映画レビュー0327 『やがて復讐という名の雨』

例の犬が予想以上に良かったので、シリーズ物のこちらをチョイス。ちなみに原題は劇中に出てくる拳銃の名前です。

やがて復讐という名の雨

MR 73
監督
脚本
原作
出演
オリヴィア・ボナミー
ジェラール・ラロシュ
音楽
ブリュノ・クーレ
公開
2008年3月12日 フランス
上映時間
125分
製作国
フランス
視聴環境
TSUTAYA DISCASレンタル(DVD・TV)

やがて復讐という名の雨

残虐な連続強姦殺人事件の担当刑事・ルイは、妻がある事故のせいで植物状態になってしまったことをきっかけにアル中になってしまい、ある日バスジャック未遂を引き起こしたことで捜査から外されてしまう。だが元来優秀な刑事であった彼は、独自に捜査を続け、手がかりを掴んでいくが…。

よくできてるけど、ひどく重い…。

7.5

良い意味でうるさいタイトルとしておなじみのフランス映画「あるいは裏切りという名の犬」に続く、刑事物3部作の2作目にあたります。出演者も結構かぶっていたりはしますが話自体は関連性がないようで、同じ監督で同じ刑事物、そして同じようにハードにボイルドしている、という感じでしょうか。や、実際ハードボイルドなのかどうかよくわかりませんが。簡単に言えば、「軽さ」とか「笑い」とかとは無縁の、ズッシリ重い、良い意味で嫌な緊張感が持続する感じの映画シリーズという感じ。

今作の主人公は「あるいは裏切りという名の犬」でも主人公をやっていた、おなじみ“フランス映画界の役所広司”と勝手に呼んでいますダニエル・オートゥイユ。彼が演じる刑事・ルイは、フランス警察(?)でもかなりの功績を残した優秀な刑事のようですが、あるとき起こった事故(詳細は語られないのである程度推測にはなりますが)のせいで妻が植物状態に近い形になってしまい、そのショックから鮭が手放せないクマ野郎…ではなく酒が手放せないアル中となってしまったようで、酩酊状態でバスジャックを引き起こし、逮捕されるところから映画が始まります。

やがて「その功績に免じて」無罪放免となるも、当時世間を震撼させていた連続強姦殺人事件の捜査から外され閑職に追いやられますが、個人で事件を追っていくことで徐々に犯人に近づいていき、やがて逮捕だぞ、というところでまた大きな問題が起こり…というお話です。

感想としてはまあとにかく重い。

「あるいは裏切りという名の犬」は重さの中にも人間ドラマの趣きが強く、登場人物に寄り添う感覚があってのめり込めたように思いましたが、こっちは寡黙なアル中が主人公ということもあってあまり登場人物に感情移入するような感覚もなく、またひどく暗く重いシーンの連続から直視するのもしんどくなってくるような緊張感が漂っていて、映画としては面白いんですが、好きになれる映画かというとそうではないな、と…。

結末には当然ながら触れられないので中途半端な言い方になりますが、展開自体は嫌いではないものの、やっぱりスカッとするようなものではなく、かと言って考えさせられると言うよりは、拘束されて悲しい話を聞かされ続けたようななんとも言えないドロドロとしたものが蓄積される感覚があって、一言で言えば「娯楽ではないな」というか。

面白いんですよ? すごくよく出来てたし。ただ、辛い。からい、じゃないですよ。つらい、です。

とにかくズッシリと重く、明るい場面もほぼないし、主人公なんて多分笑ってるシーン一切無かったんじゃないかな…。ロケーションも夜や雨が多く、どんよりしてるし、観ること自体がしんどくなるような映画ではありました。

上に書いたように、「あるいは裏切りという名の犬」のように登場人物に感情移入できる感覚(あいつ許せねーなとか)があまり無い分、重さだけがズッシリと腹に残る感じでしょうか。

僕は割と暗い話の映画って好きなんですが、それでもなんだか沈んでいく感覚を覚えるほど重くて暗い話なので、こりゃー観るなら体調の良い時にしないと大変だな、と思います。

かなり人を選ぶと思うので、決してオススメはしませんが、かと言って「観るな」と言うにはもったいないデキでもあるのが口惜しい。

こういう振り切った作り方ってやっぱりハリウッド以外だから、なんでしょうかねー。「ハリウッドあるある」的に言えば、おそらくこんな映画は試写の段階で手直しさせられる気がします。

そこを貫いているのがいいんですが。ただ、当分はもう一度観る気にはなれないかな…。

このシーンがイイ!

ラスト近く、ルイが拳銃でアレするシーン。拳銃持って行ってアレっていうのが。気持ちがわかる。ああいう形にしたのはスゴイ。

ココが○

これも実話を元にしているようですが、確かにリアリティがありましたね。積み重なって一線を越えていく感覚というか、一人の人間の周辺環境と、その影響のリアルさは息を呑むものがありました。

本当によく出来てると思いますよ。音楽もかなりマッチしていたように思います。

ココが×

もうこれしかないですが、とにかく「重い」。重いというか、暗いというか…。それがこの映画のすべてでもあるので、ある意味で全否定になるかもしれませんが…。いかにも嫌なことが起こりそうなシーンが多いので、「ああやだな、これちょっと観ていたくないな…」と思わされるような。

それと少しグロいシーンも出てきます。そんなに多くはないですが、殺人現場とか普通に死体が大写しになったりするので、これもまた苦手な人は注意したほうがいいでしょう。

最後に細かいことを言えば、あのショートカットの女性が手紙に自分の写真を入れた意味がわからなかった…。なんだろう、あれ。

MVA

女性署長(?)もいいなーと思いましたが、今回はまあこの人以外ないでしょうね。

ダニエル・オートゥイユ(ルイ・シュナイゼル役)

ぼくの大切なともだち」とか考えられないほど、アウトローで寡黙でアル中な主人公。顔色悪すぎて悪すぎて。開幕から気が気でなかったですね。当たり前ですがこの人もさすが役者ですね。やっぱり。

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