映画レビュー0802 『ピクセル』

毎度まいどスミマセンが今回もネトフリ終了間際シリーズでございます。とは言えこの映画は劇場に観に行こうか悩んだぐらい、ドンピシャターゲットな映画だったので楽しみにしていました。

結果的に個人的史上初と言っていい「(良い意味で)劇場に行かなくて良かった」と思えた一作だったわけですが…この辺はネタバレに関わってくるのでネタバレ項にツラツラ書き連ねることに致しましょう。

ピクセル

Pixels
監督
脚本
ティム・ハーリヒー
原案
ティム・ハーリヒー
原作
『ピクセル』
パトリック・ジャン
出演
アダム・サンドラー
ケヴィン・ジェームズ
アシュレイ・ベンソン
ジェーン・クラコウスキー
音楽
主題歌
『Game On(feat. Good Charlotte)』
ワカ・フロッカ・フレイム
『8ビットボーイ』
三戸なつめ
公開
2015年7月24日 アメリカ
上映時間
105分
製作国
アメリカ
視聴環境
Netflix(PS3・TV)

ピクセル

1982年、アーケードゲーム大会の模様を録画した映像を宇宙へ打ち上げたところ、30数年の時を経てその映像を宣戦布告と受け取った宇宙人が、当時のゲームを模した軍勢を率いて地球へ侵攻を開始する。アメリカ軍の精鋭も役に立たない中、かつてゲーマーとして名を馳せた冴えない中年たちが地球を救うべく立ち上がる…!

中年(元)ゲーマーたちへの愛だらけ。

8.0
“リアルアーケードゲーム”的宇宙人侵攻におっさんゲーマーたちが対抗
  • ゲーム創生期に幼少期を過ごした現中年たちのハートを鷲掴みするSF
  • 物語は至って普通なド定番SFながら、老若男女安心して楽しめる良作っぷりで親子鑑賞もオススメ
  • 今で言うところのAR(拡張現実)的バトルはぜひUSJとかにも導入して欲しい
  • 謎の感動を呼ぶエンドロール

ということでね。「(元)ゲーマーのおっさんたちがそのゲームの腕で地球の危機を救う」というお話なわけなんですが、主人公たちと同様に幼少期はゲームに夢中になり、やがて特に日なたを歩むこともなくめでたく何の取り柄もないおっさんとなった映画好きとしては、これほどまでこの映画をレビューするに足る人材はおらんのやないか、と鼻息荒く観たわけですよ。

僕なんかはドンピシャでファミコン世代なわけですが、おそらくこの映画の主人公たちの世代は僕ら世代の少し上、ファミコン以前のアーケードに熱中したという…感覚的にはお兄ちゃん的な年齢層だと思います。

そりゃーそんなおっさんたちが当時のゲームを模した宇宙人とバトる、ってだけで胸熱なのは当たり前なんですが、内容的にもベタながらゲーム愛に溢れる優しい世界だったので、「良い意味で思っていたよりも万人向け」な映画だと思います。なお思っていたのはおまえだけ、という説もある模様。

物語は1982年からスタート。近所にゲーセンが出来たぞ! ってことでブレナーとクーパーの親友コンビは自転車を走らせ遊びに行き、どうやらブレナーは天才的にゲームがうまいみたいだぞ…! これは大会的なものに出ないともったいない! ってことで全国大会に向かいます。

全国大会の司会者はなんと、かのダン・エイクロイド(が演じているおっさん)なんですが、彼曰くこの大会の模様は録画し、友好のためまだ見ぬ宇宙人たちに向けて宇宙へ飛ばすぜという謎の大会だそうです。謎だけど、でもなんかこの時代こういう謎のノリがあったような気もするし強引なようで実はリアルかもしれない気がしないでもないという絶妙な1980年代という時代。

時は経ち、1982年にはレモネード売りの女子から売上金をかっさらっていた極悪非道な悪童だったクーパーがなんと大統領となった現在。グアムの基地が謎の襲撃を受け、映像を見たクーパーは「これギャラガじゃねーのか…!」ということでブレナーにも映像を見せたところ「しかも1981年版のギャラガじゃねーか…!」ということでどうやらゲームを模した宇宙人らしいぞ、ということが判明。

