映画レビュー0079 『月に囚われた男』
本題とは無関係ですが、「午前十時の映画祭」の第二弾が決まったそうで。
早速作品リストをチェックしたんですが、観たことあるのが前回は10本程度、今回は4本という体たらく。今回はちょっと通ってみようかな! と思ってます。あれ、良い企画ですよねー。
これはまだ本決まりじゃないんですが、また前回同様、プログラムの方も作るっぽいようで、もしかしたらまたデザイン担当できるかもしれないというウワサ。これまた楽しみ。
でもって、いつもの。
マスター、いつもの。(バー)
月に囚われた男
するりスルリと予想をかわす巧みさが◎。
いやー、よかったですね。大好きです。こういうの。
オープニングの「月に一人、んでもってもうすぐ帰還」というシチュエーションがまず不安でたまりません。そこにいる“相棒”が喋るコンピューター、っていうのもまた不安でたまりません。そりゃあこんなシチュエーションじゃー誰だって「2001年宇宙の旅」、「HAL 9000」を思い浮かべちゃうでしょう。でしょうよ。
という既視感を胸に抱きながら観るわけですが、そこで結構予想を裏切ってくれるというか。
詳しく書くとネタバレになっちゃうので非常に難しいんですが、結構他の映画ならラストに持ってきそうな「衝撃の事実!」的な部分も割とあっさり中盤で明かされたりとか、「ラストはもしやプレステージ的な…!」と思いきや「そっちに行くかー!」と結構裏切られ。いや、勝手な予想なんですけど。
喋るコンピューターの“ガーティ”は声がケヴィン・スペイシー、これまたアヤシイと思ったら…っとっとっと、これ以上は言えないぜ。
…うーん、非常にネタバレ回避のレビューが難しい映画なんですが。
とりあえず全編通して、当たり前っちゃー当たり前なんですが、余計な情報をそぎ落として不安を煽る進行のためか、序盤から終始惹き付けてくれます。
登場人物はほぼ一人、舞台も基地内か月面かしかないので地味と言ってしまえばそれまでですが、でも例えば基地は割と細かく汚れがあったりして、「これなんか伏線じゃないのー?」と注目させるものがあるし、月面はもう映像としてただ綺麗で引き込まれるし、さらに「2001年宇宙の旅」を観たことがある人には“コンピューターとのかけあい”の時点でもうある種の不安感があると思うので、そう言う意味でもバッチリ惹き付けてくれます。
またガーティの感情表現的な絵文字のようなディスプレイが演出的にすごく効くんですよね。あそこでより無機質な印象が強まるというか。
精一杯感情表現させればさせるほど、「でもお前機械だろ」っていう虚しさみたいなものが読みとれるんですよね。そこがウマイ。
さて、まとめ。
上に書いた通り、要素としては観たことがあるようなものが多いんですが、でもうまく(あくまで僕の)予想をかわしてくれたおかげで、最後まで楽しませてもらいました。
ラストの展開はあんまり好きな展開ではないんですが、予想通りでなかった分、これもまたアリかな、と思いつつ。
あと最後に一つ、書いておきたいのは音楽。すばらしかったです。不安と孤独の宇宙空間を見事に想起させるテーマ曲で。
エンドロールはそのテーマ曲を味わいつつ、何とも言えない余韻に浸れました。ピアノの使い方がすごくよかった。大満足。
暗く静かな夜に、不安と切なさをしみじみ味わいたい、そんな時間のお供にどうぞ。大人な映画です。
ココが○
上にほぼ書いちゃいましたが、それ以外で言えば、まーとにかく映像がすごく綺麗で。ブルーレイで観たんですが、これは「息を呑む」と表現したいほどの圧倒的な美しさがありましたねー。
オープニングの10分で、「この映像だけでも観てよかった」と思えたぐらい、すごく綺麗でした。
まあ基本的にはCGのハズ(※後日知りましたが、ミニチュアだそうです)なので、「2001年宇宙の旅」のようなすごさとは違うと思いますが、それでも光の使い方が抜群にうまくて。基地内も良いセットだったし、美術面でもなかなかの映画じゃないかと思います。
そうそう、あとケヴィン・スペイシーの声もよかったですねー。
非常に贅沢な使い方だと思うんですよ。吹き替えだと完全に「いない人」になっちゃうし。でもあえてこの人にしたんだろうな、っていう感じがあって。
考え過ぎかもしれませんが、「ケヴィンだからアヤシイんじゃないか」っていう先入観をうまく利用している気もするし、ソフトで表情の見える…でもどこか無機質な感じの声というか、すごく「それっぽい」感じがよかったですねぇ。
ココが×
僕個人は大満足でしたが、人によっては地味だったり、予想通りでつまらねーよ、ってこともあるのかなーと思います。まあ、そう言ってる他の人のいろんな批評を見てると、スレちゃう哀しさみたいなものも感じちゃいますが…。
あとはやっぱりラストでしょうね。蛇足という意見も多く、それも頷けます。
MVA
もはや選択の余地無し。
サム・ロックウェル(サム・ベル役)
ほぼ一人芝居ですからね。逆に言えば、一人で保つからこの人なんでしょうね。途中から弱っていく感じだとか、葛藤・怒り・その他もろもろすばらしかったです。
アイアンマン2の時とは印象が全然違うなぁ…と。