映画レビュー1059 『ニノチカ』

この週もネトフリ終了がそんなになかったため、古い映画を観るぞということでルビッチ第二弾。

ニノチカ

Ninotchka
監督
脚本

メルヒオル・レンジェル
チャールズ・ブラケット
ビリー・ワイルダー
ワルター・ライシュ

出演

グレタ・ガルボ
メルヴィン・ダグラス
アイナ・クレア
シグ・ルーマン
ベラ・ルゴシ

音楽

ワーナー・R・ヘイマン

公開

1939年11月9日 アメリカ

上映時間

110分

製作国

アメリカ

視聴環境

BSプレミアム録画(TV)

ニノチカ

古い映画好きにはたまらない、が…。

7.5
ソ連からやってきた堅物役人に惹かれたものの…
  • とある交渉のためにフランスにやってきた堅物役人に惚れる男、しかし相手は“敵”で…
  • 監督・脚本・主演と古い映画好きにはたまらないものの、古さ故の風刺話なのでかなり時代性が強い内容
  • グレタ・ガルボありきの物語で、その辺りも時代性を感じる
  • 当時以上に今になって価値が高まる映画…かもしれない

あらすじ

監督は「ワイルダーの師匠」としておなじみのエルンスト・ルビッチ、そして脚本にそのビリー・ワイルダーも名を連ね、さらに主演は若くして引退した“伝説の女優”、グレタ・ガルボ。おまけに「プラン9・フロム・アウタースペース」でも有名な(と言うと気の毒ですが)ホラー界の大俳優ベラ・ルゴシまでちょい役で登場、という古い映画好きにはたまらない要素がたくさんある映画なんですが、ただいろいろと古いが故に今の時代に面白さを感じるのが難しい側面もちょいちょいあり、評価が難しい映画ではありました。

舞台はフランス・パリ。ソ連から3人の役人がお国の食糧難に対応するため、ロシア革命で貴族から没収した宝石類の売却交渉にやって来ます。

しかし彼らにとっては運が悪いことに、その話を耳にしたホテルのボーイがかつてその宝石を所有していたロシア大公妃の忠臣だったために彼女に密告。それを聞いた彼女の愛人・レオン(メルヴィン・ダグラス)が「交渉は私に任せろ」ってことで3人の役人を籠絡、交渉は一向に進みません。

停滞している交渉を進めるため、当局は“全権大使”としてニノチカ(グレタ・ガルボ)を派遣。彼女がフランスの街を見学していると、偶然通りがかったレオンが街案内を買って出ますが、すっかり彼女の魅力に惹かれてしまったレオンは自らの家に案内し、またニノチカも仏頂面を崩さないものの案外悪くないわね、ってことでいい感じに。

ところがこれからハァハァするぜ、というタイミングで一本の電話が入り、レオンは宝石の所有権を主張する交渉相手としてソ連から派遣された全権大使の名前が「ヤクショーバ・ニノチカ」であることを知ります。

しかしそれでも諦めきれないレオン。かくして二人の恋路はどうなるんでしょうか…!

グレタ・ガルボ初めてのコメディ、初めての笑顔

なんでも公開当時のキャッチコピーは「ガルボが笑う!」だったそうで、これは当時シリアスな役どころばかりで「笑わない女優」として有名だったグレタ・ガルボが、初めてコメディに出演し“笑う”ことが最大の売りになっていたことを意味します。

劇中でもその“笑う”シーンまでは不自然なほどに仏頂面でひたすらお堅い役人を演じていて、おそらくそのイメージこそがそれまでの「グレタ・ガルボっぽさ」だったんでしょうね。その後大笑いするシーンを経てからは、嘘みたいに(部下たちに対しても)柔らかく、魅力的な女性になってレオンもより虜になるぜ、と。

僕はこの辺の経緯をまったく知らなかったため、その大笑いするシーンがやけに大げさというか、妙に笑ってる時間も長いしえらいアピールしてくるなーとすごく不自然に感じたんですよ。しかもその笑うきっかけもそこまで面白いものでもないからなんなんだこのノリは、みたいな。

