なんプロアワード 2023

皆さんあけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。

僕はご存知の通りド埼玉県民なのでいつも通りの年明けを過ごしてはいますが、正直北陸の方々にとっては「おめでとう」なんて言ってる場合ではないぐらい過酷な年明けになってしまい、非常に胸の痛いお正月になってしまいました。

自然現象なので仕方がないとは言え、さすがに元日を直撃するのはいくらなんでもひどすぎると神様がいるなら文句の一つも言ってやりたい正月です。

とは言えそこに引きずられていたら何も進まなくなってしまうので、北陸の方々の無事を心からお祈りしつつ、いつもの通り「なんプロアワード」で今年も始めたいと思います。

今回こそは短めにするよ…!

「なんプロアワード」とは
前年に初めて鑑賞した映画の中から選んだベスト10と、主演俳優賞を発表する、少しも珍しくない誰の目にもお馴染みな企画
[ルール]
  • エントリー基準は「その年初めて観た映画」
  • その中から勝手にベスト10を選定
  • そのため古い映画も入って来るという深まる謎
  • さらに生死関係なく、その年に観た映画に出ていた最も良かったと感じた役者さんに主演俳優賞進呈
〈2023年雑感〉

今回で15回目のなんプロアワード。ブログ自体は16年目に突入です。いやすげえ。自分でやっといて引きますね。もう。始めた頃に生まれた人、高校生になるじゃん…。

相変わらず人は来ないし絵も文章も一向に成長が見えませんが。多分5年目ぐらいから頭打ちと思われます。低成長時代。

それでですね、体感的には去年は「映画観るのサボったなぁ」と反省しきりな一年でした。

それなりにゲームしたりもしてはいましたが特にすごくハマったようなものもなく、なんとなくぼんやりすごして映画観ない休みになっちゃったね、みたいな日が多かった印象で、まーこのまま歳を取ってより無気力になっていくのはかなり怖いな、と年初から震え上がっております。

秋頃からお試しでAppleTV+に入り、一部連続ドラマにも手を出したもののそのテンションもあまり続かず、ゲームはゲームで何をやってもめんどくさくなるしで我ながらかなり危険な状況のような気がしてなりません。何か打ち込めるものがないとこのままボケが始まりそう。

一方でF●NZAではセールが来たときにわかるようにと適当に好みそうなAVをお気に入りに放り込んでいたらまさかの上限(1000本)が来てしまい、マジカヨ…! と衝撃を受けたりもしました。

まさに昔いやらしいDVDショップで背中が曲がっているお爺さんが棚の上の方のDVDを取ろうと必死になっていた姿を見て「あれは…あれは俺の未来の姿だ…!」と涙したあの未来が迫ってきていることを示唆しています。

映画のブログでしたね、失礼しました。

いつもの通り、ここで恒例の前年実績に移りましょう。

去年の鑑賞本数は103本(うち再鑑賞17本)、劇場鑑賞は4本でした。

前年比でそれぞれ-6(+2)、+3なのでまあ誤差みたいなもんです。あんまり気にしなくてもいいのかもしれません。

ちなみに去年からウォッチパーティが隔週のところ月一開催に減ったので、丸々その分鑑賞数が減ったようなイメージでしょうか。その割に再鑑賞が多いのは「レビューとジャケット書くのめんどくせーな」と逃げた傾向も伺えます。

ちなみにウォッチパーティの定期開催は今年の1月をもって終了することに決めたので、その1本を除いて今年は全部自主的に観ないと本数増えないよ、と「映画好き」の根性が試される一年になります。

昨年は思い返すと「3桁は観ないと映画好きとしての自我が…グギギギギギ」と焦って後半観るようになった面もあるので、やっぱりもう少し平準化するというか、休みの日なら息を吐くように映画を観たいものです。

よほど忙しい日は別ですが、休みの日に忙しかった記憶がないぐらい暇なんでね。

…気のせいか、なんかいつも悲しい話になりますね。なんプロアワードって。

気を取り直しまして、こちらも恒例になってまいりました再鑑賞作品のリストです。

また恐竜神父観てるよ…我ながら呆れちゃいますね。

ウォッチパーティの再鑑賞はマッドマックスを除いてすべて自分が候補に出したものであり、好みのほどが伺えます。

MIシリーズとイコライザーシリーズは劇場鑑賞に備えての再鑑賞。わかりやすい。

そして去年の〆は「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」にしたんですが、これが初回以上になんだか刺さってしまい、自分の人生についていろいろ考えて凹む年末を過ごしました。

