なんプロアワード 2016

みなさま、あけましておめでとうございます。

年明けと同時にBSで放送していた「ゴッドファーザー」をうっかり観始めてしまったがために結局最後までしっかり観てしまいました。良い映画はいつまで経ってもいいものです。今年もよろしくお願い致します。

ここ最近、年末になるとあらゆるサイト、あらゆるレビュアーの方々が「今年のベスト10!」なんつってアップしているので、毎年年末にやるべきかを悩むわけですが、でも年末って忙しいんだよね。(フランク)

ということで年が明けて落ち着いたこの時期にお送り致します、毎年恒例のなんプロアワードでございます。

今年で8回目となります。

なんとなく始めたブログがここまで続いたのも結構驚きなんですが、いつまで経っても来訪者が増えないというのもこのネット社会においては驚異的なことだと思います。文章力も画力も一向に向上しないという、変化が激しい現代において貴重な存在と言えましょう。

「○○(映画名) レビュー」で検索してもなかなか出てこないシャイなサイトなんですが、この前「おヒューニスト」で調べたらここしか出てきませんでした。なんたるニッチブログ。

ということで毎年恒例のご説明を挟んでからの本編と参りましょう。

「なんプロアワード」とは
前年に初めて鑑賞した映画の中から選んだベスト10と、主演男優 or 女優賞を発表する、少しも珍しくない誰の目にもお馴染みな企画でございます。

[ルール]

  • エントリー基準は「その年初めて観た映画」
  • その中から勝手にベスト10を選定
  • そのため古い映画も入って来るという謎み
  • さらに生死関係なく、その年に観た映画に出ていた最も良かったと感じた役者さんに主演男優 or 女優賞進呈

〈読み飛ばしてもいいどうでもいいお話〉

さて、早速ですが昨年の数字としましては、鑑賞本数は81本(うち再鑑賞2本)、劇場鑑賞本数は16本でした。

毎年のことなんですが、年明けからしばらくは「今年は観るぞ!」と気合の元それなりの本数を観て、中だるみを経た後に「このままじゃヤバイぞ」ってことで終盤にまとめて観る、みたいなパターンを繰り返しているんですが、昨年はまさにそのパターンで、中盤はもう本当に復帰したFF11ばっかりやっていてですね。で、そのゲーム中、(現在はだいぶ緩和されたものの)過去最悪、「終身刑」とまで揶揄されたミシックウェポンっつー…まあ強力な武器を作るぞ、と手を付け始めてしまいまして、中盤は延々とその作業ばっかり毎日やっていた、というとても40手前のオッサンとは思えない日々を過ごしていたために、春から秋口にかけては本当に映画を観ていませんでした。で、ティソーナっつーその武器も完成しまして、そこで一気にFF11のモチベーションがダウンしたおかげでまた「よし映画観るぞ!」というモチベーションが戻って今に至る、と。

どうでもいい話ですねマジで。

非常に無駄な時間を過ごした気もするんですが、ただ何かしらそういうものを作らないとあのゲームとはお別れできない、と自分の中で思っていたこともあり、それにFF11をやってなかったとしても多分別の何らかな無駄な時間を過ごしたと思うので、特に後悔はしていません。ただ、「今年こそは100本観るぞ」と思っていたので、達成できなかったのはちょっと残念ではありました。

それでも中盤だいぶサボっていた割に80本超えなので、悪くない数字ではないかなとも思います。ええ。

これまたどうでもいい話ですねマジで。

ということで去年から載せていますが、これまた自己記録用に年間鑑賞本数の記録をペタリ。

  • 2009年 21本(途中から開始)
  • 2010年 66本
  • 2011年 111本
  • 2012年 141本
  • 2013年 72本
  • 2014年 79本
  • 2015年 56本
  • 2016年 81本