でも鑑賞後にこの理由を知ってなるほどなと理由がわかったわけです。現代から見たグレタ・ガルボは「若くして引退した伝説の女優」ですが、当時は当然ながらこの数年後に引退するなんてわからないものの、とは言えこの頃から世界的な人気を誇る大スターだったようで、その彼女が「初めて笑う」、おまけにコメディ作品に出るというのはなかなかセンセーショナルだったであろうことは想像に難くなく、またそれだけにその“笑う”というシーンを大きく強調して見せたということなんでしょう。

日本で言えば…ゲスな例えですが「ガッキーが脱ぐ!」みたいなセンセーショナルさがあったんじゃないですかね、きっと。そう考えればあの不自然さは理解できるんですが、ただ逆に言えばそういう舞台背景を知らずに観ると結構な違和感があるものなので、それなりに当時の事情を知らないとその価値や意味するところが理解しづらい面はあるように思います。

時代性込みで楽しめるかどうか

また同じく時代的なものとして、ニノチカとその部下が「ソ連」の役人だ、というのも大きなポイントです。

この映画はラブコメでありつつ、かつソ連の共産主義を風刺する面が強い物語になっていて、例えばニノチカの本国での暮らしぶりなんかも結構皮肉たっぷりで「嘘でしょ」と言いたくなるような酷さなんですが、果たしてソ連すらよく知らない今の若い人たちが、この描写を見てその描かれている風刺を理解できるのかはなかなか難しいような気もするし、そう言う意味でも少し特殊な映画というか、「笑うグレタ・ガルボ」と「考えられない共産主義の酷さ」と2つの面でかなり時代性を感じる作りになっていて、何も思い入れがない人がいきなり観て面白いのか、と言われるとちょっと難しい面があるのではないかなと思います。

ラブコメ的な面においても、話の展開自体はなかなか面白いものの、「天国は待ってくれる」やワイルダーの他の作品のように、どこかで唸る、グッと来るような場面は(僕が観た限りでは)特に無く、観やすいものの取り立ててすごさを感じるほどではなかったのが残念。

ただこれは(グレタの件含め)僕の無学が理由である可能性も大いにあるので、きっと観る人によってはかなりの傑作になる…のかもしれません。

もっともそこに至るまでには上に書いたようにいくつかハードルがあるのも事実なので、今あえて観て「これはすごい映画だ」と感じるのは結構大変なのではないかなと思います。

それでもやっぱり古い映画が好きな人間としては観てよかったし、どこか“雰囲気のある”映画だよなぁというのは思いました。

総評としては、「好きではあるけどそこまで強く惹かれるものがなかったかな」というところでしょうか。

このシーンがイイ!

グレタが笑うシーン…と言いたいところですが、ジョークの面白さもいまいちピンとこなくて残念。

ということで僕が好きだったのは、あんまり詳細は書きませんがニノチカ+部下でささやかな会食をするシーンでしょうか。密ですよ密。

ココが○

やっぱりどこかオシャレで品がある感じ、古い映画ならではだなと思います。こういうのは本当にいくらでも観られるなと。

ココが×

上に書いた通り、グレタ・ガルボへの思い入れ次第でかなり評価が変わる面はありそう。

MVA

そのグレタ・ガルボについては、正直「伝説」になっているのもあんまりピンとこないというか、やはり当初の仏頂面のイメージが強かったのであまり好みではないタイプでした。

ということでこちらの方に。

グレタ・ガルボ(ヤクショーバ・ニノチカ役)

結局グレタ・ガルボですよ。ええ。

そんなわけで見た目的には好みではなかったものの、やっぱりこの人を軸に作られている映画というのが明確なので、それだけ光って見えるしオーラみたいなものが違うよな、と漠然としたチョイス。

その後早々に引退してしまったこともあって、この手のラブコメで見られること自体が貴重な面もあるし、大げさに言えば「歴史を見た」ような感慨がありました。

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