映画レビュー1136 『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』

まーようやくですよ。ようやく。

タイトルは「死んでいる暇はない」らしいんですが全然暇があったよね、ってぐらいに(仕方ないんですが)延期延期でようやく。

日本だったらその間に(浮気やら薬物やら)なんらかの不祥事が発覚して公開できるのかどうなんだ的に大騒ぎになってそうですが、特にそう言うこともなく無事公開されました。いろんな意味でお疲れさまでした。

007 ノー・タイム・トゥ・ダイ

No Time to Die
監督

キャリー・ジョージ・フクナガ

脚本

ニール・パーヴィス
ロバート・ウェイド
キャリー・ジョージ・フクナガ
フィービー・ウォーラー=ブリッジ

原作
出演
音楽
主題歌

『No Time To Die』
ビリー・アイリッシュ

公開

2021年9月30日 イギリス

上映時間

163分

製作国

イギリス・アメリカ

視聴環境

劇場(IMAXレーザー2D)

NO IMAGE

ダニクレボンドとしての集大成として見事な結末。

8.5
引退したボンドの元に差し向けられた刺客&依頼
  • 引退しマドレーヌと幸せな生活を送っていたボンド、しかし旅先で命を狙われ…
  • その後旧友のフェリックスから誘拐された細菌学者の救出依頼を受けるが、一旦はお断り
  • いろいろ007らしからぬ“禁じ手”が登場するも、ダニクレボンドとしてはアリでは
  • アナ・デ・アルマスの出番が少なすぎることには苛烈な抗議の意思を表明

あらすじ

カジノ・ロワイヤル」で鮮烈デビューを果たしたダニエル・クレイグのジェームズ・ボンドですが、これにてついにいよいよ最終作となります。

前作公開時も「もう二度とやるかボケ」ぐらいの口ぶりで否定しつつ結局(当初の契約通り)もう1作と言うことで今作が公開となったわけですが、今度こそ最後になるようです。

まあ「カジノ・ロワイヤル」では30代半ばだったダニエル・クレイグももう立派な50代、今も衰えないかっこよさと肉体美は素晴らしいですがそろそろ後進のまだ見ぬスター(もう見たスターの可能性もありますが)に譲っていいタイミングでしょう。非常に寂しいですが。

前作「スペクター」において長年の敵対関係にあったブロフェルドを捕え、現役を退いたジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)。今は前作いい感じになったマドレーヌ(レア・セドゥ)とともにイタリアにて平穏な生活を送ってはいたものの、お互い過去のすべてを明かしておらず、なんだかモヤモヤですよ。

同時にお互いそのことは見抜いていたこともあり、マドレーヌはボンドに過去(「カジノ・ロワイヤル」で悲劇的な別れを経験したヴェスパー・リンド)との決別を願い、それによって自らの過去も明かすと伝えます。

かくしてヴェスパーの墓参りに訪れたボンドですが、突如として彼女の墓は爆破され、それを機に彼の命を狙う殺し屋たちに追われることに。

自身の行動を把握しているのはマドレーヌのみのはず…と彼女への疑いを深めるボンド、結局真相はわからないまま彼女との別れを決意し、一人ジャマイカに身を隠します。

それから5年後、彼の元に旧友のフェリックス・ライター(ジェフリー・ライト)が訪ねてきて、とある細菌学者の救出を依頼しますが…あとは観てチョーダイっと。

悪役が少々気になるものの基本的には満足

実は上記あらすじでは最初を端折ってまして、一番最初はもっと過去のお話がちょろっと流れます。それがなんなのかは(観ればすぐわかりますが)お楽しみ、ということで。

鑑賞前、今作の悪役をラミ・マレックが演じると聞いて、ラミ・マレック自身は良い役者さんだと思いますが、なんとなく過去と比べると軽量級な印象があるのでその辺大丈夫なんかいな…と若干不安があったんですが、その不安は半分的中半分外れ、と言った印象。

実際問題ラミ・マレック演じるサフィンの役柄は少々突飛な印象があり、過去の遺産を織り込みつつダニエル・クレイグ版007の集大成としてサーガ的に描かれる壮大な物語の中で割と浮いている気がするし、背景含めて描ききれていない故に浅く見えました。そこがすごくもったいない。

ただそれは逆に言えば、サフィン以外の部分の濃厚さの反映とも言えるぐらいに過去作の財産を上手く物語に組み込んでいて、同様の試みが見られた前作「スペクター」と比べると僕としてはかなり好みで楽しめました。

いろいろ細かく見ていくと、その過去(組織としてのスペクター)と今作(サフィン)のつながりと言う意味では微妙な気もするし、やっぱりサフィンが浮いて見えるシナリオには感じるんですが、ただそれをすっ飛ばすぐらいにテンション高く「全力で楽しませてやるぜ」というミッション:インポッシブル的なサービス精神で引っ張ってくれる内容になっていたので、「面白いから細かな矛盾とかはまあ良いや」と許せてしまう力があったように感じ、そこが(僕があまり好きではなかった)前作・前前作との大きな違いかなと思います。

