映画レビュー1204 『母なる証明』
今回は例によってJAIHOより。ポン・ジュノ監督作とのことでなんとなく観ました。
母なる証明
良くも悪くも飄々としていてもう一つ入り込めず。
- 田舎で起きた殺人事件、逮捕されたのは知的障害を持つ男
- 容疑者の母は息子の無実を信じ、一人事件解決のために奔走する
- 暗すぎずエグすぎず、飄々としつつもちょっとブラック
- タイトルが良い
あらすじ
テーマがテーマなだけに重くなりがちな内容なんですが、むしろテーマの割には飄々としていてそこまで重くもなく、とは言えキツい部分もあるだけに(良い意味で)なかなか嫌な物語ではありました。
韓国のとある田舎町。知的障害者の息子・トジュン(ウォンビン)と二人暮らしの母親(キム・ヘジャ)は、知的障害があるが故に人一倍過保護なまでに息子を守ろうと生活していますが、ある日町の女子高生が殺害される事件が起こり、あろうことか息子が犯人として逮捕されてしまいます。
トジュンが殺人なんてするわけがないと確信している母親は、適当な捜査で事件の幕引きを図る警察や、手打ちしか頭にない弁護士には期待できないと思い、一人事件を追い始めます。
トジュンの悪友のチンピラ・ジンテや、被害者の女性を追ううちに真実に迫る母親ですが…! あとはご覧くださいませ。
視点が合うかどうか
ちょっと内容的に「殺人の追憶」の一部を彷彿とさせるなぁと思いながら観ていましたが(そう言えばあれもポン・ジュノだった)、実際は当然ながらまったく違う展開のお話でした。
展開そのものについてはなかなか好き…と言うか、ちょっと想像とは違う方向に話が進むので面白かったんですが、ただ…(詳しくないのでよくわかりませんが)ポン・ジュノの作風なのか、妙に明け透けな描写に一歩引いた視線を感じて、ちょっとした居心地の悪さのような、意地の悪さのようなものがあまり好きになれない面がありました。
この辺は「ほえる犬は噛まない」にも似たようなものを感じましたね。あまり登場人物に寄り過ぎない視点であるが故に少し冷笑しているようにも見えてしまうような。
ただこれは漠然と感じたことであって、人によってはまったくそう感じなかった人もいるだろうし難しいところです。僕はほんの少しだけ「必死な母親をあざ笑う」かのような印象を受けて、そこになんとも言えないいやらしさを感じたんですよね。本当に少しだけ。
その視点が面白いと思う人もいれば、僕のように少し引いてしまう人もいるんだと思います。そもそもその印象自体が間違っている可能性もあるし、あんまり当てにならないものではあるんですが…。
ただそうやって作風がちょっと変わっているからこそアカデミー賞監督になった、っていうのもあるんだと思うんですけどね。やっぱりちょっと普通の映画とは視点が違う気がするんですよ。印象の話ばっかりで申し訳ないんですが。
重いものの観やすい
ジャンル的にホラーと表記しているところもあったんですが、特段ホラー感は無かったです。一応はサスペンスですが、味付けにブラックコメディが入ってる感じ。
ちょっと痛そうなシーンはありますが特にグロくもなく、観やすい映画ではあると思いますが、ただどうしてもテーマ的に重い部分はあるので気軽に観るタイプの映画でもありません。
僕はあまりハマらなかった映画ではありますが、それでもやっぱりポン・ジュノはちょっと違うなと思わせる“何か”があったのは確かなので、一度観てみると良いかもしれませんね。
このシーンがイイ!
ラストシーンはさすがに「なるほどな〜」と唸らされました。あとオープニングの踊りが意味わからなくてすごかった。
ココが○
最低限の面白さは担保されているというか…好き嫌いはあれど面白いのは確かだと思います。
あとはもうタイトルがすべてです。良いタイトルだと思います。まさにこのタイトル通りの物語でした。
ココが×
上に書いた通り、少々意地の悪さを感じてそこが好きになれませんでした。どこが、と聞かれれば答えるのが難しいんですが…。
MVA
ウォンビンは役柄的に難しかったと思いますが、ちょっと単調な気がして惜しい印象。
悪友のチン・グも良かったんですが、結局はこの人かな、と。
キム・ヘジャ(母親役)
堂々たる主人公ですね。お母さん。
とにかく演技力が見事。息子を守るというより依存しているかのような強迫観念に似た思いの強さがほとばしってました。