短くても太い人生、憧れますね…。

なお去年はちょっと例外が発生しておりまして、まずウォッチパーティで「クレイジーなオーストラリア人」という映画を観たんですが、これは英語音声/字幕なしというかなり珍しいタイプの映画だったため、一応内容を完全に把握できない以上レビュー不可ということでレビューはしませんでした。言葉がわからなくても内容は大体わかる映画ではあったんですが。

もう一つ、去年のデータをチェックしていて気付いたのが、1月にJAIHOで今年2本目の鑑賞として「最善の人生」という韓国映画を観ているんですが、これはレビュー漏れで掲載されていません。

完全に書いた記憶もあるしジャケ絵も残ってるのに…。悔しい。

固定ページにもリンクがあるのになんで消えているのか…原因がまったく記憶にないんですが…。悲しい。

今調べたら連番も1285番で欠番になってますね…。ドウシテ…。

んで、今でも結構記憶に残っている“強い”映画だったので、思い出しつつ改めてレビューを書きました。かなり時間が経ってはいますが、特例ということでお許しを。

ちなみにこれは以前書いたか忘れましたが、当ブログ引っ越しの際(M→H)に「ザ・インタープリター」のレビューが抜けてることにも気付いたんですよね。

なので…おそらくブログを書き始めてから「観たけどレビューが無い」映画は(クレイジーなオーストラリア人は別として)「ザ・インタープリター」のみのはずです。それ以外は全部書いてます。

「ザ・インタープリター」はさすがにもう鑑賞から10年は経っているはずなのでほぼ記憶にも無く、書くならもう一度観るしかないんですが…そこまでして観ようかな、って映画でもなかった記憶なので多分観ません。幻の鑑賞です。

ということでこちらも恒例、実績に去年分を追加しましょう。

  • 2009年 21本(途中から開始)
  • 2010年 66本
  • 2011年 111本
  • 2012年 141本
  • 2013年 72本
  • 2014年 79本
  • 2015年 56本
  • 2016年 81本
  • 2017年 107本
  • 2018年 128本
  • 2019年 107本
  • 2020年 102本
  • 2021年 151本
  • 2022年 109本
  • 2023年 103本

2021年だけウォチパの多さから跳ねてますが、それ以外は大体100本超えればいいかな感が丸出しで、まあ大体こんなもんなんでしょうね、キャパ的に。

ただ今年はもうちょっと増やしたいと思ってます。年初の目標として。

せめて月10本、年間120本ぐらいを目標にしたいところです。ちなみにこの三が日も(再鑑賞もありますが)ちゃんと観ました。

[総評]

去年の鑑賞姿勢としては「ドキュメンタリーを多めに観よう」というのがあり、そのため結構ドキュメンタリーは観た気がします。

やっぱり年々社会そのものへの興味が増している気がするし、それ故ドキュメンタリーはいろいろ受け取るものがあっていいなと。

どうしても地味になる分眠くもなるので難しいところではあるんですが、ただ今年も継続して良さそうなドキュメンタリーは観ていきたいですね。

先にネタバレしておきますが、「最後の1本」は入れたかったけどやめました。すんごい面白かったけど。なんかこれ入れたらおしまいかな、って。

それと前回もやりましたが、今年もちょっと国別データを見たいなと思って計算してみました。

※画像クリックで拡大します

やっぱり配信等で日本に入ってきやすい(絶対数が多い)アメリカ映画が一番多いのは変わらず。

気持ち的には「タイ映画ばっか観てたな」と思ったんですがそれほどでもないですね。でも割合的に3番目に来る人はなかなか珍しいのではないでしょうか。JAIHO様々です。

一方で一昨年かなり観ていた韓国映画は(消えた「最善の人生」含め)たったの2本でした。定期的に観ないと腕が伸びると言われるインド映画も2本だけ。これには自分でもびっくりです。

地域別も出してみましたが、去年は北米・ヨーロッパ・アジアが大体同じぐらいで世は三国時代。

おのれ匹夫め! みだりに舌を動かすでない…!(Audibleで吉川三国志聴き中)

余談ですがやたら「ヒップヒップ」言うので尻だらけだなと思ってたら匹夫だったよ、っていうね。聴くだけも難しい。

今年もなんだかんだアメリカ映画を観ていくんだろうとは思いますが、やっぱり一番入ってくるだけに最近は一番当たり外れが激しいとも思っているので、なるべくその他の国の映画を鑑賞していきたいなと思っております。知らない地域の風習とか風景とか食事が出てくるだけで楽しいし。