ということでなにげに開設以降の8年中で3番目に多かったので、まあ悪くないな、と。

ただとにかくジャケ絵を描くのが面倒でほったらかしにし続けた結果、12月、特に30日に怒涛の更新をする羽目になり、「この映画は良かったぞ!!」と声を大にして言いたい映画もササッと流れていってしまったのは悔やまれるところなので、今年はもう少し平坦に、計画的にアップしていきたいと思っています。誰も来なかろうが。んでもって今年こそは100本、超えたいと思っています。

でもニンテンドースイッチでスプラトゥーン2出ちゃうっぽいからいかないかも。(先言い訳)

[総評]

まだまだ映画好きとして少ないのは自覚していますが、それでも劇場鑑賞本数は過去最高で、やっぱり巷で言われているように、僕も去年はとにかく劇場公開映画に良い映画が多かったと感じました。「お、これ観たいな」と思わせる映画が多く、そしてそれがほとんど外さなかったという。

先に書いちゃいますが、今回のなんプロアワード選出10本のうち、今年(日本で)公開になった映画が6本入っています。(すべて劇場で観たわけではありません)

これはちゃんと調べてはいませんが間違いなくなんプロアワード過去最高で、ここまで新しい映画が良かった年はありませんでした。「古い映画もむさぼる雑食映画野郎」を信条としている自分としてはこれはかなりの驚きで、やっぱり体感的に「最近良い映画が多いな~」と思います。おまけに僕が観ていない映画で話題になったものも多々あった(「君の名は。」とか「聲の形」とかアニメ映画を始めその他いろいろ)ので、その当たり年っぷりは言わずもがなでしょう。ここまで世間で広く映画が話題になった年自体、珍しいと思います。

ですが、やはりよく言われるように「映画が良い時期は社会が不安定化している」という、映画のデキと社会の質は反比例の関係にあるような側面があるので、それはそれで手放しで喜べないな、という気もするわけです。

事実、去年はイギリスのEU離脱とアメリカ大統領戦でのトランプ勝利を始め、フィリピンのドゥテルテ大統領からEU諸国の極右政党の躍進などなど、いろいろな部分で社会が不安定化しているのが“一般市民に”見える形で噴出してきた年でもあるので、改めてこの説は説得力があるな、と思った次第です。当分こういう社会情勢は変わらないでしょうし、なんなら悪くなっていく可能性も高いので、となると逆説的に今後も良い映画が増えていく…と喜んで良いのかはわかりませんが、新作映画に期待できそうな流れは継続するものと思います。

と、らしくなく真面目に書いてしまったのでおっぱい置いておきますね。(.人.)

さて、いつも通りですが前フリが長くなりました。自分で楽しみにしているだけというなんプロアワード、2016年版を始めましょう。例年通り、長いです。ガイナー。

なんプロアワードベスト10・2015年版

おみおくりの作法

「身寄りのない孤独死」の人々を、親身に愚直に「みおくる」仕事をしているジョン・メイがリストラに遭い、最後に引き受けた仕事として故人の足跡を追っていくお話。

やはりこのなんプロアワードは、面白いのは当然ですが、面白さそのものよりも少なからず「誰かに話したい」「誰かに勧めたい」というのがチョイスの動機になりやすいんですよね。そんなわけで、最後の展開に不満はあるものの、ぜひいろんな人に観ていただきたい“地味な映画”、ということで10位。

たまに脇役で出て来る地味めなオジサン俳優、エディ・マーサンが主演。44歳独身という設定で、役所仕事を真面目にこなすもリストラに遭う、なんともやるせない舞台背景なわけですが、まあやっぱり…イギリス映画はこういう「普通の人のリアルな不幸」をスタートに描く物語が素晴らしくてですね。普通の人=自分を含めた大多数の観客への優しい眼差しが感じられて、どうしてもグッと来ちゃう面があります。

ラストの解釈…というか、「それは良いけどやっぱり」みたいな思いはどうしても残る話ではあるんですが、でも一方でとても救いのある話でもあるし、日常のどこに価値を置くかで今後の人生の立ち居振る舞いも変わってくる、奥深い価値観を感じさせてくれるとても良い映画だと思います。こういう世界に身を浸せれば、自ずと利己的な行動は慎むようになるんじゃないかな、とか。

