映画レビュー1144 『私のプリンス・エドワード』
今回もJAIHOより。
JAIHOは本当に絶妙に他で見ない良い映画のチョイスが多いので映画好きとしてはたまらないですね。
私のプリンス・エドワード
ノリス・ウォン
ノリス・ウォン
ステフィー・タン
ジュー・パクホン
バウ・ヘイジェン
ジン・カイジエ
イーマン・ラム
イーマン・ラム
2020年5月8日 台湾
92分
香港
JAIHO(Fire TV Stick・TV)

彼がもう少し大人であれば…。
- 成熟したカップルとして結婚を考える二人に過去の偽装結婚がのしかかる
- うまくいかない一点によって再度自らの環境を見つめ直すことになる女性
- 香港と中国本土の違いが伺える意味で興味深いお話
- 主演のステフィー・タンが飾らない美しさで素敵
あらすじ
なかなか味のある良い映画ではあったんですが、少々地味なのと彼氏のキャラクターにやや不満があったので微妙なラインの評価に落ち着きました。ただ良い映画ではあります。
長らく同棲中の彼・エドワード(ジュー・パクホン)との結婚がボチボチ視野に入り始めているフォン(ステフィー・タン)は、あるとき「結婚する際に離婚経験があることを文書に記載される」ことを知り、慌てます。
なんでも彼女は10年前、家を出て友人たちとルームシェアするためのお金欲しさに中国本土の男性と偽装結婚をした経緯があり、しかもその後その“夫”とは音信不通のため形式上はまだ籍が入ったままの状態なのでした。
離婚経験の有無が知られてしまうことはともかく、籍を入れたままでは当然結婚ができないため、なんとか彼にバレないうちに離婚を成立させたいと考えたフォンは、かつての偽装結婚相手(つまり現夫)をなんとか探し出し、交渉に入りますが…あとはご覧くださいませ。
若き女性監督のセンス溢れる一作
まず最初に目に入ったのがフォンとエドワードが暮らす部屋に飾られている「エターナル・サンシャイン」のポスター。その時点で「おっ、良さげ」と思っちゃうわけですが、そんな感じで淡々と静かに流れる映画でありつつもところどころなんとなくグッと来るシーンもチラホラあり、全体的に絵作りにセンスがあるなぁと言う印象。
監督・脚本を兼務したノリス・ウォンは30代前半の女性で、この映画が長編初監督作品。こりゃまた良い監督さんが出てきたなぁと思います。本当に今女性監督の、しかも若い女性監督のセンスを感じる映画が多いなぁと改めて感じました。ちなみに監督はまだ未婚らしい。
浮かれるような熱愛期も過ぎ、落ち着いたカップルとして同棲中のフォンとエドワードが自然な流れで結婚に向かっていくところ、過去の偽装結婚が重しになってしまったがためにその他の問題とも向き合わざるを得ず、まさに人生のターニングポイントに立たされる女性の姿を描いた映画、とでも言いましょうか。
ラブコメっぽい軽めの恋愛映画なのかなと思いきや、至ってシリアスなリアル結婚ドラマと言う感じ。等身大の悩みと香港&中国本土特有の問題が織り込まれ、文化的な側面でも興味深い内容でした。
単純にこういう身近な一般人のドラマは地味さ故かあまりこっちに入ってこない印象があるので、この辺をサービス開始早々に持ってくるJAIHOはさすがだなと思います。月額770円。安いからみんな入ろう。(すぐサ終しそうで怖いので宣伝)
例によってあんまり内容に触れすぎると興を削ぐので程々に書きたいところですが、これはやっぱり…当然ですが「かつての偽装結婚が無ければ」特に妙なトラブルもなく、2人は(映画で描かれるようにややこしいことにならずに)すんなり結婚したんだろうなと思うと、過去の行動の重みというものを否が応でも意識させられます。
いやすんなり結婚したところで“問題の先送り”にしかならないのも事実でしょうが、その問題が存在するがために見えてくるものによって“気付き”を得てしまう側面はどうしてもあるし、それによってまた別の問題が見え始めて…とどんどん不可逆的に結婚への道が後退していってしまうのはなんとも考えさせられます。
2人が実際に結婚するのかどうかは観ていただいてってやつですが、鑑賞中もずっと「これうまくいったところで棘が刺さったままだよな…」という不安はこっちにも伝わっちゃうだけに、どんどん元に戻れない道を歩かされているように見える2人の姿がなんとも言えません。
個人の環境によって評価が変わりそうな気も
ただ気になったのは、そんな感じで割と繊細にリアルな物語を描いてはいるものの、彼・エドワードがあまりにも子供っぽいんですよね。そこがすごく残念だなぁと。
もちろんこういう男性は珍しくないのでそこがリアルじゃないって話ではないんですが、ただどうしてもこの性格でおまけに母親(フォンにとっては義母になる人)の干渉が激しいとなってくると、じゃあ一体フォンが彼を選ぶだけの理由ってどこにあるの? と疑問を感じてしまうのも確かで。
これで彼がもっと“デキた”人であればもっと葛藤が深まっただけに…そこが惜しいなぁと思います。ただなんでもこのエドワードのキャラクターは監督の元カレそのままだそうで、まあそれじゃしょうがないよねと納得。そうじゃないと作れない部分もあるんだろうし。
なにせご存知の通り僕は結婚に無縁の人生になってしまったので、いろいろ綺麗すぎる見方をする傾向があると自認もしているだけに少々評価が現実に追いついていない可能性もあり、まさに結婚を間近に控えた人であればもっといろいろと感じ入る部分はあるでしょう。なので実際はもっと良い映画と感じる人も多そう。(良かったけどね)
ただ観るタイミングを誤るとご自身の結婚にも影響を与えかねない気もするので、そこはいろいろと自己責任で、ってやつですよ。
とは言えですね、アクション系とかノワール系が入ってくることが多い香港映画の中で、こういう等身大の一般市民の結婚話をリアルに描いた物語が観られたのはとても興味深かったし新鮮でした。その意味だけでも観る価値はあると思いますね。
このシーンがイイ!
全体的にすごく絵作りが良くて綺麗な映画なんですが、シーンとして印象的だったのはやっぱりラストシーンかなぁ。
行動もそうですが、場所もまた結構良い場所だなと。いろいろ考えちゃう。
あと彼がゲームに熱中してるシーンもゲーム好きとしてはいろいろ痛くてよかった。ああなったらいかんぞと。
ココが○
こういうリアルな一般人の物語はやっぱりいろいろ自分や自分の周りに置き換えやすいのでいいですよね。それが香港映画で観られる、って言うのが本当に新鮮でした。僕が他に観たこと無いだけって話なんですが。
あとは彼の名前と地名のダブルミーニングになっているタイトルが素晴らしいですね。彼に揺れ、同時に香港と本土の関係性にも翻弄されるフォンの姿を示唆するような絶妙なタイトル。
ココが×
やっぱりエドワードのキャラクターかなー。もう少しいろんな葛藤を感じさせる人であって欲しかったな…。
MVA
事実上の一択です。
ステフィー・タン(フォン役)
主人公の女性。(多分)アラサー。
本業(?)は歌手みたいなんですが、演技も見事だったし何より「落ち着いた関係性のカップル」っぽいシンプルなメイクが映える美しさがとても良かった。
検索すると結構ギャルギャルしい画像が出てきたりするのでそのギャップもまたびっくり。