それにアメリカ映画はレビューを書いている人も多いので、少しでもレア感を出していきたいスケベ心もあって今年もタイ映画やその他ちょっとマニアックな地域の映画を率先して観ていきたいところ。

一旦退会しようと思っていたJAIHOですが、そういう事情もあってやっぱり継続、ですかね。

AppleTV+も一応継続したんですが、本当に映画の本数が少ないのであまりレビューする機会はなさそう。

よって今年もおそらくアマプラとJAIHO中心になると思われますが、やっぱり配信にない(下手するとソフトでもない)映画をたまに出してくるBSももう少しちゃんとチェックしていくようにしたいと思っております。

余談ですがウォッチパーティでくだらない映画ばっかり観ていたせいでアマプラの「あなたが興味のありそうな映画」のラインナップがクソオブクソなのが解せません。

最後に選出について。

今年はいつも以上にあんまりピンとこないというか…「それなりに面白かったな」みたいな映画ばっかりで、突き抜けて「うおおおおおおお!」と身体中に染み渡るような映画を観た記憶があんまりなくて、やっぱり年々刺さる映画が減っているような印象がありました。

自分のチョイスが良くない、というのもあるとは思うんですが、それにしてもやっぱりある程度「(自分にとっての)傑作」を概ね摂取してしまったのではないか、という悲しみがあります。

とは言え映画なんてニートになって毎日四六時中ずっと観続けたとしても死ぬときに「全部観たぜ」なんてことがあり得ないのは間違いないわけで、絶対どこかに心臓を打ち抜かれるような傑作があるんだろうとも思います。

そんな傑作を求めて、やっぱり観続けてしまうもの…それが映画なんだなぁ。おれお。(おれお)

ちなみに今回は絞るのも順位付けも割とサクッと終わりました。悲しいですが逆に言えば悩むほどいい映画が多く無かったとも言えます。

これもまた反省点で、今年は数もそうですがもっとしっかり選んでしっかり観る、基本に立ち返って映画に向き合いたい所存です。

ということで始めましょう。

なんプロアワードベスト10・2023年版

『最善の人生』
最善の人生

仲良しJK3人組が一緒に家出、共同生活を始めるもうまく行かずに関係性が変わっていくお話。本レビューはこちら

なんとまさかのランクイン。消えてたのに。

っていうのも改めて思い出しつつ調べつつレビューを書いていたら、「やっぱりこの映画すごかったよな…」と思ったんですよね。

1年経つと「これどんな映画だっけ?⎝。⌓°⎞」って記憶がグニャグニャになっている映画も珍しくない中、結構その重さの感触が今も手に残ってるぜ…みたいな。かなりエッジの効いた映画だと思います。

誰もが記憶にある「学生時代の狭い社会で起こる不条理な関係性」を鋭く切り出し、韓国映画(原作は小説ですが)らしいドラスティックな展開とそこにリアリティを持たせる上手さが光ります。

演技・演出の良さもすごく記憶に残っていて、思い出し本レビューにも書いた通りかつて「子猫をお願い」だった優しい社会が時代を経てこの映画のような環境になってしまった…というような感慨もあり。

もちろんそれぞれ別のグループの(同時にあった可能性もある)話でしかないんですが、でもどうしても比べちゃうし比べると時代を感じちゃうしで、“狭い社会”からもっと広い社会の変遷を感じ取ってしまう妙。

それだけ現代が厳しくなってきているという実感をそこに投影してしまうんでしょうね。

邦題もとても良くて、それも込みで鑑賞後に「最善の人生かぁ…そうかぁ…最善の人生ねぇ…」と考えてしまう良い映画でした。

『愛しい詐欺師』
愛しい詐欺師

詐欺被害を未然に防いだ女子が、仕掛けてきた詐欺師と一緒に「元カレ詐欺師」を詐欺にかけてやるぜ詐欺映画。本レビューはこちら

一押しのタイ映画で、メート・タラトーン監督作品。メート・タラートン表記もあってややこしいことこの上ありません。まだ人名が定まってないのがタイ映画のポジションを表しているとかなんとか。

メート・タラトーン監督の映画は、去年これと「アイ・ファイン、サンキュー、ラブ・ユー」「ATM エラー」の3本観まして、結果これが一番面白かったかなと。

3本すべてラブコメで、おそらく今のところラブコメ専門に近い監督さんっぽいんですが、中でも詐欺映画に振り切っている分「結果がわかりきっている普通のラブコメ」よりも面白かったんじゃないかと思います。