それは「そうせいやボケ」というような押し付ける話ではなく、少しずつ自分に蓄えていって、「こういう人間ってかっこいいよね、素敵だよね」みたいな人物像に近付くための栄養になるとでも言いましょうか。

この映画の主人公であるジョン・メイを、それでも「つまらない男がつまらない人生を送った」と捉えるのか、それとも「かっこいい男が何かを成し遂げた」と思えるのか、それによって評価が変わる映画でもあると思いますが、一笑に付して終わらせるにはとてももったいない、宗教観やら死生観やらいろんな要素を含んだ価値観というものを考えさせてくれます。

短く地味でサラッと観られる映画ですが、意外と深い、素敵な映画だと思いますよ。

マネーモンスター

財テク番組で財産を失った男が、その番組の生放送中に乱入、拳銃を持って立てこもり、株暴落のからくりを教えろと迫ったところ、そこには実は大きな陰謀が…的なエンタメサスペンス。

今回の選出の中では、もっとも「娯楽映画として掛け値なしに楽しめる」映画ではないかな、と思います。

よくある立てこもり系のストーリーでありつつも、その背景と結末に現代社会に対する風刺が込められていて、まさに今の時代を反映したからこそ作れた娯楽映画だと思いますね。

監督はあの大女優ジョディ・フォスターなんですが、女優上がりとは思えない見事な演出・編集力で、とても安心して観られる「単純に面白い」映画だと思います。主演のジョージ・クルーニー他もお見事。割とライトに「これ面白かったよ」とオススメできる、人を選ばない懐の広さも魅力です。

ちなみに観た時はまったく気付きもしませんでしたが、番組MCのジョージ・クルーニーとディレクター役のジュリア・ロバーツってあの「オーシャンズ11」「オーシャンズ12」以来となる共演なんですね。ということで(全然それっぽさはないけど)オーシャンズシリーズファンの方もぜひ。

ナイトクローラー

無職で窃盗を繰り返していたダメ人間が、「事件カメラマンが儲かるらしい」と言うことで始めたところどうやら才能アリ、徐々にエスカレートしていき「衝撃の映像」を撮るためにすべてを捧げるようになる…というスリラー映画。

ひじょーに胸クソ悪い映画なんですが、めっちゃ面白かったですね。

これは公開としては一昨年の映画になりますが、時代というくくりで言えばもちろん現代ということで、今の御時世をよく映したリアリティのある物語だと思います。視聴者はより刺激のある映像を求め、それに応えるために“タガが外れた”人間が登場する、という。

主人公はおそらく100人中100人が仲良くしたいと思わないであろうタイプの人間ですが、しかしその「視聴者が求める」という意味ではまさに出るべくして出てきた人間であり、「時代の要請で来るべきところに来た」人間がこうもクズだ、っていうのは…なかなか皮肉な話です。

おそらくこの映画はまさに「社会が不安定化しているがために登場した主人公」を描いている側面があって、今の時代だからこその映画なんだと思います。

本レビューにも書きましたが、視聴者が求めるが故にエスカレートしていく主人公は、つまりは一般大衆の延長線上に位置する人間なので、「価値観が合わないから違う人間だ」では済まされない薄気味悪さみたいなものが絶妙に気分を悪くさせてくれるんですよね。

そこがとても良いわけです。映画としては。ただのサイコパスだったら「ふーん」ですが、そうではないというのがね。リアルで。

若干人は選びますが、傑作と言っていいでしょう。

お熱いのがお好き

たまたまギャングの虐殺事件を目の当たりにしてしまったバンドマンの二人が、逃げるために女装して「女子楽団」に紛れ込み、出会った美人とアレコレするお話。

1950年代のモノクロ映画ですが、今見ても本当に「普通に笑っちゃう」コメディ。

これねー、ほんと最高でしたね。

♪ラッタッタッター チャラララッチャー

とかダンスシーンの音楽も永遠に忘れないぐらいにキャッチーで。

ジャック・レモンのコメディアンっぷり、マリリン・モンローのキュートさ、どっちも想像していた以上に素晴らしかった。ビリー・ワイルダーらしい名台詞もしっかり味わえるという。ラストのセリフは聞いたことがあったんですが、まさかあんな場面でああいう意味で使われていたとは…!