宇宙人たちはかつて打ち上げられた映像を「宣戦布告」だと受け取ったらしく、当時の映像を加工して地球へメッセージを送信、「君たちは3機持ってたけど(グアムの負けで)残り2機、0になったら地球滅亡だからな!」という謎のゲーム的展開によって地球は窮地に立たされますが、だが俺たちにはブレナーがいる…! ということでブレナーとクーパー、さらにゲームを通じて友達になった他の“オタク”たちがチームを組み、冴えない彼らに地球の命運が託される、というお話です。

ご覧の通り、設定的にはSFを通り越して完全にコメディな強引設定ばかりではあるんですが、まあ「ゲームのキャラが現実に攻めてくる」という核の部分を描くには細かいことは言ってられないよね、という大人の配慮で丸呑みしてあげて観るとですね、その基本の設定はぶっ飛んでいる割に人物像やストーリー展開は至ってマトモというかソツのない作りになっていて、なかなか嫌味のない爽やかSFコメディに仕上がっていると思います。

そもそも「送られてきたゲームの映像を宣戦布告と取り、自分たちをその映像の形に適応させて攻め込む」にしても、大会の映像なんだし撃破されてる映像なんだろうから負けしか見えないじゃん、と無粋なことも思うわけですが、ただ謎の「残機3」ルールだったりからもわかる通り、単純に彼ら(宇宙人)もゲームが好きだっただけなんじゃないの? という気がしないでもないわけです。

ということは…そう。結局はゲーム愛なんですよ。もう。この映画のあらゆる面が。

敵も味方もみんなゲームが好きで、「ゲームって良いよね」「俺たちゲームでいろいろ学んできたよね」という、ゲームで育った我々おっさん世代を肯定して背中を押してくれる応援映画なのだと思います。

ということでドンピシャおっさん世代がターゲットの映画だと思うんですが、ただ劇中でもヒロインであるミシェル・モナハン演じるヴァイオレット中佐の子供が結構重要な存在として登場するように、「今の子供と昔の子供の潤滑剤」としてのゲーム肯定というような意味合いも込められているような気がするんですよ。

この前任天堂のUIデザインについてのイベントの映像を見た時に、任天堂の方が「ゲームによっていかに親子のコミュニケーションを促せるような仕組みを作るかに腐心した」的なことをおっしゃっていたんですが、実はゲームというのは親子に限らず歳の差のある関係性の垣根を取っ払うにはすごく良いツールなんですよね。

もちろん映画もそうだし文化的なものは大体そういう側面があると思うんですが、その中でも特にゲームはそういう性格が強いと思うんですよ。

映画ほど前提の知識や経験に左右される面は少ないし、体格や体力に左右される面も少ないから割合近い実力で勝負できるものが多く、平等な立場で一緒に遊べたりするわけです。(どうしても上手い下手のセンスみたいな部分は差が出ますが)

話自体はベタで過激な面はまったくないので、この映画の物語自体がゲームの良さをそのまま反映させたような雰囲気を持っていて、早い話がこの映画もゲーム的に親子で一緒に楽しんで、コミュニケーションツールとして活かせるようになっているのがものすごく良いなと思いました。もう絶対お父さんと息子(男同士の方がおそらく向いてる)で観ると良い映画だと思う。子供にとってはすごく思い出に残る良い経験になる気がしますね。

さて、登場するゲームは僕も知らないタイトル(おそらく洋ゲー)も結構ありましたが、しかし中心的なタイトルはやっぱり僕ら世代には馴染みの深いゲームばかりで、最初の「ギャラガ」にしてもそうだし、「アルカノイド」だったり「パックマン」だったり「ドンキーコング」だったりもう出てくるだけで「うわーなつかしー」とニンマリしちゃうようなものがたくさん出てきてもうそれだけで楽しかったですね。

