映画レビュー0776 『ピーナッツ』
どうでもいいことなんですが、僕はレビューを書く際に「極力使わないようにしている表現」がいくつかありまして、その最たるものの1つが「佳作」。
佳作ってなんか偉そうじゃないですか。「佳作だね」って言っちゃうのって。「傑作!」とか振り切ってない、「まあまあ悪くないんじゃね?」みたいな雰囲気を評論的に上から言う感じがして嫌いなんですよね。別に他の人が言うのは良いんですが、自分ではなんか引っかかるんですよ。とは言え「まあまあだな」とは言うんですけど。なんか「佳作」って言い切ることに(賞を授ける的な)上から目線な感じを受けちゃうんですよね。
というどうでもいいお話でした。
今回もNetflixより配信終了間際の作品。これずっと観たかったんだよ…!
ピーナッツ
ファンムービー以上のものは期待しない方が吉。
- 内Pファンへのお礼的な映画
- 田舎のおっさん草野球ドラマは既視感がありつつも安心して観られる作り
- ところどころに内Pファンにはたまらないネタアリ
- 半分映画、半分コント感がやや中途半端
つい最近の映画だと思っていたんですがもう12年も前の映画ですよ…マジカヨ…。
となるとご存知ない方ももう多いんでしょう、かつてテレ朝で放送していた「内村プロデュース(内P)」という番組がございまして、僕は当時、数あるテレビ番組の中でもこの番組を最も楽しみにしていたんですよ。今思えば奇跡のようなレギュラー放送だったと思います。今の目線で言うと「水曜どうでしょう」に似た伝説感。なんとなく。「これレギュラーでやってたの!?」みたいな。
ちなみにさまぁ~ず三村の両膝がボロボロなのはおなじみですが、そのきっかけとなったボケは内Pで無茶した時のもので、それも当然ながらリアルタイムで観ていたので「膝がボロボロ」の話が出るたびになんともノスタルジックな気持ちになるとかならないとかいう噂です。
その内Pの“卒業制作”という位置付けの映画がこの映画になります。ともに初となる監督・脚本を手掛けたのはご存知ウッチャン。もちろん主演もしていてまさに内村プロデュース、と。
ストーリーとしては、地元を出てスポーツライターとして売れっ子になっていた秋吉(内村光良)が地元に戻ってきて、「ピーナッツ最近どうなの? あんまりやってない? またやろうよ!」とかつての仲間を集めてまたみんなで草野球やろうぜ、となったところで地元は再開発事業の話し合い真っ只中、反対するピーナッツメンバーを中心とした商店街の人たちと、再開発事業を進める企業側の草野球チームが野球で対戦することになったぞ、というお話とその周辺事情アレコレ。
それぞれの家族の状況や主人公・秋吉のライター稼業の行く末、そしてそれに絡めた恋愛模様と言ったソツのない内容になっております。
まず大前提として…上記のように僕は内Pのファン(録画したDVDも販売していたDVDもいまだに持ってます)なので逆に言っても良いかなと思うのではっきり言いますが、話の内容としてはもう散々過去にあらゆる映画・ドラマでこすりにこすられたものということもあり、今あえて内P及び出演者のファン以外の人が観て「思ったより良かった!」みたいなことは無いと思います。これは断言して良いでしょう。とても映画として高いレベルにあるとは言えません。(ただし一般的な邦画としてはレベルが低いとも思いません)
やっぱり「惜しまれつつ終了する内P」という番組そのものとファンに対するご褒美的な内輪向け映画だと思うし、それを利用して映画監督としての実績を積みたい“功労者”ウッチャンに対するご褒美でもあったんでしょう。それが良いとか悪いとかではなく、この映画の立ち位置としてそうなっているのは間違いないと思います。
個人差はあるものの、中心メンバーである内Pレギュラー陣(=懐かしのNO PLANメンバー)の演技レベルに引っ張られることで、映画よりはドラマ、もっと言えば「内Pスペシャルコント」的な様相を呈してしまっているのはいかんともしがたく、さすがにガチで作っている映画と比べるのはどちらにとっても酷な話のような気はしました。