歌が流れるまでの少し長めのオープニングはテンション高く素晴らしいアクションで惹きつけてくれるし、その後も二の矢三の矢が続々飛んできて大満足ですよ。単純に「面白かった!」と言える内容で“基本的には”満足です。

不満もわかりつつ

ただ今作は、いろいろ思いの強い方の中にはかなり否定的に捉えている方も多いようで、確かにそれもわからなくはないぐらいにいろいろやっている部分はありました。

当然ネタバレになるので詳しくは書きませんが、人によっては「禁じ手だ」とか「ボンドがそれやったらダメでしょ」と言う人もいるようです。

その気持ちも重々理解しつつ、ただ僕としてはそれを踏まえた上でもやっぱり「ダニエル・クレイグのボンドだからできた(やった)」ことだと思っているので、そういう意味では彼の最後の007としては良い終焉を用意してくれたのではないかなと思います。

“それ”に頼るなよと言いたくなるのもよーくわかるんですが、じゃあこれをブロスナンのボンドがやれたかと言われたら絶対ムリだっただろうし、やっぱりダニエル・クレイグが築き上げてきたボンド像あってこその展開だと思うので、そこは(好き嫌いありつつも)受け入れて「お疲れさまでした!」と見送ってあげるのがファンとしては良いのではないかなと思った次第です。勝手に。

最も思い入れがあるからこそそっちじゃない、と言いたくなるのもこれまたわかるだけに…難しいところですが。

ただ余談ですが、僕の隣で観ていた初老のおっさんがエンドロール少し前から鼻をすする音が聞こえてくるぐらい号泣していたので、思いが強い人の中にもかなりグッと来た人がいたのも確かでしょう。そのおっさんノーマスクな上に息が臭いために僕は上映中激怒していたんですが、号泣しているのを見てなんだか全部許せました。わかるよおっさん。

しかしそんな温厚派の僕でも一つだけ書いておきたいのは、アナ・デ・アルマス演じるボンドガール、パロマの出番の少なさ。

もう登場シーンから最高(スパイらしからぬ初々しいかわいらしさでしかも酒ではなくジュース飲んでる)だったんですが、アクションもめちゃくちゃ決まっててカッコいいし、うおおおおおもっと見せろぉぉぉぉと叫んだところでお役御免と言う悲しみ。

彼女は毎回どの映画でも魅力的だなーと思いますが、今作は特に魅力的だったのに出番が少なすぎて、これはもうキャリー・ジョージ・フクナガに抗議のメールを送り付けてやりたくなること必至です。

世間的にも彼女の評判はすこぶるよく、スピンオフを作れの大合唱。大賛成です。ぜひ作ってください。って言うか次のボンド、彼女で良くね? CIAだったけど。

最後は感謝で

ダニエル・クレイグは間違いなく007を現代のトップランナーに引き戻した、言ってみれば“中興の祖”みたいな存在だと思いますが、その彼の最後のミッションをしっかり見届けた上で各々のボンド像にとってこれが良いの悪いの語りつつ、とは言え「楽しませてくれてありがとう」とお礼を言ってお別れしようじゃないですか。ねぇ。

僕としてもいろいろ引っかかりはしましたが、それを超える楽しみをくれたので大変満足しています。ただ、やっぱり「カジノ・ロワイヤル」の衝撃、オープニングのかっこよさとしびれる“締め”は越えられなかったかな…。

もっとも(個人的に)どんどん「そうじゃないだろ」「もっとやれるだろ」と違和感を増幅していった無念さばかりが印象に残った彼の007が、最後にもう一度輝いた気がして、その意味では本当に良い終わりを用意してくれたと思います。

とにかくダニエル・クレイグを始め、スタッフ・キャストの皆さんはお疲れさまでした。撮影終了から公開までとんでもなく時間がかかってしまった新型コロナの悲劇を乗り越え、それでも鮮度を失わずによくぞきっちり楽しませてくれたと思います。

なお、「ノー・タイム・トゥー・ダイの公開によって一番嬉しいのはノー・タイム・トゥー・ダイの予告編が流れなくなることだ」とか言う噂もあるようで。それだけこの映画がコロナ禍における“大物”として重要なポジションを担っていたということでしょう。

多大なる期待を背負って公開され、賛否両論ありつつもきっちり終わりを迎えたダニエル・クレイグ版007。僕はもう一度全作観直したいぐらいに感謝していますよ。なんだかんだ言って。本当にありがとうございました。

ノー・ネタバレ・トゥー・ダイ

「それやっちゃダメだろ」と言っていたご本人に確認したわけではないので、その意味するところがなんなのかはわかりませんが…しかしおそらく“禁じ手”と言えるのは「子ども絡み」そして「ボンドの死」の2つを指すのではないかなと思っています。