他の詐欺映画(それこそ去年観た「Sharper:騙す人」とか)と比べるとだいぶ詐欺の規模は小さく、言っちゃあなんですがショボいのは確かです。ターゲットも(詐欺師だけど)一般人だし、私怨だし。

でもそこがいいんですよね。身近な感じがして。大掛かりなものももちろん面白いんですが、高級料理と家庭料理を比べるようなもので、これはこれで違った味でいいんですよ。

それをラブコメに絡めてくるっていうセンスも素晴らしいなと思います。

レビュー的にも「普通に面白かったレベルの点数」しかつけてないんですが、振り返ってみると「愛しい詐欺師面白かったな〜」っていつも思うんですよね。JAIHOで映画選んでるときとかも。またジョン(詐欺師仲間の一人)観てえな〜って。

メート・タラトーン作品っぽい脂っこさも一番受け入れやすいレベルというか、初見で触れても困惑しづらいような気がします。クドすぎて追いづらくなるみたいなクセが一番無いような。

アワードに出すには若干甘めだとは思うんですが、ただ個人的にハマってしまったというか、単純に「これ好きだわ〜」ってなったので選出しました。

JAIHOに入っている人はきっと配信利用者の中でもかなりマニアックな方だとは思うんですが、常時配信作品なので仮入会でも入ったときにはぜひ観てみてほしいですね。

タイ映画、タイコメディの色が見えてくると思います。好きなら他にもいろいろあるから観てみてね、と。

『ハナ 〜奇跡の46日間〜』
ハナ 〜奇跡の46日間〜

卓球の世界選手権に「南北統一チーム」で挑む選手たちの実話系。本レビューはこちら

これで韓国映画は2本ともランクイン。さすがレベルが高いぜ…!

この映画は本レビューでも書いた通りの超王道なので、おそらく誰が観てもグッと来ちゃう「わかりやすい良作」だと思います。逆に「ベタすぎるから嫌」っていう人もいそうなぐらいにベタではあるんですが。

ただこれまた本レビューで書いたことではありますが、「(南北関係が)今現在の方がなんなら悪化している」からこそこの物語が光る部分は間違いなくあって、今現在の世界情勢込みでいろいろと受け取るものがある点が深いし良いなと思うんですよ。

単純なスポーツ感動系に留まらない、政治も平和も全部ひっくるめてごちゃ混ぜにしたところに希望を見出すような話というか。

ミクロではスポーツ、チームの良さを描き、マクロでは人々の願望を描く。その二重構造に王道が乗っかってブワーッと泣いちゃうわけです。

また改めて考えると、「女性同士の物語」というのもすごく大きい要素だなと思いました。

男性同士の友情で云々、みたいなのは結構ありますが、女性同士で南北の友情云々は初めて観たし、今の時代では完全にアウトでしょ的な男子選手が登場することからも結構その視点は意図して込められているんじゃないかなと。

「歴史を動かすのは女性」みたいな言葉を聞いたことがあるような気がしますが、実はこういう女性たちによって良い未来が訪れるのかもしれません。

ジェンダー平等が叫ばれて久しい今の時代、女性主人公の映画もたくさん出てきていますが、そんな今だからこそ10年前に作られたこの映画がより輝いて見える…と適当なことを言っておきましょう。言うのはタダです。

『ブレット・トレイン』
ブレット・トレイン

「新幹線でケースを取ってくるだけ」の簡単なお仕事のはずが殺し屋大量招集で死への旅行がお始まり。本レビューはこちら

めっちゃ好きです。「ザ・娯楽映画」なんですが、娯楽のレベルが高い。

スピード感があり、コメディの混ぜ具合も程よく、伏線はしっかり。原作伊坂幸太郎は伊達じゃない。

そして情けないブラピ。それだけで最高。

ちょっとした群像劇というか、登場人物それぞれに物語があり、その人たちが一同に介してどうなるのか…というお話なので、軽いとは言えバックストーリーもしっかり理解させてくれるだけに奥行きも感じる良作。

コメディタッチ故に軽く見られがちですが、実は物語としての骨組みがしっかりしている映画ではないでしょうか。この辺も原作の良さをうまく消化しているのかもしれないですね。

余談ですが、振り返ると「怪しいジャパン描写最高だな」と個人的な価値観が定まったのが去年だと思っているんですが、その意味でもこの映画の「怪しいジャパン」が素晴らしいのもポイント。