あり得ない設定のあり得ないエンディングではあるんですが、もうその振り切りっぷりも最高だし、すごく幸せな気分になれるコメディでした。

名前が有名なだけある、という「看板に偽りなし」な映画でしょう。

狼たちの午後

ほぼノープランで銀行強盗に入った兄ちゃんたちが、野次馬や人質を味方になんとか逃げおおせようと立てこもるお話。

若かりし頃のアル・パチーノ主演、そして共演にジョン・カザール。そう、ゴッドファーザーで言うところのマイケルとフレドが銀行強盗するお話ですが、しかしこの二人、本当に「普通のやや頭の悪い兄ちゃん」で、あっさり窮地に陥ります。が、それでも人質がいるために警察も強硬手段を取れず、粘っていく中で彼らの背景を描いていき、観客を犯人に感情移入させつつ…という映画なんですが…。

今よりもだいぶ銀行強盗の敷居が低い時代、こういう「とりあえず金に困ったから銀行強盗するか」みたいな人たちはそれなりにいたんでしょう、実際この映画も実話を元にしているらしいんですが、そういう「普通の人が銀行強盗をしたら」というシミュレーションのようなリアリティがありつつ、主犯の人生、人柄を(過去描写のようなやり方ではなく)うまくリアルタイムの事件に絡めて見せながら感情移入させ、独特な余韻を残して終わる、とても味わい深い映画でした。

一応、アメリカン・ニューシネマの流れに位置する映画だと思いますが、いかにもそれらしい読後感ならぬ観後感があり、いい意味でなんとも言えない気分に浸れます。こういう余韻のある映画、好きなんですよねぇ。

古いものの先が読めない面白さもあるし、何よりアル・パチーノの演技が素晴らしいので、この頃(1970年代)の洋画好きの方々にはぜひ観ていただきたいところ。

シン・ゴジラ

「現代日本にゴジラがやってきた」想定で、政府・官庁を中心に据えた硬派なポリティカル・ディザスタームービー。

まーもう説明不要でしょう、今年夏に最も話題になった映画です。

ですが、個人的には「(幼少期を除き)初めてわざわざ劇場に足を運んだ邦画」という記念すべき映画となりました。公開直後から結構話題になっていたのをチラチラ目にしていて、「これは観に行くべきか…でも邦画だし…」と悶々としつつ、でも予告編の時点で気にはなっていたのでこれはやっぱり行こう! と行った結果大当たり。

散々語られていますが、やっぱりこの映画の一番のポイントは「余計な要素がない」、早い話がくだらない惚れた腫れたの恋愛話だったり、お涙頂戴なパンピー犠牲話だったりが無かった点、でしょう。ひたすらそういうサブエピソードみたいなものを削って、政治家・官僚とそのシステムを中心にし、程よい皮肉なんかも込めつつ「日本としてどう戦うのか」をリアルにシミュレーションした物語が、もう日本に住む人間としてこれほど理解できるものはないな、という感じで。

もちろん現実的にはこんなにうまくいくわけもないので、ある意味でファンタジーでもあるんですが、ただいろいろと自信を無くしているであろう「現代日本人」という民族の空気感にうまく刺さったのかな、というような気がします。そういう意味では公開時期としてとてもいいタイミングだったと思うし、これもまた、時代(社会)と映画の兼ね合いみたいなものから生まれた映画のいい例ではないでしょうか。

