映画レビュー1206 『ニールジャー』

先週はボヤボヤしてたら更新忘れて休みが終わりました。至って普通に生きてます。

さて、今回はウエスト・サイド・ストーリーを観に行って怒りをぶちまけた翌日だったので、気分を変えたいぜとインド映画に走りました。JAIHOです。

ニールジャー

Neerja
監督

ラーム・マードヴァーニー

脚本

サイワン・クワダラス

出演

ソーナム・カプール
シャバーナー・アーズミー
ジム・サルブ
パース・アカーカー
シェーカル・ラーウジヤーニー

音楽

ヴィシャル・フラーナ

公開

2016年2月19日 インド

上映時間

121分

製作国

インド

視聴環境

JAIHO(Fire TV Stick・TV)

ニールジャー

真の勇気と献身を持った偉大さ。

8.5
初チーフCA担当フライトでハイジャックが発生、密かに抵抗
  • モデル兼CAの女性がハイジャックに遭遇し、恐怖と戦いながらも一人抵抗を続ける
  • 彼女の生い立ちから来る強さをバックボーンに“等身大のヒーロー”を描く
  • 実際に起きた事件を映画化した実話系
  • インド映画らしからぬ真面目さと短さで誰でも観やすい

あらすじ

いやー良かったですね。ちょっと泣きました。非常に真面目でオーソドックスな映画ですが、それ故に(長すぎず)観やすいインド映画です。

舞台は1986年。モデル業と客室乗務員を兼務する22歳の女性・ニールジャー(ソーナム・カプール)は、初めてチーフCAとしてのフライトになるムンバイ発ニューヨーク行きのパンナム便に搭乗します。

しかしそのフライトはテロリストたちのターゲットとなっていて、経由地のパキンスタン・カラチ空港から乗り込んだ彼らは飛行機をジャックし、乗員乗客を人質に取り、キプロスの刑務所に収監されている同胞を解放するよう迫ります。

現場に居合わせたニールジャーは機転を利かせていち早くコクピットに事態を告げ、それを聞いたパイロットたちは規定に従い機体上部から脱出。事態を空港に知らせます。

代わりのパイロットを早く連れてこいと要求するテロリストたちに対し、対応部隊の到着を待つため引き伸ばす空港側というお決まりの時間が流れる中、次第に苛立ちを募らせたテロリストたちによって被害者も出ていく極限状態の機内で、ニールジャーは一人密かな抵抗を続けるのでした。

偉大なるニールジャー

実際に起きたハイジャック、そしてその事件にCAとして対応していた女性を主人公にした実話系映画です。

ちなみに飛行機が着陸中の事件なので“ハイ”ジャックじゃないのかな? と調べたんですがどうも「ハイジャック」の「ハイ」は空とか高さとかは関係ない模様。知らなかったぜ…。

実話系なだけに主人公のニールジャーも実在の人物で、実際に映画同様モデル業とCAの兼業という(傍から見ると)非常に華やかな経歴をお持ちの方だったようですが、さらに愛と勇気に溢れた人格者という…リアルラクシュミーかな? インドだし。(よくわからずに言う)

物語は彼女の過去を織り交ぜて「なぜこれほどまでに勇敢な女性になったのか」をわかりやすく描きながら、今起こっている事件への対応を追っていくお話になっています。

その作りからかなり明確に「ヒーロー(ヒロイン)としてのニールジャー」をテーマにしていることが伺えて、実際インドでは切手のモデルになっていたりと「実在の偉人」の一人のような立ち位置なんでしょう。わかりやすく彼女の功績を称えるような作りになっています。

例えばハリウッド映画的な内容であれば、途中でテロリストから銃を奪ってバンバンやっちゃってウヒョーかっけーみたいな話でスッキリ最高! で終われるかもしれませんが、実話なだけにさすがにそんな簡単な話ではなく。

彼女も「抵抗」は試みるものの、それは力関係が変化するような大きなものではなくて、例えば客に水と軽食を配らせてくれだとか、子どもをトイレに行かせてくれだとか些細なものばかり。それでもそんな小さなものが積み重なって、徐々にテロリストの思惑通りに行かなくなっていくのがすごい。強い。