舞台はもちろんのこと、英語表記と日本語表記を並列に出してくる辺りもきちんと日本を尊重しているアピールしつつ、でも肝心の描写はあり得ないファンタジージャパンなのがたまりません。

いろいろおかしいところはおかしいんですが、それが創作としての良さだと思うんですよね。リアリティに寄せるべき話じゃないし。

だからこそ娯楽としてより楽しめるものに仕上がっているわけで、「これはリアルじゃない」っていうのは内容によって言うべきか言わないべきかは変わってくるぞ、というお話です。

『ウインド・リバー』
ウインド・リバー

インディアン居留地で発見された一つの死体から浮かび上がる、アメリカ社会の宿痾。本レビューはこちら

なんか知ったかぶりで宿痾とか偉そうに言っちゃってますけども。手書きだったら絶対使わない表現ですね。漢字書けないからね。

あとジャケ絵の覗き込んでる感じがかわいいですね。(他人事)

長年自分で自分を観察してきて自分自身うっすら気付いてきたことではあるんですが、ご承知の通り、僕はコメディ系の方が好みです。笑える映画の方が圧倒的に評価が甘い。

だからこそたまに真面目な映画を観ないとバカになるな…と振り幅の大きいチョイスをしたりするわけです。

そんな中、去年観た映画で最もシリアスだった気がするこの映画、好みを超えて心臓を撃ち抜いてくる傑作でした。

「ブレット・トレイン」は面白いけど傑作とは言いづらい、でも「ウインド・リバー」は文句なしに傑作と言いたくなる、そんなレベルの高い映画です。

これも本レビューと同じことを書いちゃって申し訳ないんですが、まー100分ちょっとの長さによくこれだけ様々な問題を並べて訴えられるなぁと舌を巻く巧みさ。

あらすじから「どうせネイティブ・アメリカン差別の話でしょ」と思うじゃないですか。実際僕も観るまではその程度の認識でしたよ。

でも実際はそれもありつつもっと広い問題をいくつも拾い上げていて、それをまったく破綻なくまとめている力量が本当にすごいと思います。テイラー・シェリダン

何がすごいってちゃんと事件についても解決して溜飲を下げさせてくれつつ、もっと広い問題に目を向けるように作っているんですよね。

犯人は犯人なんだけど、犯人を生み出した環境にも目を向けざるを得ないし、犯人を断罪して終わりじゃないんだぞ、というほろ苦さをきっちり残してくれるという。

曖昧な解決でスッキリしない、みたいなことはないのにやりきれなさもしっかり残るし、そのためにどうすればいいのか考えざるを得ない、受け取るものが多い映画です。

これはやっぱり唸らざるを得ないですよ。すごいなと。

僕の選出は(特に今回は)割と「好き」に偏っていると思いますが、この映画は間違いなく映画としての質が抜群に高い。映画が好きな人であれば、好き嫌いはあったとしてもおそらく「駄作」という人はいないんじゃないでしょうか。それぐらい隙がない。

一応ジャンルとしてはサスペンス・スリラーにしていますが、実際は社会映画だと思います。これほど社会性を持たせた創作もなかなかお目にかかれない、おまけに日本人には馴染みの薄い問題にも関わらずしっかり捉えさせるのもまたすごいわけで、まあ本当にレベルの高い映画だと思います。

レベルが高い、ばっかり言ってますけども。レベルが高いからしょうがない。

レベルカンストしたドラクエ見たら誰だって「レベルたけーな!」って言うでしょ。それと一緒ですよ。

『イコライザー THE FINAL』
イコライザー THE FINAL

死にかけてイタリアの小さな街でお世話になるマッコールさん。当然そこには悪い奴らがやってきちゃってかわいそうに…っとマッコールさん最後のお仕事。本レビューはこちら

こっちは「ウインド・リバー」の逆でもう完全に「好きだから選んだ」一本。好きすぎる。

もうね、こっちは事前に12を再鑑賞で予習してマッコール愛が最高に高まってきている状態で会いに行ってるんですよ。

そう、もう会いに行く感じ。マッコールさんに。

見たいし会いたい。愛犬といやらしいもの以外で初めて抱いたこの感情。

「あなたのマッコールさんは、どこから?」

「私は、イコライザーから!」

他にあんのか。

世間一般的な、前作・前々作と比べて「物足りない」「地味」という評価には同意もするしそう感じるのもよくわかります。実際僕も物足りなさはありました。

でもなんかそれ以上に「マッコールという男はこういう男なんだ! いいから食え!」って給餌されてブヒブヒ喜んじゃったんですよね。もう。おいひぃです、って。

元々イコライザーは監督のアントワーン・フークアデンゼル・ワシントン好きすぎて「デンゼル・ワシントンを一番かっこよく描くための映画として作った」と言われていましたが、もう3にもなるとそれに飽き足らず「ロバート・マッコールを一番かっこよく描くための映画」に進化したんじゃね? と思いますね。デンゼル好きが高じて役の方にも乗り移っちゃったような。