内容的にはいろんな含意もあったりするとは思うんですが、でも偏ったイデオロギー色は見せず、万人に受け入れられる政治ドラマとしてとても秀逸な映画になっています。

個人的には、終盤のキモとなる作戦の細部がちょっと残念に感じられたところが惜しかったんですが、とは言え純粋にもう一度観たい、「単なる娯楽映画」として捉えたとしても、非常に良く出来た映画だと思います。

ボーダーライン

メキシコ国境での麻薬組織との戦いにスカウトされたFBIエージェントと、彼女を利用して目的を達成しようとする男たちの「リアル戦争」映画。

シン・ゴジラ」は日本のリアルだとすれば、この映画はアメリカのリアルでしょう。

ただ、善し悪しは別として、フィクションの怪物を配さない限りは希望を描けない日本に対して、こちらは「本当に起こっていてもおかしくない」、マジモンのリアルという若干重複し気味な表現を使いたくなるほど、生々しいお話でした。そしてそれだけリアリティがあるからこそ、ある意味希望主体で心地いい「シン・ゴジラ」とは違い、悪と善の…まさに「ボーダーライン」が揺らぐ、灰色の世界を見事に描いています。

この映画にも「そんなうまく行くかいな」というような面ももちろんあったんですが、それでもそれ以上に全体の構成がヒリヒリするほどにリアルで、ズシリと重い。正義、法について考えさせられつつも映画として単純に面白く、そしてとても良い余韻もあるという、傑作と言って間違いないでしょう。

主人公の立ち位置、扱い方も芯の通った非常にうまいもので、その上他であまり観ない描き方でもあるし、その主人公を通して映画を観るからこその観客の感情も利用して現代社会を浮き彫りにさせる試合巧者ぶりもお見事。この監督が作るという「ブレードランナー」の続編が俄然楽しみになりました。

「メキシコとの国境に壁を作る」と公言するトランプ次期大統領が出てきた今だからこそ、よりリアリティを感じられる物語にもなっているので、本当に観るなら今のうちが最も旬だと思います。ぜひ。

さて、いよいよベスト3ですが、今年は3作すべて満点を付けたものになります。

久しぶりに順位にめちゃくちゃ悩みましたが、裏を返せばどれが1位でも良いぐらいの感覚なので、どれも強烈にオススメします。というか「ボーダーライン」も含めて強烈にオススメします。

スポットライト 世紀のスクープ

教会の神父による児童虐待事件を取材する「スポットライト」チームを描いた実話。2015年アカデミー賞作品賞受賞作品。

ボストン・グローブ紙の調査報道部門「スポットライト」のメンバーを中心に、新しく赴任してきた編集局長や被害者たちの人間描写も交えながら、強い圧力をはねのけて記事にするまでを描いた社会派映画です。

これはもう観た時点で「これ多分今年1位かもなぁ…」と思うほど強烈に刺さりました。確か観たのがゴールデンウィーク辺りだったと思いますが、実は11月にもDVDを借りてもう一度観ました。そしたらやっぱりめちゃくちゃよく出来ているんですよね。ちょっと観始めたが最後、結局エンディングまで観ちゃう感じで。ここまで引力のある社会派映画っていうのはなかなか珍しい気がします。

結末は知っているだけに、知的好奇心云々ではなく単純に映画表現としてよく出来ていて、早い話が「面白い」からこそ二度観ちゃう、それだけ娯楽としてもよく出来ているということでしょう。逆に言えば、テーマが堅そうに感じられる分、面白いのに観ない人もいるかもしれないのがとてももったいない。

「社会派映画」というとなんだか小難しくお堅い感じがしちゃう人もいると思うんですが、しかし当然ながら新聞記者だからと言って特別な人たちではないわけで、上司とのアレコレもあれば、同僚との愚痴りあいもあるし、子供を気にかける親でもあるし、地域を愛すコミュニティの一員でもあるわけです。そういう「普通の人」が、圧力に負けずに新聞記者としての仕事をまっとうするという姿に胸を打たれるし、とても心揺さぶられる映画でした。