漠然とした“場を支配する空気”のようなものが、彼女の抵抗によって少しずつテロリストから乗員・乗客側に傾いていくような、少しずつ彼らの思惑から逸れていくように流れを変えていく(無意識な)強かさのようなものが見えるようでした。

彼女もいくら「チーフCA」という立場があるとは言えもうすぐ23歳になる一人の若い女性なので、当然怯えるし涙も流すし、もちろん武器もないので、決して「最強のヒロイン」ではなく、等身大の普通の人間です。

ですが、この事件が終わりを迎えたとき、そんな等身大の彼女の残した功績はこの事件に関わった人間の誰よりも大きなもので、それ故により偉大さを感じた面がありました。機転と勇気と愛でここまで救えるものがあるのか、と。

「そう見えるように作っている」と言われればそれまでですが、しかし彼女の残した功績は間違いなく事実だろうし、そこにとてつもない一人の人間の可能性を感じて…胸が熱くなりましたね。もうひたすらすごい人だな、と…。

もっと一般的になって良い映画

何せ実話なだけにネット上のあらすじで終盤の展開含めて見えちゃうところも多いんですが、僕はたまたまその結末を知らなかっただけに余計に心に響くものがあったので、ここはぜひあまり詳しい話を読まずに映画を観てほしいと思います。

インド映画ながら2時間程度、しかも歌もちょっと添え物としてかかる程度でダンスシーンも無く、まったくインド映画っぽくないある意味では“普通の”映画ですが、それだけに誰でも観やすく、その上描かれる物語も価値が高いのでオススメです。

ニールジャーという一人の女性の、いわゆる“真実の瞬間”を描いた映画と言う意味で、未見ですが「15時17分、パリ行き」の先駆けのような映画かもしれませんね。

自分がこういった非常時にどういう行動を取るのか、取れるのか。

ヒーローになろうとテロリストにぶつかりに行くのは無駄死にになるだけで、ニールジャーのように機転を利かせ、少しずつでも歩を進めるような抵抗を考えるのが大切なのかもしれません。そんな教訓も与えてもらった素晴らしい映画でした。

なんでこんな良作が限られた環境でしか観られないのか…それがすごく不思議なぐらい、世界的に普遍な価値を描いている良作だと思います。さすがJAIHO。

このシーンがイイ!

差し障りのないところで言えば、オープニングのちょっとしたパーティに参加するニールジャーのかわいいこと!

CA時はお化粧バッチリすぎて(綺麗だけど)ちょっと“決まりすぎ”な感じだったんですが、その前の自然体なソーナムちゃんの魅力がたまりませんでしたね。思わず観終わってからもう一度観ました。

あとはやっぱりエンドロールですね。なんでかは書きません。観ればわかります。

ココが○

彼女の行動原理が非常にわかりやすく描かれるので、丁寧すぎるかもしれませんが観客が自らを省みるという意味でかなり良い作りではないかと思います。自分がどこに立脚し、どうやって対応するのかを問うための作りと言うか。

僕はこの手の「どう生きるのか」を考える姿勢そのものが好きなので、余計にそこが響きました。

ココが×

特に無いですが、ストレートな英雄譚なのでそこが引っかかる人はいるかもしれません。

僕は一周回ってストレートなのが良いと思うんですが、ハリウッド映画みたいにもっと恋愛強くしたりサブ要素を盛り込んだほうがグッと来る人もいそう。

MVA

キレやすいハイジャック犯を演じたジム・サルブもそれっぽくてすごく上手かったんですが、やっぱりこの映画はこの人ですかね。

ソーナム・カプール(ニールジャー役)

言わずと知れた主人公。

綺麗さはもちろんですが、やっぱりちゃんと弱さも、そして強さも見える演技ですごく良かったです。

彼女は「ゴールド・プレイヤーズ」にも出ていましたが、ただかわいいだけのあの映画よりも主人公らしくいろんな表情が見られたのも良かった。

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