とにかく「ロバート・マッコールとはこういう男だ」って話なので、マッコール狂(マッコール教)の人にとってはありがたみしかないわけですよ。

マッコールさんってこうだよね、わかるわかる、って。

普段はすごく真摯だけど、殺すときはホラーだよね、って。

実際最後のアクションシーンなんて完全にホラーを意識していると言わざるを得ないホラー感。どんなに敵が「悪いやつだ」と説得されても気の毒さしか感じない。

って言いながらこっちは笑ってるんだけど。

ニヤニヤしながら「かわいそうにねぇ〜イーッヒッヒッヒッヒッヒッ(◝ ͜≀ ◜)」って観てる。

それがもう本当に他にない体験なんですよね。この感覚が。

つくづくこれが最後というのが残念でならないんですが、まあデンゼルもいいお歳なので納得もしています。しょうがない。

ただ間違いなく「映画のキャラクター」で一番好きですね。マッコールさん。

そのキャラクターを世に出してくれただけでも感謝しかありません。

あとはもう3作セットのブルーレイに「殺しの映像集特典」を付けてくれればそれでいいです。お待ちしております。

『AIR/エア』
AIR/エア

エア・ジョーダンが生まれるまでのナイキの奮闘を描いたサクセスストーリー。本レビューはこちら

まあこれはね。良いに決まってる題材を良いに決まってる役者さんたちがしっかり演じてそりゃあ良いでしょ、というもうド安定もド安定、外しようがない一本です。監督としてのベンアフもさすがの一言。

ただ「良いに決まってる」と思って観たものがちゃんと良かったどころじゃなくて「想像以上に良かった」のがすごい。がっぷり四つで組み合ったのに綺麗に上手投げを決めて頂きまして逆に気持ちがいいです、っていうね。相撲例えも入ってきますけども。

これほどわかりやすくハードルが上がる映画もないんですが、それでもしっかり「良かった」と思わせてくれるのはやっぱり大したもんですよ。

いわゆる実話系の一つでもありますが、「大ヒットアイテムの開発秘話」に留まらず、「スポーツビジネスを変えた」話でもあるのがやはり大きい気がします。

やっぱり何事にもパイオニアはいるわけで、パイオニアってだけで物語により高い価値が付加されるように思うんですよね。

いわば未来に対しても影響を与えた“歴史的瞬間”なわけで、それを(映画の面白さという意味で)信頼できる人たちが作り上げたら当然面白いに決まっている、と。

この映画は結構本レビューでしっかり言いたいことは書いたと思うので、特にここで補足することもないんですが。

やっぱりこの話の未来にあたる現時点から振り返るからこそより感じられる価値というものもあって、間違いなく契約直後よりも今の時代から観たほうが「すごい話」なので、その熟成を待って作り上げたタイミングの良さもポイントではないでしょうか。

ってことはつまり、今から2〜30年後に大谷翔平の契約に関する映画が出てきてすげーな、みたいな話も全然あり得るんじゃないか…とか。

いずれにしてもこの映画は「誰にでも勧めやすい」という意味でもかなり良い映画だと思います。難解さがなく誰でも理解しやすいし、誰も傷つけないし、今につながるビジネスの話でもあるし。

映画好きとしてもベンアフとマトデの共演っていうだけで胸熱なので、そっち方面でも盛り上がれるという全方位隙のない映画と言えるでしょう。

『タバコは咳の原因になる』
タバコは咳の原因になる

地球滅亡を目論んでいる宇宙最強の敵との決戦を控え、親睦を深めろと命じられたタバコ戦隊が怖い話で盛り上がる。本レビューはこちら

何このあらすじ。でも事実だからしょうがない。

なんて説明すればいいのか…。戦隊ヒーローたちのオフショット、なのかなぁ。いや真面目に考えるのも馬鹿らしいぐらいくだらない映画なんですが。

一応「宇宙最強の敵」は登場もするし策を練りもするんですが、実際はそれに対応するための親睦…という名のただの慰安旅行みたいなキャンプで怖い話の再現VTRを観る…いややっぱり文字で説明してもよくわからん。

