざったとてもバランスの良い物語を、うまく緩急をつけながらジョディ・フォスターが演出した、という感じでしょうか。不安がありつつも、でも物語的には相当面白そうだと期待していたんですが、見事にその上をいく上出来っぷりでゴキゲンで帰ってきましたよ。もう。

とある著名人の方のレビューには、「狼たちの午後」と「ネットワーク」を事前に観直しておくとより面白いかもしれない、的なことが書いてあって、どっちもかなり好きな映画だっただけにその分期待も膨らんだわけですが、確かに“立てこもり系の名作”「狼たちの午後」と、テレビ放送という環境を舞台にした「ネットワーク」のいいとこ取りな感じはしないでもなかったです。

ただ、少し付け加えるなら、「ネットワーク」はテレビ界の腐りっぷり、異常さを際立たせた映画だったのに対して、この映画はあまりそういう視点は無く、むしろ「テレビもまだまだ捨てたもんじゃないぜ」的な応援歌にも見える部分があるので、「ネットワーク」的な面白さとは少し違う面はあるでしょう。

生放送に銃を持った男が乱入、それを番組スタッフがなだめつつ、警察が制圧しようと動き、そして犯人の動機となる株暴落の当事者「アイリス」社の面々が物語に絡んでくるという展開は、その性質上、まさにリアルタイムで事件を観ているかのような緊張感がまずは最高。「24」のような緊張感。こんなの面白くないわけがない。

でもオチがダメなら当然印象は悪くなりますが、後半の展開が意外な方向に進んでいくので、なおさらどんどん惹きこまれていくというなかなか隙のない物語でした。

98分という短い映画ですが、実際は2時間以上、じっくり集中して観ていたような疲れも感じて、「うわー、もっと観たかったなー」みたいな不完全燃焼感もなく、良い意味で程よい長さを感じるバランスの良さも◎。

確かに後半の舞台が移動していくシークエンスでは若干間延びしたような印象もあったんですが、それに耐えられるだけの“引き”が十分に残っていたので、頭の中でいろいろと情報を整理しながら物語を追っていく時間というのがとても贅沢で、「うわー、こういう時間たまんねー」とめちゃくちゃワクワクしながら観てました。

いいですね。映画だからこその贅沢な時間です。最高です。ラストはちょっとじんわり来たりもして。いろいろ考えさせられもしました。

「狼たちの午後」もそうですが、あの映画ほどではないもののやはり犯人像の描き方もとても良く出来ていて、果たして本当の悪は誰なのか、何なのかを考えさせられるのもすごく好きな内容でした。

高速売買を繰り返し、一般投資家を食い物にする金融システムが当たり前のこの時代、株式投資そのものがどうなのよ? そもそも株ってそういうものでいいの? と問いかけるような話でもあるし、当然、格差問題も内包しているわけで、この映画がまたトランプ&サンダースという、両極端な大統領候補が話題になる年に出てきたアメリカという国の面白さもすごい。

そういうバックグラウンドにもいろいろ思いを馳せつつ観ると、とんでもなく面白い映画だと思います。完全に娯楽映画なんだけど、その中にチクっと風刺が込められている巧みさがたまりません。

なんならこのタイトル自体、「番組名」というテイではあるものの、エラい風刺が込められてる気がして、なんか凡庸そうなタイトルに見えるんだけどよく出来たタイトル、だと思います。

そもそも「マネーモンスター」とはなんなのか、金融市場なのかそこに携わる人間のことなのか、はたまた番組を観ている視聴者がそうなのか…。いやー、ほんといろいろ考えさせられました。

間違いなく誰でも楽しめるレベルの映画な上に、より深掘りできるネタも仕込まれているというなかなかレベルの高い映画じゃないかと思います。

お見事、ジョディ!

このシーンがイイ!

えー、若干ネタバレ気味になるのでぼかしますが、ラストの見せ場で協力する二人の構図がとても好きでした。あの辺もうまいなぁ、と思います。

ココが○

一部を除いてもうベタ褒めでいいレベルの傑作だと思いますが、上に書いていない部分で言うと劇伴ですよ。これがむちゃくちゃカッコ良かった。

ちょっとテクノ調でいい感じに煽ってくれます。良い意味で、劇伴の主張がすごく気になった。オープニングからしてもうかっこいいです。Coooooooooool!

ココが×

何点か、「ん?」と思うところはあり。

まず第一に、これは僕の理解力不足かもしれませんが、「アイリス社の株暴落」の発端がアイリス社の取引システムにある、っていうのが最後までよくわからず…。「アイリス社が販売している自動取引システムに不具合があって暴落」なのかなと思ってたんですが、どうもそういう話でもないみたいだし、結構この話のキモの部分なんですがそこが腑に落ちなかったのが我ながら残念だな、と。今度暇な時に詳細調べて納得しようと思います。

まあこれは自分のせいとしても、1点さすがにちょっとリアリティが無いかな、と思ったのは、テレビ局の調査能力・技術力の部分。爆弾騒ぎで最低限のスタッフになりつつ、事件の核心に迫る彼らの仕事がいくらなんでも速すぎます。機材も人員も時間も限られた中でのあの仕事はちょっと優秀過ぎて、ご都合主義的展開と言われても仕方がないかな、と。ラスト近くではいつの間にかリー(ジョージ・クルーニー)に核心に迫る情報が行ってたりしたのも少し気になって。

まあ“出てこないシーン”でイヤホン経由で言ってたんだよ、ということなんだろうとは思いますが、終盤はテンポ重視のためかやや丁寧さに欠ける気はしました。面白かったけど。

あれがCIAとかならまだ許せるんですけどね。さすがにテレビ局員にあそこまでの能力は嘘でしょー、と。

MVA

ご多分に漏れず、役者陣も素晴らしいこと素晴らしいこと。

まずはジョージ・クルーニーですが、またもこの役はこの人しかないな、という感じで。金持っててちょっと嫌味だけど嫌なやつ過ぎない、というか。軽薄だけど根はいいやつ的なオッサンをやらせたらピカイチです。

一番グッと来たのは、今回初めて観た(SUPER8/スーパーエイトとか出てたらしいけど記憶に無い)、アイリス社CCO役のカトリーナ・バルフ。外人さんの割に薄めの顔立ちで、すごくキリッとした美人でかっこ良くて、スーツが最高に決まってるし歩き方も様になるしで…こんな女優さんいたのか、とビックリしました。一発でファンになりましたね。この人は今後売れて欲しい…けどそこそこいいお年のようなのでどうなることやら。

犯人役のジャック・オコンネルも文句無しで、これまた犯人のキャラクターにピッタリの名演技だと思いますが、今回はこの人にしたいと思います。

ジュリア・ロバーツ(パティ・フェン役)

「マネーモンスター」ディレクター。

僕はこの人、あんまり好きじゃないんですよね。「激ヤセ恋愛体質BBA」と勝手にアダ名を付けていたんですが。

今回恋愛体質は脇において、敏腕ディレクターとしてまあ仕切る仕切る。「(いい歳だし)別に美人でもないのにまだヒロインやりたいの?」って印象だったんですが、今回はそういう雰囲気が一切ない、すげーかっこいい度胸の据わった演技っぷりがとても良かったです。自分の印象とのギャップで、今回はこの人かな、と。

まあ、いずれにしてもみなさんとても良かったです。ちょこっとでも監督出てこないかなーと思っていましたが(僕が観ている限りでは)出てきませんでしたね。ただ、それもまた大女優が「裏に徹しよう」としていたという意味でとても良かったと思います。

いやー、ほんとに面白かった。この映画。

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