映画レビュー0590 『パニック・ルーム』
気分的にサスペンスが観たかったので、録画してあったこちらをチョイス。なんせフィンチャーの映画ですからね。面白いはずだろう、と思ったわけですが…。
パニック・ルーム
話が三流。
そこまで本数を観たわけではないですが、現時点で観たことがあるフィンチャー映画の中ではダントツで一番クソでしたね。集中力も切らさず、眠くもならずしっかり観てましたが、全然面白くなかった…。
映画のタイトルにもなっている「パニック・ルーム」は、分厚い鉄で四方を囲まれたシェルターみたいな部屋のことで、まさにこういう強盗が押し入った時とかに警察が来るまでの避難場所として用意されているようですが、実は強盗の狙いもパニック・ルームの中の金庫だった…ということで、嫌でも強盗と逃げ込んだ被害者の間にコミュニケーションが生じる、というなかなか珍しい強盗案件なわけですが、ただはっきり言って面白い部分はそこだけ。なので、序盤は割と「おっ、面白くなりそうだな」という気はしていました。早い段階で強盗と被害者の間にやり取りが生じ、膠着状態になる中で双方が頭を使う…というところまでは。
もうその後はただただ思わせぶりな演出とライティングでお送りするグダグダ強盗話でしか無く、明確につまらなかったです。
それでも一応観られちゃったのはさすがフィンチャー…という言い方もできますが、それよりもこの映画に関しては「大した話じゃないのに大げさに見せることで膨らませてる」感じが鼻につく印象のほうが強かったですね。
やっぱりフィンチャーなだけあって、カメラワークとか面白いし、惹きつけてくれる部分があるんですが、ただその演出に見合った緻密さがストーリーに無いので、味付けだけでごまかしてる安い肉のような味わい。決して松屋の牛焼肉定食のことを言っているわけではありません。あんなのもう脂っこすぎて食べられるわけないだろ! ばか!
強盗は三者三様、その強盗の平凡な人間像で他と違った味を出そうとしたのかもしれませんが、残念その手の映画としては今年観た「狼たちの午後」の方が圧倒的に上だったので、逆に自分の中で比較対象がある分、余計に「この映画はダメだなー」という思いにつながった気がします。
主人公であるジョディ・フォスター演じるメグも、(いつもの彼女らしい感じですが)被害者側でありつつもそんなに可哀想な感じがしない強い女性なので、特に感情移入させられることもないし、強盗側の主役と言えるフォレスト・ウィテカー演じるバーナムも、最初っからすでに良い人オーラを振りまいて同情を誘おうとしている感が丸出し、もっと言えば「フォレスト・ウィテカーはこういう役だよね」という先入観そのままのキャラなので、キャスティング自体もどうなんだ、というお話。
フォレスト・ウィテカーその人が悪いんじゃありません。「それっぽい人をそのままあてて、それを裏切らずに進む」のがツマラン、と言っているわけです。お馴染みの「ケヴィン・スペイシーはなんでも怪しく見えるケヴィン・スペイシー問題」と同義です。
フィンチャーお得意のどんでん返しも無く、所々で「いやこうすりゃいいじゃん」というような粗も目立ち、まあとにかくサスペンスとしては並以下のショボいお話でした。早起きした時間を返せと言いたい。
このシーンがイイ!
強盗登場のシーンは、長回しでさすがに面白い絵作りでしたね。そこまではかなり期待してたんですが。
ココが○
フィンチャーの割にはエロくもグロくも無いので、彼の映画の中では観やすい方だと思います。が、観やすいからと言ってオススメはしません。他を観ましょう。
ココが×
上に書いてない点としてもう一つ、とにかく暗い。外が明るい時に観てると見づらくって仕方ないです。(いちゃもん)
暗いまま特に盛り上がりもなく、そして面白くもないという結構厳しい映画でしょう。
これがジョディ・フォスターを別の若くてかわいい女子にしていたらタンクトップ姿だけでちょっと許せた気もするんですが、そういうこともなく。
MVA
一番驚いたのが、強盗の中で最も凶暴なラウール役の人が人気カントリー歌手だった、っていう。当然ながら面白くなかった映画というのは興味が薄いので、「もう誰でもいいですわ」となるわけですが、一応自分に課したルール、決めたるかい、ということでこちらの方。
ジャレッド・レト(ジュニア役)
強盗のリーダーで富豪の血縁。頭の悪そうなヤンキーですが、一番演技としてしっかりしていたかな、と。
元々演技派なので大丈夫だろうとは思いますが、今度公開(※レビュー書いた当時の話)の「スーサイド・スクワッド」であのジョーカーを演じるということで、応援の意味も込めてチョイス。
ンマーしかし文字通り伝説になってしまったヒース・レジャーの後、っていうのは大変でしょうね…。