まあとにかく終始人を馬鹿にしたようなシュールな笑いが続く、他になかなか無いタイプの映画だと思います。

それ故に人を選ぶとは思いますが、僕はドハマリしました。ずっと笑ってましたね。もうずっとニヤニヤしながら観てました。

再現VTRの1つ目はちょっとホラーっぽいちゃんとした(?)話なのでそこに笑いは無いんですが、そんなホラーを観させられてることに「なんの映画だよ」とジワジワ来てしまい、やっぱりずっと笑ってました。超面白かったこの映画。

しかも80分弱という短さ。恐ろしい。

カンタン・デュピュー監督の映画は他に「マンディブル」も観ましたが、これもランクインさせようか悩むぐらいに妙に面白くて、まあ単純に僕はこの人の作風が好きなんでしょう。

「マンディブル」と比べると、あっちはまだ(くだらないものの)一応話の筋がそれなりにしっかりしているものの主人公がバカだから進まない、みたいな話でしたが、こっちに関してはもう本当にどうでもいいことをダラダラやって「お前ら地球滅亡舐めてんのか!?」って感じで最高でしたね。シュールさもバカバカしさもパワーアップしてお届けします、みたいな。

登場人物はやっぱりバカなので、基本的にカンタン・デュピューはバカな人たちを描くのが上手いんでしょう。

自己評価するに、おそらく僕が好きな同じタイプの映画としては「スパイナル・タップ」なんだろうと思います。

あれよりもシュールだとは思いますが、登場人物のバカっぽさと笑いの質は似たものを感じます。

そりゃ好きだわ。我ながら納得。むしろ1位に持ってこなかっただけ良心が残っていると言えます。

『テトリス』
テトリス

いわずと知れた落ち物パズルの元祖「テトリス」のゲームボーイ版発売に至るまでのアレコレ。本レビューはこちら

AIR/エア」と同じく実話系サクセスストーリーなんですが、交渉相手が崩壊直前のソ連ということでポリティカルサスペンスっぽさも加わってくるサクセスストーリー。

なので実はこの映画、サクセスストーリーとして観るとちょっと違うというかもったいないというか。

ほぼスリラーなんですよね。そこにテトリスがあっただけで。

完全に「ゲームを売るためのビジネス」の枠を超えた危険に足を踏み入れざるを得ない環境と時代に、よりにもよって「テトリス」という超歴史的お化けソフトが絡んでくるというミラクルストーリーですよ。

逆に言えば「テトリスだからこそ危険を冒さざるを得ない」と思わせる、それだけ魅力を持ったゲームだったことはこれまた「AIR」よろしく後の歴史が証明しているわけです。

そういう意味でもあの映画とは近いものがあります。ターゲットに“オールイン”する勇気を持ったビジネスマンの話として。

ただ「AIR」はまだかわいいっちゃかわいいんですよ。ビジネスの範疇なので。

こっちはもう命かかってますからね。文字通り。下手したら一生刑務所に放り込まれるかいつの間にか処刑されててもおかしくない状況の中で権利獲得のために奔走するわけで。

そりゃあ面白いのは間違いないでしょう。それだけ緊張感もありました。

この映画は「こういう映画でしょ」と誰が予想してもおそらく近いものに収束する、つまり「想像上の映画」の範囲が狭いだろうと思うんですよ。特に映画をよく観ている人であればなおさら。

ただ実際観るとその予想とはだいぶ違う話になってくるので、「予想と違うから面白くない」となりそうなんですがそうはならず、「予想と違う部分が上乗せされて面白い」映画になっているのがすごいなと思いますね。減算ではなく加算の映画というか。

そしてもう「テトリス」そのものが伝説のゲームなだけに、その偉大さを知っていればより面白いわけですよ。

やっぱりテトリスってすごかったんだな、と。

ゲームとしての面白さもすごいからこそこうなったわけですが、その生まれた環境が輪をかけてすごい(ひどいとも言える)からとんでもない物語が作られたことがわかる、と。

その上ゲームボーイのローンチに重なるわけですからね。どんだけてんこ盛りなんだよと。

これは本当に二度と出てこない話だと思うので、ぜひ観てほしいところです。そしてその二度と出てこない話をきちんと面白く仕上げてくれたことにも感謝ですね。

『おやすみ オポチュニティ』
おやすみ オポチュニティ

NASAが火星に送り込んだ2台のロボットの活動を振り返るドキュメンタリー。本レビューはこちら

正直ちょっとこれを1位にするべきかは悩んだところではあるんですが、それでも去年唯一満点をつけた映画でもあるので、まあやっぱりこれかなと。

そもそもが結構ズルい映画で、全体的に「ロボットに感情移入させよう」としているフシがアリアリと伺えるだけにそれに乗せられちゃうのもどうなんだと思いつつ、でもやっぱり事実は事実だしうるせえおれはこういうのダメなんだで涙腺崩壊しました。