余談ですが僕は「懐かしい」という感情は最も共有しやすい「ポジティブな感情」だと思っているので、そこを突いてくるのはウマイと思っているんですよね。何にしても。

「懐かしい」って思わせたら勝ちというか。「懐かしいけど嫌」ってあんまりないと思うんですよ。感情の距離感が近すぎなくて良い、みたいなこともあるんでしょう。

そんなわけでもうあからさまに「懐かしさ」を突いてくるこの映画は、内容がベタでもウマイなぁと思わせるしたたかさがあったんじゃないかなと。なので物語本線の良し悪し以上にうまく自分のポテンシャルを引き上げている映画だと思います。

世代が合わない人には刺さらないのも確かでしょうが、まあそういう人たちはターゲットでもないだろうし、「ターゲットをきっちり楽しませる」という意味でちゃんとしている良い映画と言って良いでしょう。

人の思い出に踏み込むような内容であれば、「えー、こんなんじゃない」っていう思いも隣り合わせになると思うんですが、多分そういう変な地雷を踏まずにしっかり昔のゲームをリスペクトした内容で作っているので、「あの頃のゲーム良かったよね」「いい時代だったよね」みたいな懐古厨的感情をうまく満たしてくれる映画になっているなと。そこがすべてだしそこが一番重要なので、逆に言えば物語自体のベタさとかもう二の次なんです。だから「もっと面白い映画はたくさんあるけど、でも好き」と言わせるような仕立ての良さみたいなものが心地良い映画だと思います。

で、実は最後に僕は謎の涙を流したわけですが…これはネタバレに関わってくるのでネタバレ項に書くことにします。ぶっちゃけその涙のせいで評価が跳ね上がった面もあるんですが、しかしその涙も実は誤解から来るものだったりもして、仕組みを知ってからはちょっと複雑な気持ちではありました。それが「劇場に行かなくて良かった」にもつながるんですが…。

その辺のアレコレ含めて一番語りたい要素が実はここでは語れないというもどかしさがありつつ、一旦ここでふっかつのじゅもんをメモって電源を落とそうと思います。

まあアレだ。ファミコンに熱中したおっさんは良いから観ろ! ってとこでしょうか。

ネタバレは1日1時間

ということで最も語りたい部分、それはエンドロールですよ。奥さん。

ファミコン風ドット絵でオープニングからエンディングまでを描くグラフィックをバックに、ドット文字によるスタッフロールが展開するセンス溢れるエンドロール。まさに「あの頃のエンドロール」ですよ!

さすがゲームがメインの映画なだけに良いエンディングだね〜と嬉しくなってボケーっと観ていたんですが、すぐにちょっとした違和感が。「あれ? この曲…日本語か?」

「ドンキーコング」しかり「パックマン」しかり、この頃のゲームは日本作がかなり強かったし、やっぱり日本文化に対するリスペクトもあってこういう演出なのか〜やるな〜…と思っていたらなんだか胸熱レベルが高まってしまい、謎の涙を流したわけですよ。なんかグッと来ちゃって。「胸がいっぱいになる」ってこういうことなんだな、ってすごく感慨深くて、なんなら(歌詞は結構ふざけてるんだけど)曲に感動すら覚えたわけです。曲調もドット絵のグラフィックにバッチリ合ってたし、ボーカルの声も歌い方もすごく雰囲気に合ってたし。

いやこれは良いエンドロールだ…初めて“エンドロールだけ”を手元に置いておきたい! と思うぐらいものすごく良いエンドロールだなと思いました。またも勝手に予告に行くんじゃねーよネトフリ!! と憤りながら。

しかし。エンドロール後に種明かしが。

この邦楽エンディング、どうやらよくある「日本語吹替版のみの主題歌」だったんですよね。

僕は当然字幕で観ていたので、まさか日本語吹替え版のエンドロールが流れるとは思ってもおらず、それ故に「古いゲームをテーマにした映画だけど今の時代らしいボーダーレス感が感じられる」という意味でもすごく良いエンドロールだな、監督やるな! と感動していただけに、この感動は嘘やったんや…と謎の関西弁で落ち込みました。なんでや…と。最近邦楽をそのまま流す洋画もあるやないか…と。

で、気になったので“本エンドロール”に使われている主題歌の方を聞いてみたらゴリゴリのロックでやんの。普通に。ちょっとピコピコ音入れてゲーム感出してはいるもののゴリッゴリのロックでやんの。ボーカル超ゴツい男だし。なにこれあのグラフィックと全然合わないじゃん…!

