映画レビュー0502 『あなたを抱きしめる日まで』
500本記念で借りてきた4本の最後。
これはもうジャケットを観て絶対泣くわ、と思って借りてきたわけですが…。
あなたを抱きしめる日まで
ジャーナリズムと人情のバランスが良い。
ジュディ・デンチ主演の悲しい実話映画。当時の修道院には禁忌(セックス自体ご法度)の割にそこそこ子供たちがいたようですが、その彼らがどういう存在で、どこへ行ったのかを、ジャーナリストの力を借りて50年後の現在明らかにしていくお話ですが、あくまで基本は主役・フィロミナの子供アンソニーの行方探しです。
ただ、その「同行者がジャーナリスト」というのが結構キモというか、ただのお涙頂戴人探しではなく、当時の修道院の所業を暴く、文字通りジャーナリズム的な社会派映画っぽさもあって、いろいろと考えさせられるものがありました。
映画自体は非常に地味で、イギリス映画らしい実直さも手伝って、結構上級者向けというか…ライトな映画ファンはあんまり好まないタイプの映画かなという気はしますが、その分、リアルで渋い映画が好きな人にはたまらないものがあると思います。
基本はジュディ・デンチ演じるフィロミナと、スティーヴ・クーガン演じるマーティンの二人旅。純粋に息子を探したいフィロミナと、同じ思いながらジャーナリストとしての仕事とのバランスに悩むマーティンの対比も味わい深く、どっちもいい歳なだけに絶妙にぶつかりすぎないし、嫌な人間になりきらない感じがものすごくリアルでしたね。喧嘩したり仲良くしたり、っていうのは物語としてはある意味見栄えがすると思いますが、そういう変な起伏を盛り込まず、静かに悩みを描きながら一歩一歩進めていく二人の姿は印象的でした。
道中はもちろん結末も非常に地味で、実はそんなに泣けなかったんですが、何と言っても実話だし、当時の修道院のことを思うとものすごく切ないし、考えさせられる映画でしょう。
主演二人の渋い演技も素晴らしいし、「泣きの映画が観たい」というよりは「真面目な社会派を観たい」要求に応えてくれる映画のような気がします。
このシーンがイイ!
懺悔のシーンかなぁ。相変わらずジュディ・デンチ、素晴らしいですね。
ココが○
実話を真面目に作る、というのはもうそれだけで何にも勝りますね。その上主演二人が素晴らしいので、しっかりと向き合って観る映画としては文句無しでしょう。
ココが×
まあ何と言っても地味なので、退屈な人は退屈だとは思います。
ピークが最後にあるわけでもないので、「泣くぞ!」って感じの映画でもないし、やっぱり基本は社会派映画と考えておいたほうがいいでしょう。
MVA
ジュディ・デンチ、今回もやっぱり良かったんですが、でも他作品と比べるともう一歩かな、という気もしました。キャラクターのせいかも。そんな中、初めてしっかり観たこちらの方、もう抜群に素晴らしくて。
スティーヴ・クーガン(マーティン・シックススミス役)
同行ジャーナリストのおじさん。
コメディアンらしいんですが、すーごいシリアスで最高でした。渋いし。熱さを秘めた感じもあって。脚本もやってるみたいだし、多才な人ですねぇ。