ドキュメンタリーでここまでグッと来たのも初めてだし、そもそも「Outer Wilds」以降明確に宇宙にも弱い体質になっているので余計にやられました。

果てしない距離…それこそ「行きづらい」レベルではなく物理的に「行けない」場所で健気に活動するロボット、ってだけでもうダメ。「サイレント・ランニング」にも弱いし。

これが当初の想定程度で終わっていれば「すごい!」だけの話だったのかもしれませんが、誰も予想できない長期に渡っての活動になり、おまけにそれが映像として残っていて、その時間的な長さ故に別の物語も生まれているという環境も素晴らしいしこれにもやられました。

NASAの文化そのものにもズルい要素があるし、そりゃあグッと来ちゃってもしょうがないでしょと開き直らざるを得ません。

最初に「感情移入させようとしているのがズルい」と書きました。実際そこが良くないと言っている人もいました。

でもね、考えてくださいよ。

NASAの人たちからすれば、あれだけの年月を毎日見守ってたらむしろ感情移入しない方がおかしくないですか?

それでも「いや機械じゃん」なんて言う人間のほうが感情移入できませんよ。お前が火星に行け。

構造的にも絶妙に人間っぽさを感じさせる部分もあるし、まあこれは情が移るのは人として当然だと思います。だから泣いてもいいんだよ! ばかやろう!

きっと日本人が「はやぶさ」に感動するのと同じ感じなんでしょうね。僕はあの映画は観ていないんですが。

個体そのものは機械でも、そこにいろんな人の思いが詰まっていて、それを背負っているからこそそこに命を帯びるような。

まあ本当にこれはちょっと観てみてほしいですね。その上でどう感じるのかいろんな人に聞いてみたいところです。

親子で観るにもとてもいい映画だと思うので、内容が理解できる…中学生ぐらいかなぁ。それぐらいになって一緒に観て感動すれば、もしかしたら宇宙を目指す人になるかもしれません。

それもまた素敵だと思うんですよね。そういう種まきをしてくれるという意味でも素晴らしい映画、ドキュメンタリーだと思います。

今回は以上でございます、と。サザエでございます的なね。

前回同様に国別も確認しましたが今回はアメリカ映画が過半数を占めているので、まあやっぱりなんだかんだアメリカ映画も強いよねというお話。

ただこの比率が変わったほうがいろいろ観たぞ感も感じられるしよりいろんな映画に食い込んできた気がするのでやっぱり今年もアメリカ以外の国の映画を意欲的に観ていきたい気持ちはあります。

ただなにせ配信頼みでもあるので難しいところもあるんですが。

勝手に選出・AOY(Actor Of the Year)

最後になりましたが恒例のAOY選出です。

去年も言ってましたが今年もイマイチ「この人だな!」ってすぐ浮かぶ人が出こなかったんですが、改めて考えたらこの人の印象がめちゃくちゃ強烈だったのでこの人にしました。

Gornpop Janjaroen
  • ATM エラー
  • アイ・ファイン、サンキュー、ラブ・ユー

観たのはこの2本だけ。しかも脇役も脇役。

ただもう本当に一番強烈に残った役者さんだったんですよね。もう濃いなんてものじゃなくて。2本とも別角度で濃かった。おまけに本業は歌手という衝撃。

完全にコメディアンのそれなんですが、コメディアンでも普通はここまでやらない(やらせてもらえない)濃い演技を嬉々として使うメート・タラトーン監督との共犯関係が今後も気になるところ。

Gornpop Janjaroen
名前の読み方すら知らない人間からの謎の受賞を受けるもポーズを決めるGornpop Janjaroenさん

以上、今年のなんプロアワードでした。

今年は結構モチベーション高い状態で突入したので、もう少し鑑賞本数増やして良い映画のご紹介も増やせると良いなと思っております。

改めて、今年もよろしくお願いします。

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