また彼らの奮闘がどのような意味を持つのか、というのがエンドロールで明かされるんですが、そのエンドロールがまたものすごくうまいんですよね。テクニックとしてうまく見せるというよりも、「誰が見ても言葉を失う」ほどに厳然たる事実としてとてつもない功績だった、というのがひと目でわかるようなエンドロールなので、あそこで鳥肌がゾワッと立っちゃうことウケアイです。とにかく良い映画だし面白いしかっこいい。

悲しいかな日本ではこんな調査報道は100%あり得ないと言えるほど報道のレベル、志が低いので、なんだかんだ言ってアメリカってすげーな、と羨ましく感じる面もありました。ただその“報道の志”は市民社会に支えられているのも事実なので、結局は報道の問題と言うよりは、日本そのものの問題なんだろうな…と思うとまた悲しくもなります。こういう文化が根ざしている社会が羨ましい限り。

マジカル・ガール

白血病の娘のために、彼女が好きな「魔法少女ユキコ」の衣装を買ってあげようと思った父が、ある人妻と知り合い、周りの人々を巻き込んでいくスペイン映画。

この映画は「映画好きが好きになる映画」でしょう。

表現は必要最低限のものしかなく、観客は想像力をフル回転させる必要があるんですが、その想像の上を行く展開に舌を巻き、暗い映画なのにグイグイと引き込まれ、余韻で悶々とするという10年に1度レベルの傑作だと思います。

スタートは「白血病で余命幾ばくもない娘のため」という非常に泣かせる動機でありつつも、方法が間違っていたためにどんどんと取り返しのつかない深みにハマっていく不幸話ですが、しかし見方を変えれば幸せだったような気もするし、筋そのものの単純な話ではない懐の深さも印象的で、それもやはり余計な情報を一切排除したおかげで、観客がいろいろと補完できる面が大きく、それ故に映画の上映時間以上に世界が広がるという、素晴らしく“含みを持たせた”映画だと思います。

全体的に地味ではあるんですが、間の持たせ方や映像のセンスできっちり見せてくれるので、「観ていて眠くなる」ような映画ではないと思います。そこがまたすごい。「これどうなんだろう…何が起こるんだろう」と気になって仕方がない、それだけ予想させない作りで大変楽しませてくれました。

まさかの長山洋子デビュー曲も驚きですが、これがまた…とても効果的に使われていてですね。あのキャッチーなフレーズがすげー良いところでかかるんですよ。シュールだけど、でもあれほど良い使い方って無いんじゃないかと思いますね。

もう予告編すら観てほしくないほどにネタバレを回避して、事前情報なしで観て欲しい映画なんですが、ただ万人向けかと言うとそうでもないので、このフワッとした情報だけで興味を持ってもらえるかが疑問ではありますが…観て欲しいなぁ。

合わない人もいて当然だとは思いますが、ただ映画の作り自体がとても高いレベルにあるな、的な雰囲気は観てわかると思うので、「ベタなハリウッド映画は飽きてきたぜ」的な方々にはぜひご覧頂きたいところ。

なんと言っても「今年観る映画でスポットライトは超えそうにないな」とずっと思っていたところに観て、一気に心奪われましたからね。これはすげぇ、と。

一言で言うと衝撃。話が衝撃ってわけじゃないんですよね。映画としてなんか衝撃だったんですよ。どえらい映画だなこれ、って。それは多分見せ方とかも含めて、なんだと思います。んー、自分の文章力では伝わらないのがもどかしい…。

独特の雰囲気があって、すごくハラハラするんだけどそのハラハラとは違う方に話が進んで、どうなるんだろうと不安に観ている間に一気に仕上がる、って感じでしょうか。

あととにかく情報の提示の仕方が好きですね。小道具の使い方とか。始めから終わりまでセンスの塊で、監督に余力すら感じられる名作感があります。ほんっと劇場で観たかったですねぇ…。

