映画レビュー0535 『ワン チャンス』

予告編を観た時に「コルム・ミーニイが出てる」というだけで観たくなった作品。借りてきたシルバーウィーク第2作目です。

ワン チャンス

One Chance
監督
脚本
出演
アレクサンドラ・ローチ
マッケンジー・クルック
ジェミマ・ルーパー
音楽
ベッキー・ベンサム
公開
2013年10月25日 イギリス
上映時間
104分
製作国
イギリス

ワン チャンス

幼い頃からオペラが好きで歌を歌っていたポール・ポッツ。夢であるオペラ歌手を目指してヴェネツィアに留学、憧れのパヴァロッティの前で独唱のチャンスを得る。順調に歩みを進めていると思いきや、極度の緊張でうまく歌うことができず…。

“らしい”実話系イギリス映画。

9.0

数年前に日本でも結構話題になったので、ご存知の方も多いと思います、イギリスのいわゆるオーディション番組みたいなもので優勝し、一躍大スターとなったポール・ポッツの半生を描いた実話系映画です。

あの人とは違いますよ。スーザン・ボイル。僕はごっちゃになってたので念のため書いておきますよ。ええ。

最近の実話系映画はだいぶ脚色が強いので、この映画もおそらくはだいぶ劇的にいじられている部分はあると思います。ただ、これはむしろメリットだと思いますが、正直なところ「実話系感動映画」として観るよりも、「ブリティッシュヒューマンコメディ」として観た方が感覚的には納得できます。

んで、“なんプロフリーク”という実際には存在が確認されていないダークマターのような皆さんにはおわかりの通り、僕はこの手の「イギリス製ヒューマンコメディ」が大好物、なんならすべての映画のカテゴリーの中で一番好きかも、というレベルなので、それはそれは自然に大層楽しませて頂きました。

正直、単なる「オペラ歌手が夢をつかむまでの感動物語」だろうと思っていたので、大して期待もしてなかったんですよね。コルム・ミーニイが観られればいいか、ぐらいで。

ところがどっこい、これが思いのほか軽やかにコメディタッチも混ぜつつ、きっちり仕上げるところは仕上げる、といういかにもイギリス映画らしい真面目さと嫌味ではない面白さが両立した作品になっていて、同じく実話系(あれはほぼ創作ですが)イギリス映画の「キンキーブーツ」と同じく、誰にでもオススメできる良質な映画だと思います。

映画としては、割とあっさりサクサク進めちゃう印象が強く、そこがまた軽くて観やすい面もあるんですが、ただ「思いっきり溜めに溜めての涙腺崩壊」みたいなものを期待すると若干肩透かしを食らうかと思います。

この辺は良し悪しどっちもあるなぁという印象で、軽くて観やすく、あざとくないから好ましく観られる反面、深く掘り下げて泣かせに行っているわけではないために「もっと! もっと泣かせてよ!!」的な感覚も無くはなかったです。ただまあ、ホロリと泣きましたが。

こういう映画は大抵、役者さんが実際に歌って「すげーな!」って言うのがお決まりのパターンですが、この映画は残念ながら口パクだそうです。ただ、主演のジェームズ・コーデンも実際にトレーニングを積んで歌ってはいるそうで、演技としては素晴らしくリアリティがありました。

そして、これがまたこの映画の面白い点だと思いますが、その口パクの吹き替えをしているのがなんとポール・ポッツご本人だそうで。そりゃー説得力あるよな、と。

歌に関しては、正直「もっと誇張してもいいのでは?」という思いで観ていました。もっとエコーきかせた方がいいんじゃないの、みたいな。なんとなく迫力がなくて「うまいんだけど…」とちょっと消化不良になる感じ。ただ、それも映画の内容からするとあえてやってるんだな、とわかるので、なるほど納得というお話。

ラストの歌はさすがにお見事、気合いが入ってましたねぇ。その“歌”という意味では、きっちり溜めがきいていた気がします。

後はもう、ブリティッシュヒューマンコメディそのままの感じをじっくり味わってください。この映画もご多分に漏れず、周りの人たちもやっぱり素敵で、イギリスらしい温かさがじんわり感じられる素晴らしさ。

特に彼女が良かったですねぇ…。見た目がすごくいいわけではないけど、優しくて背中を押してくれるサポート力。理想のカップルで超素敵。

お母さんもとても良かったし、親父もやっぱり引き締めてくれるし。脇役の味わい深さもこの映画の見所と言えるでしょう。

本当にくどいようですが、この手のイギリス映画は嫌味がなくて誰でも気持ちよく楽しめる映画だと思うので、地味そうなテーマ&主演ですがぜひ観ていただきたいところ。僕はこういう映画、本当に大好きですね。

このシーンがイイ!

サクサク展開を進めるシーンのうまさも光ってましたが、やっぱりラストのオーディション番組のシーンはすごく良かったです。特に親父が一瞬登場した時の表情。さすがコルム・ミーニイ、期待通りの良さでした。

あと、“副マネージャー”が去る場面。コメディ的にはここが一番笑いました。

ココが○

イギリス映画好きにはもうたまらない要素がたくさんあるので、同じ趣味の方には安心してオススメできます。ウェールズが舞台でコルム・ミーニイ出てくるよ、ってだけでもうたまらないでしょ?

ココが×

非常に優等生な作りなので、そこが面白みのない点かもしれません。突き抜けてものすごくいい、って感じではない、早い話が「ビッグデータ頼りの万人受けしそうなフック」が無いんですよね。やっぱり素直で実直な作りなんだな、という気がします。

ただ、僕はそこが好きなんですが。

MVA

いやー、ホントに役者陣はなかなか素晴らしくて。特にご両親は好きでしたが、この人にしときます。

マッケンジー・クルック(ブラドン役)

携帯ショップの店長。

なんとなく、「フル・モンティ」でのロバート・カーライルを髣髴とさせる雰囲気。

この人の存在はものすごく大事なコメディリリーフになっていたと思います。そして見た目に反してものすごくいい人。こういう脇役がいる映画は本当に好きですね。素晴らしい。

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