ということで「誤解感動による涙」を流して評価爆上げしてしまった勘違い鑑賞になったわけですが、とは言えネトフリがこういう謎の仕様(字幕版本編+吹替版エンドロール)で流してくれなかったら間違いなくこのエンドロールには出会っていなかったわけで、ある意味では嬉しい誤算でした。(だから劇場で観なくてよかった、という話につながります)

基本的にこういう「日本語吹替版用主題歌」って好きではないんですが、この映画はぜーったいこっちの方が良いよ。エンドロール。意味合い的にも、雰囲気的にも。

この曲を聞いて中田ヤスタカってやっぱすごいんだなぁ…と感心しましたね。世代的にも僕と同世代なので、やっぱりこういう映画に曲を提供するにあたって思うものがあったんでしょう。こういうチップチューン良いなぁ。

ちなみに鑑賞後、あまりにも感動したのでこの曲自体のPVを観に行ったらボーカルの子が全然楽しくなさそう&安っぽい踊りのコンボに観なければよかったと激しく後悔したことはショナイです。わざとやってるんだろうけど…。PV的にもこの映画のエンドロールが一番、だったなぁ。そのまま音ゲーにでも使えそうなクオリティ。

このシーンがイイ!

クスリとさせるエンディングからエンドロールまで。ネタバレに詳しく書きましたが、エンドロールは一見の価値があると思います。めちゃくちゃ良かったです。特にパックマンの点滅する辺りとか芸が細かくて最高。

ココが○

古い題材ではあるものの、それこそ「ポケモンGO」的なAR技術で今の時代に「実際に作れそう」な世界は意外とバカにできないし、今の中年世代が子供の頃に確実に思っていたであろう「現実でゲーム的な活躍をしたい…!」という夢を叶えてくれるという意味でたまらない人は多いんじゃないかと思います。

ゲームの描写にしても、例えばパックマンがパワークッキーを食べるとゴーストが青くなる、とか細かい部分で懐かしさを煽ってくるのも◎。やっぱりこういうディテール大事。

あと「裏技」の扱いとかもうまいな〜と思います。思わずニンマリ。

ココが×

「ゲーマーが救う」んですがゲーマーの範囲が狭すぎやしないかい、というのはちょっと気になりました。しょうがないんだけど。主人公周りで完結しちゃってるので、地球規模の危機の割に助っ人範囲がせめーな、みたいな。

あとドンキーコングのステージはちゃんとCGで作って欲しかった。安っぽいセットでバラエティ感すごい。フレンドパークかよ、みたいな。

MVA

基本的に(大統領もいるとは言え)ドロップアウトした人たちの映画なので、そのB級感が逆に良いなというのもあったんですが、でも主人公のアダム・サンドラーは少し「パッとしなさすぎ」な気がして惜しい。もう少し「行くぜぇ!」みたいな熱さがあってもよかったよーな。

ということで今回はこちらの方に。

ミシェル・モナハン(ヴァイオレット・ヴァン・パッテン中佐役)

兵器開発他を担うヒロイン的存在の女性中佐。

ものすごい偏見ですが、「B級映画のトップヒロイン」的な感じで好きですね。ミシェル・モナハン。とか言いつつあのイーサン・ホークの奥さんでもあるんですが。

さすがにそれなりの息子がいる設定もおかしくない雰囲気という程度にはオバちゃん化が進行しているんですが、でも年齢なりの綺麗さがあってヒロインとしての魅力もしっかりあるし、コメディ適性も高い女優さんだと思うのでバッチリでした。かわいすぎず、若すぎず、かと言ってB級過ぎてかわいくないわけでもないという、とてもイイ人選だと思います。

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