映画レビュー0092 『バグダッド・カフェ』
これもまた、TSUTAYA DISCASで永遠に借りられそうになかったのでよそで借りてきた一枚。
1位登録者610名に対し、在庫4枚。単純計算でも1%に満たない発送率ということで、なめとんのかー! ==== ┻━━┻(ちゃぶ台)
バグダッド・カフェ
マイノリティの光。
ワンピースに出てくる「スパイダーズカフェ」の元となった映画ということで観てみました。
寂れたお店に一人の人間がやってきて、周りを巻き込んでハッピーになっていく…というある種ありきたりのストーリー展開なわけですが、この映画の良さというのは、登場人物誰もがマイノリティだというところでしょう。
カフェの店員は黒人ファミリー。女主人に至っては、旦那に逃げられたというオマケ付き。性格も最悪。居座る常連も、妙な爺さんだったりつかみ所の無い未亡人風の女性だったり一日ブーメラン飛ばしてるだけの兄ちゃんだったり。やってくる女性も、旦那と喧嘩別れした太った外国(ドイツ)人。美男・美女は一人もいません。
しかも寂れたお店だからか、全員諦めムード。さらに女主人は猜疑心の塊と、「それで暮らしていけるのかよ!」という状態。主人公であるドイツ人女性・ジャスミンも、冒頭のくだりを観る限りではあまり性格が良いとは思えませんが、あまりにもひどいカフェ(とモーテル)の惨状に何か思うところがあったのか、徐々に周りの人を巻き込みながら、段々とカフェ(と人々)をプラスの方向に導いていきます。
やがて段々と繁盛していくわけですが、印象的だったのがみんなの表情。楽しそう…なのは当たり前としても、前半とは人が違うかのような活き活きぶり。
そして気付くとやっぱりみんなマイノリティなわけです。お客さんだって、とても稼いで暮らしているような人たちじゃない。ショー自体も大したショーじゃないけど、みんなが本当に楽しんでいる。
これはきっと、日々、一生懸命生きている人たちが、「俺たちでも楽しく生きられるんだぜ」という空気を味わいに、一緒になって楽しみに来ているから繁盛している、ということなんでしょう。きっと「バグダッド・カフェ」にお客さん・店員さん問わず、自分の居場所を見つけたということなんでしょう。その全体の雰囲気、空気の“活気”、“熱”がこの映画なんだと思います。
「え、ここで終わり?」と驚かされたりもしましたが、全体的にはざらざらした質感の黄色い世界に、しみじみと「Calling You」が流れる味わいはなかなかのものでした。
ちなみに余談ですが、一時期ボーカルもののジャズに手を出したことがあって、その時にホリー・コールのものですがジャケ買いしたCDに「Calling You」が入っていてよく聞いていたので、この映画が発祥と知って驚きました。寒い雨の日なんかにコタツに入ってぼへーっと聞くといい感じの曲です。
ココが○
ノスタルジックな雰囲気にボロいお店、そして砂漠…という光景が味わい深くて○。
非常にゆったりとした雰囲気なので、落ち着きたいとき、焦って空回りしてるときなんかに観ると良いかもしれません。
ココが×
途中で「おばさんのそれはちょっと…」という場面が出てきます。まあ、太ったおばさんだからこそいやらしさが無くて良かったのかもしれませんが、観たくは無かったですね。やっぱりそりゃあね…。
MVA
今回は…この人かなー。
CCH・パウンダー(ブレンダ役)
前半のやさぐれフェイスと、終盤の活き活きフェイスのギャップがナイス。「あ、意外と綺麗なおばさんだったのね」と思わせてくれました。