この世界の片隅に

呉から広島に嫁いだボーっとした女性・すずが、様々なことに折り合いをつけながら戦時中を生きていくアニメ映画。

自分でもこれを観るまではまったく予想していませんでした、まさかの邦画、しかもまさかのアニメが1位。多分こんなことはもう二度と無いんじゃないか、と思います。それだけとてつもない映画だった、ということだけでも伝われば。

同名漫画が原作で、もちろん鑑賞後に原作も買って読みました。映画の筋自体は原作にかなり忠実で、確かに「原作と映画化作品」の関係ではあるんですが、僕は「よくこの原作からここまで作ったな…」と驚きました。

もちろん原作が悪いわけではなく、原作も素晴らしいのは間違いありません。ただ、原作の方がややとっつきにくい面はあるかなと思いました。特に言葉の面。広島弁は文字で追うとなかなかすんなり理解しにくくて、脳内で再生して把握するのに若干時間がかかる気がしたんですが、映画だとすんなり頭に入ってきたんですよね。今更ながら、言葉を音で聞くことの大きさを実感しました。もちろん演者の力量もそこに大きく貢献していると思います。

ご存知のようにまあとにかくあらゆる方面から絶賛の嵐で、「ここまで絶賛されていると逆に胡散臭い」とか思ってもおかしくないレベルですごい評判なんですよね。僕も劇場に観に行っていなかったら逆に醒めてその後もレンタルで借りて観たりしなかったかもしれません。あまのじゃくだから。でもこの映画は本当に観てよかったし、また観たくて仕方がない。今でもちらっとテレビで予告編が流れたりしたら、もうそれだけでちょっとうるっと来ちゃうという結構異常なレベルで感情を動かされる作品になりました。

この映画のすごいところはもちろんいろいろあって、映像もそうだしのん(能年玲奈)の声もそうだし徹底的にリアリティにこだわった情景もそうだし…本当にありとあらゆるところで隙がないのがとんでもないんですが、僕が思うに、この映画の最もすごい部分は、おそらく理解度の大小にかかわらずほとんどの人々が「すごい、観るべき映画だ」と賞賛している点にあるんだと思うんですよね。

例えば僕の場合、この映画が伝えたいこと、描いている内容の3割も理解できてない気がするんですよ。でもものすごく心を揺さぶられたし、まさに「万感の思い」で劇場をあとにしたわけです。単純に「悲しい」とか「感動した」とかではない、もうあらゆる感情がごった煮になった状態で涙をこらえながら劇場を出たんですよ。エンドロールまで号泣した上でさらに涙をこらえながら、ですよ。

で、僕よりももっと当時や社会情勢に詳しい、多分8割以上は理解してそうな人も、おしなべて「名作だから観るべき」と言っているというすごさ。

よく言われることですが、大体映画というのは、観る人の経験や価値観で評価が変わるものだし、映画そのものに対する理解度みたいなものも関わってくるので、そこまで広範な高評価って得にくいはずなんですよ。それがこの映画はもう老若男女、あらゆる人たちがすごいと言っていて、その懐の広さに底知れぬこの映画の力を感じるわけです。

もちろん中には酷評している人もいますが、右左問わずちょっとイデオロギーに染まりすぎた見方でケチを付けているだけだったり、本当は描かれているのにそこを観ていない…のか理解できてないのかはわかりませんが、製作者側の意図からずれたところで批判していたり、あまり的を射ている批判は無いように思います。

でも、じゃあなんでそこまで大多数に響くのかと聞かれると、僕でもよくわかりません。もう本当にいろんな感情を揺さぶられすぎて、端的にどうって言えないんですよね。良かったポイントも人によって違うみたいだし、そこにもまたこの映画の底知れぬ力を感じるという。

ちょっとね、恐ろしい映画ですね。ある意味では。

あと映画自体の評価とは完全に別として書きますが、やはりこの映画自体の背景も奇跡的なものがあって、そこがより応援したくなる、ファンを増やす理由になっているのも間違いのないところでしょう。