確かにどっちも安易なものに見えなくもない…と言うか通常であれば僕も安易に感じて怒りをぶちまけてもおかしくないんですが、ただこと007においてはどっちもダニエル・クレイグのボンドだからこそリアリティを纏えた内容だと思うので、むしろ逆に安易ではない、挑戦的なものとして捉えられると思うんですよね。

昔の“ナンパなボンド像”であれば、子どもが出来てそれを大切に考えるのも変な気がするし、死を持って終わりを迎える形も「なんか急にシリアスになったな」って感じで受け入れ難い気がしたと思うんですが、それが自然に見えるのはやっぱりダニエル・クレイグが築き上げてきたボンド像あってこそだと思うので、だからこそ一見禁じ手に見えるお涙頂戴風な展開も逆張り的に目新しく見えた気がするんですよ。

同時に「いよいよこれでダニエル・クレイグが演じるのは最後だぞ」と決まっていたからこそボンドを“殺せた”わけで、いろいろ条件が整ったからこそ作り得た展開はチャレンジする価値があるものだったのではないかなと。自分が監督でもそう言うチャレンジはしてみたかったんじゃないかなーとか。

「007」は今作でも後任が登場したように“ただの番号”でしかないし、同一人物によるシリーズではないからこそ死んだり新任を登場させたりできるわけで、むしろ今までそれをやってこなかったのが意外に感じられるぐらい「殺して次へ」が自然に成立するシリーズでもあるんだな、と今回改めて感じました。

次のボンドはこの世界の延長線上で「後任」なのか、はたまたパラレルワールド的にまったく関係のない「別のボンド」になるのかはわかりませんが、そのどっちでも作れる選択肢を残している意味でもこの終わり方は良かったんじゃないかなと思います。

つまり、通常であれば後者と思われる次のボンドは、実は前者の形で「引き継ぎました」という作りにすることも可能になったんですよ。多分採用しないだろうとは思いますが、これもまた新しくないですか?

それとは別に気になったところとしては、まずMがミサイル発射指令を出すところがものすごく違和感がありました。MI6長官があんな国際問題に直結する攻撃指令出せるもの!?

あそこは英国首相なりなんなりを登場させた方が違和感がなかったと思うんだよなー。あれはもったいないポイント。

散々マチルドを利用していたサフィンがあっさり「じゃあ帰っていいよ」って開放したのもよくわからない。あそこは強引にボンド側に戻した感じがして少々興ざめでした。

土下座のシーンはギリギリ許せるかなー。どうせあそこから反転攻勢に出るんだろうと思ってたし…。ただ「なんで土下座!?」とはなったけど。

そもそもサフィンの日本かぶれ設定もよくわからず、日系の背景を持つ監督の強引な日本推しなのか、はたまたそう言う目に対するサービスだったのかもわかりませんが、そこは別にいらないよと言うのが正直なところ。

このシーンがイイ!

んー、やっぱりパロマが出てくるキューバでの作戦シーンでしょうか。圧倒的に良かった。アナ・デ・アルマスかわいすぎ。

あとオープニングのアクションも最高でしたね。つかみの良さが光りました。

それとQが「日本代表」って酒屋の前掛けしてるシーンは見逃せません。一瞬ですが。

ココが○

賛否両論予想されつつも「ダニエル・クレイグのボンド」らしい終幕を迎えたと思うので、そこはもう本当によくやってくれたと思います。

特に僕はサム・メンデスによる2作に納得がいっていなかったのでなおさら。

ココが×

引っかかる点はネタバレ項にちょこっと書きましたが、その他としては…大変申し訳無いんですが、やっぱり(今さらですが)Mはジュディ・デンチの方が良かったなぁ、と…。

もちろんレイフ・ファインズは良い役者さんだと思っていますが、どうしても役柄的にも立ち位置が変わってきちゃう部分はあるし、今の時代だからこそ女ボスの良さってあると思うんだよな…。

もっとも彼女自身は高齢で演技が難しいと言う事情もあるので仕方がない面もあるんですけどね…。

MVA

レア・セドゥ、綺麗だったな〜。前作よりさらによくなった気がします。

ベン・ウィショーも「声がパディントンだな…」と思いつつ見ていましたがやっぱり良い。

本来はアナ・デ・アルマスにしたい気持ちが強いんですが、いくらなんでも登場シーンが少なすぎるということで…順当に。

ダニエル・クレイグ(ジェームズ・ボンド役)

言わずと知れた主人公。

当然良いです。かっこいい。

改めてジェームズ・ボンドをまったく違うカリスマに育て上げた功績たるや相当なものだなと言うことで、お疲れ様の意味も込めて。

本当にカッコいいしスマートだし憧れますね…。やっぱりもう見られないのは残念だなぁ…。

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