特にさまぁ~ずの二人がひどい。下手という意味ではなくて、明らかにコントっぽい。もっと言えば三村。ウッチャンが(ネタっぽく)「二度と使わない」と明言したぐらいにセリフ覚えも悪かったようですが、どっからどう見ても「三村マサカズ」でしかないので、となると作られた物語を観る感覚よりもやっぱりコントを観る感覚に近付いて行ってしまうのはやむを得ないところでしょう。
誤解ないように書いておきますが、僕はさまぁ~ずって1番好きな芸人さんなんですよね。コントDVDも結構買ってるし。バカルディ時代から好きで生で見に行ったこともあります。だからこそ逆に気になったのかもしれませんが、どうにも「演技」という部分で厳しさを感じずにはいられませんでした。真面目な演技とか観てる方がこっ恥ずかしくなる感じ。
最も演技の良さを観るようなお話でもないので、それ自体が問題ということでもないんですが…やっぱり上記の通り話自体も目新しさがないものだけに、どうしても「映画として今観る」価値を感じられないのが辛いところ。本当に内Pファン向けのファンムービーでしかなく、内P自体を知らない人が観て面白いと感じられるのかはすごく疑問でした。
…と厳しいことを書きましたが、とは言え僕は内Pが好きだったんでね。ところどころ懐かしかったり嬉しかったり、っていう要素があったので、やっぱり観ていてウホッとなるところはありましたよ。
ふかわの両親役が本物の両親だったり。あれはずるい。
あとふかわがドライブするシーンではちゃんと当時(今は不明)ふかわが乗っていた黄色いワーゲンに乗ってたり。NO PLANのエンディングテーマなんて下手すぎてひどすぎるんですが、でもやっぱり内Pファンとしては「懐かしいなぁ〜」で許せちゃうものだったりもするんですよ。
ということで「ファンムービー」以上でも以下でもないのかな、という結論。あの番組が好きだった人は今観て懐かしさに浸るのも良いのではないでしょうか。何と言ってもコメディなので気楽に観られますからね。飯尾の弟はパラシュート部隊でよかったんじゃないか、とは思いましたけども。
逆にあの番組に特に思い入れのない人は別に観なくても良いかなと思います。いろいろ残念な部分の方が気になっちゃうんじゃないかなと。
このシーンがイイ!
大竹のフォアボールだけはやっぱりどうしても笑う。
ココが○
内P的な部分を除けば、ベタではありますが誰も悪者にならないとても優しい映画なので、そういう意味では誰でも嫌味なく観られる良い映画かもしれません。
劇中にウッチャンが「うちのチームのテイタム・オニールになってくれ!」と言うシーンがあるんですが、そのセリフからもわかる通り「がんばれ! ベアーズ」へのオマージュというか…あの映画が好きでああいうのを作りたいんだろうなと伝わる部分もあって、そこがまた良かったですね。
ココが×
くどいようですが内P世代なのでウッチャンのことは好きなんですが、ただ僕は基本的に「監督・脚本で綺麗な役どころの主演もやる」っていうのは気に入らないタチなので、好きなことやってんじゃねーよ感はありました。秋吉がもっと汚い人間のほうが良かったなーって。
あとはそれなりに登場人物のドラマを描いていつつも中身が希薄なのが残念。「利用していた」件もそこまで悪く描いているわけでもないから「ふーん」だし、その他全体的にドラマが薄っぺらい。
MVA
当たり前ですが本業役者の皆さんはとても良かったと思います。桜井幸子かわいかったなぁ。引退しちゃったんですよね…。
佐藤めぐみの田舎のヤンキーっぽいけどかわいがられる感じも良かったし、入院中の赤岩奥さんを演じる奥貫薫さんも素敵でした。
でもこの映画でストレートに本業役者さんを選んでも面白味がないので、芸人チームから一人選びたいと思います。
レッド吉田(赤岩登役)
一番ドラマ的な部分がしっかり描かれていて、演技としても一番しっかりしていたと思います。人の良さそうな感じがピッタリ。ほぼ素っぽいゴルゴも含めて、TIMの二人はそれなりに役者っぽくやれていたんじゃないかなと。
ちなみに余談ですが、僕のデザイナーとしての師匠はベンガルに似ていました。懐かしかったです。