クラウドファンディングに頼るほど、昨今のいわゆる“普通の”映画製作とは違う、極めて小規模なプロジェクトからスタートしてこれだけ日本を巻き込んだという「立身出世」みたいな側面もそうですが、監督と原作者当人たちが「運命」と言った出会いもそうでしょう。あの原作をこの監督が料理したからこその映画ですからね。

そして何より、触れないわけにはいかない主演声優「のん」の起用。噂では、監督は「彼女しかいない」と惚れ込んでいたものの、やはり干されていた人なので、起用を決めた時点で「茨の道を歩む覚悟を」と考え、スタッフに伝えていたそうです。

今もそうですが、まずこの時点で一番影響が大きいであろう民放でのプロモーションは無くなるわけですからね。大手のバックアップも無く、私財をつぎ込んでヒットする確証もない、そんなプロジェクトにさらにハンデを背負うかのような人選で戦う決意をして、ただ「自分が思う最高の作品にしたい」一心で熱意を貫き通した結果がこの傑作ですよ。

この話だけでも泣ける。素晴らしいですね。製作者の鑑だと思います。片渕須直監督。

そしてその熱意に応える、のんの名演ぶり。僕は声優には詳しくないので技術的なことはよくわかりませんが、ただ「きちんと演技ができた上に良い意味で素人っぽさが残る」声というのは、この物語の主人公であるすずさんにとても合っていたと思います。いつもほのぼのとしていた彼女が慟哭しながら叫ぶシーンなんて、そのギャップ故にものすごく刺さるし、その声の力たるや相当なもので、途中からはのんがどうこうとか意識しないレベルですずさんに同化していました。この出会いもまた奇跡だし、干された後初めての大きな仕事がこれ、っていうのも彼女の“持ってる感”がすごい。否が応でも応援したくなりますね。

長々と書いてしまいましたが、とにかくそういういろんな奇跡を紡いで作られた、文字通り奇跡的な名作中の名作だと思います。また、戦争そのものもそうですが、それ以外の当時の周辺事情もいろいろと学んだ上で観ると、また違った部分で感動したり刺さったりする面も多い映画だと思うので、そういう意味では何度でも楽しめる映画になっているとも言えます。

いやはや、本当にすごい、とんでもない作品だと思います。海外の人が観てどうなのかはわかりませんが、日本人であればぜひ観るべき映画でしょう。特に若い人に観てほしいですね。「戦争映画は悲惨だったり説教臭かったりするから」とか思う人にこそ観て欲しい。全然そういうのじゃないから。むしろ笑えたりするから。

僕はこの映画に出会えて、劇場で母親と観られてとても幸せでした。ものすごく良い親孝行になったと思います。

勝手に選出・AOY(Actor or Actress Of the Year)

いやー長くなりました。最後にちょこっとだけお付き合いお願いします。最優秀俳優or女優賞の発表。

今年はイマイチ「この人だ!」とピンとくる感じがなかったんですが、でも振り返るとああこの人だな、と思いました。(わかりにくい)

エミリー・ブラント

前から好きでしたが、今年改めて好きだなと。お付き合いしたいなと。

顎が割れている点と油断すると化粧が濃くなる点だけが残念ですが、そこを除けばとても素敵な女優さんだと思います。かわいさ・綺麗さを押し出してももちろん良いんですが、何より「ボーダーライン」のように、シビアな男勝りな役もビタッとハマるのが良いところでしょう。「ガール・オン・ザ・トレイン」、楽しみです。

謎の受賞の一報にも気さくに笑顔でカメラに収まるエミリー・ブラントさん。

※決して「ゴッドファーザー PART III」でのソフィア・コッポラではありません。

さて、今年はもう早速5本ほどレンタルしてきました。今週末より早速レビューしていきたいと思います。

今年も良い映画に出会えますように!

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